| 華のエレヂィ。〜elegy of various women 〜 | ||
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| 2002年09月27日(金) 受話器越しの情愛。 『消えた女』 |
<前号より続く> 10日ほど経ったあと、俺は再度テレコミへ電話してミオを指名した。 コレクトコールで繋がった瞬間、俺が話し掛けても返事がない。 「ねぇ、ユキコ?どうしたの?」 「ああん・・・あ、も、もしもし・・・?・・・ダメ」 「どうしたの?」 「だって、思い出しちゃうの・・・あの時の事・・・」 「もしかして、もう触ってるの?」 「・・・ゴメンナサイ・・・ダメなの、思い出すと我慢できないの・・・」 俺は彼女の言葉に驚いた。 俺の名前を聞いただけで、あの強烈な夜を思い出し、 そのえ記憶で滴るほど濡れたのだという。 そして繋がる間も待ちきれずに、 指でユキコ自身の突起を弄っていたと告白した。 俺は嬉しいものの、にわかには信じられない。 その日はそのままテレフォンSexに突入し、また言葉攻めでユキコが燃えた。 しかしやはり『新潟の方言』は素直に言えず、また口にさせると燃え狂う。 「我慢できずに、どこを触ってたの?」 「オ、オ○ンコ・・・」 「違うでしょ?言ってごらん?」 「・・・嫌、ダメェ、許して」 「じゃ、もう電話切るから」 「言います、言うから意地悪しないで・・・マン、マ・・・ンジョコです」 「あれから何回オナニーしたの?」 「本当の事言うの・・・私、すごくHな子だと思われるから嫌だ・・・」 「もう遅いよ、もの凄くスケベな子だと思ってるから」 「イヤァ・・・・」 言葉攻めは、相手との呼吸が合えばいくらでも次々と攻め文句が思い浮かぶ。 これも相性というのか。 ユキコはあれからほぼ毎日言葉攻めを思い出し、手淫を嗜んでいたという。 男として、これほど光栄な事は無い。 「マンジョコ、そんなに感じるの?」 「もう壊れてるぅ、だっていくらでも溢れて来るんだもの・・・」 「本当だ、すごく濃い、白い汁が垂れてる・・・・ほら、こんなに糸引いてるよ」 「嘘ぉ・・・嫌だぁ、すごく恥ずかしいよぉ・・・」 こうなると、絶頂まで時間は掛からない。 「ほらほら、もっと腰を大きく振るよ!奥まで突き上げるぞ!!」 「ダメ〜〜〜ッ、ああ、ああああ、またイッちゃう〜〜〜ぐうううっっ!!!」 俺の煽りとリードでユキコは絶頂に達し、また燃え尽きてすすり泣く。 「大丈夫かい?そんなに大声出して・・・」 「もう・・・でも自分でどれだけ声が大きいかなんて・・・分からない・・・・」 「相当、大きいよ・・・俺が受話器を落っことしそうになるくらい」 「本当なの?・・・でもね、この前も全身が筋肉痛になったの・・・」 全身が筋肉痛になるほど、ユキコはテレフォンSexでエネルギーを発散したという。 しかしあの猛り狂うような喘ぎ声を思うと、俺も妙に納得できる。 一人暮らしのユキコのアパートはワンルームで、壁が薄いそうだ。 その環境であれだけの声を張り上げると、絶対隣り近所に聞こえるはず。 女性の喘ぎ声というのは、不思議な程よく通る。 同じ女性の話し声や笑い声よりも、壁を伝ってまでも聞こえるものだ。 「近所迷惑になるかもね」 「・・・でもダメなの、思い出すだけで・・・」 「もし俺たちが会ったら、どうなるだろうね?」 「・・・言わないで、それだけで想像しちゃうから・・・」 「・・・ユキコ、また触ってるでしょ?」 「・・・何故分かるの?・・・そんな事言う平良がいけないんだからねっ」 その後またユキコは絶頂の快楽に次々と喘ぎ尽くすことになる。 俺もいい加減抑えればいいものを、彼女の変貌が可愛く思い、つい煽ってしまう。 2週間後。 テレコミに再度ミオを指名しようと電話したところ、受付が怪訝そうに言った。 「ミオさん?新潟の人ですねぇ・・・前回の電話の後、辞めましたよ」 「辞めた?何故ですか?」 「この前の電話の数日後、泣きながら『引越します』と言ったまま・・・」 「引越し?」 「それ以上何も言わずに電話を切られたけど、それからは音信不通です」 彼女の声が脳裏によぎる。 さすがに近所から苦情でも出たのか? 「何かトラブルでもありましたかねぇ?」 受付の男はその口調から、俺が彼女を傷付けて辞めさせたと思っている様子だ。 「いや、何にもありませんね」 「そうですか、また新しい女性が登録されてるので紹介しますよ」 「まあ・・・今夜は結構です」 俺はユキコの声が聞きたかったのだ。 彼女との擬似情事を楽しみにしていたのだ。 電話を置いた俺は、しばらくユキコの様子が心配でならなかった。 しかし俺からは何の行動も取れない。 テレフォンSexとはいえ、あれだけの濃厚な時間を過ごした相手だ。 行きずりの相手との「情無き情事」よりも、相手への思い入れが深くなる。 しかし空しい事に、その店で俺はその後ミオの名前も声も聞く事は無かった。 |
| 2002年09月26日(木) 受話器越しの情愛。 『絶叫する女』 |
<前号より続く> その時に、俺の中で『新潟』という地名が浮かんだ。 これしかない、これがダメなら諦めよう。 「ミオ、どこに欲しいって言った?」 「え、オ○ンコに」 「ねぇ、新潟の方言で言ってごらん、オ○ンコを」 「・・・い、言えないっ!!」 地方出身の人間にとって、方言は切っても切れない関係がある。 そして「女性器」ほど方言で言い方が違う単語はあるまい。 その種類は男性器を示す単語よりもバラエティーに富む。 新潟のミオが標準語の「オ○ンコ」と言ってもあまり恥ずかしいと感じない。 それはきっと生活に密着した方言での言い方が違うからだと直感した。 俺は関西出身なので、同じ意味の言葉でも「オ○ンコ」と「オ○コ」では、 三文字の方がより淫靡に聞こえる。 各地方の文化や歴史の中で秘めたる言葉として個々に受け継がれてきた言葉。 そしてこれだけ文化の交流が活発になった現代社会でも、今だ方言で通用する言葉。 女性器の名称とは、実に奥深い文化だ。 「言えないんなら、絶対に入れてあげない。俺のすごく勃起しているのに・・・」 「許して、それだけは許して!」 「ダメ、言ってごらん!でないとクリトリスに擦りつけて俺だけイクからな」 「言えないのぉ!オ○ンコ、オ○ンコに入れてぇ・・・」 「違うだろ?いいよ、もう電話切るから」 「ダメ!言うから切らないで・・・・」 ここまで来ると、もの凄い駆け引きだ。 ミオの羞恥心に屈するか、俺の賭けがミオを本気にするか。 「言ってごらん、なんて言うの?」 「マ・・・マ・・・」 「マ?」 「マ・・・マン・・・」 「電話切るよっ!」 「あ、ダメ・・・・マン・・・」 その一言を言わせるために、そしてミオをさらに燃え上がらせるために、 俺はミオの羞恥心を煽りに煽った。 「マン?電話切るよ!」 「マン・・・ジョ・・・ジョコ・・・」 「聞こえない、はっきり言って!」 「マンジョコに入れて・・・!」 「マンジョコ?へぇ〜っ、新潟ではマンジョコって言うんだ?」 「ああん、もういいでしょ?早く頂戴・・・」 「だから何が欲しい?」 「だから・・・平良さんの、オチンチン・・・」 「新潟ではなんて言う?」 「・・・それも言うの?それだけは許してぇ・・・」 「電話切るよ?もう二度と掛けないよ!」 「ダ、ダン・・・・いや、チ・・・チョ・・・ンボ」 ミオは受話器の向こうで、恥ずかしさと高まりのあまり泣いている。 しかし俺は許さない。 「恥ずかしいの?」 「・・・・うん」 「じゃあ、もう一つだけ。誰のマンチョコに欲しい?」 「あ、私・・・ミオの」 「ミオ?ミオじゃないでしょ?」 「え?」 「源氏名じゃない、本名のあなたにチンボを入れたいから・・・言ってごらん」 「本名・・・?」 「絶対内緒にしておくから」 「・・・ユキコ」 「ユキコ?」 「雪国だから、冬に生まれたから・・・ユキコ」 「じゃ、最初から続けて言ってみて」 「・・・」 「ほら、俺の固くなったのが、ユキコの入り口まで来ているよ」 「・・・早く入れて・・・」 ミオ、いや本名のユキコはすでに泣き声だった。 しかしそんな状況でも、俺のサディスティックな本能が興奮に疼く。 「泣かないで・・・全部言えたら、すぐ入れてあげる」 「・・・・本当?」 「本当だって、さあ、全部言ってごらん」 「・・・・ユキコのぉ、マン・・・ジョコに、平良のチ・・・ンボを入れて」 「もっとはっきりと大きな声で言って!」 厳しい要求の後には優しくなだめ、相手が甘える素振りを見せると突き放す。 我ながら、なんと女扱いのひどい事か。 「ああん、ユキコのマンジョコにチンボ入れてぇ!」 「俺のが欲しいんでしょ?小さいままでいいの?どうなったチンボ?」 「ユキコの、マンジョコ・・・に平良の・・・大きくなったチンボ・・・入れ・・・!」 ユキコは涙ながらに卑猥な淫語をようやく並べて、言葉にする事が出来た。 「言えたね・・・じゃ奥までグゥーっと入れるよ!」 俺はユキコの『マンジョコ』に中指と薬指を押し入れるように指示した。 そして彼女の奥の一番気持ち良い所に当たるように、大きくピストンするように言う。 これを彼女が本気で行動に移すかどうかが問題ではない。 彼女自身の欲望と妄想の中で本気になっているかが重要なのだ。 テレフォンSexを理解していない輩は、こういう部分の理解が足りないのかもしれない。 男は直接的な刺激でないと燃えないが、女は妄想的な愛撫でも充分燃え上がる。 レディースコミックを読んでみると、細かいSexの描写があまりない。 ただSexを間接的に連想させる設定や経験を思い出させる情景を加味する事で、 女性読者は自分の妄想の中で盛り上がっていくのだ。 話し方が大人しい印象を与えたユキコは、 受話器の向こうで正しく繁殖期の野獣のように猛り声を上げる。 表現するのが難しいが、いわばア行の「母音」に濁点と半濁点を一緒に付けたような、 そんな腹の底からの、声ならぬ喘ぎ声だった。 淫語に理性を壊され、歯止めの利かなくなった性衝動がユキコを激しく突き動かす。 今まで押さえ付けてきた性衝動の代償を一度に果たすべく。 俺はその声の激しさに驚くものの、ユキコの貞淑な話し方と変貌した本気の姿との ギャップに興奮しきっていた。 