2004年07月31日(土)  遠距離走。
 
遠距離恋愛の苦しみが離別であるとするならば、喜びは再会という言葉で表すことができます。遠距離恋愛とは、人生において非常に重要な離別と再会を定期的に繰り返すことができるのです。
 
というわけで今日から再会。大きなカバンをぶらさげて東京駅の改札をはにかんだ笑顔で通った彼女は、はにかんだ表情のまま僕の目の前に立って「ただいま」と言いました。可愛いと思いました。抱き締めてあげたいけど、ここは公衆の面前だということと、彼女と同じ時を過ごすイコール煙草を一本も吸うこともできないということを考えると、手放しで抱き締めるわけにもいかず、込み上がるニコチンへの欲求を抑えつつ、笑顔で「おかえり」と言い、今日から約一月の蜜月が始まることになりました。
 
遠距離恋愛というものは、その再会の期間が短ければ短いほど、その悲劇性も増大されるわけでありますが、彼女の場合、学生であり、8月から夏休みが始まるのであり、夏休みの期間中、ずっとこちらの方に滞在するので、「期間の悲劇性」という抗い難い悲観に暮れることはありません。
 
反面、その期間が長ければ長いほど、遠距離恋愛では感じることのできない「日常としての恋愛」という気持ちが発生することになり、明日もいて明後日もいる。3日後に手を繋ぐことも1週間後にキスすることもできる。そうした周囲の恋愛の様相と変わり栄えしない恋愛を送ることもできますが、やはり1ヶ月後に彼女がいなくなることは明白な事実であるので、1ヶ月一緒にいることができても「期間の悲劇性」というものは免れないのかもしれません。
 
しかし、今日から彼女が僕の元にやってきました。久し振りの東京駅で、手を繋いで歩く池袋で、そして、彼女にとっては初めての街である、新居のある商店街で。マイルドセブンを部屋の棚の上に置いて、空いた右手で彼女の手を取って。
 
2004年07月30日(金)  僕はヨン様。
 
冬ソナ冬ソナと騒いでるのはマスコミだけだよ。どだい僕の周囲を見てみたまえ。冬ソナなんて毎回欠かさずに食い入るように見てる人なんて一人もいるものか。っていた。いっぱいいた。
 
うちの職場の看護婦さん達。もう熱狂的な冬ソナブーム。仕事が始まるまでの朝の時間、及び昼休み、そして仕事が終わった後のナースステーションでの話題は冬ソナ一色。一体冬ソナの何がこのオバサン達をここまで駆り立てているのか。
 
「ヨシミ君。学生の頃って何て呼ばれてたの? あだ名とかあった?」
「はいありましたよ」
「何て呼ばれてた?」
「ヨシミのヨを取ってヨン様と呼ばれてました」
 
と、ほんの冗談のつもりで言ったのに、「馬鹿じゃないの!」と、看護婦さん達は本気で怒りだす始末。面白いので、「だからこれからは僕のことをヨン様と呼んでください」と、軽蔑の駄目押しをしたら、誰も僕と喋ってくれなくなった。
 
婦長さんだけは、僕のことを「ヨン様」と呼んでくれて、「私の娘のことなんだけどね」と、間髪入れずお見合いの話を持ちだしてきたので、その日は婦長さんには話し掛けないようにした。
 
2004年07月29日(木)  青空。
 
左の下の奥歯にぽっかりと穴が開いてしまって、それでも1週間ほど我慢していた、というか歯医者に行くことが億劫だっただけなんだけど、物を食う度に、タケノコやポテトやウィンナーが詰まるので、食後に爪楊枝が欠かせなくなり、やがてその行為が煩わしくなり、やがて歯医者に行くことの億劫さと爪楊枝で歯に詰まった食物を取ることの煩わしさを天秤にかけるようになり、今日、とうとう僕は爪楊枝を床に投げつけ、歯医者に行こうと決心した。
 
気絶するほど痛かった。僕は歯医者が言う「痛かったら手を挙げて下さいね」の効能を信じない質なので、よだれを流し、白目を剥きながら、この医者、どこか治療の仕方を間違っているのではないかしら。と疑念を抱きながら気が遠くなり、治療中「痛くないですか」と問われても、口は開けたままで、治療器具は口に入れられたままで、よだれは流したままで、「はい。痛いです。もうすぐで気絶します」と言えるはずもなく、仮にそう言えたとしても、その痛みへの何らかの対処法にも期待が持てず、早く外に出たい。青空を見上げたい。川のせせらぎを聞きたい。自然の営みに身を委ねたい。と、具体的にどうしたいのかわからなくなり、もう駄目だ。気絶する。痛みが脳にひびく。おっかさん。気絶する前に一目逢いたかったよ。と、絶望的な思考に陥っていた時に治療終了。
 
「あと4・5回治療すれば治りますからね」
 
と、平然と残酷なことを言う歯科医の言葉に愕然。治療費を払い、外へ出て上を見上げたら、一面青空が広がっていた。
 
2004年07月28日(水)  別に笑いたいわけじゃないんだけど。

 
僕がここ数年課題にしているのは、あの笑顔を浮かべたときの対処法でありまして、あの笑顔というのは、例えば駅のホームで職場の人にばったり会って、その職場の人とは大して仲が良いわけではないのだけど、職場以外の場所で、「同じ職場の人と会ったという偶然」という理由だけで当たり障りのない会話をしていて、「じゃあ私は上りの電車ですから」「僕は下りの電車ですので」「それじゃあまた職場で」「お疲れ様でしたー」「お疲れ様」と、ここで浮かべる笑顔!
 
ここで、職場の人は電車に乗ってしまって、下りの電車を待たなければならない僕はホームに取り残される形になるのだが、ここで浮かべている笑顔。これが問題なのです。「お疲れ様でしたー」「お疲れ様」という会話の時に発生した笑顔が、一人ホームに取り残されてもまだ続いている、そしてそれを他人が見ているという気まずさ。
 
例えば、往来を歩きながら友人と携帯で話している。「それじゃあまたねー」「それじゃあ」と、電話を切った時に浮かべている笑顔。「それじゃあまたねー」「それじゃあ」という会話の時に発生した笑顔が、再び往来を一人で歩いていてもまだ続いている。そしてそれを他人が見ているという気まずさ。
 
その笑顔の延長線上で、あかの他人と目が合った時の気まずさ! お前に笑い掛けてんじゃねーよと思う。そんなに機嫌良くねーよと思う。いつもニコニコしてるわけじゃねーよと思う。ただそれだけ。ただそれだけっていう問題が、人生では意外と厄介だったりする。
 
2004年07月27日(火)  大衆と同化しました。
 
新しく越したマンションの近くには、いつも行列ができているラーメン屋があって、そんなに美味しいのだろうか。いつか行ってみようと思っているのだけど、いつも行列ができてるのでまだ行ってない。
 
ていうか行列っていう概念がね、状況がね、なんか嘘臭いというか、ほら、行列の為に行列する? なぜ並んでるの? だってそこに行列があるから? みたいな? という思いがあって、並んでまで食べる価値というのは、ぜんたいどこで判断するのだろうか。舌だろうか。脳だろうか。それとも「行列に並んだ」という行動だろうか。「あの店で食った」という結果だろうか。
 
まぁ、そんなの人それぞれなんだろうけどね。だけどこうやって家の近所に行列ができるラーメン屋があると、ちょっと気になって、夜も遅いし、腹も減ってきたし、今の時間だったら大丈夫でしょ。ちょっと行ってみようか知らん。と、部屋着から、ちょっとした外出着に着替えてラーメン屋に行くのだけど、やはり並んでいる。
 
何? この並んでる人。オブジェ? サクラ? 看板かしら。おいお前。そこのメガネ。たぶん学校じゃハカセと呼ばれてる奴。ズボンつんつるてんのお前。お前は実は朝から並んでるだろう。そうやって行列に並んでることを生業にしているのだろう。報酬をもらっているのだろう。メガネかけて。なんか尾の部分が二股に分かれてる偽者のナイキのTシャツなんか着ちゃったりして。
 
家の近くでね、こんな毎日行列されちゃうと気になるんだすよ。あ、ごめ。興奮して「だすよ」なんて言っちゃった。気になるんですよ。ぜんたいどのくらい美味しいのですか。実は味なんてわかんないんでしょ。雑誌で、テレビで、紹介されたというステータスに惹かれてやってくるんでしょこういうのは。日本人はステータスが大好きな人種だからね。どうなんだい。答えてみなさいよ。答えないなら並んじゃうよ。僕も。堪忍袋の尾が切れてお腹もグゥと鳴りました。並んじゃうよ。
 
