台所のすみっちょ...風子

 

 

ペットショップにて・・・。 - 2004年01月31日(土)

先日、友人M子に誘われて行ったペットショップで、

一匹のミニチュアダックスと出会った。

その犬はシーズや柴犬といった他の犬たちから

少し離れたサークルの中で、ワンワン、、キャンキャンと

ものすごく元気であった。


近づいてみると、

性別はメスで、生後2〜3ヶ月の子犬ばかりの犬たちの

中にあっては、生まれて6ヶ月と、一番年長者であることが分かった。


「68,000円」

サークルにはそんな値札がつけられていた。

「138,000円」の数字に赤線が引かれ、

その少し上にディスカウントされた値段が書かれていたのである。


店にはもう一匹、ミニュチュアダックスがいた。

しかしそっちは、やはり生後2ヶ月の子犬で、

値段は値引きなしの138,000円。


ミニュチュアダックスという、その犬の本質自体は

何も変わってはいないというのに、

時を経るごとに残酷までに下がっていくその価値。



他人事とは思えなかった。



おしまい。



...

やっかみ。 - 2004年01月30日(金)

油絵を習って3年の母と、その手の学校を出たものの、

今となってはまったく筆を握らなくなった私が、

「仲良きことは良きことかな」と添え書きしたくなるような絵を描く、

昔は熱々のおでんを口に入れて笑いをとっていた芸人で、

現在は画家としてすっかり評価が高くなった、某芸能人Tについて

母「私、あの人納得いかないわ〜」
私「そうだよね、あれくらいちょっと習えば描けるよね〜」
母「そうなのよ〜、それなのにテレビで他の芸能人に教えちゃったりして」
私「芸能人って得だよね。上手くなくてもすぐ注目されるし」
母「ね〜、ちょっと描ければ、もう”画家”だもんね」

と、「芸能人だからって」というような主旨で議論し、

側で聞いていた父に

「描けないやつと、描かなくなったやつがそういうこと言うのはおかしいゾ!」

と叱られ、2人ともシュン・・としたのは、ついこの前の正月のことであった。



私はその時、口だけが一人前で行動が伴わない自分の未熟さに

ハッとするような思いであり、大いに反省した。

だが夕方、新聞屋さんが

「これサービスです。旦那さんとどうぞ」

といって置いていってくれた、若い時は人気アイドルバンドのボーカルで、

今はソロで音楽活動する、自称アーティスト「F」の展覧会チケットの絵を見て、

そのただただ色彩が派手で機械的というだけのグラフィックにビックリし、

他は?とインターネットで過去の作品まで見た私の結論は、

「アートというのは時として理解しがたいものだが、

こ、この人のは、、何が良いんだかまったく分からん・・・」と

いうものであった。



正月から一ヶ月弱の時を経て・・私は今、こう思わざる終えない。

「学校に入る前に、やっぱり芸能界に入れば良かった・・か?」と。



おしまい。


...

マスカラ。 - 2004年01月29日(木)

私は目が細くて小さい。

だから私はマスカラをつける。

シジミのような目が少しでも

パッチリするようにと願いを込めて。

きっと、今日電車で見かけた娘さんもそんな気持ち

だったのだろう。

やはり、一重の小ぶりな可愛らしい目にマスカラ。


だが、私は彼女を見たとき、

それを肯定するような気分にはなれなかった。

むしろ、、大声で忠告したい衝動にかられた。


「あなたは間違っている!」と。

「必要以上に塗られた茶色いマスカラが、
 まつ毛の一本一本に”玉”というには生易しい、
 そう”枝”のように張り付いて、パッと見、あなたの
 そのまつ毛はまるでトナカイの角のようですよ!」って。



おしまい。


...

皮 - 2004年01月27日(火)

最近の私は眠たくてしょうがない。

少し動いただけで、目がトローンとしてくるという有様である。


例えば、先週金曜日の私の1日はこうであった。

朝9時に目を覚まし、リビングのテーブルにあった

キットカット2本を食べ、布団に戻りまた寝た。

そして昼の一時に起き、お腹が空いていたので

前の日の残り物、キムチ風味噌汁の中にご飯を

入れ、雑炊にして3杯食べ上げたのち、夕方の6時半まで爆睡した。

さすがにそれから起きてはいたが、

夕飯のうどんとおにぎりを腹に入れたあとも、

ただゴロンと横になりテレビを見るのみ。

まさに、何か腹に蓄えては寝る、といった1日であった。


季節は冬真っ盛り。


自分はもしかして人間の皮を被った熊かもしれない、と思った。


おしまい。


...

