2010年07月31日(土)  自由の無。
 
大変だ大変だ忙しい忙しいと言っている者に手を差し延べようとすると別段手伝いを欲しがっている風でもなく、じゃあ何か他のことを手伝おうかと訊ねるとその言葉が伝わったのか伝わってないのか「大変だ大変だ忙しい忙しい」と繰り返している。じゃあ何かあったら呼んでと言うとやっぱり「大変だ大変だ忙しい忙しい」と気を引こうとする。
 
こういう援助要請を繰り返す人は常に助けを求めているようで実は全く求めていないので注意が必要である。このヘルプは感情が偽装されており、裏を返すと我々に対する敵意や非難だったりするのでおっかない。アドバイスなんてもとから求めていないし、されたとしても拒絶する。
 
この非常に行為的な防衛機制は「援助の拒絶を伴う愁訴」といって仕事中の私はだいたいこんな感じ。
 
2010年07月30日(金)  侵食する巻き爪。
 
看護師を生業としているので平素から衛生面には気を付けなければいけないのだけど足の爪を切るのが面倒臭い。
 
ふと足の爪を見ると、あ、伸びてる。といった直感を信じなければいけないのだけど、いやいやいやまだそんな伸びてない。まだこれより伸びてた時あったもんね。と防衛機制の否定の水準にあたる合理化を発動させ精神の安定を保とうとするどころか、つうか短くなんねぇかなと重度の心象歪曲である自閉的空想を持ち出し結果として心が荒む。
 
そういった心的な力と力の葛藤がくりひろげるダイナミズムを十数年繰り返しているので一つの対応策として、爪を切るのが面倒臭いのではない。爪切りを取りに行くのが面倒臭いのだという仮説のもと、パソコン横の棚に爪切りを配置させた。
 
だいたい家でパソコン前に座っているということは暇な時が多いため、余暇と爪切りの相性は良いに違いない。よし、足の爪が伸びている。ちょうど暇だし爪でも切ろうとパソコン横の棚に手を伸ばすと爪切りがなくなっているのは、妻は「使った物は元の場所へ」概念がとても強い人なのでいつもの浴室近くの収納棚に戻したという。
 
私は足の爪を切るのが面倒臭いから円滑に爪切りを行う一環としてパソコン横の棚に爪切りを置いていたんだけどという理由は全く人間的に正当なものではないので結果敗北。やがて巻き爪となり私の心に突き刺さる。
 
2010年07月29日(木)  私だけの十字架。
 
部屋の片付けをしていたら、上京した年に購入したグッチの十字架のネックレスが出てきて懐かしいがどす黒い。シルバーは身に着けていると比較的黒ずみにくいが外して長時間放置すると黒ずんでくるそうだが、ここまでよく黒ずんだなというくらいどす黒い。以前ジュエリーショップで購入したクロスである程度の汚れを落としてからクリーナー液につけて、歯ブラシで磨いたら新品の半年後くらいの姿になって身に着けてみたら期待していた懐かしさがこみあげてくるわけでもなく、しかしまあこうやって久々にピカピカにしたんだ。しばらく着用するとしよう。
 
これは上京したはいいが誰一人知り合いがおらず寂しいことは寂しいが、別に思うほど寂しくはない。でも上京して誰一人知り合いがいないという部分は寂しさポイントが高いと思う。よって寂しい時は誰かにすがりたい。しかしすがる相手がいない。そういう人は往々に宗教に走ると思うけれど、別に意外と寂しくないし、宗教に何の興味がない。よって間を取って十字架をかけよう。神への冒涜だと思う奴はクリスマスは実家で正座して煎餅食ってろ。俺は上京してきた自分を演出するためにグッチの十字架のネックレスを着用し、先述したエピソードを寂しい男バージョンに変更してお目当ての女性に説明してこます。こうした姑息さによってこんなにどす黒くなってしもうたのだ。
 
2010年07月28日(水)  緊急事態です!!!
 