……
 
ちょー美味かった。
 
2004年07月26日(月)  今日から狆です。
 
昨日の日記で少し書いたんだけど、当初この日記の一人称は「私」であって、それから現在の「僕」になって、最近は「俺」に変えたくなっているという問題。
 
生きるということは必然的に何らかの悩みや問題を抱えているということであって、この日記を読んでいる人達も何らかの悩みや問題を抱えているのは明白であって、僕が一人称を「俺」に変えたいという問題なんてどうでもいいのかもしれないが、本当は僕だってどうでもいい問題であるのだけど、
 
例えば「俺じゃねーよ」と書きたかった場合、「俺じゃねーよ」は「俺じゃねーよ」であって、それ以上でもそれ以下でもない。しかしこの日記は一人称が「僕」である以上、「俺じゃねーよ」のところを「僕じゃねーよ」と書かねばならず、「俺じゃねーよ」という強い否定が感じられる文章も、「僕じゃねーよ」と書くことによって、その否定が弱くなるというか、「いや僕かもしれない」「ホントは僕です」というネガティブな感じまでしてくるわけでどうもいけない。「僕じゃねーよ」はそれ以上はないかもしれないけど、なんだかそれ以下があるような気がする。
 
しかし一人称を「俺」で統一した場合、実生活とのギャップが生じてくる。例えば僕は実生活での一人称も「僕」であって、物事は「僕ベース」で比較的穏やかに経過しているのだけど、これを「俺」としたら、なんだか波瀾万丈のスパイスが加わりそうで、敵とか増えそうで、なんだか怖い。だから僕。僕は僕。僕は僕と呼んでいるから平穏に過ごしているのです。だから、あんまり文句とか言わないで。俺じゃないんだから。僕なんだから。
 
と、そういう理由があって、意図的に僕と呼んでいるんだけど、頭の中で考えを巡らしている場合は「俺」で考えていて、「俺だったらこうするよなー」とか考えつつ言葉では「僕だったらこうしますよ」と変換させているのであって、これを日記に変換させる場合、頭の中では「俺」と考えつつ、一回「僕」に変換して、日記を書く際に「俺」に再変換させつつも表記は「僕」という、書いてる僕でさえ俺でさえ頭がおかしくなりそうなことを考えているのであって、あ、そうだ、いいこと考えた。
 
「僕」とか「俺」とかに固執するからいけないんだ。他の言葉を使えばいいじゃないか。この日記だけで通用する一人称を。便宜的に。と、考えた僕は俺は。狆。明日から一人称を狆にします。狆は「ちん」と読みます。狆は今日スーパーに買い物に出掛けた。いいね。なんだかしっくりくるね。と、狆は思った。
 
2004年07月25日(日)  好色一代男四周年。
 
あ。って今更思い出したんだけど、この日記、今年の7月で4周年を迎えます。この日記は「毎日感じたことを書く」という日記として当然のことを、本当に毎日書いているのであって、それを4年間。同じ彼女と3ヶ月と続かない僕が4年間、日数に換算すると1460日間も何かしら書いているのであって、これはすごいことだぞ。自慢にしてもいいくらいだぞ。と思うけれども、この自慢の仕方を間違えると、「変わり者」というレッテルを貼られてしまうだけで何もいいことがないのであまり自慢しない。
 
だいたい周囲に「自分のホームページ持ってます」なんて言っても何の自慢にもならない。それがパソコンもしくはインターネットと関係がない人達に言うと尚更で、「へぇー」くらいは言ってくれるだろうけど、この「へぇー」は何か怪しさを込めた「へぇー」であって、こういう人達はインターネットと聞いただけで「出会い系サイト」を連想しがちであるので、その変な連想によって、「ホームページ」という言葉まで「出会い系サイト」という言葉に変換されかねないわけで、慎重に対処しなければならない。
 
ちなみにこのサイトの前身は「歪乃瓢駒」という名前であって、何を思ったかある日突然「今日から歪み冷奴だ!」と衝動的にサイト名を変更して、はっきり言えることはどちらのサイト名も何を言っているのかわからないということだけで、まぁそれなりに意味もあるんだけど、とにかくホームページというなんだか恥ずかしいものを始めて、同時に日記も書き始めて、あっという間に4年経ちました。と、あっという間というのは嘘なんだけどね。
 
しかしこの日記というものは、時に便利なもので、「自分データベース」みたいなものになっていて、あぁ、あれっていつ頃だったっけ? なんて思うときに自分の日記を見て検索することができる。しかも思考過程の変化までも理解できるという優れモノで、最初僕は一人称が「私」であって、それから「僕」になって、最近「俺」に変えたくなっているのも思考過程の変化であって、あ、このことは長くなりそうだから明日書こう。
 
とにかく4年続きました。4年も続いたんだから、5年も10年も同じような気がします。そんな気がしながら明日からも日記を書きつづけます。
 
2004年07月24日(土)  愛の開包。
 
駅から徒歩5分。日当たり良好角部屋という、申し分ない立地条件のマンションへ引越して、昨日はちょっと興奮して眠れなかったわ。と、なんだか興奮すること自体が恥ずかしいというか馬鹿らしいというか、未だ部屋はダンボールで埋め尽くされており、興奮する前にこのダンボールを何とかしようと思うのだけど、ダンボールを閉じたガムテープに「本」とか「台所用品」とかしっかりと記入するのよ。と、引越しのバイト経験がある彼女からあれだけ口を酸っぱくして言われたにも関わらず、生来の横着者である僕は、自分の物なんだからそんなの書かなくたってわかるよ。朝飯前昼飯時だよ。とたかをくくり、彼女の助言に真摯に耳を傾けた振りだけして、部屋にダンボールが積まれていくにつれ、開包作業の際、どれから開けてよいかわからず途方に暮れる。
 
途方も暮れて日も暮れて。引越し初日は何も片付かないまま眠るスペースだけをどうにか確保して、ダンボールで囲まれた現実から逃げるように眠ってしまい、目覚めたら荷物がキレイに片付いていた。片付けてくれたのはなんと小人さんたちだったという、いまどき子供さえみないような夢を見て、覚醒と同時に現実の厳しさに愕然。当たり前のことだけど何も片付いていない。
 
「っていうかキミが片付けてよ」
 
と、来週遊びに来る予定の彼女になぜか逆ギレ口調でメール。僕はこんなひどい男にも関わらず、「わかった。私に任せて」と、健気に返信してきた彼女の態度に涙が出ました。小人なんていらない。僕には愛する彼女がいると思いました。
 
涙が出た理由はもう一つ。彼女から誕生日プレゼントが届いたのです。新居に花を添えるインテリア。元々何に対しても平均点以上のセンスを持つ彼女が選んだインテリア。気に入らないわけがない。最大の感謝の意を込めたメールを送信。愛が凝縮されたメールを受信。あぁ僕は今恋をしている。ダンボールの開包どころじゃないと思いました。
 
2004年07月23日(金)  誕生日
 
誕生日でございます。28度目の誕生日でございます。母親からおめでとうと電話がきて、「ありがとう。しかし28年前が懐かしいね。あの産婦人科のベッド、硬いんだよな。隣の奴なかなか泣き止まないし」などといい加減なことを話していたら、お前は東京に行ってから少し馬鹿になったようなので、早く田舎に帰ってきて静かに暮らせという意味のことを言われて少しへこんだけれど、へこんでばかりもいられない。だって今日は引越しだから。
 
誕生日に引越し。意味がある行動のように思えて何も意味がない行動。誕生日気分に浸ることなく朝から大急がし。大忙し。これはどっちの表現が正しいのだろう。まぁいいや。2つとも書いちゃえ。というわけで炎天下の中、大急がし。大忙し。前もって不要な物は処分していたはずなのに、出てくるわ出てくるわ意味のない物たちが。
 
あー。もうやめようかなー。気が変わったのでまた荷物戻してくれって言おうかなー。と、本気で考えたほど引越しというものは面倒くさく、去年の春、引越した頃の日記を読んでみると、「もうあと30年くらいは引越しはしない」と書いてあり、その時の気分を引越し当日になってから漸く思い出したが時すでに遅し。引越し業者の目がくらむような迅速な動きにあっという間に部屋は空っぽ。そして僕はジャージ。
 
そして僕はジャージ。動きやすいようにね。上は襟がクタクタになったTシャツ。どうせ汗かいちゃうしね。と、いい加減あn格好をしたまま荷物は全てトラックの中へ。
 
「じゃあ、先に行ってますので」と引越し業者。
「え? 僕は? 乗せてってくれないんですか?」
「3人も乗れないですよ。多分道込んでると思うんで、後からゆっくりと電車で来てください」
「え、え、え?」
「それじゃあ」
 