「激しく突かれて・・・こんなにいやらしい顔をしているぞ!」 「いやああ、いやああっ見ないで、見ないでぇ!」 「全部見えているよ!マンジョコの濡れた音も全部聞こえるよ!」 「ダメェ、オカシクなるぅぅぅっ」 「いいよ、狂ってみな!男にユキコの全てを見せ付けてみろ!」 「見て、見て、見てェ!私をみてぇぇぇ」 「マンジョコがチンボにかき回される音、ユキコのマンジョコから聞こえるね」 「ダメ、ダメダメ、恥ずかし過ぎるぅ!」 「ほら、潮吹いたみたいにグショグショに濡れてるぞ、いつもこうなるのかぁ?」 「いつもじゃないもん!今日だけだもん、ああああああっダメェッ!!」 普段ならとても口に出して言えない言葉をこれだけ無理やり羅列させられると、 とても冷静ではいられない。 俺も受話器の向こうのユキコも、すでにトランス状態と化す。 ユキコの様子が変わってきた。 くぐもるような声を出し、声がハスキーになる。 「ねぇ、イキそうになったら言うんだぞ」 「ダメ〜〜〜〜、それ以上突かないでぇ〜〜〜壊れる〜〜〜うっっっ!!」 「壊れちまえ!ほら、男の前でグチャグチャに壊れちまえ!」 電話口で、俺はユキコの淫靡な部分を最後まで煽り立てる。 「イキそうだ、俺もイキそう!」 「あああ〜〜あ〜〜あああん、ああ〜〜〜あああああん、わ、私もぉ!」 「ユキコ、俺にしがみ付いて!一緒に!・・・早く奥突いて、もっと!」 「アアアアアア、アアアッイイックウウウウウウ〜〜〜〜〜〜〜ッッッ!!」 ・・・・・・・ しばらくの無言状態が続く。 俺が受話器から耳を離すほど、腹の奥から絶叫し尽くしたユキコ。 気が付けばシクシクと泣いていた。 「大丈夫?意地悪しすぎたかな?」 「・・・・・・ひどいよ、本当に恥ずかしかったんだから・・・」 「ゴメンよ、あまりに可愛いと思ったから・・・」 「・・・・でもね、こんなに感じたの初めて・・・本当よ・・・」 その涙は、俺への憤怒だけのものではなかったようだ。 しばらくすすり泣き、落ち着いたところで俺たちは電話を置いた。 時間はとうに午前0時を廻っていた。 <以下次号> |
| 2002年09月25日(水) 受話器越しの情愛。 『感じる女』 |
<前号より続く> ミオは俺の囁きに一瞬、驚きの声を上げた。 「・・・えっ」 「そっと倒してから・・・君の耳にkissするな・・・そういう事、嫌い?」 「・・・ううん、嫌いじゃないけど、ダメ・・・」 「・・・どうして?」 「・・・だって我慢出来なくなっちゃうから」 「何が?」 「・・・・我慢できなくなる・・・」 「だから、何が?」 「・・・・」 ミオははっきりと言えなかった。 しかし彼女の頭の中でどんな言葉が飛び交っているか、容易に想像がつく。 「それから胸を服の上から大きく触って・・・・掌で大きく揉んでいく」 「・・・・」 「想像してみなよ、男にそうやって身体を徐々に触られるところを」 「・・・・やっ」 ミオは言葉を発しないが、俺の耳には届いていた。 少しずつ、深く早くなる呼吸が。 ごく小さい声で抵抗してみせた声が。 俺に抵抗したのではない。 抵抗を見せたのは、ミオの軽い妄想の中で彼女を愛撫し始めた男に、だ。 「今どんな格好?」 「・・・ブラウスに、Gパン」 「ブラウスの上から触っていると、もうブラの中で固くなってるのが分かるね」 「・・・えっ」 「これ、乳首じゃない?・・・ほら」 「・・・やっ」 「俺、意地悪だからね・・・摘んじゃおう」 「・・・あ、やっ」 ミオは徐々にテレフォンSexという倒錯の世界に浸っていく。 俺も徐々に雰囲気を出すべく、声色を変えて囁くように語りかけた。 俺は女性が淫らにならばなるほど燃える性質だ。 あくまで女性を妄想させるためにも、最初は直接的な淫語や表現は控える。 自分からその言葉を脳裏に思い浮かばせる。 そうして「私はなんてはしたないんだ」と思わせる事が大事だ。 妄想の中の男が彼女をどう愛撫するのか、俺が出来る限り事細やかに状況を囁く。 そして少しずつ女性の性欲と肉体をアイドリングしていくのだ。 「ミオ、もうすごく身体が熱くなってるんじゃない?」 「・・・言わないで・・・恥ずかしいから」 「だって、キチンと言葉でいってくれないと、電話じゃ分からないから」 「・・・なんて言えば良いの?」 「今、俺にどうされたい?」 「・・・脱がせて欲しいの、下を・・・」 「全部?」 「・・・・うん」 「じゃ、ミオの大事なところが全部丸見えになるね」 「・・・・いやああっ」 この瞬間。 きっと彼女の脳裏にはとても淫らな格好をさせられる自分の姿を思い描いたのだろう。 ミオにGパンを下着もろとも降ろすように指示した。 あくまで電話なので本当にするかどうかは本人次第だ。 例え芝居でも、相手に分からないようにしてくれれば、それで良い。 しかし受話器の向こうでは、ゴソゴソと蠢く音がする。 本当に降ろしているのかも知れない。 なら尚更本気度が増す。 「ミオはどうされるのが気持ち良いの?」 「・・・舐めて、欲しいの・・・彼あまりしてくれなかったから・・・気持ち良いの」 「じゃ・・・俺の前で足を開いてごらん」 「こう?」 「ダメ、もっと大きく開く・・・もっと」 「えぇっ、こんな格好・・・見えちゃうよ・・・」 「見せてよ、君の奥まで・・・指でヘアと襞を押し開くよ・・・全部見たいから」 「ダメダメ、ダメだったら・・・ああっ・・・・・・見えるの?」 「もっとしっかり開いて・・・あった、これがミオのクリちゃんだ」 「・・・お願い、見ないでぇっ」 この頃になると、ミオは俺の声もまともに届いていない様子だった。 男に貪るように舐められている様子を妄想しているのか、 ミオはすでに止まらない状況だ。 「じゃ、ここ舐めるよ・・・想像してみて・・・俺の舌先で円を描くように舐めるよ」 「・・・・ウウウッ、あ、ああんッ」 俺はじっくり攻めて、ミオの妄想をさらに煽り立てる。 ミオは自分の気持ち良い所をねっとり攻められ、大き目の喘ぎ声を上げる。 「ほら、どうしてほしい?」 「・・・もう入れて欲しい、入れて!!」 「どこに欲しいの?」 俺はこういう言葉攻めが最も興奮する。 女性の恥ずかしがる様子や、我を忘れて悶え狂う様子がいとおしく思えるのだ。 「オ○ンコ、オ○ンコに入れて・・・」 この単語を口にする時が、女性にとって最も恥ずかしいそうだ。 抵抗を見せる人もいたが、俺は焦らす意味でもある程度まで言わせる事にしている。 ミオはその禁句を何の抵抗も無く口にしたのが、俺にとっては物足りなかった。 「じゃ、何が欲しい?」 「オチンチンッ、あなたのオチンチン頂戴・・・」 これらのミオの様子からみて、彼女が普通の言葉では何も心に響かないのだと感じた。 正直言ってこれでは面白くない。 もっとミオを狂わせる方法は無いか・・・俺は考えた。 その時、まだ余裕のあるミオを本気で狂わせる妙案を思いついた。 一か八か、それに賭けてみる事にした。 <以下次号> |
| 2002年09月24日(火) 受話器越しの情愛。 『孤独な女』 |
俺は関西出身だが、愛知県人となって12年目になる。 元は大学に進学するためだけに愛知県に来たが、何故だか居付いてしまった。 19歳にして、初めての一人暮らし。 それも何ら大きな志を持てないでいる二流半の大学生。 例に漏れず、怠惰の極みのような生活を送っていた。 自由な時間が有り余るほどあった。 それを消化しきれずに持て余すことも多かった。 そしてフリーターを経て社会人として働くようになると、 今度は逆に、まとまった自由時間が足りなくなる。 まるでパッチワークのような細切れの自由時間。 そんな中で俺は暇つぶしと興味から、テレコミの醍醐味を覚えていく。 今まで何人もの女性とこういった遊びで知り合い、実際に会ったが、 電話だけで実際に会う機会の無かった人も大勢いた。 その中でも、今でも心配になっている女性が一人いる。 その女性は受話器の向こうで、本能と情念を剥き出して猛り狂った。 相手の手の感触も体温も伝わらない場所。 たった一本の電話線で繋がった肉体関係。 そして・・・突如消息を絶った彼女。 抱いた事どころか、会った事も無い相手に対して何を心配しているのか。 俺がお人好し過ぎるのは分かっている。 ある冬の人恋しい夜。 俺は寂しさから、テレコミの会社に電話する。 「新しい女性の登録がありましたが・・・」 受付の中年男はそう切り出す。しかし煮え切らない語尾が気になる。 「この女性は29歳で・・・遠い所の女性ですがいいですか?」 「どこの人です?」 「この女性は・・・新潟市ですね」 この会社は自宅などの女性が登録した場所から『コレクトコール』で男性のいる 自宅やホテルに掛けてくるシステム。 遠い土地の人だと、それだけ電話代もかさむ。 なので男性の所在地から遠い所に住む女性は、あまり歓迎されない。 しかし当時の俺は今まで出逢った人と違う土地に住む女性に興味があった。 新しい刺激を求めていたからだろう。 「いいですよ、その新潟の人でお願いします」 「では5分ほどお待ちください」 関西人にとって、新潟など北越は本当に遠い印象を持つ。 そんな未知の土地の女性と知り合えるチャンスを無駄にしたくなかった。 トイレを先に済ませて、心を躍らせて待つ。 電話が鳴る。自動コレクトコールのアナウンスが流れる。 そして発信音の後、待ち遠しかった新潟の女性と繋がる瞬間を迎えた。 「もしもし?はじめまして」 「・・・もしもし」 随分小声で大人しい口調の女性だった。 彼女の源氏名は「ミオ」と言った。 エステ関係の仕事をするミオは男性との出会いは皆無だ、とこぼした。 こういうテレコミの仕事はまだ数回しか経験が無く、何を話せば良いのかと 迷っている内に相手に飽きられて切られる、と言う。 「こういう電話をする男は寂しい奴が多いからねぇ」 「男の人も寂しいんだね」 「そりゃそうでしょう!女の人よりも寂しさに弱いと思うよ」 「そうなんだね・・・」 俺は色々と話を振ってみるものの、一問一答的な会話になりがちになってしまう。 会話が膨らんでいかないのだ。 ミオもまだ緊張している様子である。 「ミオはいつもそんなに堅苦しいの?」 