近所の牛丼チェーン店の入口に「緊急防犯取締り中」と書いたステッカーが貼ってあって、色褪せてステッカーの左上から剥がれかかっているのだけど「緊急」ということは即座に対応しなければいけないことであって、即座という意味が表しているように時間が限定されている。よって「緊急防犯取締り中」とはある一定の期間全力で防犯取締りを行っているという意味であり、色褪せてステッカーが剥がれかかっているようではもはや緊急ではなく、それでも防犯取締りをしたいのであれば「常時防犯取締り中」とでも書けばいいのだろうけど、常時という時間の流れを感じさせないものにはマンネリというものが隠れていて、人は手法が型にはまると独創性や新鮮味を感じなくなるので、防犯取締り中って毎日ステッカーが貼ってるけど実はやってないんだろと悪い人達は思うに違いなく、そこで「緊急」という言葉に入れ替えるとなぜだか切迫感を感じ、やっべ悪いことできねぇやと思わせようとしているのだけど文字が色褪せてステッカーが剥がれかかっているようでは何の意味もない。この場所に駐車したら罰金100万円いただきますという注意書きに匹敵する現実感のなさ。
 
世の中が灰色に見える人は一つ一つの行為の頭に「緊急」をつけるといい。全ての衝動は生への原動力となりうる。緊急飯。緊急歯磨き。緊急風呂。緊急睡眠。
 
2010年07月27日(火)  蓄えるという意味でプール。
 
御ハナと二人で郊外のプールに。流れるプールやウォータースライダーなどを見て、うひょ! プールだ! イヤッホウ! とテンションが上がったのは本当に数十年振りで、若い頃スイミングクラブに通っていたことはあるのだが、こういうエンターテイメント色満載ビバ夏休みという感じのプールに最後に行ったのはおそらく中学の頃が最後で、高校になると世の中を斜めから眺め始めるので俺は皆と同じ流れには乗らねぇと流れるプールにはわき目も触れず、高校後半から二十代前半までの大人の階段を登る過程で様々な恋愛を満喫するのだが、今度の休みプール行こうぜ! といったアクティブ感は持ち合わせておらず、今回流れるプールでイチャイチャしているカップルを見て思ったのだが、あのコ達は付き合って一体何ヶ月目、何年目くらいのテンションなんだろうか。私の人生に当てはめるといつくらいの時期なんだろうか。そして私はなぜ彼女とプールに行こうと考えもしなかったのだろうか。プール入らずに何をしていたのだろうか。セックスばっかりしておったのだろうか。よくわからん。全然思い出せん。しかしこのコ達はセックスもするのであろうが、この真夏日に流れるプールに流されるとはなんと健全な遊びなのであろうか。僕も若い頃プール行っときゃよかったな。と後悔の念に駆られるほどプールって楽しい。御ハナは人生初の巨大プールで大きな浮き輪にしがみつき、慣れてきた頃に浮き輪の上に寝そべったり腹這いになってアンパンマン! と叫んだりしてはしゃぎすぎると沈んでしまい一瞬にして地獄になるということをたった一度の失敗で理解して警戒心を忘れずに楽しんでいるこの姿勢は誰に似たのだろうか。
 
2010年07月26日(月)  悶絶ゾマー。
 
プレシェーブジェルを塗って電気カミソリで髭を剃って、アフターシェーブローションで仕上げる、と、今書いてて思ったのだが、アフターシェーブローションってやたら長音(ー)を使っていて恰好悪い。髭を剃るということは、髭を剃った後に何かの用があることが多く概ね急いでいる状況が多いにも関わらず、まあそんな焦んなよ。ほれ、アフタァーーシェーーブ、ルルォーーション(巻舌)と馬鹿にされているようだ。
 
しかし今日はそんなことを書きたかったのではなく、プレシェーブジェルもアフターシェーブローションも長年使い慣れてきた物があってコレじゃなきゃイヤ! コレなくなったらもうヒゲ剃んないカラ! と、憤慨するほど柔軟性の欠けた大人になりつつあるのだが、たった髭剃りで必要な二品だけで生産中止にならないようにならないようにと結構真面目に心から念じていたりするのだが、化粧水から乳液や口紅やファンデ、マスカラにプリマーなど使用するコスメの種類が幾何学的な数になる女性は私の数倍異常の苦悩を抱え日々悶絶しているに違いないとお察し申し上げ、さぞご心痛のことと拝察いたします。何とお慰めしてよいか言葉もございません。紺碧の空に一片の雲もなく暑さが日ごとに加わってまいりますので明日御ハナとプールに行きます。紫外線コンニチハ! アフタァーーシェーーブ、ルルォーーション!
 