と、本当に引越し業者は僕を置いて行ってしまった。行って行ってしまった。もう帰らない。僕はジャージにTシャツというグダグダな格好で取り残されてどうしよう。着替えももう運んじゃったし。汗と埃でなんだかヤング浮浪者のような格好で電車に乗らなければいけないのか。誕生日なのに。僕だけの記念日なのに。どういう種類の仕打ちなんだろう。
 
と、唇を尖らせながら電車に乗って、僕の隣に誰も座ってくれないので気分が屈託。誕生日に引越しなどするものではない。誰に言っても何の教訓にもならないようなことを学んだ28度目の誕生日。
 
2004年07月22日(木)  みんな独善的だから。
 
私は昔、クラスのみんなの給食費を黙って使ってしまったけど、今はもう反省してるので、もう一度だけクラス委員長をさせて下さいって言っても、そんな奴をクラス委員長にさせないのは当たり前で、反省すれば万事オッケーという浅はかというか単細胞というか、そういう考えで選挙に立候補して落選するのは当然の事で、辻本しかり宗男しかり、そういう人はまず親孝行から始めなさいと言いたくなるのと一緒で、
 
一度浮気してしまったけど、今はもう反省しているので、もう一度だけやり直したいので知恵を下さいと僕に泣きすがってきた友人。そりゃあ無理な話だよ。今日からあだ名は宗男だよそれじゃあまるで。一方的な別れを告げられて当然だよそりゃあ宗男。
 
逆の立場で考えてみなよ。キミの彼女が浮気したとする。で、キミが運良くなのか運悪くなのかわからないけれど発見したとする。で、キミ彼女のこと許す? 「あぁ。許すよ」 うっそーん。うっそだーい。ワタシミトメナイヨ。許さないでしょ絶対。今の話の流れ上、不利な立場に置かれるから許すとか言ってんでしょ。普通許さないよそんなの。
 
「許さないかもしれないけど、別れない。ちゃんと話し合う」 それもまた疑わしいなぁ。例えば僕の場合ね、彼女の浮気が発覚したら何の躊躇もなく別れを告げるよ。浮気する相手なんかと話し合う価値もないってね。欲情した猿と討論しても意味ないってね。あ、もう見ないで。目を合わさないで。浮気癖がうつる。泣いても遅いよ。しかもその涙チョー濁ってるし。きったねーなー。ティッシュなんてねぇよ。自分のティッシュ使えよ。なかったら買ってこいよ。とか散々なことを言って相手をズタボロにして、さっさと別れて次の人を探すよ。キミだってそうするでしょ。
 
「そこまでひどいことは言わないよ」 まぁこれは僕の場合なんだけど、それと似たようなこと思うでしょ。いい? 恋愛ってのはね、疑わしきは罰するなんだ。全部有罪。例えば恋人が好奇心で出会い系サイトなんかを利用したとする。単なる好奇心でね。だけどこっちにしちゃぁ好奇心も何も関係ない。「出会い系サイトを利用した」という事実がもう駄目なんだ。もう駄目駄目。ちょっとした好奇心だったのなんて言われてもなんじゃぁそりゃですよ。出会い系サイトを利用した彼女を愛する努力をするよりも、出会い系サイトなんて絶対利用しないって心に誓っている女性を探す努力をするよ僕は。そうでしょ。
 
「そうだね」 わかってるじゃないか。だから無理。だってキミ浮気したんでしょ。手ぇ繋いだら浮気〜。目が合ったら浮気〜。キスなんてチョー有罪〜。なんて中学生が言ってるようなことじゃなくて、やることやったんでしょ。じゃあ駄目だ。ご臨終です。「そこをなんとか」 ってキミは何? 何その借金の取り立てに来たヤクザに頼み込んでるような態度。自分で考えなさいよ。あ、駄目だ。自分で考えちゃ駄目だ。自分で考えたら自分の考えしか頭に思い浮かばないからね。独善的な結果に陥りやすいんだ。だから常に逆の立場になって考えよう。キミの彼女がね、どこの馬の骨かわからない男に陵辱されて、この陵辱って一方的にやられるんじゃなくて、双方の同意によって陵辱されるんだ。で、その事実をキミが知る。そして彼女が許しを乞う。それを許せますかってことだよ。
 
「ゆ、許せないね」 ほら、問題は意外と単純なんだ。単純な問題は答えも簡単。別れるしかないよ。だいたい浮気なんてする恋人がどんな魅力を持ってたら挽回できると思ってんだ。金? 地位? そんなものは関係ないよ。浮気という行為の前では何の意味もなさないよ。というわけで今回は無理な相談でございました。次の恋愛で浮気をしない努力をしなさい。わかりましたか。わかったら手を挙げる。ほら。
 
2004年07月21日(水)  新しいメディアによる失態。
 
今日、ある大失態をしてしまった。これは新しいメディアが生んだ悲劇といっても過言ではなく、ただの不注意といってもよく、この失態によって何の教訓を得られるわけでもなく、ただただ焦燥狼狽。
 
昔の彼女から届いたメールの返事を今の彼女に返信してしまったのだ。
 
男からするとかなり痛い状況である。その返信内容がどうであれ、そういう行為こそが問答無用であり斬り捨てられて当然なのである。
 
しかしその返信内容自体は大したことはなく、昔の彼女が結婚してそれを報告。昔も楽しかったけれど、今は幸せに暮らしていますという内容で、彼女に一方的な別れを告げてから早5年。未だに独身、結婚の予定も予兆すらもない僕に対しての当てつけにも思われるようなメールだったのだが、そのメールの一節に「今でもあの頃に戻りたいって思うことある?」と書いてあって、僕は「あの頃」を、その彼女との付き合いを指すのではなく、気楽な学生時代に戻りたいということと、昔の彼女がそう訊ねている手前、「絶対戻りたくない」などと言えるわけもなく、「うん。戻りたいって思うことはある」と、どうとでも受け取れる曖昧なことを書いてしまったのだが、その終始一貫曖昧に埋め尽くされた文章を今の彼女に返信してしまった。
 
そんなメールを送ってしまった彼女の心境は察する余りで、しかしここで「ゴメン、ゴメンなさい」などと変に慌てるのも逆に怪しまれるし、怪しまれたら、昔の彼女とたった1度だけのメール交換をしたということ以外、何も怪しいことをしていない、具体的にいえば、その昔の彼女に今でも少なからず行為を持っていたり再会したいと思っているということはないというのに怪しまれてしまい、最悪な場合、この現在の恋が終焉を迎えてしまったら、1匹のシロアリがやがて家屋全体を食い潰し崩壊せしめることと同じで実に馬鹿らしい。
 
では、僕はこの緊急自体に如何のような返信をしたか、その全文を抜粋する。
 
「あ 学生の頃の彼女のメールの返事書いちゃった。ゴメンね」
 
事実を簡潔に! かつオチャメに!
 
はぁ。どうしよう。
 
2004年07月20日(火)  バーチャル引越し。
 
荒物店で、帚、雑巾、フローリングワックス、窓拭き洗剤を購入し、23日に引越し予定の新居の掃除に行った。新しい新居、ん? なんだこの頭痛が痛いみたいな表現は。新しい部屋、もしくは新居、どちらかに表記を統一しなければと思いつつ新しい新居は角部屋で日当たりもよく、窓から池袋が見渡せるし、霞の向こうに新宿も見える。
 
ここで今月の23日、そう、僕の誕生日から新しい新生活、ん? なんだこの新しい新居みたいな表現は。新しい生活、もしくは新生活、どちらかに表記を統一しなければと思いつつ新しい新生活が始まるわけだが、この部屋、壁が斜めだったり妙な場所に壁の凹凸があったりと、それがお洒落を演出しているつもりなのだろうか、変にいびつな形をしている。
 
よって現在の長方形の部屋に適した家具の配置は難しく、掃除を終えた後、持参したメジャーで壁や窓の長さ、高さなどを仔細に計り、現在の部屋に戻り、パソコンの画像ソフトで新しい新居を忠実に再現。同時にベッド、衣装ケース、パソコンデスク、テレビ、本棚、ソファー、パイプハンガーなどの幅と奥行きを測定し、それらも画像ソフトで再現。バーチャルなお引越しという格好いいことを始めた。
 
画面の上で、ここはこれ置いて、ちょっと待って、これ置いてみたらどうでしょう。お、いいね。でもほら、ここにデッドスペースができちゃうでしょ。それだったらこれ置いた方がいいんじゃない。ちょっと待って。それ置いたらキッチンの前にテレビがあるってことになるからやっぱりテレビはベッドに横になって見ることができる場所に置かないと。それだったらこの棚をこっちに移動させたほうがいいね。などと一人パソコンに向かいチョータノシー。
 
