瞳's Cinema Diary
好きなスターや好みのジャンルにやたら甘い、普通の主婦の映画日記。
この映画の感想読みたい・・って思ってくださる方がいたら、画面下の検索機能からどうぞ。

2007年03月30日(金) 「BARに灯ともる頃」

1989年イタリア 監督 エットーレ・スコラ
キャスト マルチェロ・マストロヤンニ マッシモ・トロイージ アンヌ・パリロー

小さな港町。
兵役についている息子のもとに父親が訪ねてくる。
久しぶりに会う親子の二人きりの時間・・町を歩きながら、食事をしながら、映画を見ながら・・親子の会話は時にはぎこちなく、時には笑いあい、そして喧嘩し、また歩み寄って続いてゆく・・
というと・・なんだか思い出すのは・・会話の映画(?)「恋人までの距離」
あ、でも、こちらの方が先ですね。
この映画もこの親子ふたりの会話をず〜〜っと見せてゆきます。
でも「恋人達〜」が意気投合し、お互いに同じものを感じながらどんどん会話が続いてゆくのとは違って・・こちらは親子。

これまでちゃんと向き合って話をしたことが無い・・。
母親とは話しても、仕事の忙しい父親、ましてや、少し強引な父を尊敬はしながらも避けてきた息子。「話をしよう、話を」という父親になにをどうしたらいいのか・・と戸惑い気味の息子。自分の知らない息子の姿に困惑する父親・・
会話の中の・・このなんともいえない・・間・・がいいんです。

父を演じるのはマルチェロ・マストロヤンニ、息子はマッシモ・トロイージ(「イル・ポスティーノ」は素晴らしかったですね!!彼の元気な頃の姿が見れて本当に嬉しかった!!)
ふたりの表情、素晴らしいですよね〜。
息子の恋人に「息子のセックスはどうか?」なんてことを聞いちゃう時のマルチェロの表情を見て!(笑)
思い出話を語る父親の髪、おでこ、皺を見つめる息子マッシモの表情もなんともいえませんよ〜。

レストラン、カフェ、映画館、恋人の部屋、そして息子が常連として通っているBAR。そんなに賑やかじゃない、港町の風景がこの映画の雰囲気にぴったりです。
BARがまた!!なんだかとっても暖かい灯りを灯してて。
その中で、息子がとても生き生きとしていて。
自分の用意した家、与えようとした車を必要としない、自分の居場所を見つけている息子の姿って・・親としたら・・喜ぶことなんだけど・・やっぱり寂しさも感じるんじゃないかな。
どちらの視点で見るかでまたいろいろ思うことが変わってくると思うんだけど・・私はちょうど年齢からすると二人の中間くらいなんですよね。でも一応親でもあるし・・でも自分の母親と自分の会話・・なんてものも思ったりして。
両方・いろいろ考えちゃいました。

ちょっとした言葉にお互いが隠していたものが見えたり、いわずにいたことを爆発させたり。最後の最後まで、まぁるくまとめようとしていない・・そういうところがとっても良かった。
「ごめんよ」「いや、こっちこそ」なんて言わない(笑)
でも向かい合った二人の表情を見て。ちらちらと父を見る息子の顔を見て。(素晴らしいですよ!!)エンディング出ていても、ずっと魅入ってしまいました。

うん、またいいものを見たなあ・・しみじみ・・
あ、二人が遊園地の乗り物に乗るシーンがあるんですけど・・父親の乗った小人(?)がくるくるくるくる回るのが可愛かったです(笑)
その回っている間、ず〜っと父親は話していたんですけど。

原題は「CHE ORA E?」今何時?っていう意味です。
この言葉・・とっても効果的に使われていましたね。離れようとしていく・・親子を繋ぎとめて。
音楽も雰囲気にぴったりでした。



2007年03月29日(木) 「パリ空港の人々」

1993年フランス 監督 フィリップ・リオレ
キャスト ジャン・ロシュフォール ティッキー・オルガド マリサ・パレデス
ラウラ・デル・ソル

搭乗券以外の所持品をすべて盗まれてしまった一人の男アルチェロ。降り立ったフランスの空港でわけを話すが、年末であるということも災いしてどうにもならず、夜の空港に足止めに。
長いすで眠れない夜を過ごす男に声をかけたのは一人の少年。少年に連れられてトランジットゾーンを訪ねた男は、何ヶ月、何年も・・そこで暮らす人々と出会う・・