「そんな事無いよ、でも男の人だと緊張しちゃうの・・・」 「男の人って、あなたのエステには来ないの?」 「うちは女性専用だけど、よそでは男の人も来るみたい」 「何するんだろう?・・・脱毛?」 「全身の永久脱毛や、髭の脱毛でしょ、あとファットバーニングとか」 「ファットバーニング?」 「脂肪燃焼を促進する・・・マッサージみたいなものかな」 「・・・効果あるの?」 「・・・あると信じるの(笑)」 「俺、信じるからお願いしようかな(笑)」 ミオとの会話は時間の経過と共に堅苦しさが取れ、徐々に砕けた方向へと向く。 「ミオは今まで何人くらいの男の人と付き合ったの?」 「・・・3人・・・くらい?」 「少ないねぇ」 「そうかな、離婚してからは誰も無いよ」 「バツイチなんだ。子供は?」 「いない。だから気楽なんだけどね」 「じゃあ、そろそろ新しい彼が欲しい時期じゃない?」 「う〜ん、そういう事は・・・無いかな?」 まだ傷が癒えないのだろうか、ミオの鎧は取れそうに無い。 しかしこういう堅苦しい女性の内面は、情熱的な場合が多い。 俺の経験上、そういう女性も多かった。 「でも、たまに男の人が恋しくならないか?」 「・・・本当言うと、無い訳じゃないの」 「そういう時、どうするの?」 「どうするって・・・どうするって?」 「男の人に抱かれたくなったら、ミオはどうするの?」 「え、え?どうするって、え・・・?」 受話器を手に持って真っ赤になっているミオの姿を想像してしまう。 「・・・だってもう何も知らない歳じゃないんでしょ?」 「・・・・そうだけど・・・」 「こういう話って、誰も傷つかないから楽しいじゃんか。はっきり言ってよ」 「・・・そりゃ、我慢できない時は・・・しちゃう・・・けど」 「独りで?」 「・・・・・・うん」 「手で?おもちゃ?」 「・・・・・うん、手で」 消え入りそうな声だったが、しっかりと肯定するミオ。 素直すぎるほどの彼女がとても可愛く思う。 「勿体無いね、独りでしちゃうなんて」 「・・・もう恥ずかしいから言わないで・・・」 こういう態度を取られると、さらに責め込みたくなる。 俺はきっと‘S’なのだと実感する。 「良いんだって、女の子だって大抵は独りでしているよ」 「・・・そうなのかなぁ」 「はっきり言わないだけさ。嫌いじゃないでしょ?Hな事も」 「・・・うん」 「・・・ね、ミオの事、もっと聞きたいな」 「え・・・何を?」 「独りでしちゃう時ってさ、どんな事考えてするの?」 「・・・そんな事言えないぃっ!」 「大丈夫だって、教えてよ・・・」 「ダメ!・・・・・・でも、本当に内緒だよ・・・」 ミオは凄まじい照れ方をしながらも、俺の誘導尋問に乗って話し出す。 いたって普通のSexを経験してきた様子のミオらしく、妄想も元彼とのHとノーマルだ。 俺はミオの気分を高めるべく、大袈裟な反応をしてみせる。 「へぇ〜っ・・・ミオって結構Hなんだぁ・・・」 「・・・言わないで、もうダメ・・・」 「そうやって話しているうちに、本当はもうドキドキしているんでしょ?」 「・・・やだぁっ、分かるの?」 「分かるよ、声も上ずっているし」 「・・・・・・」 動揺を見透かされたからか、ミオはとうとう黙ってしまった。 しかし気分を害した沈黙では無さそうだ。 「もし俺が君の隣りにいたら、抱き締めてそのまま後ろへ倒しちゃうよ・・・」 俺は受話器に向かって、声のトーンを落として囁く。 <以下次号> |
| 2002年09月23日(月) 二次元ronde。 『後日談』 |
<前号より続く> サツキはそれ以降も変わらず俺と付き合いを続けた。 しかし残念ながら、肉体関係の方はそれ以来無い。 「もう封印したの。やっぱり旦那が一番だと分かったから」 サツキは目を合わせずにそんな事を言う。 やはりそういう建前だったようだ。 後日、家に遊びに来た時、一度だけ悪戯で胸を意味ありげに揉みしだいてみた。 「あの時の事、思い出す?」 「・・・ダメ、止めたのぉ、もうヤバイって・・・」 俺は非情になりきれず、手を離した。 サツキの自分で決めた事を邪魔してはいけない、と感じたから。 「ゴメンな、怒った?」 「・・・もう旦那以外とはしないって決めたから」 はだけた着衣を戻しながら、サツキは俺に言った。 きっとどこかで旦那への忠誠心と愛情が揺らぐ事を自分で分かったからだと思う。 それからおよそ2ヵ月後。 もうすぐ冬になる秋の夕暮れ。 サツキは当分会えなくなるから、と俺に貸してくれた漫画本を取りに来た。 玄関先に立つサツキは、充分過ぎるほどの厚着だ。 改まった態度に俺はどうしたの、と聞いた。 「あのね、二人目が出来たの」 ちょっぴり肉付きの良くなった頬を緩めて、サツキは嬉しそうに微笑む。 その時、胎内に第二子を身篭っていたのだ。 「良かったな!・・・でも、俺の子?」 「・・・バカ言わないで!間違いなく旦那の子よっ」 あの時・・・そういえば俺はスキン付きだった上、イッていなかった。 サツキも俺が果たせなかった事を見ていたはず。 きつめのジョークで彼女の幸せを称えた。 もうサツキとも会う事は無いかな、でもこれで良いんだ・・・ 借りていた漫画を返した後、ガランとした本棚の一角を眺めながら、 俺は自分の中の寂しさを切り捨てる決意をした。 それからしばらく経った日の真夜中、電話が鳴る。 サツキだった。 何事かと思っていたら、声を殺して受話器の向こうで泣いていた。 「どうした?こんな時間に・・・」 「あのね・・・・流れちゃったの、赤ちゃん」 第二子は不正出血の末、流産したという。 サツキはその処置が終わった後、病院から自宅に戻った夜に電話してきたのだ。 俺も慰めの言葉も出ない。 彼女の悲しみの深さは、痛いほど俺にも伝わった。 サツキは声を殺しきれず、嗚咽を漏らしながらもなお泣き続ける。 「残念だったけど・・・でも赤ちゃんは君を責めないよ。 ・・・サツキには非は無いんだから。あまり落ち込んでると娘さんまで悲しむよ」 あくまでサツキの家庭での話なので、俺が口を出すのは筋違いだと思った。 しかし過去にどういう関係があれど、俺にとってサツキはもう大事な友達だ。 その癒し切れない悲しい事実を、友人としての俺に訴えている。 彼女から逃げるわけにはいかない。 たった一言、これだけ言うのが精一杯だった。 その後日、喫茶店で会った時。 小柄なサツキがいつも以上に小さく見えた。 オーダーした熱い紅茶が冷めてもなお、傷心の自分をさらに責め続けていた。 俺は黙って頷くだけだった。 こういう出逢い方をする女性とは短い付き合いが多い俺にしては珍しく、 サツキとは長く関わりがあった。 付き合っている人のいない俺に、彼女の友達を紹介してくれたりもした。 俺が軽い疾患で入院した際、その準備を手伝ってくれたりもしてくれた。 独身で彼女もいない俺が最も困るのが、こういった病気の時だ。 周囲に誰も頼れる人がいない。 仕事仲間にもあまり言いたくない。大袈裟にしたくない。 入院の準備は平日の午前中。 旦那の出勤後、娘を親に預けてまで俺の元へ駆けつけてくれた。 そしてバッグに詰めた重い入院道具と俺を郊外の病院まで運んでくれた。 病室での俺とサツキを見た看護婦さんから言われた。 「平良さん、可愛い彼女ね」 サツキは戸惑いと照れの混ざった、何とも言えない複雑な表情を浮かべていた。 「不倫ですか?って言われるよりマシだろー?」 「・・・私、そんなに若く見えたのかな?」 「相変わらず見た目がガキっぽいからじゃない?」 「バカ、一生入院してなさい!」 そんなことを言いながら、彼女は俺に本の差し入れを持って来てくれる。 漫画本、それも少女コミックだったが。 「読んでみてよ、面白いから」 「少女漫画ってコマが小さいし、話もややこしいから読み辛いんだよなぁ」 「読まず嫌いしないの、置いて行くからね」 「読まず嫌いって・・・セロリやブロッコリーを食わず嫌いする君に言われたくないね」 「いいの、ブロッコリー食べられなくても生きていけるから」 「じゃ漫画は?」 「私には無くちゃ生きていけないものなのっ」 「それは屁理屈と言うものでしょう・・・」 退院の日まで大部屋の一角で繰り広げられる小声の舌戦。 きっと同じ部屋の人たちには迷惑を掛けただろう。 いい形で付き合える関係にあったサツキ。 退院真近のある午後、ベッドで点滴を受けていた。 俺は暇に任せて、病室の白い天井にサツキとの様々な出来事をぼんやりと思い描いていた。 伝言のカード、初めて会った喫茶店、深夜の電話、一度だけのSex・・・ あんな伝言ダイアルでもこんな出逢いがあるもんだな・・・・と。 あの瞬間、伝言を吹き込むのを躊躇った指先が別のボタンを押していたら、 もう無かった出逢いだったのだから。 あなたは愛するパートナーに 大切な家族に「感謝」をしていますか? そして変わらぬ「愛情」を注いでいますか? それも『 相手に自分の気持ちが伝わる行動 』で 黙っていても相手は分かっている・・・ そんな古い考え方が未だにはびこる 今日この頃です しかし自分で考えるほど 気持ちも愛情も伝わっていないものです それも 夫婦 家族 恋人 と近い関係になるほど 「ありがとう」「愛してるよ」という気持ちを態度に示す事が 億劫になるものです 普段からの言葉や態度で 相手への感謝や愛情を表すこと その大切さを知ること 出逢いという偶然を 絆という必然に育てるのでしょう きっと小さな誤解や些細な勘違いも互いに笑って水に流せる事でしょう そういえば・・・ サツキからは2年半前に無事男の子を出産したという報告を貰って以降、 一切の連絡が途絶えている。 あの流産の悲劇を乗り越えて授かった男の子だ。 そろそろ男の子なら、ヤンチャ盛りでエネルギーの有り余る時期だ。 きっとこの今も子育てで奮闘しているに違いない。 連絡の一つも取りたい所だが、もうポケベルは解約している。 携帯電話の番号も知ってはいるが、何ゆえサツキには家庭があるので、 俺から連絡を取る事も出来ない。 彼女独自のパソコンも持っているそうだが、アドレスが分からない。 携帯電話のメールアドレスも分からない。 「新しい漫画の本貸そうか?」 いつかサツキからそんな連絡が来るのを、俺は信じてのんびりと待つ事にしている。 |