楽しいことがあれば、それを共有するのが恋愛である。よって僕は彼女に部屋の間取り図と諸々の家具をgif形式に保存し、メールに添付。一緒に引越し気分を味わおうじゃないかー。ベッドとか本棚置く場所を討論しようじゃないかー。新婚夫婦のやうにー。と、ウキウキしていると彼女から返信。
 
「私よくわからない」
 
一人だけウキウキしていたことに気付き恥ずかしいやら悲しいやら。
 
2004年07月19日(月)  深夜だからできること。
 
引越しするにあたって、「捨てる」ということは非常に大切なことであります。必要か不必要か迷うのならば思い切って捨てるという覚悟が必要か不必要か迷うのならば思い切って捨てるという決意が必要か不必要か迷うのならば思い切って捨てるというけじめが必要か不必要か迷うのならば思い切って捨てるということができないのでこうやって何日経っても荷造り作業が進展しないのであります。
 
荷造りは深夜にする方がはかどるんだよね。と、何だそれ。そうやってせっかくの休日なのに昼間は全く荷造り作業せずに寝転がったまま無意味に足を上げて開いたり閉じたり屈曲したり伸展したりいつの間にか眠ってたりで、荷造り面倒くせー。荷造りって深夜にする方がはかどるんだよね。知らんけど。と、深夜になるまでダラダラ過ごし、いざ深夜になるとネムー。ビール飲んだからネムー。明日も休みだしー。明日早起きして荷造りすればいいじゃん。そう思うでしょ僕。と、僕は確実に前世はキリギリスだったと思うような思考回路によって、延々と荷造りは進まない。
 
原稿に関してもそう。原稿は深夜にする方がはかどるんだよねー。と、日中はパソコンに向かわず、夜になるとビールを飲んで言い気分になってネムー。明日も休みだしー。明日早起きして原稿書けばいいじゃん。そう思うでしょ僕。と、自分を慰めつつ気が付けば〆切。あぁ暑い夏の間に食糧を貯めとけばよかったと気分はキリギリス。
 
だからこうやって日記を書いてる暇があったら荷造りの一つでもすればいいのに、今は午後3時で深夜ではないので荷造りはしない。荷造りは深夜にする方がはかどるんだよねー。
 
2004年07月18日(日)  ゲロンパ!
 
彼女に結構前から「戦場のピアニスト」をみーみーみるみるみれみよ! と五段活用で責められていて、1ヶ月くらい前にレンタルしたんだけど、なんかこう借りた時点で使命が完遂されたという達成感? みたいなやつが発生して、ぶっちゃけあんまり見る気がしなくて、いや彼女が悪いんじゃなくてパッケージが悪いんだけど、
 
あんまり面白そうじゃないよなぁ。だけどこれ見ないと彼女が悲しんでしまうよなぁ。まぁいいや。キスすれば。みたいなことを考えているうちにレンタル期間が過ぎてしまって、たいした悔恨の念もなく返却してしまったんだけど、一昨日ツタヤに行って僕は「ゲロッパ!」が見たかったんだけどレンタル中で、しょーがねーなー。これ借りよ。
 
と、「28日後」という途中でDVDが停止してしまうというある意味ホラーな映画と、「ソードフィッシュ」ってやつと、今度こそは、今度こそは彼女への愛を形で示そうと「戦場のピアニスト」を借りて、やはりパッケージがつまらなさそうで、見たくないなー。ものすごく、というのも、本当にものすごく、あー、何にもやることねー。退屈なよるー。飲みに行きたいけれどもー、外に出るのめんどくさー。熱帯夜だしー。よし、これ見よ。って思ったときに見ようと思って、ほんとにその3日後にそんな事態が発生したのでほんとに見ました。
 
しかしむごい映画だなー。死んでばっかじゃん。彼女ってあんな可愛い顔してこんなむごい映画勧めるんだからなー。しかし長っげーなこの映画。もうダメだもうダメだと見せかけてなかなか終わらない。今度こそダメかと思ったらそうでもない。もうダメでいいよとか思っても頑張って生き延びる。いい映画だったとは思うけれども、むごいなぁ。死という手法を使って見る人を魅了するのはよくないなぁ。
 
2004年07月17日(土)  ハッピーディ。
 
ハッピーディ! ハッピーディ! ハッピーディ! ハッピーディ!
 
と、大塚愛をこよなく愛してると口では言えども、新曲の歌詞のサビの部分、しかもそのサビの一部分、「ハッピーディ」という馬鹿でも聞き取れる部分を頭の中で延々とリピートしながら自転車に乗って駅へ向かって。
 
見てるつもりはないんだけど、一日に一回は女子高生のパンツを見てるような気がする。女子高生のパンツっていうのはどうも気が滅入る。女子高生のパンツを見た後はどう転んでもハッピーディにはならない。
 
お前見えてるよ。と冷静な突っ込みを入れたくなるようなワカメちゃんもしくはしずかちゃんのような女子高生でごった返す僕の職場がある駅では今日も阿呆のような会話をしながらパンツを見せながら。
 
シミーズ。シミーズだったらいいと思う。パンツはもう、エロとして普遍的で、この歳になるともはやパンツで発情は不可能。シミーズいいな。正しい発音はシュミーズ。いいね。シュミーズ。ハッピーディだね。ズロースってのもいいね。ズロース。なんだか脱力するこの発音。ズロース。だるいー。ぬるいー。
 
2004年07月16日(金)  アトック!
 
ツタヤでDVDを借りたんですけども。「28日後」という映画。ホラーね。こういうカテゴリーがあるのかわからないけど、バイオ系サバイバルホラー。よし、どっかのサイトからコピー・アンド・ペースケ。
 
たった1敵の血液で感染してしまい人間の精神を数秒で破壊する新種のウイルスが発生した。感染者達は、純粋な怒りで溢れ人の声を聞いただけで相手を殺そうと襲い掛かるバイオ系サバイバル・ホラー作品。4種類の衝撃未公開エンディング他豪華特典付き。
 
こーわーいー。のっけからこーわーいー。と深夜1時。本当は故郷で後輩などと酒を飲んでいたであろう7月16日の午前1時。ビール飲みながら、ってこの「のみながら」! 糞「のみながら」! 僕は、まぁ、酒は好んで飲むほうなので、この日記でも「飲みながら」という表記はよく使うのだけど、ウィーンドゥズが悪いのか、ソーテックが悪いのか、それともIMEが悪いのかー。ATOKが悪いのかー。「のみながら」を変換すると「の見ながら」と変換されます。この馬鹿パソコン。イーンターネッートッ。ATOK! ATOKって何って読むんだ。僕は「アトック!」って読んでます。アトックの後に「!」を付けて読んでます!
 
で、この映画、28日後に何が起こるんだー。と、開始30分ほどで停止してピクリとも動かなくなってなんだこらと思ってたら突然画面が真っ暗になってなんとかを読み込めませんっていうエラーが出て、この馬鹿プレステ2! お前なんかでDVD見てやるかっつの。パソコンでDVD見れるっつの。画面小さいけどなー。って叩くようにプレステ2の電源を切ってDVDをパソコンに挿入! にゅにゅにゅにゅー!
 
と、同じところでやはり停止。この馬鹿パソコン! プレステ2! 28日後に何があるの! 馬鹿、えっと後は、馬鹿ツタヤ! イーンターネッートッツ! アトック!
 
2004年07月15日(木)  買える物は恋愛歪言。
 
とうとう僕の書いた本が商業ラインに乗ることになりました。発売です。本日発売です。うほー。これで夢の印税生活だー。青山の高級マンションに住んで、それからはべらかして、何かわかんないけどとにかくはべらかして、ウハウハな毎日を送ってやるという取らぬ狸の皮算用。親にさえ出版したといえない際どい内容。恋人に見せると軽蔑させられそうな文章。それでも誇りを持って、本日出版いたしました。
 
自分の本が届いてまず何をしたかというと、ページを開くわけでもなく誰かに自慢するわけでもなく、本棚に並べてそれを並べる。好きな作家の横に並べて、おぉ、町田康の横に僕の本がある。同じフィールド? ダメ? ダメか。と、本を取り出しようやくページを開く。今まで何十回も読んだ文章が紙の媒体になって僕の目の前にある。うほー。本になってるよ。さて、寝るか。
 
と、興奮するタイミングのようなものを微妙に逃してしまって、というか本が発売されているということをいまいち実感できない僕は恋人に電話。
 
「ねぇ、買った?」
「何を?」
「モロッコの市場で買った何か」
「200ディルハム?」
「嘘だよ。今日発売なんだよ」
「知ってるわよ。ちゃんと注文したよ。おめでとう」
「ありがとう。こんど出版祝いの食事に行こうね」
 