「ターミナル」以前にこういう映画があったとは!!知りませんでした。

夜の空港。入国管理の列に並ぶ人々の足・・さまざまな靴・・その中に・・なぜか白い靴下で歩く男が・・・
この冒頭のシーン、面白いですね。ここでまず引き込まれます。
彼がわけを話し始めるシーンでも、2つの国籍のこと、住所のこと、そして妻の国籍!!入管の役員と彼のやりとりが可笑しくて思わずくくっ・・と笑ってしまう。
しかし・・彼アルチェロにとっては笑い事なんかじゃないわけですよね。
融通のきかない役員に「そこの長いすで待ってるように」(この長いす・・云々の台詞はあとでもいろいろ出てきてこれも上手い)といわれ、夜を過ごすけれども眠れない・・
そして出会ったトランジットゾーンの人々。不正入国、国籍剥奪・・さまざまな理由からそこに住まざるを得ない・・・男や女や少年や。彼らのキャラクターが・・また魅せるんですよね。
どこの国にも属せない、どこでもない空間に住む彼らの、諦め、希望、強がり・・絶望・・そんな表情を私達はアルチェロと一緒に見ながら・・なんともいえない気持ちになってくるのでした。

明日強制帰国させられるという少年に夜のパリを見せに行くシーン。大晦日のパリの夜景・・・見守る・・エッフェル塔。
バスの窓から夜景を見つめる少年の瞳に思わずもらい泣きしてしまいました。
新しい年を迎えた女性に「冥王星の今年、きっといいことがある」この優しい台詞も嬉しい。

真っ赤なプレゼントの箱を抱え、黄色い長靴を履いて空港をゆく姿の可笑しさ。
行き違いになる奥さんとのシーンや逃亡劇の滑稽さと、どうすることも出来ないものを知った時に胸に湧き上がる思い・・・

最後まで・・いろんな思いが残る(ハリウッド映画なら、きっと最後にあの正体不明の男に何か言葉を話させるんじゃないだろうか)映画でした。
あれから彼らはどうなったんだろうか・・いや、これからどうするんだろうか・・。黒板の電話番号を見つめる女性の瞳に見えたものは?
そして、アルチェロと少年は・・・
こんな風に・・映画が終わっても・・そこで全てが終わるんじゃない・・。思いが漂う・・映画感が好きなんです。
ここに登場した人々のこれからに思いを馳せる・・余韻の漂う、映画でした。

検索したら結構有名みたいでしたけど「ターミナル」よりは地味かな・・と思い、地味映画推進委員会お薦めの映画に挙げさせていただきました。
「ターミナル」も良かったけど、個人的にはこちらの方により惹かれます。
ジャン・ロシュフォールの皺も魅力的(笑)

それにしても・・あのうさぎ!!本当にフランスの空港の滑走路は穴だらけ!?なの〜?
トランジットゾーンの人々の朝食のシーンも印象的でした。あ、あの奥さんが泊まったホテルのカフェオレプラスクロワッサンパック入りも(笑)奥さんはと〜っても恐くて怒りっぽくって・・と言うキャラでしたけど・・あのカモを膝に乗せてる姿が可愛くて可笑しくて・・。



2007年03月25日(日) 「ブルーベルベット」

1986年アメリカ 監督デヴィット・リンチ
キャスト カイル・マクラクラン イザベラ・ロッセリーニ デニス・ホッパー
ローラ・ダニー

まわるわ〜、この曲「ブルーベルベット」
鑑賞してからもう3日ほど経つのに、このなんともいえないムードをたたえた曲がまだ頭の中から離れません。
ボビー・ビントンの「ブルーベルベット」1960年代前半のヒット曲。この曲から監督が連想し、脚本を書いた・・というのですから・・・まずこの歌有りき!!なんでしょうね。