| 2002年09月22日(日) 二次元ronde。 『変身』 |
| <前号より続く> 先程までの童顔で化粧っ気の無い表情は一変し、女の妖艶な雰囲気をかもし出す。 サツキのいきなりの変身に、思わず俺が戸惑ってしまった。 「え、何?」 「えっちするうっ」 サツキの、女の肉体と本能に火が付いたのだ。 俺はそのままサツキの柔らかく唇を奪い、舌を奥に割り入れる。 上半身を二の腕ごと強く抱き締めると、微かに汗ばんでいるのが分かる。 ほんの少し頬を赤らめているサツキの上着を脱がしにかかる。 息の荒くなるサツキは特に抵抗しない。 自称・Dカップのサツキの乳房が白いブラジャーに包まれているのが見えた。 血管が透き通るほど白く、指先で触れるととても柔らかい。 ブラの上から掌で包み込むようにして揉むと、サツキは一気に声を漏らした。 「アァアンダメェ、そんな事したら熱くなっちゃうぅ・・・」 「どこが?」 「・・・バカァ、言えないのぉ・・・」 「言えないの?でもここも気持ち良いでしょ」 俺はブラの隙間から指を差し込み、サツキの勃つ乳首を人差し指と中指で 若干強めに摘み、軽く引っ張った。 感度の良いサツキは背筋を逸らす。 肉欲の成熟の途上にある彼女は、面白いように俺の愛撫に反応を見せる。 存在感のある乳首を中指と親指で摘み、転がしてみた。 今度はイヤイヤと駄々をこねるように左右へと腰をよじった。 背後のホックを外して、窮屈そうなサツキの乳房を解放してやる。 子供を一人産み育てた女の身体は、同世代の独身女性よりも熟れて妖艶だ。 童顔な表情と熟れた肉体、アニメ声の喘ぎ。 染まった頬にきつく閉じる目。 サツキの身体が徐々に沸点に向かいつつあるのが手に取るように分かる。 マニアならずも、このギャップには興奮を隠せないだろう。 サツキをその場に仰向けに寝かせ、俺は上から覆い被さって乳首を吸った。 舌や唇で少し大き目の乳首を弄ぶと俺の服を強く掴み、声を殺して快楽に耐える。 サツキの髪を撫で、耳元を指先で触れ、首筋に唇を這わせる。 ピアスの一つも無い耳たぶは、幼児の頬のように柔らかだ。 サツキも俺の行為の一つ一つに喘ぎ声を挙げる。感度も良い。 俺はサツキの履くチノパンの上から腿を触わる。 もどかしそうに両足をばたつかせる。 「脱がせて欲しいの?」 「・・・・・・」 無言のまま二度三度と頷く。 俺はサツキのベルトを緩め、パンツを下ろした。 可愛いイラストの下着が見える。 俺はその上から、サツキの最も熱くなってる敏感な部分に指を這わせた。 「ヤンッ!」 一瞬腰をビクつかせ、鋭く反応する。 そのたった一瞬でも、俺の指先は湿ったサツキの女性自身を感じ取っていた。 それほど熱く湿っている。 俺は負けずに指をサツキ自身の方へ潜り込ませた。 その湿りは、俺の指先の律動と共に滑りに変わっていくようだった。 「・・・・ィヤァッ、欲しくなっちゃう、欲しくなっちゃう・・・・」 サツキはうわ言のように繰り返す様になっていた。 「何が欲しい?きちんと言えたら、俺のをあげる。欲しくない?」 サツキの小さい掌を、ズボンの上から彼女を求めて勃つ俺自身に導く。 俺は子供を言い聞かすような口調で、サツキへ言葉攻めをしてみた。 「・・・言えないの、言えない・・・」 大きく顔を背けて、サツキは抵抗する。 俺は冷たい口調で言い放った。 「じゃ、あげない。絶対あげない」 「嫌ぁ、欲しいの・・・もう我慢できないのぉ・・・・・・意地悪ぅ」 サツキは俺を一瞬睨みつける。 俺は手を緩めない。 潤いに満ちたサツキ自身の中に中指を一本差し入れる。 その直後に今度は懇願するような目を向けた。 「じゃ言ってごらん・・・ここにあるんだよ」 「・・・・・おちんちん欲しいの」 「どこに?」 「・・・・・私の中に」 「中って指が入ってるところ?指が中で動いてるところ?」 「・・・・・もう!そこなの・・・・」 同じ言葉を言わせても、声色が変わると刺激もある。 言葉攻めが相当恥ずかしかったのか、サツキの顔はすっかり上気している。 頭の中で今すぐ入れて欲しい場所の名称を思い浮かべたのだろうか。 俺とサツキの記念すべき初めての情事だ。 あまり手荒な攻めをするつもりは無い。 「じゃ、パンツも下ろすよ」 サツキは両手で顔を覆い、恥ずかしさを必死に抑える。 しかし腰は浮き上がっていた。 心と身体の欲求の相違が垣間見えると、俺は最も興奮する。 ゆっくりと両腿を開き、サツキ自身をそっと観察した。 決して綺麗な形ではなかったが、たっぷりと粘液をたたえたサツキ自身。 俺も今すぐにサツキを奪いたくなった。 俺はそっとサツキの両腿の間に顔を埋め、サツキ自身の粘液を舌で舐め取る。 付け根の突起に舌を当て、皮の上から奥へ押し付ける。 サツキも腰を浮き上がらせて、迫り来る快楽に耐える。 イヤァ、イヤァと口では繰り返すが、全く抵抗する素振りも無い。 俺は大きく腿を開いたサツキに覆い被さる。 そそり立つ俺自身にスキンを付け、サツキの中に奥深くまでゆっくりと挿入した。 必死に耐え続けた末の挿入。 サツキはすでに半泣きしつつも、声を堪え切れずに漏らした。 「ダメ、ダメ・・・おかしくなるぅ、ダメェ〜〜〜ッッッ!」 サツキ自身の奥に俺の先を押し付けるように、ゆっくりと動く。 時折いきなりの激しいピストンを挟みつつ、サツキの感触をじっくりと味わう。 「俺、旦那より下手かな?旦那だと、もっとHになっちゃうの? 「・・・イヤ、イヤ、言えない、言えない・・・」 「答えてよ、でないと抜いちゃおうかな?」 「・・・絶対イヤァ!」 語尾は正しく悲鳴だった。 俺の言葉攻めを真に受けるサツキは両手両足で俺の上半身にしがみ付く。 快楽の階段を駆け足で上り詰め、その後全身の緊張が破裂したかのように抜けた。 サツキ自身の中は、数回痙攣していた。 未だ固い俺自身に伝わる。 イッた後、サツキは急に我に還ったのかバツが悪そうに照れ笑いを浮かべる。 結局、俺は達しなかったが。 「・・・・・イッてないの?」 「だってサツキが早すぎるからだって」 「・・・バカァ、あれだけ焦らされたらダメよぉ」 サツキは本当に照れ臭そうにしながら、乱れた着衣を整える。 そして漫画本を残してそそくさと帰っていった。 俺は彼女を見送ったあと、シャワーを浴びた。 先程のサツキの愛液の匂いが、俺のオスの本能を再び燃え立たせる。 しかしもう彼女はいない。 消し損ねた炎は、抑えることがなかなか出来なかった。 <以下次号> |
| 2002年09月21日(土) 二次元ronde。 『紙切れ、赤い糸』 |
あれからも何度も電話で話し、半月後に初めて会うことになった。 昼過ぎ、待ち合わせ場所の喫茶店。 入り口から見通しの良い席に座り、サツキの到着を待つ。 俺が店に入った数分後、小柄でオーバーオール姿の女性が店内を見回していた。 会う直前に着ていくから、と約束していた緑のパーカーを羽織っていた。 俺は彼女に向かって手を挙げると、向こうも気付く。 「はじめまして、平良です」 「どうも、サツキです・・・」 緊張の最中で俺はアイスコーヒー、サツキはホットミルクティーを注文。 小柄で童顔のサツキは話す時、何故か俺と全く目を合わせなかった。 全く別方向を向いて話すのだ。 悪意がある訳では無く、相当な照れ屋な様子だ。 最初はいつもの電話のように砕けた話が出来なかったが、 時間が経つにつれて、いつもの調子で話せるようになった。 サツキも少しずつ俺の目を見て話すようになる。 彼女は相当の漫画好きで、俺の好きな漫画も全て読破していると言った。 当時の俺の好みは「ツルモク独身寮」「究極超人あ〜る」「シティーハンター」などの 男性向けのものばかりだったが、サツキは筋書きから登場人物まで事細かく覚えていた。 漫画やアニメの話になると、水を得た魚のように活き活きと語り出す。 こちらが本当の彼女なのだろう。 「旦那も好きだから、家にも結構あるよ」 「つきにどれくらい漫画に使うの?」 「私はお小遣いが五千円でしょ、そのほとんどが・・・」 「五千円?」 彼女は旦那の稼ぎから「お小遣い」を貰っているのだという。 彼への遠慮から、自らに窮屈な生活を強いているのだ。 けれど旦那以外の男性へと目を向けさせる要因は他にもあるはず。 「主婦なんだし。もっと上手く切り詰めてヘソクリにすればいいじゃん」 「・・・悪いじゃん、なんだか騙している気がして」 アニメの話とは打って変わって、俯き加減で暗い表情になる。 決して旦那を騙して男遊びに走るような悪い女ではない。 ただ一時でも家庭や嫁というしがらみからの息継ぎを求めているのだろう。 サツキの話の節々から、彼女の家庭の事情が断片的に見えてきた。 自分がどれだけ家庭や子供に尽くしても、それをさも当たり前のようにしか 受け取っていない様子の旦那。 その態度に彼女は無力感と疲労感を訴えていた。 日々の頑張りを一日で一言でも良いから旦那に称えて欲しい、感謝して欲しい。 それは主婦という立場から求めるのはそんなに贅沢なのだろうか。 他の男は確かに女性に対しては機嫌を取ろうと誉め、なだめ、おだてる。 サツキもその切ない一瞬に、空しく癒しを求めていたのかも知れない。 人間を育て、人間関係を育てる行為とは・・・ 努力や労働に対して「感謝する」「誉める」こと。 例え相手が大人とはいえ、家族とはいえ。 旦那も仕事から帰り、食事や風呂を終えたらすぐに趣味やパソコンに直行するようでは、 もはや夫婦という人間関係を過信し過ぎてるとしか思えない。 他人同士がたった紙切れ一枚と、糸のような絆で繋がった関係なのだから。 俗に言われる赤い糸とは「繋がっている」だけの糸なのではなく、 「油断するとすぐに切れる」糸でもあるのだ。 サツキは一通り、自らの寂しさや空しさを吐露すると、随分楽な表情になった。 それからの漫画やアニメの話は、先程以上に盛り上がった。 恨めしい事に・・・楽しい時間というのはあっという間に過ぎていく。 彼女も夕飯の支度に出かける時間になった。 「今度、もしよければ俺の家においでよ。」 「いいの?汚いんじゃない、男の一人暮らしの部屋は」 「ちゃんと掃除しておくからさ」 「いいよ、平良クンの好きそうな漫画を持っていってあげる」 そんな約束をして散会。 