ジョージ・エルスの日記...ジョージ・エルス

 

 

ドクター・チュー - 2003年02月07日(金)

中国旧正月で会社は休み。朝から友人とゴルフを楽
しんでいた。

第5ホール第二打のクラブ選択の最中、携帯が鳴る。

妻からの電話。どうやら陣痛が始まったらしい。予
定日より3週間も早い。

友人にせかされ、クラブハウスへ急いで戻る。

時計をみるとまだ朝の10時半。この時は夕方前に
は、二人目の子供の顔をみられるだろうと思ってた。


1時間ほどで病院に着く。陣痛といえどあまり痛み
がないらしい。少しほっとした。


担当の医者が分娩室に入ってきた。

ドクター・チュ―。丸顔に大きなメガネがほのぼの
した雰囲気を醸し出す。いわゆる ”癒し系”。
チャイニーズ。

口癖は「エクセレント」。少しでも経過がよければ
この言葉を連発する。

妊婦に安心感を持たせるという意味では、最も適し
たキャラクターではある。



夕方になってもまだ産まれない。夜になってもだ。
外は昼間とうって変わって、少し強めの雨。

夜11時30分。これまで2〜3度分娩室を出入
りしていたドクター・チュ―が、今度は真剣な表
情で入ってくる。

「今日中に産みましょう。意図的に破水させます。
 そして陣痛促進剤も使います。」

強烈な痛みが急に来たらしい。妻の顔が苦痛で歪む。
彼女の手を掴んでなさい、と命令される。


11時54分。か細い泣き声と共に彼はこの世に生
まれた。

見るからに小さい。あまりの小ささに今度は僕の方
が心配に襲われる。

その瞬間、ドクター・チュ―が言った。


「エクセレント。」


強調することなく、繰り返し言うこともなく。

たった一言で全ての心配をかき消した。



午前2時40分。さっきの雨はすっかり止んだ。
外は涼しくなってる。

妻はそのまま入院。僕は家路へ向かう。

外に止めてあったペルダナをゆっくり走らせる。
急ぎ気味が似合う車だが、今日は特別だ。

産まれたばかりの子供の顔、妻の顔、そして家で
妻の妹と一緒に寝ている3歳の長男の顔を思い浮
かべながら。



夜霧が立ち込める静寂の中、運転席からみえる、
オレンジ色の街灯に照らされた夜の町はなかなか
幻想的で、神様が次男誕生を静かに祝ってくれて
るかの様だった。










...




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