大学生のジェフリーは、倒れた父親を見舞った帰り道、野原で切り落とされた人間の片耳を見つけた・・
知り合いの警官にその耳を届けたジェフリーだが、警官の娘サンディから耳についてのある情報を聞いてしまい、好奇心を押さえきれずに・・謎の中に飛び込んでしまう・・・

なんでしょうね〜、この独特の感覚。
日常と非日常、見てはいけない世界・・光と闇。
あの片耳のアップになって・・その耳の穴の中・・・見てはいけない世界の中に連れていかれてしまうような・・そんな感覚でしたね。
主人公ジェフリーのあまりの好奇心ぶりに・・「ダメ、ダメ・・やめときなよ〜〜」と心で呟きつつ・・でもしだいに現れる、あまりにエキセントリックな人々や、暴力的な世界に・・・いつのまにかくらくらしながらも目が離せなくなってしまうんですね。

青い空、白いフェンスに赤い薔薇が咲く・・冒頭は、まるで絵画のような(それも写実的じゃない、どこか不思議に強烈な)シーンから始まるこの映画、色がとても印象的でしたよ。監督の美術センスでしょうか・・
主人公ジェフリーが訪ねる歌手ドロシーのアパートの階段は、底のない闇のように暗く。そこに鮮やかに、ドロシーのブルー(ベルベット)のドレスや、赤い衣装が浮かび上がる。反対にサンディの衣装は、甘く優しい色合い。
堅実で明るい日常(サンディ)と、刺激的で、危険な、でもほおってはおけない魅力をもった非日常(ドロシー)。ジェフリーはふたつの世界を行き来するわけですね・・アパートの暗い、暗い階段はまるで非日常に通じる・・道のようです。
ドロシーを演じるイザベラ・ロッセリーニの、悲しい、崩れたような魅力。まぶたの上にしっかりと塗られたブルーのアイシャドウが強烈です。
サンディは、ローラ・ダーン。悪く言うと洗練されてない、野暮ったい無垢さ。清潔でしっかりとした彼女の容姿は、この役にぴったりでしたよね。(実は彼女を見ると「ジュラシック・パーク」の時も思ったんだけど・・テニスのグラフ選手を思い出す私・・笑)
ドロシーに暴力をふるうフランク役はデニス・ホッパー。いっちゃってる演技は申し分なし・・の怪しさでしたね。
ジェフリーのカイル・マクラクラン!懐かしい〜!!線の細い、硬質な美しさ。そんな彼がサンディの前で、裸のドロシーを支えざるを得ない・・ラスト近くのシーン・・あのシーンは良かったですよね。

死体の謎や、ドロシーの監禁された息子・・いろいろな謎は、はっきりとは解明されないままなので・・ん?結局誰がどうして・・・といろいろと思いは残りますが、きっと謎を解明する映画ではないんだろうなあ・・って思いました。
見ている間は、結構腹も立ちながら(警官に任しとかんかい!!とか、無茶しすぎ!!とか)見た映画でしたが、これが見終わったら、なんだか不思議に魅力を感じてしまうのは何故なんでしょう?これがリンチマジック?(彼の映画は2本しか見ていないので言えませんが・・)
だってね・・まさかああいうラストシーンになるとは・・思いませんでしたよ。
耳の穴から出て、日常に戻ってきた?

特典映像の中で「いい映画というのは、見るたびに新しい発見があって、何度見ても飽きないもの」と監督は語っていました。
なるほど〜、たしかに・・クセになる魅力を秘めた映画でした。

次はこの監督のほかの作品をぜひ観てみたいな・・そう思いました。



2007年03月23日(金) 「死の罠」

1982年アメリカ 監督 シドニー・ルメット
キャスト マイケル・ケイン クリストファー・リーヴ ダイアン・キャノン アイリーン・ワース ヘンリー・ジョーンズ ジョー・シルヴァー

もともとは、アイラ・レヴィン原作による劇を映画化した作品です。
映画でも劇作家シドニーの(というよりお金持ちの妻の)屋敷の中がほとんど、その舞台。
演じる俳優さんたちの演技も、時にとてもオーバーアクションであったり、その声の張り具合なんて・・舞台っぽい感じでしたね。