「うん。何食べたい?」
「チュニジアの港町で食べた何か」
「15ディナール!?」
「嘘だよ。うーん何食べよう。ていうかお酒飲みたいね」
 
「うん。私ももうすぐハタチだし。何飲む?」
「ポルトガルのレストランで飲んだ何か」
「3ユーロ!? もう意味わかんないことばっかり言わないでよ」
「ゴメンなさい」
「でも言葉の通じない彼に出逢った何かはプライスレスだわ」
「うまいこと言うね」
 
「というわけで」
「お金で買えない価値がある。買える物は恋愛歪言」
 
おあとがよろしいようで。
 
2004年07月14日(水)  まぁいいや。ちゃんとしとけば。
 
ほんと日記は毎日書かないとすぐ溜まっちゃう。今日は7月18日でこれは7月14日の日記。んまー。横着不精無頓着。明日の日記で【恋愛歪言】発売のことを書きたいんだけど、実際もう発売して3日過ぎてる。しかも7月18日っていえば、僕は夜勤明けで羽田空港に行って鹿児島に帰ってるはずなんだけど、なぜかいつもの部屋で、こんな馬鹿げた時間に日記を書いている。
 
なぜかって言われても、物事が予定通りに進まないことが人生というものでございまして、予定通りに進まないから人生ともいえるわけで、なぜ今回の帰郷の件も予定通りに事が運ばなかったというと、やはり直接的な理由は上で申し上げた通り、僕の横着不精無頓着の性格に由縁しているわけでして。僕がちゃんとしとけば、このちゃんとしとけばっていうのは、ほんと僕の人生で重要な要素なんだけど、「ちゃんとしとけば」ね。後悔するときに使う言葉。僕はいつもちゃんとしとけばな人生を送っていて、一度ちゃんとしとけばを味わえばそれを教訓にし、次こそはちゃんとしようと思うのだけれども、喉元過ぎれば蛙飛び込む水の音っつーか、まぁいいやって、このまぁいいやっていうのは、ほんと僕の人生で重要な要素なんだけど、「まぁいいや」ね。物事を諦めたときに使う言葉。僕はいつもまぁいいやな人生を送っていて、前述の「ちゃんとしとけば」と「まぁいいや」の間を行ったり来たりしながら、そのときの気分によって「ちゃんとしとけばモード」に入ってふさぎこんだり、「まぁいいやモード」になって楽観したりしているのです。
 
と、これだけ書いたらいいでしょう。日記らしいでしょう。内容空っぽなんだけどね。まぁいいや。明日からちゃんとしよう。
 
2004年07月13日(火)  トロイ店員。
 
特に理由もなく、携帯を買い替えようと思い、特に理由もなく、駅前の激安ケータイショップに入ったのがそもそもの間違い。なんというか、激安とうたったり、店内がドコモやらエーユーやらボーダフォンやらごった返しになって何がなんだかわからなくなっているような種類の店というものは店員が馬鹿と相場が決まっている。
 
茶髪の男。「っしゃいませ!」威勢だけはいい。脳味噌の中で「客が入ってきた→快く迎えなければいけない→そのためにはいらっしゃいませという感謝の言葉は不可欠である→だからいらっしゃいませと言う」というプロセスを踏まず、ただとりあえずと言った感じで、言って損はないという感じで「っしゃいませ!」
 
「新規ですか? 機種変ですかぁ?」
 
もうこの時点で僕はまっすぐだった機嫌が少し斜めになる。なんと座ったまま僕に喋りかけているのだ。なんたる無礼者。客に対して座ったまま横柄な応対が許されるのは質屋の親父くらいである。こんな茶髪の青二才が客に座ったまま応対するなど、しかもネクタイは締めているが、シャツはズボンの外に出すというだらしない格好で。よって新規が機種変か、その店にとって重要な項目である質問に対しても無視。茶髪の店員が頭の中で思っている言葉を拝借するとシカト。
 
「この機種が欲しいんですけど」
 
すでに買う気が失せた僕は、無作為に抽出した機種を手に取り店員の顔を見ずに話し掛ける。依然座ったままの店員、「新規ですか? 機種変ですかぁ?」と再び訊ねてくる。そして僕無視。茶髪の言葉を拝借するとシカト。この客は新規か機種変か、こっちにとって今後のセールストークを発展するにあたっての重要なファクターをなぜか教えてくれない不気味な客という先入観を植え込ませる。この後たいした予定が入っていない僕はすでにこの茶髪の店員イジメに入っているのだ。
 
「うーん。やっぱりこれにしようかな」
「それ! それっすか! それ! それちなみに僕も使ってます!」
 
無視。いちいち僕の感情を逆上げする男である。「ちなみに僕も使っている」この言葉に何の効果、どのような説得力があるというのだ。「僕が使ってるから間違いない」もしくは「センスいい」などと思っているのだろうか。気分が屈託。店内には浜崎あゆみが流れていて更に屈託。
 
「ちなみに、そちらにする場合、新規ですか? 機種変ですかぁ?」
 
どうしても聞きたいらしい。でも答えたくない。だって新規でも機種変でもなくて、ただキミをいじめたいだけなんだもの。よって「は?」と聞こえない振り。
 
「は?」
「だから新規か……」
「え? 何? それにしても座ったままでさっきから」
「あ、あ、すいません」
 
と、直球でいじめてみたり、
 
「えっと、機種変なんだけど」
「それでしたら今の携帯のご利用期間はどのくらいですか?」
 
無視。と、理不尽にいじめてみたり。と、この僕が変に機嫌が悪い理由は、この携帯ショップに寄る前に映画を見に行って「ブラザーフット」が見たかったんだけど上映始まっててしょうがなく「トロイ」を見てしまって、この「トロイ」という映画、どうしようもなくつまらない金ばかりかけているハリウッド映画で、つまらない映画を見た後特有の、映画館を出て1時間経ったら物語の内容をあまり思い出せないという種類の映画で、その映画を見た後にこんな馬鹿店員がいる携帯ショップに寄ったものだから茶髪の馬鹿店員にはあまり罪はないのだけど、なんていうか、こう、ジョーカーばかり引いてしまう1日のような感じがして、気分が屈託。
 
2004年07月12日(月)  受容と供給。
 
あー。今日も夜勤頑張ろうと病棟に入った僕の顔を見た途端、涙を流し喚きながら抱きついてくる患者さん。今日あったイヤな出来事、過去にあったイヤな出来事、そして将来起こるであろうイヤな出来事を次々と話し掛けてくる。抱きつかれて肩の部分が涙と鼻水でびしょびしょになった僕は、笑みを浮かべながら「受容」という意味を態度で表しながら。
 
その患者さんは感情のコントロールがうまくいかず、度々周囲とトラブルを起こす。トラブルの原因は簡単。周囲がその感情の波に乗ってしまうから。相手が泣いていると慰める。怒っているとなだめる。この当然と思われる行為も、実は相手の感情の波に乗っているということになる。
 
さて、夜も更けてきた午後10時。ボールペン片手にナース室に入ってくる。表情が硬く、手が震えている。
 
「もう僕は死にます」
「あら。どうやって?」
「このペンで手首と、首を刺します」
「何も今そんなことしなくても」
「ヨシミさんの前だったら安心して死ねます」
「安心してくれるのはありがたいけど、僕が死ぬとこ見て安心できるわけないじゃない」
「でももう死ぬしかないんです」
「ほら、ここでさ、○○さんと僕二人きりでさ、現に○○さんが死んじゃったとするでしょ。そのペンで首なり腕なり刺してさ、で、そっからだよ問題は。多分周囲は僕が殺したって思うよ。それは困る」
「でも僕は死ぬんだから関係ないですよ」
「うーん。でもそういうことなんだよね。○○さんが死んで僕が困る。ほら、僕もまだよくわかんないんだけど、生きてるってそういうことなんだよ。今まで何の接点もなかった人が、今後ずっと困ることになる。ね、自分だけの命じゃないって、なんかわかるような気がするでしょ」
 
患者さんが辛いのはわかっている。僕に「死」というカードをちらつかせて何を訴えようとしているのかも理解できる。しかし、ここで相手のペースに乗ってはいけない。相手の言葉をゆっくりと飲み込んで、相手が予想していない返事を投げ掛けて、徐々に相手の感情をコントロールしていく。精神科勤務の10年選手を甘くみてはいけない。
 
さて、夜も明けて○○さんも死ぬことなく、何事もなく経過した平和な夜勤が終わろうとした午前8時。○○さん、僕の目の前で突然気を失い廊下に倒れる。
 
ヒステリー発作。
 
聞いたことない人は勉強して調べてみましょう。勉強すればするほど意味がわからなくなります。さて、僕の目の前で患者が倒れて僕がとる行動。まず、ヒステリー発作での転倒は、怪我をすることは少ない。理由は、まぁ、いろいろあるわけで。で、怪我がないことはわかっているので、とりあえず患者さんの横を通り過ぎてテレビの前へ。
 