夕焼けが照らす国道248号線を、彼女はスーパーへ向かって車を走らせた。 それから2週間後。 サツキは俺の部屋に来た。 彼女は先日の約束通り、何とリュックサック一杯に漫画本を持ってきた。 「これなら知っているのもあるでしょ?」 リュックには新旧の漫画の単行本が溢れていた。 「これだけ持って来るの、本当に重かったんだから!」 俺はアップルティーを振舞う。 彼女は興味深そうに俺の本棚を覗き込む。 「なんだ、あまり漫画の本って無いんだね」 「そう?」 俺の本棚には大学時代の教科書や読み損いの文庫本、写真集などが詰まっている。 確かにサツキのお気に入りの本は、ほとんど無かったに等しい。 俺はサツキとお茶を飲みつつ喋る。 その頃になるとサツキは、俺をからかうようなことも言うようになった。 旦那と違った男との砕けた会話は実に新鮮だったに違いない。 俺は密かにサツキの様子を伺う。 独身の男が女性を家に招き入れるのだ。 それなりの下心を持っていてもおかしくあるまい。 「平良クンも女心を知るために少女漫画でも読んだら?少しはモテるかもよ」 サツキは、何かと相変わらず俺をからかう。 俺はトイレに立つ振りをしてサツキに近寄った。 そし背後からサツキの胸を一気に鷲掴んだ。 「いい加減、俺をからかうと・・・こうするよ」 俺はサツキの胸を服の上から、大きく持ち上げるように揉みしだく。 いきなりの攻撃に、サツキはアニメ声で悲鳴を上げた。 「イヤァ、止めてェ」 その悲鳴は俺のオスの本能に火を点けるのに充分だった。 サツキは前かがみになり、身を固くする。 しかし俺の腕の中から逃げようとしなかった。 甘んじて俺の胸への攻撃を受けているのか? 口では抵抗するも、行動では表れない。 俺はショートカットのサツキの耳元を軽くkissしながら胸を揉む。 「ううっ、ううっ、んううっ」 固く我慢する口元から、うめく声が聞こえる。 身を固くしていたはずが、力が抜ける。 「痛いの?嫌なの?止めよっか?」 「・・・・ううっ」 明確な否定は無かった。 時間にして数分間、俺はサツキの胸を揉み続ける。 外見からは思いもつかない、案外手ごたえのある質感だ。 それまで固く俯いていたサツキが、いきなり顔を挙げた。 潤んだ瞳で俺を悩ましげに真っ直ぐ見つめた。 「・・・えっちするうっ」 <以下次号> |
| 2002年09月20日(金) 二次元ronde。 『妻の努め』 |
<前号より続く> 「俺、サツキさんに興味ある。会ってみたいな」 「え、私は良いけど・・・でも平日の昼間しか動けないよ」 サツキは主婦。そんな事は百も承知だ。 「だったら平日昼間に会おう」 「ええっ、お仕事でしょ?お休みはあるの?」 「平日でもたまに休みがあるから、それに合わせて」 「まあ・・・私は早めに言ってくれれば良いよ」 俺が平日に動く事で、サツキとは案外すんなりと話がまとまった。 最後に互いのポケベルの番号を交換して、その夜は電話を切った。 それから週に2〜3度、深夜に彼女からポケベルがなる。 俺はその度に電話を掛け、色々な話をした。 しかし旦那が家にいるであろう時間にもポケベルがなる。 俺は聞いてみた。 「今って、旦那がいる時間じゃないの?」 「いるよ」 俺が最も気を遣う事も、実にサラッと言ってのける。 「大丈夫なのかね?」 「大丈夫だよ、旦那は今パソコン通信中だから」 サツキの家は当時からパソコン通信専用にと別の電話回線を持っていた。 まだ今ほどインターネットが一般家庭までも普及していない時代だ。 先進の趣味を持つ旦那はパソコンの前に座ると数時間は動かないという。 サツキは旦那が目を逸らすその時間を悪用して、つかの間の息抜きに使っていた。 「旦那は全然別の部屋だし、別に話なんて聞こえないよ」 「そうか、だったらいいけど」 旦那を愛しているというが、どうも彼女の行動は腑に落ちない。 「ねぇ、本当に旦那さんの事、好き?」 「好きだよ。一番愛しているもの」 「でも・・・どうも俺、分からないんだよね。なぜ他の男と遊ぶのか?」 サツキは戸惑いつつも、今まで以上に深い話をしてくれた。 小柄で気弱で、アニメや少女漫画で夢見がちだった彼女。 サツキの17歳での初体験の相手は、初めて付き合った同じ高校の彼。 ・・・今の旦那だった。 それ以来、旦那一筋で結婚まで至る。 他の世間を知らないまま結婚に踏み切ったが、現実は少々厳しかった。 彼女にとって男性は彼だけだが、旦那は彼女以外の女性も知っている。 ひょんな事から旦那の女遊びを知ってしまったのだ。 信じていた唯一の男、旦那の「裏切り」に彼女の中で寂寥感と復讐心が湧き上がる。 その時に都合良く知ったのは、漫画雑誌に掲載されていた伝言ダイヤルだった。 彼女は勇気を出して伝言を吹き込んだ。 そうすると数十件の様々な男性からの伝言が舞い込む。 その中から同世代の男性と付き合うようになる。 サツキは最初「単なるお茶飲み友達」を求めていたのだが、男は違う。 高い利用料を払っておいて、それだけの関係の女性など探す訳が無い。 サツキはその男に上手くそそのかされ、ついにベッドを共にした。 その時、サツキは女の性の快楽に目覚め出した頃。 きっと強烈な経験だったに違いない。 しかし子供と家庭への罪悪感から、その男性とはそれっきりになった。 彼女はいつしか「旦那が一番」と自分に言い聞かすようにしてなった。 自分に言い聞かすという事は、どこか心の中で無理しているという事。 サツキの変化と複雑な心中を知る由も無い旦那。 相変わらずのつれない態度に、パソコンに熱中する様に呆れた彼女は、 そんな時にはこうして伝言ダイアルで他の男に自分の癒しを求めるようになったのだ。 こうしたシステムでは、女性は全くの無料で遊べる。 おまけに女性向け雑誌には、同業者のフリーダイヤル番号が無数に列挙されていた。 たった1円も遣わずに、いくらでも無尽蔵に遊べるのだ。 「旦那に甘えないの?もっと相手してよ!とか」 「前は言ってたけど、最近は彼も仕事で辛いみたいだからね・・・」 自分の事は置いといて、そのストレス解消をさせてあげたいという。 しかし彼女の本当の欲求は行動の通り、全くの逆だ。 昼間は母親、主婦、そして嫁として三役を独りで奮闘している。 旦那と一息つける時間くらい、もっと甘えたいし肩の一つでも抱いて欲しい。 それが夫婦というものだと思うのだが。 「だって私は専業主婦で全くお金を稼いでないから、私からは何も言えない」 「でも家事も子育てしているし、自分のして欲しい事を言えばいいじゃん」 「旦那がお金を稼いでくるんだから、何も仕事してない私は我慢しなきゃ」 「・・・それも違うと思うなぁ」 きっとこれから先は、サツキの実家の環境や、両親の教育方針などの生育歴の問題だ。 俺がとやかく言う分野ではない。 サツキは旦那に食べさせてもらっている身分だ、と繰り返す。 自分の我が侭さえ我慢すれば夫婦関係も家庭も円満になる、という。 本心とは違うくせに。 随分と前近代的な、島国独特の凝り固まった考え方を崩さないサツキ。 古い考え方に呪縛される犠牲者だ。 「でも我慢できて無いじゃん。こうして他の男と遊んでるんでしょ?」 「でも、でも・・・」 「別にいじめる訳じゃないけど・・・本当はすごく寂しいんだろうなって思う」 「・・・・・・」 「その分もっと旦那さんに甘えれば良いんだって!悪い事じゃないもの」 俺が言う台詞でもなかったが、サツキの本音と建前の不安定さについ語気を強めてしまう。 「だって可哀想じゃん、会社でも家でも自由な時間が無いと・・・」 「・・・そういうものかなぁ?」 サツキが旦那と共にする時間は、就寝時の布団の中だけだと言う。 旦那がパソコン通信を終える深夜まで待ち、一緒に布団へ入って寝るのだ。 旦那がサツキを求めてくる時には、例え自分の気が乗らない時でも 生理じゃない限り応じるという。 「生理の時は、お口でしてあげる。だって気持ち良いんでしょ?」 それが旦那の稼ぎで食わせてもらう『妻の努め』だと。 そんな状態で・・・本当に旦那が一番感じるのか。 やはり「自分自身に強く言い聞かしている」のだろう。 本当は寂しいのだ。 でも彼女は自分からは何も要求できないでいる。 様々なしがらみに、殻が破れない。 「自分がHしたい時だってあるでしょ?そういう時はどうするの?」 「・・・我慢する」 「だったら他の男に伝言で頼らず、旦那さんに抱いてって言えないの?」 「言えないよぉ。だって疲れているんだし・・・・」 きっと旦那の態度にも大きな問題があるはずだ。 その場限りだけでいい伝言ダイアルでの男たちなら好き勝手が出来るが、 一生の付き合いになる、それもご機嫌を損ねる事が出来ない旦那には妙に遠慮する。 スキンシップや愛情を求めるのが前者だとは、あまりに寂しいではないか。 ただサツキがそれでいいのなら、そのままで良かろう。 俺が深入りする理由もない。 俺も割り切って楽しませてもらおうか・・・ 俺はサツキの羞恥心を煽ってみる。 「・・・違うでしょ、本当は自分から求めるのがもの凄く恥ずかしいからじゃない?」 「・・・だって言えないもん、旦那におかしいと思われちゃう」 「でもね、男ってHしてって言われると嬉しいものだよ?」 「でもね、でも・・・」 受話器の向こうで真っ赤な顔をしているサツキの様子が容易に想像できる。 突然、受話器の向こうから幼児のむずかる声がした。 「ごめん、娘が起きたみたい・・・」 「じゃいいよ、また今度続きを話そう」 俺はサツキに強い興味を持つようになった。 <以下次号> |
| 2002年09月19日(木) 二次元ronde。 『アニメ系』 |