2010年07月25日(日)  リトルアナル。
 
ヨシミさんは気が強いのか弱いのかわからないと看護師さんに言われて、確かに職場の私は如何なる窮地難局に立たされても暗礁の上でヘラヘラ笑っているのだが、こういうのは気が強いというのではなくただの馬鹿なのであって気の弱さは誰にだって負けない。だいたい人の心を看ることを生業とする者は人の気持ちを過剰に認識する気の弱さがないといかん。
 
これ銀行に振り込んできてねって妻から現金数十万が入った封筒を渡されてATMで封筒から取り出した現金を振り込んでATM横のゴミ箱に封筒を捨てる前に現金が残っているかもしれんと念のため封筒の中身を確かめて現金が入っていないことを確認したにも関わらず、さっきは見落としただけかもしれんともう一度封筒の中身を確認し、今度こそ自信を持って言える。絶対封筒の中には現金は残っていない。でもまあここで捨てるのも家で捨てるのも同じことだから持って帰ろうと、私のバッグの中は確実に現金が入っていないであろう折り畳まれた封筒で溢れているくらいの気が弱い人間です。
 
2010年07月24日(土)  女性社会職場管理職の難しさの骨頂。
 
「私水着買ったんです」と、部下が素っ頓狂な報告に来たのでそれはよかった。じゃあ脱いでご覧なさいと言うと、結構本気でセクハラで訴えますよと言うので、仕事中に水着買いましたって報告に来る方も来る方、喧嘩両成敗だ。本当にゴメンなさい訴訟やめてと謝罪し、じゃあ何かね。今度の休みに海にでも行くのかねと訊ねると、ダイエットするんですと言うので、水着買ってダイエットするってどういうことですかと訊ねると、本当にこれだから三十過ぎた男はどうしようもない。水着買ってダイエットするんじゃなくて、水着を買ったからダイエットするんですと力説するので、要するに恰好から入るってやつだね。しかし時既に遅し。物事には神様が決めた時期ってものがあってね、今からダイエット始めたらもう秋が訪れてしまう。だいたいキミはダイエットしなくてもそれなりに……ってまたセクハラ言われてしまうけど、それなりにそれなりだけどねと言うと悦に入った表情でそんなことないですとこういう一連の流れが女性社会職場管理職の難しさの骨頂。
 
2010年07月23日(金)  ハッピーカマンベール。
 
誕生日前日まで業務が荒れていて、こりゃあ真っ当なバースデーは迎えられないなあでも頑張る。と、悲愴感を漂わせながら事態の収束を図り、バースデー1時間前に全てが片付いたり目途がついたりして、ヌワーーッと声にならない声を発しながら全力で自転車をこいで家に帰り、妻も御ハナも寝ているのだけど寝室をちょこっと開けて「ただいま」と呟いて、フンヌーーッとやはり声にならない声で全力で風呂に入り、ビールを開けた瞬間に34回目のバースデーを迎え、今ここにある幸せをカマンベールチーズと一緒に噛み締めた。必死に働き、堅実に家庭を守っている。誰も言わないから自分で言うけど、僕は本当に毎日頑張っている。
 
2010年07月22日(木)  よそうと思った。
 
資源ゴミの日に、出産の内祝いに贈ったのであろう赤子の顔がラベルに印刷された酒瓶が捨ててあり、ゴミ捨て場に棄てられた姿を見てひでぇなと思ったけれど考えてみればひでぇなという思いは単なるエゴで、贈った相手が何をしようが構ったことではない。親というものは馬鹿なもので、こんな可愛い我が子の写真がラベルを飾っているお酒を空になったからといって棄てる者はあるまいと漠然的に考えているもので、私も漠然的に考えていたものだからゴミ捨て場を見て少なからずショックを受けた。今後よそうと思った。たまに昔の彼女たちは私と一緒にいる写真をどうしてるのだろうと思うことがあるけれどそれとこれとは関係ない話。
 
2010年07月21日(水)  曲解コンパクト。
 
就職説明会に参加したのだが、ブースに貼るポスターが小さくて目立たないけどおかしいな。準備した時は結構大きいように感じたんだけど。と、その日の夜に家族でハンバーグ屋に行き、私はハンバーグ&ステーキを食べたのだが、全国チェーンのさほど高くもないハンバーグ屋だったのでステーキといえども小さいものなのだが、このステーキを家の食卓で食べたら同じ大きさでも結構大きく見えるんだろうな。ブースに貼ったポスターだって小さい事務所で作ったから大きく見えたのであって要するに場所が変われば大きい物が小さく見えたり小さい物が大きく見えたり。しかし私は仕事の立場上大分偉い人なんだけれど家でも職場でも一様に小さく見えるのはどうしてだろう。大きくなりたいのではない。いつもただひたすら小さく収まろうと努めているのです。
 