まず、その舞台になってるシドニーの屋敷なんですが!!これがもう!!素晴らしく魅力的でしたね。豪華な山小屋風?大きな暖炉(物を燃やすのにぴったりな)ソファーにはキルト!そして壁にかけられたたくさんの(劇の)小道具は、木の壁にぴったり。
2階のベッドルーム、こちらはちょっと可愛い感じ・・で。

そんな完璧な舞台で繰り広げられる、どんでん返しの連続。演じる俳優さんたちの演技も見事で目が離せないですよ。
落ち目の劇作家シドニー(マイケル・ケイン)に送られてきた教え子(クリストファー・リーブ)の脚本、その素晴らしい出来に彼は、どうしてもその台本を自分のものにしたくなって・・・

まず面白いシーンだなあ・・って思ったのは、シドニーがクリフを自宅に招待する電話のシーン。電話しながらぐるぐる歩き回るシドニーに、それを見守る妻マイラの表情。くるくる・・くるくる・・ちょっと酔いそうになっちゃいました(笑)これって、劇だとこういう映し方はできないよね、映画ならでは・・のシーンでしょうか。

訪ねてきたクリフと、シドニーのやりとり・・なんだか緊迫したものが・・と思うと、そこにマイラが入ってきて・・3人の表情と、やりとりが・・実に上手いですよね。
そしてそこからどんどん恐さがスピードアップしてきて、シドニーが怯えていやがるマイラを窓の傍にひきづって行くシーンには・・こ、、こわい〜〜。

そこからもまだまだ驚きの連続でストーリーは、二転三転していきます。
これはいったいどうなってゆくのか・・最後までドキドキの連続でした。
マイケル・ケインの怪しさ、ダイアン・キャノンの可愛らしさ、そしてクリストファー・リーブ!!スーパーマンの彼とは全く違う、とても新鮮で驚くような彼が見れて嬉しい。
イケナイ表情もこんなに魅力的だったんですねぇ。Vネックのセーターにブーツ、美しかったですよ。
キスシーンもありましたしね(誰の・・とはあえて言わずにおこう〜っと)

霊媒師の女性も、とっても面白かったのですが・・ただちょっと残念だったのは、最後がね・・え?って感じで。
少し物足りなかったなぁ・・あと一ひねり・・願うのは贅沢でしょうか。



2007年03月16日(金) 「コレクター」

1965年アメリカ 監督ウィリアム・ワイラー
キャスト テレンス・スタンプ サマンサ・エッガー モーリス・バリモア

かのテレンス・スタンプさま(なぜか、さまを付けたくなる)27歳の時の作品。
蝶の蒐集が趣味という、地味で暗い銀行員の青年が、当たったくじの賞金で美しい女学生を誘拐、監禁するというお話なんですが。

こうやって書いてしまうと全然このお話の本当の怖さが伝わってこないなあ。怖いんです・・なんていうか・・じわじわ・・深々、怖い。
その怖さは、暴力をふるわれるような怖さじゃない、ひどいことをされる(いえ、無理やり監禁される・・っていうこと自体がもうひどいことではあるんですが)肉体的にひどいことをされる・・ていう怖さじゃないんですね。

どこかの田舎のとっても古めかしい、味のあるおうちの地下室を(彼が勝手に彼女の好みだろうと考えた風に)改造して彼女の部屋を作り、彼女に似合うであろうと思う服を揃え、彼女をお迎えする。食事も運び、彼女に無理やり触れることもしない・・彼の望みは「ただ彼女がここにいること」「彼と話をし、彼という人物を知って欲しいということ」
スーツを着て髪を撫で付け、優しく静かな声でそう語る彼の怖さ。自分のしていることが彼女にとってどんなに恐ろしいことか、全く感じていないであろう・・怖さ。
彼という人物の物の見方の狭さは、本や絵についての二人の会話に後にはっきりと現れてくる。彼女の好きなサリンジャーの「ライ麦畑でつかまえて」やピカソの絵に対する彼の評価、見方。他のものの意見を認めようとせず、癇癪を起こす彼の姿は、普段のジェントルマン風な物腰の影に潜んでいる彼という人物の幼さ・・を見せてくれて怖い。
こういうシーンを少しづつ見せながら、だんだんと彼が彼女を解放する気持ちがない・・っていうことを気付かせてゆく・・っていうのは上手いですよね〜。