<前号より続く> 返事が期待できるとなると、この待ち時間も楽しみになってくる。 30分ほど経ってから、またセンターに電話する。 賑やかなチャイムが鳴る。 『新しい伝言をお預かりしています!』 �△魏,后� 『サツキです。ありがとう。私もお話したいのですが、自宅なので番号は・・・』 どこの誰か分からない男に、それも既婚者が教えられる訳が無い。 『なので、タイラーさんの電話番号を教えてくれませんか?』 当時まだ携帯電話が普及していない時代だった。 ♯を押す。 発信音が鳴り終り、伝言を吹き込む。 「平良です。いいですよ。ぜひお話しましょう!うちの番号は・・・」 20分後。もう一度センターへ。 『新しい伝言をお預かりしています!』 �△魏,后� 『サツキです。今から電話はまずいですか?遅いかな?・・・』 なかなか相手も積極的だ。 ♯を押し、了解のメッセージを入れる。 「平良です。ぜひお話しましょう!今から電話を宜しく!」 その5分後、電話が鳴った。 俺はサツキだと思い、とっさに電話を取った。 「もしもし・・・・あの、分かりますか?」 「サツキさんですよね?平良です、はじめまして!」 伝言で聞くよりも、一層緊張した声で話すサツキ。 「は、初めまして・・・」 今にも消え入りそうな声で話すサツキ。 「どうしたの?まずい時間だった?」 とっくに夜11時を過ぎている。一家をきり盛る主婦にしては遅い時間だ。 しかし今から電話していい?と聞いてきたのはサツキの方だ。 何も俺が遠慮する事もない。 「ううん、違うの。子どもが起きちゃうかなって・・・」 「どこで寝てるの?」 「隣りの部屋・・・」 「大丈夫なの?」 「ここは大丈夫」 襖を挟んだ隣りの和室で、当時2歳になる娘が寝ているという。 サツキは一戸建ての家に、旦那の両親と同居する。 旦那は国内最大手の自動車会社の下請け会社の工場で働いている。 隔週シフトで、今週は昼勤なのだそうだ。 嫁という立場、旦那の両親が近くにいると気も遣う。 深夜のこの時間はサツキにとって、数少ない自由時間なのだ。 「タイラーさんって、よく電話するの?」 「俺?今回がはじめてだよ」 「嘘だぁ。慣れてるって感じするよ」 「そ、そうかな?」 テレコミでは遊んでいるので、見ず知らずの女性でも話ができる。 仕事柄、様々な人と話をするのも、こういった遊びにプラスになる。 こういう場では決して誉められた内容の会話ばかりではないが。 アニメ声の女性は、今まで付き合いが無かったので新鮮だった。 話す口調までアニメのヒロイン系だとさすがに遠慮したくなるが。 「タイラーさんって、もしかして無責任なの?」 「は?」 サツキが少し慣れてきた頃。 いきなり俺が理解出来ない事を言ってきた。 「だって『無責任艦長タイラー』のタイラーさんなんでしょ?」 「・・・あ、あの漫画のね」 俺自身は読んだ事もアニメを見た事も無いが そんな名前のSFチックな漫画があったのをおぼろげに覚えていた。 「違うよ、平良。平和に良い人で平良だって」 「なぁんだ。知ってる漫画だーって思ったのにぃ」 あの自己紹介に違わず、漫画やアニメに相当詳しい様子だ。 「こうやって、旦那が相手してくれない時に遊んでるんだ」 「でもいつもって訳じゃないよ。娘もいるし」 「・・・ばれてないの?」 「大丈夫っしょ。家事も完璧だし、旦那が疑ってる素振りも無いし」 「そんなこと分かるの?」 「だって、うちは夫婦円満なの。旦那も私を愛しているもの」 ならば、なぜこんな不特定多数の男と関係の持てる遊びをしているのだろう。 俺は素朴な疑問をぶつけた。 サツキはいかにも答えを準備していたかのように、即答で答えた。 「旦那が私を一番愛しているかって事を確かめるため」 旦那の愛を確かめる手段で、他の男と出逢いを求める。 それはあまりに矛盾した論理ではないだろうか。 「・・・なんか、おかしくない?」 「どこが?」 「だって旦那の愛情を確かめたくて、他の男と付き合うかぁ?」 「それが一番わかるじゃん」 「どうやって?」 「Hするの」 「H?」 「私を最も気持ち良くさせてくれる人が、一番私を愛してくれる人だと思うの」 「・・・で、その一番気持ち良くしてくれるのが?」 「旦那よ」 男が直接の行動で尽くしてくれるのがSexだというサツキ。 きっと自分のために尽くしてくれる男がいい、という事を言いたかったのだろう。 「だから今も一緒に居るし、愛してるの。仲も良いよ」 しかし冷静に考えてみると、テレコミやツーショットで出会う男が、 わざわざその場だけの付き合いになる女に全身全霊をかけて尽くすだろうか。 普通は自分の快楽と欲求解消のみが目的になるものだろう。 「そんな事無いよ」 「本当に?」 「それに、自分だけ良ければいいって男の人とは会わないもん」 俺は納得していないが、サツキは自信たっぷりにそう答える。 「もう分かってきたから、そろそろ止めようと思ってるけどね」 「ところで何人くらい会ったの?」 「え?・・・・・・そうね、15人はいないかな」 きっと遠慮して数字を挙げたのだろうが、それでも結構な男の数だ。 どう都合良く考えても、彼女の論理と行動は噛みあわない。 しかしあまり深く矛盾を追求すると逃げられそうだ。 ここは抑えて話題を変える。 「声、可愛いって言われない?」 「でも本当は嫌なのぉ、子供に怒ってても伝わらないし」 確かに高音アニメ系のサツキの声では迫力はあまり無い。 「でもきっと財産だよ、この声は。真似できないし」 「そうかなぁ・・・」 満更でも無さそうなサツキ。 俺はこの女を一気に攻め落とそうと考えた。 <以下次号> |
| 2002年09月18日(水) 二次元ronde。 『同じ歳、同じ街』 |
偶然から始まる出逢いは人生のうちで本当に数多くある。 それが末永く続くのか、一期一会に終わるのかは別として。 俺も数え切れないほどの人々と出逢い、付き合い、別れてきた。 それは学校や仕事、旅行先や遊び・・・ときっかけも多岐にわたる。 偶然が必然となる人間関係は、本当に「縁」と呼べるものではないだろうか。 何でも好奇心旺盛で、新しい物好きな俺。 この当時、流行の兆しを見せていたカード式の伝言ダイヤルを試してみた。 電話番号と4桁の暗証番号、それからカード裏面に記載された12桁の番号を 確認しながら丁寧に押していく。 『あなたの残り時間は、約、60、分、です』 無機質で細切れな機械の合成音声でアナウンスが流れた。 これで受付完了となる。 早速、箱の裏書にある説明を読みながら�,鬟廛奪轡紊掘�伝言を聞いてみた。 「暇してる専門学生で〜す、3でエンしてくれる男の人待ってま〜す」 世は援助交際ブームの真っ只中。 流れる伝言は、大抵が援助交際希望のものばかり。 自分自身の肉体に法外な値段を付け、それでも名乗りを挙げる男の買い手を待つ。 援助交際といえば、『女子高生ミナ』の切ない思い出もこういった伝言ダイヤルで聞いた 一本のメッセージから始まったものだった。 そのミナと出逢う少し前の話になる。 一度、流れる伝言を適当に見繕い、適当に返事を吹き込んでみた。 「24歳の社会人です。今晩どうですか?お金ならあります。よろしく」 当時フリーターだった俺はそう偽りのメッセージを入れる。 誰だか分からない相手に、いちいち本当の事を説明する事も無い。 一通り女性からの伝言を聞いて電話を切り、一時間ほど経った後で掛けなおす。 『あなたの残り時間は、約、30、分、です』 買った当日に、すでに半分を消費してしまった。 この時間のカウントも正しいものだったかどうかだって分からないが。 説明書を見ながら�い鬟廛奪轡紊掘�伝言の私書箱を確認してみた。 『お預かりしている、伝言は、ありません』 先程の俺のメッセージは無視されたようだ。 きっと上手い男は何かしら相手の気持ちを惹く言葉を入れるのだろう。 初めてなのでやり方がよく分からない。 結局最初のカードは、伝言を聞いていくつかかを返し、無視されてまた伝言を聞く・・・ この繰り返しで、その日のうちに使い切ってしまった。 60分のカードが5,000円。 なかなか無駄の多い、勿体無いシステムだ。 慣れないうちは、これで遊ぼうにも要領が分からない。 数日後、バイトの給料が入った俺はもう一枚カードを買ってみた。 同じように電話のプッシュボタンでカードの番号を登録する。 『あなたの残り時間は、約、60、分、です』 女性からの伝言を聞こうと�,鬟廛奪轡紊垢襦� やはりコギャル風の女子高生から横柄な口調の中年主婦まで、次々と口々に援助交際だ。 半ば呆れながら��をプッシュしてスキップを繰り返す。 その中で明らかにキャラが違う女性の声が流れた。 俺はじっと聞き入った。 「こんばんは、○○市の24歳の主婦です。楽しい男性を希望します。 え〜っと、私はアニメや漫画が大好きです。伝言を宜しくお願いします」 アニメの声優風の声が印象的な女性だ。 それに俺と同い年で、俺と同じ○○市に住むという。 何より忌まわしい『援助希望』の一言も無い。 初めて「この人と是非話したい!」と思える女性だった。 この女性に伝言を吹き込もうかどうか、実は少々躊躇った。 俺は緊張が隠せない指先で♯をプッシュし、この女に伝言を返す。 「こんばんは、同じ○○市の24歳でサラリーマンです。名前は平良といいます。 アニメ好きですか?俺も結構好きなんで、よければ友達になりましょう」 少し声を低めにして、出来るだけ活舌良く伝言を吹き込んだ。 吹き込み終わり、大きく深呼吸してもう一度♯を押す。 これで吹き込み完了だ。 その他も聞いてみるも、やはりその後も援助交際ばかり。 先程の一件だけで電話を置き、少し待ってみることにする。 一時間ほどして、掛け直して聞いてみる。 『あなたの残り時間は、約、35、分、です』 その後、いきなり賑やかなチャイムが鳴る。 『・・・新しい伝言をお預かりしています!』 新しい伝言か!ならば先ほどの主婦しかいない。 焦る指先で�△鬟廛奪轡紊靴董⊃靴靴�入った伝言を聞いてみた。 『新しい伝言をお預かりしています・・・』 日時をアナウンスした後、発信音が鳴る。 『こんばんは、伝言ありがとうございます・・・』 やはりあのアニメ声の女だ。 『タイラーさんの優しそうな声が、すごく気に入って、伝言を返しますね』 電話での第一印象は声と話し方がすべて。俺の作戦勝ちだと一人でほくそ笑む。 『私は24歳で、名前は・・・サツキです。またお返事ください』 俺は早速返事を返そうと��をプッシュし、発信音の後でメッセージを入れる。 「こんばんは、伝言聞きました。平良です。・・・」 まだ舞い上がっている俺は、その後の言葉が続かない。 「サツキさんの声って、すごく可愛くて・・・どんな人なんだろうって興味あります」 留守番電話でもそうだが、相槌の無いものに一方的に話すというのは難しい。 「あの、もし良ければ、電話で話しませんか?お返事聞かせてください」 何度か詰まりながらも、何とかそこまで言い終えて♯を押した。 <以下次号> |