2010年07月20日(火)  あそうすか。
 
「上の階のプリンターが調子悪いのでヨシミさんのパソコンの横にあるプリンターで出力してます」っつって別の部署の女性が度々プリントアウトした書類を取りにくるので、「プリンター調子悪いってのは嘘で実は私に会いに来てるんでしょう」とニヤニヤしながら言うと、「そんなことないわよ。ホントに調子が悪いんだから」とやり取りするって時は心に余裕がある時で、その後突然私の仕事が忙しくなり必死にパソコンに向かっていると、「ヨシミさんに会いに来ましたぁ」なんつって日頃あまり冗談を言わない先程の女性が訪れて心の余裕がないものだからパソコンから目を離さずに「あそうすか」と返事をして「なんなの!」と顔を真っ赤にして自らの部署に帰っていった女性の後姿を見届けていた看護師に「初めて地獄に堕ちることが確証している人を見た」と言われた。
 
2010年07月19日(月)  栄光への架け橋。
 
何度挑戦しても成功せず、そこで挫けるか再挑戦するか。人間の真価は失敗の場面にこそ求められる。我が家は歯磨き粉といえばクリアクリーンなのだが、新品のクリアクリーンに包まれているフィルムを開封した直後に歯を磨きたいので合理化の一環としてフィルムに包まれた状態のキャップを回して、そのひねられた力でもってフィルムが破れ開封されるのではないかという仮説の元、過去数十回も挑戦しているのだが毎回、これ以上ひねるとチューブが破損し内容物が飛び出してしまいますよクライシスを体験し挫折する。しかしこれ以上挑戦を続けてもいつの日か妻に見つかり横着すなと怒られてしまうリスクも秘めている。往々にして挑戦とは無謀であり果敢なものなのである。
 
2010年07月18日(日)  独自調査による。
 
深夜にヌーブラの通販番組が流れており、3名の女性が付け心地をグータンヌーボ形式で話をする形式で進み、深夜の通販番組に美女が登場しないということは世の摂理だと思うのだが今回も多分に漏れずテンション低めで眺めていたら、彼女達の付け心地満足度というものが円グラフで表示され、1人は98%、1人は96%、そして最後の1人は100%と、一体何の基準で満足度を測っているんだと呆然と憤慨していたら画面の端に「独自調査による」と書かれており、独自調査最強だと思った。俺はお前のことを何となく嫌いだ。独自調査による。ちょっと今日体調が悪くて仕事休みます。独自調査による。
 
2010年07月17日(土)  ホット・オン。
 
妻と御ハナが乗る飛行機の到着まで数十分時間があったので売店で御ハナの子供雑誌を購入し到着ロビーで数日振りの再会を果たし満面の笑みで先程購入した子供雑誌を差し出そうとしたところ妻が「これ私も買ったから返品してきて」と尋常な口調で申すので仕方ない。先程の売店に行きレシートを提示して返品したい旨を伝えたところ、若い女性店員がどういったご理由でと訊ねたため、いや、妻とね、だぶっちゃいまして。妻もね、先に買っちゃってたもんでとヘラヘラしながら申しましたら不貞腐れた表情で「それでは今回だけということで」と、小言を言われてから返品に応じてくれたんだけど納得いかねぇなぁと帰りの車内で妻に愚痴る。
 
そもそも「今回だけ」って何なんですか。じゃああれですかこの店は一生私の返品請求を受け付けてくれないんですか。私の顔覚えてて「あ、五ヶ月前の日曜日に返品請求した方ですね。申し訳ございません。あの時も申し上げたはずなんですが返品は当店ご利用一回のみとなっております」とでも言われるのかね。クーリングオフってのは全ての契約が100%できるわけじゃないって聞いたことはありますがね。それにしてもひどいじゃないですか。「今回だけということで」って単なる難癖じゃないですか。ああいう(返品に依る諸々の手続きが面倒臭い)という私的な感情を客にぶつけるもんじゃないと思いますがね。どう思いますかと、バックミラー越しに妻を確認すると長旅の疲労で就寝中。口を尖らせ小鼻を膨らませながら夜の首都高安全運転。
 