隣の男性が挨拶しにやってきた時に彼女が(救いを求めるために)お風呂の蛇口をいっぱいに開いて水を溢れさすシーンのドキドキ感(階段をゆっくり流れてゆく水!!)や
両親に当てた手紙の中に秘密の紙切れを入れようとするくだりのやりとり。
雨の中で・・スコップが映るあのシーンも。
なんとも緊張感に溢れるシーンがいっぱいで全然飽きさせない、その展開も見事です。

蝶のコレクションを彼女に見せるシーンも印象的でした。「私も、あなたのコレクションなのね」「あなたが愛してるのは死なの?」
そう問い掛ける彼女の姿に思い出すのは、冒頭彼女が自由に街を歩いていた姿。
彼女のあとをつける彼の様子は、まるでひらひらと自由に飛ぶ蝶を追いかける・・ようでした。あの時の彼女のなんて生き生きしていたことか。

ただ・・こう書いているとどんなに彼が残酷でひどい男か・・と思いつつ見ていたかのようなのですが・・これが・・実際はそうでもないのです(汗)
なんででしょうね、あの瞳、あの暗い。時々ものすごく冷たい目線を見せて一気に部屋の温度を下げる彼ですが(苦笑)それなのについついどこか同情の気持ちが湧いてきたりするんですよねぇ。
あの画学生の彼女が書いた、彼の姿にも孤独で寂しい姿が見えて・・つい・・ね、ふらりと気持ちが傾いちゃったりもするんですよね(苦笑)
それなのにねぇ・・それなのに、そんな観客の気持ちをまた裏切ってくれる、このラスト・・

愛して欲しい・・と願いながら、でも人の気持ちを全く信じられない、受け容れられない、男の哀れさ。最後まで自分を援護し人のせいにする身勝手さ。
果たして自分の犯した罪の重さを自覚する日が彼に来るのだろうか・・そうは思えないのが一番怖い。



2007年03月13日(火) 「どろろ」

2007年日本 監督塩田明彦
キャスト 妻夫木聡 柴咲コウ 中井貴一 瑛太 原田美枝子 中村嘉葎雄 原田芳雄 杉本哲太 土屋アンナ

手塚治虫の原作漫画「どろろ」は、昔むかし読んだのです・・だから細かいところとかは覚えていないところもあったのですけど。
でも、あの魔物に体の48箇所を奪われて・・というこの設定。これには読んだ当時もものすごくビックリしたのを覚えています。

こういうお話を見ると、一番感じるのはこの世の中で一番怖いのはやっぱり「人間」だなぁ〜〜ってこと。
戦国の時代、実際の史実でも親が子どもを殺したり、子どもが親を討ったり・・
我が子の体を妖怪に売り渡す・・親がいても不思議はないのかもしれません。

マイマイオンバという妖怪のエピソードでも、我が子を捨てる村人たちのお話がありました。どうしようもなかった・・といいながら我が子を捨てて自分達が生き延び、そして助けてくれた百鬼丸たちに「妖怪だ〜」と石を投げる姿。
なんだか悲しい・・・そんな人々の荒れ果てた心って・・妖怪よりもはるかに怖い。

妻夫木君の百鬼丸は、原作よりも柔かい印象でした。この悲しい時代にあんなにひどい運命を背負いながらも、なんだか彼の周りにはとてもピュアな雰囲気が漂っていましたよね。
それはきっと彼を育てた寿海の愛情なのかな。フランケンシュタインの実験のような・・装置で誕生した百鬼丸ですけど、でもあの育てのシーンにはとっても愛情が感じられてほろり・・としてしまいましたよ。
そしてどろろ・・です。どろろを大人の設定にする!!ってかなり勇気がいったと思います。でも私は逆に映画ではこれ良かったんじゃないかと思いましたよ。映画の絵的には、こちらの方が映えると思うし、二人の関係にちょっと危うさが見えたりもしてくるのかなあ・・ってドキドキしたし。
でも柴咲さんは大変だっただろうなあ・・って思いますよね〜、あのたくましいアクション!!くるくる変わる表情の可笑しさ。