| 2002年09月15日(日) 金曜日、不夜城に降る雨。 �� |
<前号より続く> そんな中、一人の若い客引きを見かけた。 「あ、生乳の触り放題吸い放題、飲み放題で今ならワンセット3,500円です」 俺の目の前で、まだ髪の黒い大学生のバイト風の客引きが苦戦していた。 その値段の安さからいっても、おそらくオプションを加えると法外な値段になる店だ。 客引きに頼る激安設定の店は、いわゆる「ボッタクリ」系の店といっていい。 熟年の頭頂部の薄い男に寄り添い、呼び文句並べたものの軽くあしらわれる。 不意に振り払った手が彼の顔に当たった瞬間、顔を背けて苦渋の表情を浮かべた。 しかし同じ制服を着た、後ろの先輩らしき従業員に叱咤される。 また作り笑顔で向き直り、また別の客に同じ文言を繰り返す。 時給に惹かれたか、女が絡む仕事と目論んだか。 この仕事の厳しさ、辛さを今、彼は噛み締めているはずだ。 俺はなぜか彼を見ていられなかった。 学生らしき若者よ。 お前の親父くらいの草臥れた男に下品な文句を囁く気持ちはどうだ。 冷たく振り払われる気持ちはどうだ。 先程の歪んだ表情、不安にかられた目に本心が表れている。 その秋雨にうたれた制服では、 その頬さえ緩まぬ程に固まった作り笑顔では。 誰も高い金を払ってまで楽しもうという気になどなれまい。 出直して来い。 辛い状況で恥をかかせて、若手を精神的に鍛える通過儀礼なのだろうか。 それくらいの事でへこたれていては、この業界では残れないだろう。 その向こうでは、別のセクシーパブに入ろうかと迷う熟年男と客引き。 巧妙な交渉に、店への期待からかニヤ付く熟年男の顔に、 傍から見ていた俺は思わず悪寒を覚える。 そこの薄汚いオヤジよ。 あんたの息子くらいの客引きの甘い文句に、何を期待しているのだ。 相手をする娘があんたの娘くらいの年齢でも勃起しているのか。 鼻の下を伸ばして女を買って、何食わぬ顔して家に帰るのか? あんたは女房、子供から敬われているか? あんたは自信持って、玄関から家へ帰れるのか? だったら、こんな時間に錦三にいないわな。 スナックばかりが集合するテナントビルでは、どこも変わらず擬似恋愛の陳列。 名残惜しそうな仕草の男たちと、名残惜しそうな芝居の女たち。 水商売の女に鼻の下を伸ばす背広のオヤジよ。 あんたはこの娘らの本心を知っているのか? タクシーに乗って消えていくと、この娘らは嘲笑しつつ、 身体中をバタバタはたき、埃と匂いを振り払って店に入るんだぜ。 あんたに来て欲しいわけじゃない。 あんたの財布やカードに来て欲しいだけで、あんた自身には用無しだ。 そんな酒で、法外な料金に値するほど酔えるのか? タクシーの酔漢を見送った後、彼女達は俺の目の前で呆れた表情でまた店に戻る。 煙草のヤニ臭さを、下衆な整髪料の臭いを、全身から漂った脂臭さを、 そして酔漢の存在自体を叩き出すように店先で全身をバタバタ叩く。 男としては、あまり見たくない光景だ。 水商売に生きる女たちへ。 酒とともに嘘の愛情を注ぐことに疲れないか? 好きでもない客に触れられることに悲しくならないか? そんな事が平気な人は、あまりいないよね。 君たちのグラスに入る、嘘の水割り。 客に対して思い付くだけの美辞麗句を搾り出す、接客術。 男どものストレスと癒すだけ、誰かに癒されたくなる心。 日陰の仕事ほど、見えない部分ほど本当は辛いはず。 露出の多い服で決めた茶髪女が、歩道の真中に堂々としゃがみ込み吐き戻す。 悪酔いの悪臭が湿気を含んだ風と共に、こちらにまで漂ってくる。 大声を張り上げ、猥褻な単語を連発しながら闊歩する中年の泥酔漢。 その男を避けながら歩く他の通行人。 シャネルやルイ・ヴィトンで全身を揃えた若い金髪女が、濡れていない地面に 下着が見えんばかりの格好で座り込み、一心不乱に携帯メールを打ち込み続ける。 街は常夜灯やネオンで煌々と照らされている。 そんな中、街路樹に何の躊躇いも無く立ち小便するホームレス風の老年の男。 表情や服の色まではっきりと判る程の明るさの中だ。 俺の背後でいきなり非常ベルが鳴り響いた。 一年前の新宿歌舞伎町のビル火災の凄惨な光景が脳裏によぎる。 大抵の通行人は振り返るものの、誰も通報したり興味を示すものはいない。 止める者も無く、ただカラカラカラ・・・と鳴る孤高の警報機。 時間は12時半近く。 錦三の中で大移動する人の波に逆らって歩く。 一本向こうの通りから聞こえる、吹き上がるエンジン音。タイヤが鋭く鳴く。 間もなくビル街にこだまする、パトカーのサイレン。 錦三の、深夜の喧騒。 居酒屋から上機嫌に出て来る主婦らしき集団。 見くびった旦那か、言う事を聞かない子供か、嫌われ者のご近所の悪口を 相手の話もまともに聞かず、勢い良く吐き合う。 ビル陰で意味ありげに見つめ合う、ホステスと熟年男の不釣合いな二人。 同伴なのか店外デートなのか。女は目を合わせない。 二人はやがて抱き合った。 奥に向く熟年男はホステスの尻を撫でながらなにやら耳元で囁く。 通りを向く女は心無さげに、腐った魚のような虚ろな目でただ遠くを見ていた。 人目をはばからず抱擁し、不潔なほどのじゃれ合いを見せるバカップル。 ちょっとした広場で何もせずにただ集う若者の集団。 彼らの世界は、錦三の喧騒とは隔世の感さえあった。 先程の悪臭をまともに吸い込み、いよいよ俺まで気持ち悪くなる。 しかし俺が休むことを許される場所はどこにもない。 いつしか目的を忘れ、錦三に集う様々な人間を眺めながら徘徊している。 鈍い頭痛まで始まり、歩く事さえ辛くなってきた。 点在する24時間営業の喫茶店に入ろうかと思ったが、 きっと何も受け付けないだろう。 俺は車のある駐車場まで引き返した。 車で横になってしばらく休めば、吐き気も頭痛も退くものと思った。 屋外のコイン駐車場に戻り、車の鍵を開け、車内に倒れこむ。 ドアを勢い良く閉じた。 間もなく、断続的に降っていた小雨が本降りの雨になった。 ネクタイを緩め、シャツの首のボタンを外す。 俺はぼんやりとした意識の中で、先程の人間模様を思い浮かべた。 あの黒髪の若い客引き、この雨の中でまだ辛い仕事を続けているのだろうか。 あの吐き戻していた女、この雨だったらあの粗相も流されていくだろう。 あの金髪女、折角めかし込んだのに、傘も無いとおしゃれも台無しだろうな。 あの猥褻な中年男、この雨に打たれてその薄い頭でも冷やしちまえ。 あの抱き合っていたホステス、なぜあんなに心無い表情を浮かべていたのだろう。 あのバカップル、交尾中に水を掛けられた犬みたいになってるかもな。 あのホームレス、ちゃんと雨露がしのげる場所で、暖かく寝ているだろうか。 この雨の中、俺は何しにこんな時間まで意味無く歩き回ってたのか。 遊びに来たこの街で、俺は雨の中で眺めてた人たちのようにさえ楽しめない。 例え偽物とわかっていて、金を遣って一瞬の癒しを求める男。 男の気持ちを逆手にとって、金を遣わせて寂しい男どもの相手をする女。 女が稼ぎ出す金を目当てに、一旗上げようと目論み、成り上がろうとする男。 成り上がる男に喰らい付き、稼ぎにあやかろうと内心で企む女。 先程見かけた人間模様は、この街が生み出す微妙で複雑な利害関係の縮図だ。 楽しい宴の余韻を誤り、ただ切ない気持ちだけが残った錦三の夜。 来るんじゃなかった・・・ ・・・・・・ ほんの少し、眠ったようだ。 あれから1時間ほど経っている。 雨は先程のような断続的な小雨に戻っていた。 俺はまだ続く鈍痛を抱えたまま、車を出した。 午前2時前の錦三は少々灯りが減ったものの、まだ不夜城の如く蠢いている。 結局、俺は目的を果たせないまま帰途に就く。 降り続ける雨は、俺が部屋に入るまで止む事は無かった。 |
| 2002年09月14日(土) 金曜日、不夜城に降る雨。 �� |
<前号より続く> 金曜日の夜とあって、錦三は随分の人出だ。 幾重にもなる路上駐車だらけの道路には、 すれ違いと客拾いに苦しむタクシーが渋滞する。 なかなか場所も判らず、店の看板も見当たらない。 「ちょっと待ってて・・・」 玉城はようやく冷静になったのか、携帯電話を操作して、 店の場所をネット検索し始めた。 「本当にこの辺なんだけどなぁ・・・」 「玉城、俺もうどっちでも良いや」 草臥れた俺は、本当に店に行く気力を失っていた。 ネクタイやシャツも汗と小雨で湿っている。 「本当にこの辺だぞ、見てみろよ」 玉城の携帯の画面を覗くと、略地図に赤い丸で店の場所を表している。 しかし画面の地図では、具体的な場所はわからなかった。 ビルの名前も載ってはいるが、ビルの名前などいちいち判らない。 諦めきれない様子の玉城だったが、時計を見て愕然とした。 「やべぇ、終電無くなっちまうよ」 「もう諦めろ、彼女で我慢しろってことだ」 欲求不満のまま散会となった。 玉城と分かれた俺はこのまま帰るのも癪だと思い、 もう少し遊ぼうかと思った。 しかし時間は11時半過ぎ。 風俗店の営業時間は12時までなので、この時間では遅い。 車で来ているので、飲みに行く訳にもいかない。 俺は自分の携帯で先程の店を検索してみた。 玉城と同じ携帯電話会社なので、同じサービスを受けられる。 それらしい風俗サイトから「セクシーパブ」を検索するとはじき出された。 『巨乳倶楽部 π πパラダイス』 セクシーパブは風俗店と違って、あくまで飲食店扱いとなる。 営業時間は風営法の規制を受けないのか、深夜2時までとなっていた。 後で玉城に自慢してやろうと思った俺は、その店を単独で探すことにした。 金曜日の深夜。 錦三には、様々な男と女の光景が繰り広げられていた。 この界隈を男独りで歩いていると、間違いなく客引きが寄って来る。 短めの金髪で、少々ネジの緩そうな若い男が近寄って来る。 「えー、生乳・生脚触り放題、生キスありの飲み放題で二千円ポッキリです」 客引き行為で、客の身体自体に触れるのは法律違反になる。あくまで寄り添うのだ。 セクシーパブ系の飲食店の客引きだろう。 俺は完全に無視して足を進める。 しかし先程の客引きがまだ俺に食い下がって来た。 「えー、生乳・生脚触り放題、生キスありの飲み放題で二千円ポッキリです」 全く同じ呼び込み文句を、まるで一つ覚えの九官鳥のように繰り返す。 俺には目的がある。 付き合う気は無い。 幾分か早く速度を速め、振り切った。 しかし今度は別のベテランの客引きが俺の行く手を阻むように立ちはだかる。 「社長!うちは生乳・生キス、気に入ったら口説き放題で四千円!四千円!」 その客引きにも目を合わせないように無視して歩く。 苛立ちを隠せない客引きの声が執拗に俺を追いかける。 通りの角を曲がり、違う通路を探してみる。 案内板にスナックの名前が整然と並ぶビルの角では、 白髪混じりの会社役員風の男と、スリットが深めで派手な色のスーツを着た茶髪の女が、 まるで通りを歩く人々に見せつけるかのように抱き合っている。 その隣りでは、影の薄そうな中年の腕に、見た目東南アジア系の女が抱きついて 何やら男の耳元に囁いている。 女はその男の肘に自分の豊満な乳房を押し付けるようにしがみ付く。 俺は街で繰り広げられている光景を次々と眺め、複雑な思いに苛まれた。 <以下次号> |