2010年07月16日(金)  エコ贔屓。
 
妻と御ハナが実家から帰ってくるので車で羽田へ向かうが夕暮れ首都高大渋滞。西日が照りつける首都高を最初からチャリで行った方が早かったんじゃないかっつうくらいの鈍走の最中、隣の車線のベンツの若い女性が車内で日傘を差しながら西日を凌いでいて驚愕。会社でも漫画でも見えない敵と戦うことがいちばん疲弊するのだが、アクセルを踏んで排気ガスを噴出しながら紫外線という見えない女性の敵と戦い続けるサングラスに日傘の女性を見て地球破壊のエピローグを感じた。プロローグを感じた。いつまで経ってもどっちがどっちの意味だか覚えられない。
 
2010年07月15日(木)  優しさの残渣物。
 
御ハナは未だ指しゃぶりが直らず爪を噛む癖もある。しかも手頃な大きさの物をすぐ口に入れる。爪を噛んでいる時は御ハナの大好きなアンパンマンと爪を掛けて「お、ツメパンマンだ!」と指摘すると恥ずかしそうに隠すのだが、最近は妻に爪を切って欲しいが為に努力して爪を噛まないようにしているらしく仕事から帰ってくる度に「今日ね、ツメパンマンしなかったんだよ」と報告してくれて健気なことこの上ない。
 
そんな健気な子の父親は、三十過ぎても心理的負荷が掛かると爪を噛む。昔は爪を噛み切っていたのだが今は甘噛み。噛み切ってないから爪を噛んだことにはならないよと妻に苦しい弁解が続く。しかも職場で難しい考え事をしている時は大抵ボールペンを口にくわえている。爪を噛み物をくわえる。職場でも看護師から突然「ツメ!」と言われてハッと我に返ることがある。爪もボールペンも何分無意識なものでコントロールができない。
 
こういうのは心理的負荷を外に発散できずベクトルが内面へ向けられる自己破壊的行動といわれており、まあいうなれば優しさの残渣物ってやつだ。優しさの残渣物ってやつだ。
 
2010年07月14日(水)  大統領。
 
だいたい串盛りが5本って奇数の時点でおかしいと思うわけ。
 
昨夜は部下と上野に飲みに行ったのだが、こうやって頼んだ物が奇数で出てくるとあまり仲が良くなかったり気を遣わなければいけない相手だったりすると1つ残りがちになり経験上メンチカツ、手羽先あたりが奇数率が高く、昨夜は串盛りが5本という奇数で出てきて部下とは仲が良く気を遣わなくてもよいので奇数と確認するや否や「3本食っていいからね」と部下に言う。
 
これはどういうことかというと、部下が私に「3本食べて下さい」と言わない限り不躾に3本食うわけにもいかず、部下は部下で3本食いたいかもしれず私は往々にして小食なのでどうしても3本食いたい理由が特にあるわけでもなく、かといって皿に1本いつまでも取り残された状態では気を揉んでしまうので、以上の理由を全て包括してメニューが出てきた時点で3本食うことを辞退した方がよっぽど気持ちが楽なのである。
 
気を遣ってないようで最大限に気を遣う。上野ガード下の大衆居酒屋の如く、世の中は窮屈である。
 
2010年07月13日(火)  二段仕込み。
 
妻の実家は島根県で私は結婚の挨拶の時に一度しか行ったことがないのだが、妻の祖母宅へ挨拶に行った時、食卓に刺身が並び、醤油をつけて食べようとしたところ、やけにどろっとした醤油で古臭いような独特の香りがするため、これはきっとあれだ。日頃あまり醤油を使用しないお婆さんが久々の来客で刺身を振舞うにあたって台所の奥から取り出したデッドストック的な醤油であろうと無礼千万な事を考えながら新鮮なカンパチをデッドストック醤油につけて食ったところ、この醤油、旨み、甘み、コク共にパーフェクトでこんな美味い醤油食ったことない。さすがデッドストックだ。
 