「あー。今日雨だって。あー。洗濯物今日も干せないよ。あー」
「看護師さん。○○さんが倒れてますよ」
「うん。○○さーん。ほらー。○○さんが昨日言ってたでしょ。明日雨降るって。当たってるよ。今日雨だって。参ったなぁ。ねぇ、○○さん、ほらちょっと見てよテレビ。そしてなんとかしてよ。晴れるって言ってよ。ねぇ、ちょっと起きてこっち来てよ」
 
○○さん、起きあがり僕の横、テレビの前へ。さて、なぜ○○さんはすぐに起き上がったのか。説明するのは難しいけど、その病態、今回の場合はヒステリー発作を日常レベルに落とすということ。いわゆる特別なものとしてみないこと。説明するのは難しいけど、精神科看護とはそういうもの。教科書には載ってないことを体で学んでいくものなのです。
 
2004年07月11日(日)  ストッキングで隠してみよう。
 
女性は足の指を出したらあかんと思う。
 
例えば、この季節、ブーツを履いている女性などいるわけがなく、ちょっとお洒落な女の子は皆ミュールを履いている。ミュールはいかんと思う。足の指が露出されるから。
 
足の指が醸し出すエロチシズム。なんというかうなじに欲情したり、鼻の穴にムラムラするという種類のかなり偏屈した種類のエロチシズムには間違いないが、足の指。僕は足の指に弱い。電車で隣に足の指丸出しの女性がいたら、もうドキドキしっぱなしで、見てはいけないものがそこに丸出しにされてるという事態は精神衛生上よろしいわけがなく、まだオッパイ丸出しの方が安心できる。
 
という理由で、彼女には極力ミュールを履くことを控えて欲しいのだけど、そんな彼の心、彼女知らずというか、知ってても困るんだけど、僕の知らないどこかで今日も足の指丸出しで商店街などを往来していると思うと、彼女の足の指を無抵抗に閲覧できる往来の人々に対して嫉妬の炎がメラメラと自分の内側で燃えていて、嫉妬しないように嫉妬しないように。彼女が足の指丸出しで道を往来するのならこっちにも考えがある。僕は電車で隣に座ったお姉ちゃんの足の指で欲情してやる。とドキドキしながら隣のお姉ちゃんの足の指を覗こうとするのだけど、できなーい。恥ずかしくてできなーい。
 
なぜ僕はこんなに足の指如きに欲情してしまうのだろうかと分析してみたところ、足の指のあの不細工なオブジェにヒントが隠されているのではないだろうか。
 
足の指。どう見ても、どのような角度から眺めても格好悪い。それでも尚、女性は足の指にお洒落を求めようとする。マニキュアを塗り、あえて足の指を世間にさらす。この太古から存在する5本の不細工なオブジェと現代のお洒落が融合できていないというこのギャップ。このギャップに男は、違った、僕は興奮するのだろう。
 
それではストッキングを履いてミュールを履くというのはどうだろう。どうだろうって誰に問題提起してるのかわかんないけどどうだろう。ブラジャーで隠されているから乳房に対するエロチシズムが喚起されるように、ストッキングで包まれているからこそ、足の指は更にその潜在的なエロチシズムを開花することができるのではないか。できるのでーはーなーいーかー。今度彼女に頼んでみよう。僕は彼女にくだらないことばかり頼んでいる。
 
2004年07月10日(土)  大億劫。大正解。
 
エアコンね。僕の部屋に備え付けの骨董品のようなエアコンね。リモコンがついてないというか壁に貼り付けているタイプのやつね。ものすごい電気代食いそうなやつ。
 
部屋に帰ってきたら暑い。暑いからエアコンのスイッチ入れるわけね。で、服脱いで、僕は大抵部屋の中ではパンツ一枚で過ごしているんだけど、このエアコン。すぐに冷える。尋常ではない寒さになる。でも最初は心地良いわけね。部屋に帰って野球見ながらペタジーニのヘルメット小せぇなぁ。とか思いながら心地良いわけ。うちのエアコンすぐ冷えるから。
 
でもなんていうか、このエアコン融通が利かないっていうか、もうとことんまで冷えるんですよ。うぉぉりゃーみたいな勢いで。凍えてしまえーみたいな感じで。
 
で僕はソファーに座りながらあぁ寒くなってきた。このエアコンが考える25℃っていうのは他のエアコンのどのくらいのレベルなんだよって。25℃の概念はいかほどのものかって。いや、ペタジーニの耳がでかいからヘルメットが小さく見えるのかって。
 
でもリモコンは壁に貼り付いている。貼り付いていること自体リモコンじゃないんだけどね。で、面倒臭い病発動。パンツ一枚で服を着ること自体面倒臭い。かといってシャワーを浴びて温まるのは余計面倒臭い。僕はこのまま面倒臭いに埋もれていって死んでしまうんだ。そろそろ引越しの荷造り始めなきゃいけないし。それを考えるともうものを考えること自体が面倒臭くなる。仕事ではあんなにシャキシャキハッチャキ動いてるのにね。その反動っていうのはすごいね。無気力!
 
「面倒臭い面倒臭いって……。それで相手の母性をくすぐろうと思ったら……おそらく大正解よ」
 
昔の彼女が言った言葉。今の彼女の母性もくすぐってみたいけど、いかんせん遠いところに住んでるのでくすぐっても欲求が溜まるばかりでー。この冷蔵庫のような部屋でー。1人でー。古いエアコンと向き合いながらー。
 
2004年07月09日(金)  入籍しました。
 
僕には妹が二人いて、長女は結婚してて今年の3月に男の子を出産しました。で、次女は昨日、めでたく、入籍しました。
 
>こんばんは! 6日に入籍するばずだったんですけど書類が足りなくて本日無事入籍する事が出来ました! これから僕のお兄さんとしてよろしくお願いします! まだまだ未熟者ですがしっかり頑張って幸せにします。本当にこれからもよろしくお願いします! 弟より
 
妹の旦那よりメール。「弟より」って言うところが! 僕に弟ができたってところが! 長女の旦那は僕と同じ歳なので弟って感じじゃなくて親友って感じなんだけど、次女の旦那はもう弟って感じで! 僕よりがたいでかいんだけども!
 
そして「書類が足りなくて本日無事入籍する事が出来ました」このアバウトさがまた僕の弟たる所以で。一世一代の大切な日を書類が足りないという理由で流してしまうこのアバウトっぷり! 大好きです。
 
しかもなぜ予定が7月6日? どうせなら七夕の日に入籍すれば格好良いのに。ねぇ、なんで? 「いや、七夕っていうのは彦星と乙姫が1年に1回しか会えないでしょ。なんかそれって悲しくないですか」なんて格好いいこと言うのかなぁって思ったら「いや、なんとなく」って! ちょーアバウト! 大好きです。妹より旦那の方が僕に似ている。
 
なにはともあれ幸せに。7年付き合ってのゴールです。ゴールでありスタートです。僕はこの7年間、いろんな女性と付き合って1人もゴールインできなかったというのに、妹は7年間、たった1人の恋人と、永遠の愛を築き上げていってたのです。脱帽。
 
7月9日。僕に弟ができました。来週帰郷するので、長女の旦那と次女の旦那と僕とプレステでキン肉マンするのです。酒飲みながら。あぁ長男は独身でも幸せ。家族って素晴らしい。
 
2004年07月08日(木)  ハワイの旅。(後編)
 
午後からようやくプールへ。朝から飲んでいた酒がなかなか抜けないので、流れるプールに水死体のように流される。あぁ、あの馬鹿でかいすべり台で滑ってみたい。でも僕は男。男1人で流れるプール。周りはカップルばっかり。平日なのにカップルばっかり。恋だの愛だの語ってないで仕事をすればいいのにと思う。
 
ひじょうに寂しくなって彼女にメール。
 
「ビ、ビキニ万歳!」
 
私は不愉快です。本気で怒りました。そうやって性欲剥き出しでビキニを眺めていたらいいと思う。というような旨の返信がきて、それ以来、いくら彼女にメールを送っても返事が返ってこなくなったので、同室者2名にも彼女にも見捨てられ、僕は本当に流れるプールで1人になりました。
 
しかしいいねビキニ。たまらんね。とにかく酔っているので誰もかれもがべっぴんに見える。「べっぴん」なんて言葉が頭に浮かんでくること自体、酔っている証拠なんだけど、ビキニビキニどこを見てもビキニ。そしてその横に男。平日なんだから働きなさい。うらやましいなぁ。カップルでハワイごっこかぁ。バーチャル新婚旅行かぁ。僕なんて東北のハワイで酒浸りだよ。彼女怒っちゃったし。と、流れるプールで水死体の如く。
 