ニュージーランドなんですね、荒れた荒野はとても雰囲気ありました。
次々と登場する妖怪たち・・ここはアクションの見せ場だったのでしょうね・・でももっとエピソードとかが見たかったなあ。
ドラマだったら、ひとつひとつの妖怪にあるエピソードも見れるんでしょうけど・・。それにしても・・どの妖怪たちもそんなに恐ろしい姿じゃなかったね・・日本の妖怪って不気味なんだけどどこか不思議にかわいい・・(!?)
あと細かい設定とかで・・もうちょっと凝って欲しかったなあ・・って思うシーンもいろいろありました。最初のお寺の場面で切られたネズミが喋るシーンでも・・おわ〜〜・・と思うほどちゃちい・・ネズミだったから(汗)冒頭部分だけにちょっとコケそうになったり(苦笑)

取り戻したのは。24個の部分。(しかし・・心臓も無かったのね・・寿海・・すごいなあ・・)続編も決定とか。
人間の体を取り戻しつつ・・でも、ピュアなハートは失わないでほしいな・・と願わずにはいられません。どろろとの関係がこれからどんな風に変化していくのかも、見所だよね。




2007年03月11日(日) 「サイレント・ランニング」

1972年アメリカ 監督 ダグラス・トランブル
キャスト ブルース・ダーン クリフ・ポッツ ロン・リフリン ジェッセ・ヴィント

遊びに行ってる映画の管理人さんから教えてもらったSF作品なんです。息子と二人、古いSFが大好きなので早速借りてきました。(嬉しいことにDVDが出てます)

地球上の植物が絶滅した20世紀末、遠い宇宙空間に停泊する宇宙輸送船のドームの中で「植物を育て森を作る」緑化計画が進められていました。
しかし、ある日突然理由も知らされずに緑化計画は中止となり、ドームには破壊命令が出されます。
乗組員はみな帰還命令に喜びますが、ただひとりヴァレー・フォージ号の乗組員ローウェルだけは納得できません。8年ものあいだ、植物や動物に心を砕き、森を愛しえてきた彼は怒りのあまり命令にそむいてしまうのでした・・・

冒頭の森のシーン、鮮やかな花たち、動物達の姿・・まさかそこが宇宙の、ドームの中の世界とは・・思いがけない世界でした。
そしてまるで修道僧のような衣装をつけた主人公、とても優しくて穏やか〜に登場したのですけど。
これがまあ!!ビックリでしたね、森や植物たちを愛するあまり・・あそこまでしてしまうとは。どうにか他の方法は無かったのか・・他の乗組員が理解してくれないからとはいえ・・・。
それからの行いや言動も、なんともう〜〜ん・・とうなってしまうような(苦笑)
ここまで好感度の低い主人公も珍しい・・・かも。

突込みどころもかなりあります。
8年も研究してきて、植物達が元気をなくした理由が・・あれだとは・・(汗)おいおい〜〜!!(苦笑)
でももしかしたらあれだけではなかったのでは?などと勘ぐってもみましたよ。逃亡したあと一人(とロボットたち)で孤独に暮らしてきた主人公の様子を見ていたらなんだかこれまでみたいに森を愛する情熱が薄れてきているのでは?って思ってしまいました。

そんな主人公に対して・・この映画で私達の愛情を一心に受けるのはなんといっても3体のドローン(四角い、背の低いロボット・・をここではこう呼んでいます)でしょう。
一生懸命に船の修理をしたり、勝手な主人公にいろいろ命令されても頑張るドローンたちのけなげさ!!
主人公が3体につけた名前が「ヒューイ・デューイ・ルーイ」。でもドナルドを困らせるあの3人の甥っ子アヒルとは違って彼らはとっても働き者なんですよ〜。
ロボットなのにペタペタと歩く姿もなんとも愛らしい(もしかしてあの歩き方がアヒルっぽいってことで・・あの名前?笑)背中には「1」とか「2」とか背番号もついてたり。
そんな彼らが事故にあった仲間の残った足を悲しげに見つめる姿・・切ないです。