と、デッドストックという固定観念を拭いきれないものだから妻にお婆ちゃんちの醤油、独特の味したよねなんて言えるわけもなく約1年経過した頃、妻の実家から様々な野菜と共に醤油が送られてきて醤油など近所のスーパーに行けば買えるもののどうして送ってきたんだろうと訝しながらたまたま夕食が刺身だったので妻がその醤油を食卓に出して食ってみたところデッドストックショーユ! あの醤油はデッドストックなどではなく列記とした島根名物の醤油だったのだ! このどろっとした感じ、知らんけど気の遠くなるような醸造期間を経て世に送り込まれた熟成感。そして旨み、甘み、コクコクコク! どれをとってもパーフェクト。今後この醤油以外の醤油は食えそうもないしこれ以外の醤油は全ての刺身の味を半減させると思っている。こういうことしてよいのかわからないが回転寿司にもこっそり持っていっているほどのソウルフードというかソウル調味料なのである。
 
2010年07月12日(月)  この指パパ。
 
妻と御ハナが数日実家に帰るため羽田空港まで送っていった。僅か数日だが離れてしまうことに変わりない。周囲はゆっくり羽が伸ばせるねなんて言うけれど、だいたい4・5年毎日いれば独りになった時の羽の伸ばし方なんてシュミレートしているわけがなく、取り残された感じがしてただただ寂しい。帰りの車の中でかかっている童謡を聴いて、こんなもの一人で聴いたってしょうがねぇやって洋楽をかけてみたけれど、しばらくしてまた童謡をかけなおすという動揺。
 
2010年07月11日(日)  そらん汁。
 
先日、というか大分前だが部下2名と仕事帰りに飲みに行き、その時の勘定を払った記憶がないという事に今気付いた。記憶がないということに気付いた。となると払ったかわからないということも記憶の一つであって、払っていないだろうというのは憶測で、払ったかもしれんというのは推察で、仮に払っていないけどヨシミさんから言い出さないから黙っておこうと部下が情状を酌量しているのかもしれず、そういえば酌量という言葉には酒を杯につぐ意味のある酌という言葉があって、互いに杯をやり取りしながら飲むことを酒を酌(く)み交わすと言って、更に相手の心情や事情を推し量るということを酌み取るといって要するに酒を飲んで記憶が飛んだときは諸々大目に見て下さいってことだと思うんだけどね。
 
2010年07月10日(土)  ゆっくりと。
 
妻と今年の指輪を買いに行った。夫婦で毎年ペアリングを買うようにしている。左薬指のプラチナの結婚指輪は何の柄もないシンプルなデザインにして、毎年結婚記念日に異なるデザインのペアリングを重ねてつけている。結婚記念日のたびに薬指がリニューアルされて新鮮な気持ちに戻れるのだ。
 
1年目は婚約指輪だけで2年目から重ねてつけるようにしているので今年で4つ目のリング。先日10年分計20個のリングが入る小さな収納ケースを購入した。10年経ったらまた新しいケース買おうね。そんな悠長で幸せな会話を交わしながら僕らはゆっくりと歳を取っていく。
 
2010年07月09日(金)  セキニントッテヨ。
 
世の中で最強の言葉はセキニントッテヨだと気付いたのでこれから乱用しようと思う。
 
職場で二択のとある決断を迫られた。リスクは低いが業務遂行に時間を要することと、リスクは高いが円滑に業務が進むことが想定されること。私は考え抜いた挙句、後者を選択した。そして一緒に考えていた傍らのナースが言った。「ヨシミさん責任取ってよ!」
 
自らの責任を放棄し他者に強要するという攻守一体となった素晴らしい呪文セキニントッテヨ。私の策が成功したら黙ってりゃいいし、失敗したら鬼の首を取ったように騒ぎ立て、駄目押しの呪文ホラヤッパリネを連発する。こんなもん言ったもん勝ちである。
 