2004年07月07日(水)  ハワイの旅。(前編)
  
「天気いいねー」
「そうですね」
「今日36℃だってさ」
「そうですね」
「朝風呂浴びてこよっかー」
「そうですね」
 
と、朝が弱い僕は、何を話しかけられても「いいとも」状態。とりあえず「そうですね」を繰り返し、意味もなくヘラヘラと笑ったりする。朝風呂なんて入る元気がない。そんなテンションに持って行けない。
 
「朝食はバイキングなんだってさ」
「そうですね」
「あれ、知ってたの?」
「そうですね」
「今日36℃だってさ」
「そうですね」
 
ようやく僕のローテンションぶりに気付いた相手は僕を残して風呂に行ったのか朝食に行ったのか。這うように冷蔵庫へ行って昨日の残りのビールを飲んで目覚ましテレビ見ながらえへらえへらしてたらようやく目が覚めてきて、よし、風呂に入ろう。アルコールを発散させよう。とフラフラした足取りでエレベーターに乗って、あからさまな嫌悪感を示す同乗者に一瞥し、脱衣所で歩きながら浴衣を脱ぎ捨て屋上展望風呂にダイビング。
 
わーいわーいばーかばーか。と、朝から酔っているので考えていることも子供じみているというか、自分自身でも何を言っているのかわからない。しかしアルコール摂取後の風呂は格別。毛穴からアルコールが発散されるようなあの感覚! 癖になってしまう。
 
で、1時間くらい風呂に浸かって、アルコールを発散させて実にすがすがしい気分で部屋に戻ると、朝食を済ませたAさんとBさんが、「プールで泳いでくるよ」と、また僕を放り出して部屋を出ていった。あーん。寂しい。なんてことはなく、もともとそんな仲の良くない人達と来てしまったこの旅。一人のほうがなんだかゆっくりできる。とにかく僕は一人にならなければゆっくりできない。冷蔵庫開けてビールぐびぐび。外は晴れ。プールは満員。こんな赤い顔でプールになんて行けない。筋肉隆々のなんとかセーバーのお兄ちゃんに止められてしまう。あぁビール美味し。朝から飲むアルコールは格別じゃあありませんか。ちょっと温泉行ってこよ。
 
と、今度は違う棟にある露天風呂に行って、脱衣所で歩きながら浴衣を脱ぎ捨て露天風呂にダイビング。
 
そんな酒にまみれた午前を過ごしたハワイの旅。
 
2004年07月06日(火)  フクシマトヲイ。
 
東京を車で10時に出発して、福島のスパリゾートハワイアンズに到着したのが午後3時。5時間! 5時間も掛かっちまった! 途中でドライブインで糞をしたり、飯を食ったりしたものの、5時間も掛かるとは。僕は正直福島県が日本列島のどの部分に位置するのかわからなくて、きっと長野県辺りだろうと思っていたけど、長野県の場所もわからなくて、まぁ、2・3時間で着くでしょと楽観視。
 
運転手のAさんは「あぁ、もうすぐ。もうすぐ着くよ。次のドライブインで休憩しようか」と、話を逸らすか休憩しようとするばかりで、大はしゃぎのBさんは「これ! このCD掛けてください」と後部座席からCDを差し出し、何の曲かと思えばBOØWY。BOOWY! なぜBOOWY! 21世紀なのに! 布袋寅泰はもう42歳で高岡早紀と不倫なんてしてるのに! と、BOOWY全盛期の頃にさえ、聞いたこともなかったBOOWYをいつ到着するかわからない福島に着くまで延々とリピート地獄。
 
「ちなみにメジャーデビューする前は『暴威』だったんだよね」
 
と、どうでもいい知識を聞かされつつカーナビが「イバラキデス」とアナウンスを告げる。イバラキ。イバラキってどこにあるんだ。と、九州育ちの僕は関東地区の地理さえも正確に把握していない。「あぁ、もうすぐ。もうすぐ着くよ。次のドライブインで休憩しようか」と、Aさんはまた休憩のこと言ってる。「ホンキ〜トンキ〜クレイジ〜アイラ〜ビュ〜♪」Bさんノリノリ。歌詞の意味がわからないし、理解しようとも思わない。ホンキートンキーフクシマトオイ。
 
2004年07月05日(月)  ハワイに。
1ヶ月前。
 
A「んで行きたいねぇ」(皆が行くんだったら行きたい)
B「たまにはパーッとしたいですね!」(行く気満々)
C「いいねー。いいねー」(微妙)
D「うーん。温泉ねぇ。いいかもねぇ」(あんまり行く気しない)
僕「温泉! 嗚呼温泉! 行きたい!」(行く気ゼロ)
 
2週間前。
 
A「とりあえず5人分予約したよ」(皆が行くって言ったから)
B「マジっすか! やった! 温泉! 酒!」(行く気満々)
C「ホントに予約したのー? ありがとー」(ゲ。マジかよ)
D「じゃあみんなで休み合わせなきゃねー」(面倒臭いなぁ)
僕「わぁ。温泉なんて久々ですよー。楽しみだなぁ」(行く気ゼロ)
 
1週間前。
 
A「そっか。残念だねぇ」(行くって言ったのに……)
B「じゃあ僕たちだけでも楽しんできます!」(行く気満々)
C「ゴメンな。急な予定入っちゃって」(マジで予約入れるとは)
D「また今度機会あったら絶対誘ってね」(男5人旅はきついなぁ)
僕「でも3人でも行けるんですよね」(突然CとDが予約キャンセル手前、キャンセル三人目になる勇気がない)
 
3日前。
 
A「じゃあ3日後、○○駅で待ち合わせね」(3人だけど、ま、いっか)
B「飲む! 浸かる! 泳ぐ!」(行く気満々)
C「わかりました。とうとう3日後ですね」(風邪ひきてぇー)
 
7月5日。
 
A「それじゃあ明日。寝坊するなよー」(今日は早く寝よっと)
B「騒ぐ! 担ぐ! 喚く! 歌う!」(興奮しっぱなし)
C・D「気を付けてなー」(行ってらっしゃーい)
僕「行ってきまーす」(骨折してぇー)
 
 
 
というわけで、明日から1泊2日、男3人で福島の「スパリゾートハワイアンズ」に行ってきます。僕はAさんに気を遣ってばかりで心を開いて話せる仲ではないし、Bさんとは喋る機会なんて腐るほどあるのに、あんまり喋ったことがありません。貴重な2連休が!
 
2004年07月04日(日)  希望の朝だ。
 
後藤真希とセックスしていて、なんかアソコの形が変だなぁ。なんか違和感たっぷりだなぁ。と思いながらも腰を振り続け、頂点に達し、あぁしんど。アイドル相手でもセックスの後はとにかくしんど。と、ベッドサイドに腰掛けてタバコを吸っていたら、後藤真希がゴメンなさいと言うので、何を謝っているのだアイドルのくせにと、後藤真希の方を振り向くと、アソコの皮がひっくり返ってチンコ丸出しになって「ゴメン、実は私オトコだったの」という非常に後味の悪い夢を見て目覚めた午前6時半。
 
テレビのスイッチを入れてニュースの芸能ウォッチだかなんだかそういうやつを見てたら後藤真希が出ている。あ、さっきまで僕とセックスしてた後藤真希だ。でもこいつオトコなんだよなぁ。参ったなぁ。オトコとセックスしちゃった。お母さんに何て説明したらいいんだろう。とタバコを吸いながらまだ寝ぼけている。
 
そんな状態のままニュースを見ながら、曽我ひとみさん歯並びがよくなったよなぁ。保坂尚輝はメリットで頭洗ってるどころじゃないよなぁ。なんてどうでもいいことばかり考えながら2本目のタバコを吸い終え、ようやく、よし、歯でも磨くか。ということになって、歯ブラシに歯磨き粉をつけようとしたら歯磨き粉が切れかかっている。
 
ふんぬー。と声にならない声を出しながら歯磨き粉を捻出しようとするが、もうこの歯磨き粉限界だな。と思ったのが一昨日であって、昨日の朝は奇跡的にあと歯磨き一回分残っていたのであり、もう本当にこれが限界だなと昨日思って今日になってまた僕は奇跡が起こるのを信じている。ふんぬー。と言いながら。部屋に新しい歯磨き粉が置いてあるのに、それを取りに行くのが面倒臭い。だからふんぬーって捻出する。しかし奇跡は三度と起こらない。現実の厳しさに朝から愕然。歯磨き粉を床に投げつけマンコがチンコになった気分。
 
2004年07月03日(土)  やぁ、越そう。
 
今月末に引っ越すことになった新居は駅まで徒歩3分、職場まで自転車で10分という、なんとも贅沢な状況になってましてうはうは。
 
角部屋で日当たり良好。しかもその窓から池袋の夜景が見渡せるという絶好のポジション。なぜこんな素晴らしい部屋を見つけることができたかと申しますと、別に何をしているわけでもなく、血の滲む努力をしていたのでもなく、好い加減に決めた場所がたまたま素晴らしかったというだけで。
 
日頃好い加減なことばかりして、良い結果に結ばれることが非常に少ない僕にとって、なんていうか、幸福貯金というか、あんまり今までいいことがなかった、っていうか、あったことはあった、あったけど、そのあったの度数? サイズ? みたいなやつ? 
 