豆腐。 - 2004年01月26日(月)

年末年始、暴飲暴食を重ねに重ね、すっかり体重が増えて

しまった旦那。

バイトを終え、家にいる彼に夕飯は何が食べたい?

と問い合わせてみたところ、低カロリーのあっさり湯豆腐がいいと言う。


愛する旦那が肥満に喘いでいるとあっては、

そのリクエストを無げにもできず、

疲れた体を引きずって、スーパーに

寄り、豆腐を2丁買い、家路を急いだ。


で、家に着き、早速、台所に直行し仕度を始めたら、

ゴミ入れにそのうち食べようと買い置きしておいた、

カ○ビーのポテトチップス「堅あげ」の袋が、

すっかり空になった状態で捨てられているのを

発見してしまい、

「こ、これを・・・全部・・一人で・・食べたのか・・・」と

思ったその瞬間、


柔らかい


とてもやわらかい


目の前の豆腐を切ることもできなくなるほど、


体の力が抜けた。


おしまい。


...

縫い物 - 2004年01月25日(日)

「背広のズボンの裾が解れてきたから縫ってくれよ」と

旦那が言うので、任しといて!とばかりに

裁縫道具を入れているペコちゃんの赤いミルキー缶を

押入れから引っ張りだし、まつり縫いを始めた私。

が、糸を2本にしたせいか、

ぐいっと布に針を刺し入れて通し、ひっぱる時に糸が絡まってしまったり、

変に玉ができてしまったりと、意外なほど四苦八苦。


で、いちいちそれをほどいたりしてやり直していたのだが、

進めていくうちにいい加減ウザくなって、思わず、

「あ〜、面倒くさい、、これくらい、まっ、いっかぁ〜」

と誰に話すともなくポツリと言ったら、

そばにいた旦那にそれを聞かれ、

「いいか悪いかは、俺が見て決めることだろう」

と・・叱られた。



ごもっとも。



だが・・・・



だったら、おまえがやってみろ。


おしまい。



...

理由 - 2004年01月24日(土)

いったいどうしたことであろう。

うちのマンションの私が住んでいるこのフロア―、

皆がどんどん引っ越してゆく。

去年の3月、まずお隣の若夫婦がいなくなった。

そして、最近立て続けにその隣、またその隣と引っ越して行った。

というわけで、今現在、向こう三軒が空き部屋状態なのである。


確かに、ここは人気がない地域だとは思う。

都心のようで都心じゃない。

23区において未開の地。

まさに「都会のチベット」という感じの、お茶の一杯も

駅前で飲めない不便さだ。

しかし、今年の4月には大型ショッピングセンターもできるではないか。

スポーツセンターだってできるではないか。

ショボイ駅も、今大々的に改装中。

もうちょっとの我慢だったはずである。

何故、皆去ってしまうのだ。


もしかして・・と私は思う。

きっと彼らがここからオサラバしたのは、

それはきっと、そう絶対、、私がここから引っ越してしまいたい

と考えているのと同じ理由・・・。

そう、彼らも、いつでも、思い立ったときにドトールで

コーヒーが飲みたかったに違いない。


おしまい。


...

不安 - 2004年01月22日(木)

選挙に出るつもりは毛頭ない私だが、

今日、某党の某議員が、アメリカの香辛料

みたいな名前の大学から卒業を認められてないという

ニュースを見て、ふと自分の大学時代を思い出し、

そういえば、嫌いだった彫刻の単位は、ほとんど友人Sの

代返によるものだったとか、

50号のキャンパスを3週間で描く課題の授業では、

間に合わなくて、自宅のアパートで2日間徹夜して描き、

いい加減な状態で提出したとか、

ヌードを描いた卒制では、上半身に力を入れすぎて、

足の方は面倒くさくなってほとんど絵の具が塗られてない状態

で、「まっ、いっか〜」と教授に見せたらひどく怒られたくせに、

そのまま卒展に出しちゃったこととかが頭をよぎり、

しかも、あの状態で良く卒業できたなぁ〜と、そういう自分の

過去をちょっと楽しんでいたふしさえあるのに、

「わ、私って卒業したんだよな・・・?」と

一転して、不安にならずにはいられない。


おしまい。


...