私のように仕事を他者になかなか振れず業務に埋もれて悶々としている者にセキニントッテヨという呪文はなかなか魅力的に聞こえるのである。
 
2010年07月08日(木)  チョッカラッスッカラッ。
 
家族で韓国料理食べ放題の店へ。毎回食べ放題の店に行って口惜しいのは自身のあまりの小食漢っぷりで瞬時に満腹になってしまうことで、妻も御ハナも家族揃って小食なものだから食べ放題で元を取るなんて艱難辛苦。サムギョプサルが食べ放題という肉好きにとっては夢のような状況の中、「あー、私この青唐辛子とお味噌だけでいけるかもー」なんつって妻は青唐辛子をサムジャン(韓国味噌)につけてそのまま食っておる姿が粋に映ったので俺も食ってみようと妻の真似をして青唐辛子を直接食ってみたところ喉が焼け舌が爆発。よだれが止まらなくなり気が遠くなって手持ちの水を飲み干しても辛さが止まらず、傍らにあった韓国海苔数十枚を口腔内に詰め「ちょっ辛っ! ちょっ辛っ!」と叫んでいたら韓国人の店員がステンレス製のお箸を持ってきてくれて何をこの事態に箸など持って来るのだと呆気に取られていたら韓国のステンレス製の箸のことを「チョッカラッ」というらしくついでにスプーンのことを「スッカラッ」と呼ぶことを教えてもらった後もよだれ止まらず。
 
2010年07月07日(水)  ktkr。
 
先日の私が夜勤の日、残業で終電の時間が過ぎてしまったナースが休憩室で仮眠を取って始発で帰宅するとのことで朝5時頃ナースステーションに仮眠を終え、ぽっこり腫らしたまぶたで登場し、「あともう一個記録書くの忘れてましたあ」なんてあくび混じりで記録を書いていた姿がキタコレ!
 
「まぶた、腫れてるね」
「は?」
「まぶた、すげぇ腫れてるね」
「はぁ?」
 
私はね、まぶたが腫れてる女性が好きなんだ。正確に言うと寝起きでまぶたが腫れてる女性ね。だってそうじゃない? 化粧なんてのは非日常という概念の代表格だと思うんだけど、寝起きの腫れたまぶたなんて最高に日常を演出していると思うんだよ。化粧した顔なんて誰でも見れるけど、まぶたを腫らした顔なんて家族とか彼氏になってみないと見れないでしょ。そういうリアルな日常の象徴だと思うんだよね。よって今度の研修旅行の朝なんてみんなで朝食摂るわけでしょ。前の夜はみんな酒飲んでるわけだから一層まぶた腫れてて旅行という非日常的な場に限定された写実的な日常が凝縮されるわけだよ。わかるかい?
 
案の定わかりませんと言われて彼女は始発で帰宅した。
 
2010年07月06日(火)  ウォッシャ坊。
 
ウォッシャブルレザーの財布が欲しいのだが毎回購入する直前で躊躇してしまう。ウォッシャブルレザーというのは革を手で揉んで水洗いして自然乾燥させたレザーで、水洗いによって革が波打って独特のシワ感が出るのだが、それなりのファッションでそれなりの佇まいであればアンティークな感じを醸し出すことが可能なのだが、ファッションや佇まいを間違えるとただのクッタクタの財布にしか見えず、お金に無頓着なだらしない男の極致を演出する絶好のダメアイテムと成り果ててしまう。
 
私も努力すればそれなりのファッションや佇まいを持てないわけではないと思うがそんなもの毎日持てるわけがなく、仕事が何日も続いたりすると精神的身体的にウォッシャブルレザー以上にクッタクタになってそんな男が帰りのコンビニでクッタクタのウォッシャブルレザーを出すと麒麟淡麗と辛ラーメンとなめらかプリンで一人の夜を過ごす寂しい男にしか映らないであろう。でも辛ラーメンって美味しいよね。
 
2010年07月05日(月)  メタモエフォーゼ。
 
部下のナースにある資料を借りて仕事をしていたらその資料からフェンディのファンタジアのような強烈に大人っぽいバニラ系の香りが漂って、その香りが終宵の逢瀬のようなイメージをかきたて業務に集中できないのでそのナースに「私は別に変態ってわけじゃないけど、この資料はいやに良い香りがするね」と伝えると、「あ、それずっとロッカーに置いてたから匂いが移っちゃったのかもしれません。っていうか”別に変態じゃない”なんてわざわざ言うから変態っぽさが浮き出るのでそういう時は良い香りがするねってだけで嬉しいんですよ」というナースのアドバイスなど頭に入らず、「じゃあキミのロッカーは毎日こんな香りがしてるのか」と変態モード一色。
 
2010年07月04日(日)  世界の半分。
 
貴方と私の夏季賞与が出たので何か褒美を授けようぞと完全にドラクエの王様目線で妻が仰るので欲しい物を考えてみたけれど何も思いつかなかったので何もいらないと言うと、私が欲しい物と釣り合いが取れるであろう欲しい物を言おうとしていた妻は一気にテンションダウン。同僚の妻には青雲の志が欠けていると言われるし、もう少し欲を持った方がいいのかもしれぬ。
 