その状況に与えられた全ての幸福をそこで全て浪費せず、ヤッターーー! と喜ぶところをヤッター! と、「ー」2個分をぐっとこらえて、その積み重ねで「ー」23個分くらい溜まったところで、よし、引っ越そうと。しかし足を使って部屋をまわるのは面倒臭いし、梅雨だし、ポロシャツとか汗で滲んじゃうしで、うーん。これ、できれば結婚するときとかに使いたかったけど、まぁ、いいや。暑いし。「ー」12個分くらい使おうかしらとドーン。使いましたドーン。で、ヤッターーーーーーーーーーーー! と歓喜の浪費と引き換えに今の部屋を手に入れました。
 
2004年07月02日(金)  はぁ、越そう。

あー。面倒臭い。
 
僕は「面倒臭い病」という病名がついてもおかしくないくらいに、何事に対してもまず面倒臭いと考えてしまう節があって、不動産屋から手渡された池袋近辺の賃貸情報が書かれた分厚いファイル。将来自分が住む部屋であるというのに、面倒臭い。探すの面倒臭い。帰って風呂でも入りたい。帰ったら帰ったで風呂入るの面倒くさいとか言い出すのだが、まず目の前にあるものが面倒臭い。もう池袋近辺だったらどこだっていいや。職場が近けりゃ万事オッケーです。
 
よし、上から5枚目の中から選ぼう。
 
今住んでいる部屋は、いけじょさんと一緒に不動産屋をまわって探した部屋であって、あの時も面倒臭い。どこでもいいと自分に対してものすごく無責任になっている僕に代わり、「ここはダメよ」「あそこがいいかも」「あー。あそこはダメ」などと、主にいけじょさんが不動産屋のお姉さんと対応してくれたのだが、今回はいけじょさんがいない。彼女もいない。誰もいない。僕しかいない。だから面倒臭い放題。
 
この賃貸ファイルの上から5枚目の中でどうしても選ばなければいけない。えっと、この5枚の中で選ばないと、えっと、どうしよう。あ、そうだ。今度鹿児島に帰郷の際、飛行機が落ちる。あぁ怖いなぁ。落ちるのイヤだなぁ。だからどうしてもこの5枚の中から選ばないといけないなぁ。
 
「あ、ここにします」
「え? もう決まったの?」
と、不動産屋のオジサン。
「はい。ここにします」
「ちょ、ちょ、ちょっと待って。もうちょっと探そうよ」
「ここにします」
「え? ホント? じゃあ実際に行ってみる?」
「うーん。暑いし、結構です。ここにします」
「ちょ、だから、ちょ、ほ、ちょっと待ってよ。見てよ。普通見るよ。オジサン一緒に行くからさ」
「じゃあ見ます」
「だったらさ、どうせ行くんだったらさ、あと2件くらい候補出そうよ。で、比較とかしてみようよ」
「んー。結構です。ここにしますから」
「ほら、ここ。ここなんてこれより安いよ。こっちの方なんて駅から3分で5万円だよ。おぉ。これなんだ。発見。発掘。大発掘。安い。安いね。ここ。東武練馬5万3千円。しかも敷金礼金なしときたもんだ」
「うーん。結構です」
「ほら、自分で住む場所なんだからさ、もうちょっと真剣に探そうよ」
 
と、僕はここでふと思った。これ恋愛じゃん。て。自分に無責任な僕に対して、少しは責任を持って欲しいと必死に説得する彼女。何に対してもどうでもいいと思っている僕に対して、どうでもよくないことを説こうとする彼女。僕はどうでもよくないことなんて十分理解しているのだけど、どうでもいいことと、どうでもよくないことの明確な違いなんて実はないんじゃないか。世の中のことって、たいしたことないんじゃなか。結局全てがどうでもいいことなんじゃないかという哲学的思想の元、運を天に任せているというか天を運に委ねているというか、まぁ、そんな感じで、ピースな愛のバイブスで、清水の舞台から、マンションの9階から飛び降りるつもりで、自分の哲学に基づいたいい加減な気持ちで、
 
「ここにします。ここに住みます」
 
えー。という文字が額に浮かんでいるような表情をする不動産屋のオジサンを、説得も何も僕は客なのだから、客の言う通りにしなさいという、なんだかフニャフニャした強引さで、僕の新居が決まろうとしていた。
 
2004年07月01日(木)  うん、越そう。
 
さて、ようやく引越しの意思が固まったはいいが、意思だけ固まっても行動しなければ何にもならない。よってとりあえず池袋へ行く。池袋に行ったら何かあるだろう。と、ぶらぶら。ぶらぶらぶら。あ、本屋。小説でも買おうかしら。あ、バーゲンやってる。夏物でも買おうかしら。あ、足痛い。喫茶店入って休憩。と、彼女からメール。
 
「部屋見つかった?」
 
見つかんないよ。そもそも部屋を探すという目的すら忘却してたよ。ありがとう彼女。このコは引越し手伝ってくれるのかしら。昔引越しのバイトしてたって言ってたからね。僕は何もしないつもりだよ。引越しの手続きだけ済ませて梱包は彼女に任せる。で、不動産屋。どっかにあるでしょう。だいたい東京にないものなんてないんだ。歩けば見つかるよ。ほらあった。
 
とあるビルの4階。消費者金融ですと言われたら、ああそうですかと納得してしまうような、柄が良いとはいえないオジサン4人が4つ並んだ事務机に座っている。奥の方で社長というか、この中のボス的存在であろうオジサンが、パソコンに向かって唸っている。
 
「また家賃、振り込んでないよ」「どういうつもりなんだ」「あの件はダメだね。値切ってくれしか言わない。こっちが嫌になるよ」「なんで大塚のあの部屋が開いてるんだよ」「あー。またアイツだよ」「保証人はどうなってるんだよ」
 
帰りたい。完璧に客を無視している。呆然と立ち尽していると、オジサンの中でも最も柄の悪いオジサンが、まぁどうぞ。と言って席を勧めてくれたので、お茶でも出してくれるのかしらと思ったら、そうでもなく、「はい、これ書いて」と、半切れの紙に個人情報を書けと言っている。イヤだなぁ。怖いなぁ。利率いくらなのかしら。と、気分はもう消費者金融。
 
「で、どういったところに引っ越すの? 今どこに住んでるの? 仕事は、年齢は、あ、結婚してるの? 暑いねしかし。あ、今どこに住んでるの? これ言ったっけ? あ、ちょっと待って。もしもーし。今接客中なんだよ。あとで掛け直してくれ。お前さんばっかりに構ってるわけにはいかないんだよ。だからあとで掛け直せって。あ、ゴメンね。で、なんだっけ。どこに引っ越したいの?」
 
矢継早に要領を得ないことばかり話し掛けてくるので、何をどっから答えていいかわからず、うろたえていると、「あ、もういいよ。とにかくこれ書いてよ」と、とろい人間に話し掛けるようなやや諦めの入った口調で先程の紙を差し出され、もう暑くて暑くて、冷たいお茶でも出してくれないかしらと思っていても、出してくれず、仕方なく、現住所、年齢、職業、年収などを簡単に記載し、オジサンに提出しようとしたらオジサン冷たいお茶を飲んでいる。
 
「あ、書いた? ちょっと見せてね。……。ふーん。ふーん。へーぇ看護師。ふーん。へぇ埼玉。ふーん。はい。はいはい。ちょっと待っててね」
 
と、一人で何かを納得して、分厚いファイルから次々に賃貸情報を僕に手渡す。この手渡し方が半端ではなく、本当に次々に僕に渡すので、これ何かの仕事? 何かの手伝い? と思う間もなく次々に渡すので、あっという間に僕の手元には、池袋近辺の住宅情報でいっぱいになり、これからどうするのかと思ってオジサンの顔を見ると、
 
「これから探してね」
 
と、それだけ言って電話応対を始めた。思いがけず突き放された僕は、しょうがない。この中から探そうと、ノドの乾きを訴えつつ、分厚い賃貸ファイルから、引越し先を探すのであった。
 

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