アドリブ - 2004年01月20日(火)


指導員3人の中では、一番技術のない「インチキラクター」の私。

そんな私が他の2人に比べて優れている点。

それは「バイト先の利益を常に考えている」ということだ。


うちは民間の管理だが、それを委託しているのは「公」。

「赤字覚悟でやっております!!」というのは、

民間だから誉められることであって、公共の施設ではそれは

まかり通らない。だって運営費はみなさまの税金だから。


というわけで、客と客単価を増やすべく、

来てくれるすべての客に愛想を振り撒き、

規則なんかもそっちのけで融通を利かすなど、

「サービス第一!」を念頭に今まで勤めてきた。

だが、こんなにバイト先のことを考えているというのに、、

やっべ〜、、7月には失業しそうだ。


どうやら4月から民間業者への委託を辞めて「公」が

自ら管理をするらしい。

そうなると、私の所属も今の民間会社から変わるわけで、

改めて公と雇用契約を結ぶことになる。

その場合、働ける期間が規定で3ヶ月と決まっているため、

7月にはサヨウナラ〜〜!となってしまうのである。


で、一昨日、そんな話を旦那にしてみた。

私の話を聞いた彼は言うのだった。

「じゃあさ〜、、おまえの妹のとこで雇ってもらえば〜!?」と。

(エッ?ハーブショップで?)

そう、妹の勤務先はハーブショップ。

彼女はとてもハーブが好きで、

「そ、そんなに君は勉強好きだったのか・・?」と

姉の私がビックリしてしまうほど、日々分厚い本に向かっていた。

その努力の賜物なのか、

今では彼女のハーブに於ける知識とアドバイスは見事なものがある。



私は考える。

勤めていけるだろうか?と。

確かにこの口八丁さで、接客には自身がある。

バイト先ではどんな客のクレームにもアドリブで答えてきた。

だが、、、人の健康に関わるハーブの販売となると・・・。


罪のない人々を不幸にはできない・・・。


おしまい。


...

雪。 - 2004年01月19日(月)

この週末、結局、東京に雪が積もることはなかった。


「雪降ってきたぁ〜?えっ?まだぁ〜?」と、私のバイト先でも、

行き交う会話といえば、皆そのことばかりであった。



そうだろう、そうであろう、

東京人はたまの雪景色が珍しいのであろう。


私は違う。

何故なら、新潟で生まれ、幼い頃より雪と戯れ、

雪に慣れ親しんできた、正真正銘の雪んこだから。

雪がうっすら路上を覆うぐらいでは、

「それがどうした」であり、

多少の雪では、ビクともしないのは当然である。


そわそわする東京人たちを横目でみながら、

私は一人思う。

「こ、今年こそは・・転ばないぞ・・」と。


おしまい。


...

感心。 - 2004年01月17日(土)