1年か2年前、1回の鑑定で数万円かかるという有名な中国の易者に無料で鑑定してもらったことがあって、「何か欲しい物はありますか?」と訊ねられ、やはりその時も何もないと答えると易者は含み笑いをして「わかりました。欲しい物が何もない人などいないのです。あなたが口に出さずとも、私が気を読んであなたの欲しい物を当ててみましょう」と、やたら長い間私の気を読み始めてどんどん易者の表情が曇っていって、まずいな。俺実は欲しいものなんてあったんだっけ。あの表情の曇りっぷりからして世界を征服したいとか世の中の全ての女性を我が物にしたいとか無意識レベルでとんでもないことを考えているのかもしらん。まずいな。俺、何が欲しいんだろと狼狽していると残念な顔をしたままの易者が小さな溜息をついて「わかりました」と呟いた。
 
「あなたは、本当に欲しい物がないのですね」
 
まあそれはそれで悲しかったわけなんだけどね。
 
2010年07月03日(土)  ワカワカエイエー。
 
PSPで「ウイニングイレブン2010 蒼き侍の挑戦」か「2010FIFAワールドカップ南アフリカ大会」どちらを買うかここ数日迷い続けており、そもそも私はサッカーにさほど興味があるわけではないので「プロ野球スピリッツ2010」を買ったほうがいいんじゃないかと冷静になったこともあったけれどまあ4年に1度だしと、ワールドカップ関連の買物に関しては「まあ4年に1度だし」という強力な申し開きが可能であってそれが景気拡大の一端を担っている俺、結局ウイイレじゃなくてFIFAの方を購入しあまりの操作方法の難解さにマラドーナの如く半泣き。
 
2010年07月02日(金)  呆れもんどり返る。
 
車のリモコンキーには言わずもがな施錠と開錠の2つのボタンがあって私は8割くらいの確率で施錠したいのに開錠ボタンを押し開錠したいのに施錠ボタンを押してしまい重傷なのはどっちがどっちの役割のボタンなのか一向に覚えることができないのだ。
 
施錠と開錠ボタンには南京錠が描かれており、一つは南京錠が外れていて一つは閉まっている。南京錠が外れているマークは「鍵が開いている状態を締めなければいけない状況を描いたマーク」なのか、「鍵が締まっている状態を外した後の状況を描いたマーク」なのか毎回悩んでしまう。逆もまた然り。
 
自家用車を購入して1月近く経つというのに二分の一の効果すらも覚えられない私に妻は呆れ返っており、たまに一発で目的のボタンを押すことに成功すると「おっ、今日は当たった」なんて運レベルでの感動をしてしまい妻は毎回呆れもんどり返っている。
 
2010年07月01日(木)  オレニユーナヨ。
 
現在とにかく憤慨しているのは消費税増税問題でも角界の野球賭博問題でもなくカゴの中やレジ袋の中に勝手に広告を入れるスーパーやコンビニであって、経費削減だのエコだの叫んでる割には飄々と広告を入れて漂然としており、思春期の頃にさして反抗期らしい反抗期を送らなかったため、そういう矛盾や愚弄にいちいち腹が立ってならない。
 
何度もレジで「この広告いりません」と告げようと思ったけれど、こういうのって店員に告げたところで「あそうすか」と返されるのみで私が言う「この広告いりません」の言葉の裏には、経費削減だのエコだの言ってるくせにこういう私利私欲のためなら手段を選ばぬ貴店の態度、方針が気に入らぬと伝えたいのだ。
 
しかし店員にとっては「俺に言ったところで」である。私も管理職という立場上、「オレニユーナヨ」という局面に度々遭遇するが、俺に言ったってどうにもならない事はどうすればいいかというと激昂型の人はすぐに「責任者呼べコール」をしてしまいがちだが、これはもう万国に共通する定理だと思うのだが、責任者っつったって最高責任者がそうそう出てくるわけがなく、責任者呼べコールで出てきた責任者は責任者呼べコールで呼ばれて出てくるような責任者なのでやっぱり「オレニユーナヨ」と思っているのである。
 
そんなオレニユーナヨ感が満ち満ちている世の中ではやっぱりエコより私利私欲が優先されてしまうのである。
 

-->
翌日 / 目次 / 先日