しかし・・そんな主人公ですけど・・でもやっぱり宇宙で一人残される(たとえ自分で選んだことでも)孤独感っていうのはものすごい大きなものがあったと思います。ドローンたちにポーカーを教えてみたり、他の乗組員との思い出に浸ったり・・。でもやっぱり最後まで・・勝手・・でしたね(泣)

すっかりドローンたちのファンになってしまった私ですが、この作品に流れる、独特のムード・・これも好きです。詩情がある・・っていうんでしょうか。
特にラストシーンの美しさ、悲しさ・・・
(このラストシーンはちょっとラピュタを思い出させます)

そして胸を締め付けるのは・・あの如雨露の愛らしい柄。
なんとも泣けます・・




2007年03月08日(木) 「パフューム ある人殺しの物語」

2006年ドイツ・フランス・スペイン 監督トム・ティクヴァ
キャスト ベン・ウィショー レイチェル・ハード=ウッド アラン・リックマン
ダスティン・ホフマン カロリーネ・ヘルフルト
ナレーション ジョン・ハート

原作を読んで以来、楽しみにしていた作品です。
あの、香りの世界がどんな風に映像化されているのか・とても難しいと思うんですよね。
でも、見事でしたね。パリの街のさまざまな匂い。グルヌイユが生まれた市場の、あの生臭い腐ったような匂いや、人々の間を縫って歩きながら彼が嗅ぐたくさんの匂いに・・こちらまで酔ってくるようでした。
初めて嗅いだ少女のかぐわしい香りに引き寄せられるシーンには、ドキドキしましたね。そして・・あの嗅ぎ方・・香りを逃したくない・・とばかりに手のひらで・・。可哀想なんだけど・・あまりに少女が眠っているかのように綺麗で・・ただただ見つめてしまいました・・

グルヌイユの師匠には、ダスティン・ホフマンの登場です。香水調合師、白塗りに思わず笑ってしまったわ。あのカツラも。
香水をハンカチに降りかけてさ〜〜っと振るんですよ、そして嗅ぐあのしぐさ・・その時、空中に舞う香りを思わず見ているこちらまで嗅いでしまいそうになる・・ああいうシーンは映像ならでは・・の面白さですよね。
グルヌイユが作った香水を嗅いだ時に広がる、甘い花と美女のキスの世界(笑)や
真っ赤なばらを山ほど蒸留するシーンの美しさ、鮮やかさとか。

ちょっと先のシーンになりますが、映像的にとても良かったと思うシーンは他にもありました。グラースの街(綺麗でしたね、ここの様子も。一面のラベンダーや・・)のリシの屋敷でのローラの誕生日。迷路のような生垣の中でかくれんぼをして遊ぶシーンの怖さ。アラン・リックマンのお父さんが(良かったですね!さすがアラン!)彼女を呼ぶんですよ「ローラ」って。あそこは本当にドキドキしました、原作にないシーンだけど、ああいうのは映画ならでは・・です。

逆に映画ではやっぱり難しいなあ・・って思うのは、ほとんど何も気持ちを語らない主人公の・・でもあまりにも強烈なその個性を(原作では文章で心中を表すことができるけど)ナレーションだけで表す・・っていうのは大変だわ〜ってこと。
もちろん、ベン・ウィショーのあの瞳は・・とても印象的でしたけど!そして、あの鼻、猫を思わず肢体。
だから・・でしょうか、原作の彼とはキャラクターを少し変えていたように思うのですけど。原作では、自分のいるこの現実の世界にどこか憎しみを抱き、あくまで香りの世界に生き、匂わない自分がまとう匂いを作るために罪を犯すグルヌイユ・・って感じたんだけど、でも映画の彼はどことなく・・何か他のものも・・たとえば・・自分の孤独を哀しむような・・切ない瞳が揺れていたように思えました。
あの、処刑場で果物がこぼれ落ちた時に彼の脳裏に甦った記憶、あのシーンがとても印象的でした。ローラもとても美しくてあどけなくてよかったのですけど、あのプラムの少女、忘れられないですよね。あの時グルヌイユの目から落ちた物・・ビックリしました。あの一滴には・・もしかしたら香りがあったのかもしれません・・。