木曜日深夜。

私達はベストヒットUSAを見ていた。

ブラウン管に映るのは黒人女性アーティスト。

流れるプロモーションビデオは恋愛ドラマ仕立て。

映画のようなその映像は、ある男性に恋をした女性が、

恋心をどんどん募らせてゆくという内容だ。

主役はアーティスト本人。

彼女はとてもきれいで、曲も感じが良かったが、

一番と二番の歌の間に入るセリフが気になった。

「意を決した女がついに告白する」という内容が、

セリフで綴られるのだが、いくら聞かせたい部分とはいえ、

長すぎる感は否めない。


(なっ、なっげぇ〜よ・・)と半ば呆れかけたその時であった。

隣で見ていた旦那が突然、、、なんと、、渥美清の物まねをしながら、、、

「わたくし〜、生まれも育ちも葛飾柴又です。帝釈天で産湯をつかぁ〜り〜

姓は車、名は寅次郎。人呼んでフ〜テンの寅と申します」

と喋り始めたかと思うと、次には

「♪お〜れがいたんじゃぁ〜お嫁にゆけぇ〜ぬぅ〜。わかあっちゃいるんだぁ〜、

妹とぉよぉ〜♪」と急に歌い出し、分からない箇所はハミングなど

したりして、唖然と彼を見ていた私に向かい、

「結局この歌、寅さん調ってことでしょぉ〜」と笑いかけたのであった。


・・・・・・・・・・・。



確かにゆっくりとした曲調で、

確かに、間にセリフが入り、

確かにセリフも長め・・・・



(す、素晴らしい・・・)



最近、彼にこんなに感心したことはない。



おしまい。



...

体力。 - 2004年01月15日(木)

今日、地下鉄で見たおばさんは素晴らしく俊敏だった。

彼女は年の頃なら60歳ぐらい。

途中の駅から乗ってきたのだが、ドアが開くか開かないかのうちに、

物凄い調子で電車の中に駆け込んで来たのである。

それは運動会のパン食い競争で、

あんパンをめがけて走るかのような速さだった。


どうやら彼女は私の隣の隣の空いてた席をめざして頑張ったらしい。

しかし、一足遅かった。

他の人に座られてしまったのだ。

(あんなに頑張ったのになぁ〜)と、見ていた私も残念であり、

彼女はぼ〜っとつっ立つしか、もう他に成す術がないように思われた。


しかし、天は見放さなかった。

10数分後、立っている彼女のすぐ後ろの席が空いたのだ。

降りる気配をいち早く背中で感じ取った彼女。

チラリと後ろに視線をやるやいなや、

次の瞬間、さっきのリベンジとばかり、

後姿のままホイ!っと跳ねるようにして席をゲット。

「絶対座ってやる!」という決意が、彼女の尻を突き出させ、

尻から席へとダイブさせたのだった。

その様子は、海の中で天敵に会い、びっくりしてピョピョン!と

後ろへ下がるエビのようであった。



それにしても・・・・と私は思う。


あれだけ走ったり、跳ねたりできるのなら。


座らずとも


じゅうぶん立っていられるだろう・・・と。


おしまい。



...

鍋 - 2004年01月14日(水)

うちの旦那は健康に良いと言われるものには目がない。

例えば、昨年流行ったアミノ酸。

その熱の入れようは相当なもので、

飲むものと言えばほとんどがアミノ酸飲料で、

私の前でぐびぐびとそれを飲み干しては、

「あ〜、体にバリン ロイシン イソロイシンが入っていくぅ〜」

などと、その度に訳のわからないことを言う始末。


そして今、そんな彼が注目しているのは豆乳。

いや、もともと彼は無類の豆好きで、

納豆、豆腐、枝豆等々・・、彼は豆という字さえついていれば

”血豆”以外はなんでも食うのだが、ここに来ていっそう

彼を惹きつけている原因は、どうやら、最近、世間で注目される

ようになった栄養成分、イソフラボンにあるようだ。


というわけで、昨日の私達の夕飯は「究極大豆料理」と言っても

過言ではない、「豆乳鍋」であった。

それは、スーパーで「豆乳鍋の素」というものを目ざとく

見つけて来た、旦那のリクエストによるもの。


野菜を切り、深めのホットプレートにそれを流し入れると、

それは、料理の一種というより、水で溶いたホットケーキミックスといった

お菓子みたいな外観だったが、

味はこくがあって、緩いホワイトソースにかつおや昆布で取った出汁

を入れたような感じで結構イケた。


食事が済んだ後、旦那は空気をいっぱい吸ったカエルのような腹を

天井に向けて「いっぱい食べちゃったな〜」と言いつつひっくりかえっていた。

彼はおおいに満足したようであった。


意外にも美味しい上に、体にいいイソフラボンまでたくさん採れた私達。

けれど、この豆乳鍋、汁が白くて不透明なので、

鍋料理で大きなウエイトを占める白菜なんかは

どこにあるか見分けるのに困るし、ネギも青い部分をツテに探すしかなかった。

豚肉も火が通ると白っぽくなるので、探すのにひと苦労で、

ましてや、私の大好物の鱈の切り身にいたっては・・・

なかなか見つけられなくて、ほとんど旦那に食べられた。


ここだけの話・・・もう当分やりたくない。



おしまい。


...

愛の重さ - 2004年01月13日(火)

バイト先のスタッフの照明Aさんは、

この前結婚したばかりの新婚ホヤホヤさんだ。

「結婚して初めてのお正月はどうでしたか〜?」なんて

からかうと、熊五郎のような顔を緩ませて、

「べ、別にぃ〜〜普通っすよ〜」と言いつつ、とてもうれしそうである。

そんな彼が昨日、手編みのマフラーをしているのを発見。

ベージュのそれは、ざっくりとした大きな網目が

「さぞ、空気をたくさん含んで暖かいでしょう」といった感じだ。


機械編みの既製品が多く出回るこの世の中だが

やはり、手編みはいい。

ひと目、ひと目に編む人の愛情がこもっている。


恥ずかしながら、私も新婚時代、そんな気持ちを込めた時があった。

空っ風が吹きすさぶ冬空の下、旦那が寒さに凍えないよう、

私の暖かい愛で包んであげたくて、慣れない手つきでマフラーを編んだのだ。


けれど、あれから7年。

今、マフラーは押入れの中。

私の愛情がこもったそれを、彼は一度しかしてくれなかった。


何故なら、

選んだ毛糸がしっかりした極太で、

本に書かれていた長さまで編んでも、中々首に巻きつかなかったため、

どんどん長くしていったら、

出来上り寸法が旦那の身長と同じぐらいになっちゃって、

それを巻いた旦那は、

まさに「アオダイショウにこれから食われる小動物」といった感じで、

しかも「心なしかこれをつけると肩が凝る」とのクレームから、

試しに体重計で重さを量ったら、1.5キロもあったから。




おしまい。


...

勇気。 - 2004年01月11日(日)


今日は夜旦那が飲み会なので、

バイトの帰りに、地元の駅前にできたばかりの

中華屋で食事を済ませることにした。


店に入り、大好物のタン麺を注文。

旨い、普通に旨かった。


あっという間にそれを食べ挙げ、店を出て数分後、

家までの途中のコンビニで、鮭のおにぎりを買った。

その様子は、

まさに羞恥心の前に屈した女のなれの果て・・という感じであった。


私は後悔していた。

何故、あの時に言わなかったのかと。

何故、あの時「チャーハンもください!」と

勇気を持って注文できなかったのかと。


おしまい。


...

ささやかな罪 - 2004年01月10日(土)

「1月21日は外で飯でも食うか」

と旦那が言うので

「その日はなんの日でしたっけ?」

と聞き返したところ、それが忘れちゃならない結婚記念日で、

旦那が2人のことを思ってそう言ってくれたのだと知り、

「ありゃりゃ、、またやってしまった」と深く反省したのは

一昨日のことであった。

その場ですぐさま詫びを入れ、「で、どこで食事するつもり?」

と聞くと、彼は柔らかな笑みを見せながら、

「ミン○ン」という。

「ミン○ン」とは家の近所のラーメン屋で、行列ができるほどの店。

豚の背油が浮いた醤油ベースのスープに、分厚すぎるチャーシューが

人気の秘密だ。


せっかくの申し出だったが私は断った。

何故ならそこは、

美味しいけど、

店が狭く席数が少ないため、

ほとんどの客は、入り口近くの小さなカウンターで、

立ち食い。


ということは、

記念すべき日に、

背油の浮いたラーメンを、

夫婦で、

立ち食い?

いくら不景気だからって、

一杯のかけそばじゃあるまいし。



私は思う。

結婚記念日を忘れていた妻の罪。

大切な記念日を立ち食いラーメンで済まそうとした夫の罪。

結婚とは日々のささやかな罪の積み重ねであるのかもしれないと。



おしまい。


...