ただ最後の残り香・・は、原作ほどの強烈なものがなかったような気がしました。
処刑場のシーン、愛をかわす人々の姿が圧巻すぎて、グルヌイユの天使マジック(?)が・・こちらに届かなかった・・。
そして、彼が最後に帰りついた場所での、あの人々の狂乱!あのシーンは原作を読んでいない・・とちょっと分かりにくいのでは?っと思いました。

香りの溢れ返る世界に、ただひとり匂いを持たずに生まれた彼が、身にまとう完璧な香りを作り上げた時。全ては・・そこで終わってしまったんでしょうか。
彼にとって生きる意味、生きる価値は、もうこの世界には見出せなかったのでしょうか・・・

原作を読んだ後もそうでしたが、映画を見た後も、なんだか自分のまわりの匂いを思わずクンクン・・って嗅いでしまいそうですよね。
鼻には自信がありますよ、アレルギーも花粉症もないですから。鼻づまりもめったに経験しないし・・!
でも香りって・・いい香り、嫌な香り・・っていうのもありますけど、何より肝心のは、適度な香り・・ほのかな・・どこかから漂ってくる・っていうくらいのが一番いいな・・って思いません?薔薇の香りでもむせ返るようだと・・苦しい(苦笑)つけすぎの香水も(笑)
ちなみに、私がこの映画を見た時は・・強烈なカレーポップコーンが匂ってきて・・・・「パフューム」の香りの思い出が・・カレーの香りとともにあるとは・・(苦笑)



2007年03月02日(金) 「レディ・イン・ザ・ウォーター」

2006年アメリカ 監督 M.ナイト・シャマラン
キャスト ボール・ジアマッティ ブライス・ダラス・ハワード フレディ・ロドリゲス ボブ・バラバン ジェフリー・ライト

現代のおとぎ話。
シャマラン監督がお子さんたちにベッドサイド・ストーリーとして語っていたお話を元に作ったものだとか。

う〜ん・・なんていうか、すごい。どうすごいって、現代のフィラデルフィアのアパートを舞台に水の精と守り人、そしてあんな猛獣まで登場させて。
大真面目に、あくまで真剣に、愛を語るおとぎ話(どんな形であれやっぱり監督の作品の底に流れるのは「愛」だよね)を撮るなんて・・この監督さんでないと・・絶対創らないと思う。
アパートの住人達があまりに普通に「彼女」を信じすぎる・・とかお話が強引すぎ・・とか。いろんなところの感想でかなりの酷評をいただいているようですが、そして見事にラジー賞を受賞しているようですが。
なんの、なんの!!
私この作品を観てこれはもうこの監督についていこうと思いましたもの!!

だって、おとぎ話の登場人物たちがお姫様を信じなくて・・どうしてお話が進むでしょう。
彼女は間違いなく水の精、何を疑うことがあるでしょうか。
ましてや、あのブライス・ダラス・ハワードの神秘的な容姿ですよ!!あんな瞳で見つめられたら・・

そして、ボール・ジアマッティ。彼がとても良かったですね。
彼女を救うための奮闘振り・・ちょっと可笑しくてほろりときて。韓国人親子とのやりとり・・あのお母さん・・って(笑)
救うことが出来なかった悲しみを心にずっと秘めてきた彼の・・あの哀しみに触れたとき、彼の優しさもじわ〜〜っと沁みてきましたね。
ストーリーを抱いて癒すシーンでのあの言葉に・・涙が溢れました。

彼女をブルーワールドに返すために、守ってくれる役割を持つ人々を探すのですが、妨害があって大変なことになったり(あの意地悪?役の方も味がありましたけど・・まさかあんなことに・・!)でもだんだんと人々の本当の役割がわかってきたり。
そのたびにドキドキしたり、そしてなぜかやたら涙ぐんだりしてしまいましたよ。今回もすっかりシャマランワールドにはまったようです。

「シックスセンス」「ヴィレッジ」に続いてFavoriteに挙げました。これでもう、シャマラン監督作品好き!に決定でしょうか(笑)良ければそちらも読んでいただけると嬉しいです。

お約束の監督出演、今回はますますもって、堂々の出演!いい役です。
監督、痩せたんじゃないでしょうか、素敵になったように思うんですけど(笑)
あの妹さん役の方も良くて、いい兄妹だなあ・・って。


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