アイディアマン - 2004年01月09日(金)

夜、11時。

私は玄関の扉を開けた。

不揃いに脱ぎ置かれた夫の靴が見える。

「今日は新年会で遅くなる」と言っていた彼が先に帰っていたのだ。


靴を脱ぎ、スリッパに履き替え、音を立てぬよう静かに

リビングに入る。

思った通り、彼は酔いつぶれ寝ていた。ホットカーペットの上で。

その姿は、まるで浜に打ち上げられた鯨、またはトドのよう。

「波の音さえ聞こえてきそうだ・・」

そう思いながら、寝ている彼を起こさぬよう、私は鞄をそっと白い革張りの

ソファーに置き、ふと、そう何の気なしに飾り棚に視線を移した。

すると・・・

そこには・・・

猿の・・置物・・?・・かよ!

なんと、棚の一番上の段にオレンジ茶の猿の置物があるではないか。

それは、横向きに座った猿が片手を壺にかけ、笑みを浮べながら、

顔だけを正面に向けている、、というもの。

しかも、その色といい、ニホンザル的な体の作りといい、

明らかに和調であるにも関わらず、

近くまで行って確認したその顔つきは、メガネ猿そっくり。

いったい何国の猿なのだ?

そして何故、私のお気に入りのペンが壺に挿してあるのだ?


慌てて夫を起こし聞いてみた。

「ねえ、ねえ、、あの猿どうしたの?」

「う〜ん、あれぇ〜?あれはねぇ〜今日行ったちゃんこ屋さんでもらってきたの」

「どうして、もらってくんだよ!」

「明けましておめでとうございますってくれたからぁ〜。いいでしょ〜」

「良くね〜よ!」

「これだけは置かせてくれいよぉ〜!ほらほらぁ〜見て〜、本当は爪楊枝立て
なんだけど、俺はねぇ〜、ペン挿してみたんだぁ。ペン立てに使おうと思って。
 ど〜お?」

「・・・・・・・」



あれから2時間、彼は今、すっかり夢の中。

ひっそりとした部屋の中、私は棚の上の猿をもう一度手に取り、

そして呟かずにはいられない。

ペン立てって・・言われても・・・。

どお?って言われても・・・。

壺の穴が狭すぎて、、、、ペンが一本しか入んねぇ―じゃん、、と。



おしまい。


...

共通点 - 2004年01月07日(水)

友人A子は高校の同級生。

住む場所が遠く離れ、会う回数が減った今でも

私達は仲が良い。


が、彼女と私にはほとんど共通点といったものがない。

例えば彼女は、赤点まみれの私と違って

成績はどの教科もトップクラスだったし、

その後、進んだ道も正反対であった。

私が大学を出て、「仕事のためよ〜ん」とかなんとか言いながら、

洋服を買いあさり、着飾ることだけが命の薄っぺらなデザイナーを

している間に、彼女はしっかりとした堅実な仕事につき、

現在もバリバリと働いている。


さて、こんな私達ではあるが、敢えて共通点を挙げるとすれば、

それはお互い「年下の旦那を持つ」ということ。

年も私のとこが5つ下なら、彼女のとこは6つという具合だ。


で、一昨日、東京に戻る前の日のこと。

彼女と彼女の旦那さんを交えて3人で食事をした。

彼と会うのは一昨年の夏以来である。

私は驚いた。

もともとハンサムボーイではあったのだが、

この一年半でさらにその風貌に磨きがかかっていたからだ。

肩までのサラサラとしたロン毛に涼しげな切れ長の目、

そして高くスマートな鼻、顎に生やしたミュージシャンばりのヒゲ。

彼の白い肌で覆われた体は、まるで0.3のシャーペンで描いた素描の

ように細く、美しい。

それは、細々書くより、松○優作の息子に近い、と

言った方がいいかもしれない。


久しぶりに会った彼女の夫。

少女漫画から抜け出たような美男子を鑑賞できたことを

ありがたく思いながら昨日東京に戻った私は、

一足先に帰っていた自分の旦那を2日ぶりに見て、

ふと思わずにはいられなかった。

「・・・ふ、太い・・ご、ごつい・・そして・・オヤジ・・」と。



改めて感じる彼女の旦那との違い。

同じ年下である、ということはその若さから放出される

輝きも一緒であったハズなのに・・・


彼女と私の数少くない共通点。

信じてきたそれが、今、少しずつ崩れようとしている。



おしまい。


...




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