| 2002年09月13日(金) 金曜日、不夜城に降る雨。 �� |
2002年9月6日。金曜日の夜。 週末の一時。 あなたは誰と、どのように過ごされただろう。 家族と。 恋人と。 気の置けない友達と。 仕事仲間と。 または独りで。 例えば・・・ 食事。 語らい。 デート。 ドライブ。 くつろぎ。 せっかくの週末の夜だ。 一週間の労働から解放された、ほんの一時の自由を満喫するのも悪くない。 俺は仕事が終わった後で、大学時代の仲間内で食事でもしようと話が上がり、 交通の便を考えて、名古屋の繁華街・栄で集まることになった。 地下鉄東山線・栄駅で待ち合わせ、錦3丁目のビルにあるイタリア料理店へ赴く。 「お疲れ様!」の掛け声での乾杯の後、食事と会話に楽しい時間を割く。 俺は仕事からの直行で車だったので、非常に残念ながらも酒は断った。 気の置けない男友達ばかりの5人の食事会は『華やかさ』が無いものの、 誰も飾らない、楽しい時間を過ごした。 コースだったが、ボリュームあるサラダやピザ、パスタを堪能する。 「この後二次会行こうぜ、二次会!」 「何か目当てでもあるのか?」 「この近くに『おっぱいパブ』があるんだよ、行ってみないか?」 「おっぱいパブ?・・・どんなところだ?」 なにやら興味津々の男どもを代表する形で、俺が提案者で幹事の玉城に質問する。 気の置けない仲間ばかりで華やかさの無い食事会。 やはり求めるのは、女性の存在だったのか。 「あのな、俺も人から聞いたことしかないんだけど・・・」 ほろ酔いの玉城はそう言い訳する。 しかし、まるで自らが体験してきたかのように詳しく説明してくれた。 基本的にはキャバクラと同様で、女の子とお酒を飲みつつお話をする店。 違うのはその女の子達の乳房にサービスの一環として触れることが出来る点。 そして20分に1回、『ハッスルタイム』と呼ばれる時間がある。 その時間に何が起こるのかは、店に行ってからのお楽しみ。 但し風俗業的なサービスは無く、単に話して触って楽しむ店だという。 男の欲望を惹きつけて止まない外観と柔らかい触感。 男にとって、豊かな女性の乳房は『永遠の憧れ』といっていい。 乳房とは子供だけの物ではない。 「俺、尻フェチだからなぁ・・・そんなに良い所か?」 「でもなかなか女の胸は触れないからなぁ、たまには良いかもよ」 そういえば玉城の彼女は奴に似合わず良く出来た娘だが、外見上は細身で貧乳だ。 たまには触り心地の良い、たっぷりの乳房に心惹かれるのだろう。 金を出し、サービスとして触れるのだから『割り切り』もつく。 きっと裏切りでも浮気ではない、敢えて言わば、箸休めか。 酒の勢いもあって、提案に賛成した者は5人中3人。 あとの2人は怖気づいたのか断り、結局ここで一度散会となった。 しかし夜とはいえ蒸し暑い上に、天候はあいにくの小雨。 歩いているうちに額から、背中から汗が次々と噴き出すのが分かる。 梅雨の最中のような湿気に不快指数の高まりを感じながら、 案内役を買って出た玉城について歩く。 地下鉄栄駅と久屋大通駅の中間辺りを西へ歩くと中部地方最大の歓楽街、 通称・錦三と呼ばれる場所に辿り付く。 夜の錦三はどこを歩いても同じような光景が広がる。 不慣れな者から見れば、もう立派な迷路だ。 「あれぇ?おかしいなぁ・・・この辺なのは確かだけど・・・」 俺たちはすでに20分以上歩いている。 しかし一向に目指す店には到着できないでいた。 実は同じような通りを何度も通っている。 何度も同じコンビニを目印に通り過ぎている。 大津通に面するカゴメビル、アメリカンドラッグもすでに何度も通り過ぎた。 俺たちはただこの界隈を行き来しているだけのようだ。 「もう一度、店に確かめたらどうだ?」 「大丈夫だって、大丈夫。この辺なんだから・・・」 冷静さを失うと意固地になり過ぎる、玉城の昔からの悪い癖が出る。 時間はすでに11時前。 「玉城、平良。悪いけど・・・遅くなるから、俺ここで失礼するわ」 同行するもう一人がそういい残して久屋大通駅のほうへ消えた。 彼の家は市外で遠い。 家庭のある身、それも仕方ない。 「まあいいや、平良!二人で行こう」 「行くのは良いけど、分かんないんだろう?店の場所」 梅雨のような湿気とにじむ汗、降り止まない小雨。 俺の不快指数も先程よりも相当高まる。 つい強い口調で玉城に食って掛かってしまう。 「いい加減にしろよ、もう行く気も萎えて来たぜ」 「だからこの辺だって・・・こういう機会がないと行けねぇだろ?」 玉城も相当意固地になっていた。 俺は呆れながらも、玉城と共に店の看板を注視しながら錦三を練り歩く。 <以下次号> |
| 2002年09月12日(木) 仰げば尊し。 『我が師の恩』 |
| <前号より続く> 「帰り際、名刺に電話番号を書いてくれてね・・・今度家に遊びに来いって」 「行くの?」 「うん、今度は先生の家に遊びに行くんだーっ」 「へぇ〜っ」 「実はね・・・ずっと一度先生にあの頃を謝んなきゃって思ってた」 「いい事じゃん」 「ついでに実家にも一度帰って見ようかと思ってたし」 「実家?帰ってないの?」 「あの頃・・・実家にも迷惑かけたから、今でもちょっぴり帰り辛いんだよね」 ノリカは中学卒業後、家出同然で家を飛び出した。 その後の生活はどういうものだったかは、彼女の口からは何も語らなかった。 法律に反しない年齢になり、金目当てでこの業界に飛び込み、 社会の風の冷たさ、厳しさを『肌』で痛感した結果、ついに更生を果たした。 実家には連絡だけは入れているそうだが、家出以来ほとんど帰っていない、と 寂しげな表情で言った。 「何だか親には、本当に申し訳なくて・・・」 「でもそうやって過去を反省しているんだから、君は立派だよ」 「ありがと・・・あの頃は本当にバカだったな。殴ってやりたいくらい(笑)」 「それこそボコボコにしそうだね(笑)」 実家に、そして彼女の心に残した不良時代の傷跡の修復は、 彼女自身の更生よりもさらに時間を要するのだろう。 ノリカは先日の先生との再会以来、 過去に残した傷跡を一つずつでも縫い合わせていこうと考えるようになった。 実家や世話になった先生への挨拶もその一つ。 「やっぱり後ろめたい気持ちでいたくないもん。 確かに思い出したくない過去でも、逃げてばかりじゃ何も終わらないしね」 悪い仲間とは縁を絶っても、全ては解決できない。 最後に行き着くのは、自分自身の心の問題なのだ。 俺は期せずして、心が洗われるような清々しい気持ちになった。 ノリカは過去から逃げず、自分と向き合って清算する構えでいる。 「だって自分が親になった時、後ろめたい気持ちで子供に接したくない。 自分が昔ワルだったんだぜ・・・なんて自慢する奴、私。大嫌いだもん」 「結構多いでしょ、そういう男」 「そういう奴に限って実は中途半端なんだよね、私から見れば」 説得力ある言葉だ。 60分の時間は、すでに後半を回る。 「時間なくなっちゃう・・・しよっか?」 「大丈夫?できる?」 「本番はできないけど(笑)、頑張る」 「いいけど(笑)、本番はしないんだ」 「一応愛する旦那がいるもんでさ(笑)」 借金返済のために『店外交際と本番行為をしない』という条件で この仕事を渋々認めている旦那がいるという。 先生の嫁に行け!という心配はどうも無用だったようである。 俺とノリカは寄り添いながら、ベッドに横になる。 ベッド脇の壁には、全身が映る鏡がある。 鏡に映る女の肉体、というのも艶かしいものだ。 華奢な身体の割に大きめの乳房は、横になってもしっかりと存在を示していた。 ノリカは繊細な舌先で俺の上半身を舐め上げ、掌で俺自身を器用に操る。 そして口に咥えて、強弱をつけての律動。 俺もノリカに69になるように頼み、彼女自身を舐め、指で触る。 余分なヘアのない、綺麗なノリカ自身。 突起を剥き出し、ごく軽く触れて責める。 ノリカは咥える口を時折離し、喘ぎ声を漏らす。 その漏らす声が、俺の男心を絶妙にくすぐる。 「ねぇ、上に乗っていい?」 彼女の得意技は騎乗位素股。 ローションを少し手にとって自らの股間に塗り込む。 男の股間に馬乗りになり、腰を前後にグラインドすることで互いの性器を擦りあう。 足の長い彼女は楽々と俺に跨り、勃つ俺自身に手を添え、 裏筋に彼女自身の割れ目を押し付け、前後に大きく腰を動かす。 もしこれが挿入されていたなら、俺も長く持たなかっただろう。 それくらい激しい技だった。 ノリカも目を閉じて、吐息交じりの声を上げる。 「気持ち良いの?」 「うん・・・だって気持ちいい所に当たってるんだよ」 彼女の割れ目の奥の粘膜に、そして突起に、俺自身が擦れる。 これはもう擬似Sexだ。 そしてまた69になる。 ノリカは大きな動きで俺自身を攻め抜く。 もう長く持たない。 十数秒後、俺は果てた。 ほぼ同時に時間終了を告げる電子ベルが鳴った。 「・・・さすがプロだね」 「もうこの仕事、長いからねぇ」 「でも、いい話聞いちゃった後でやる事やるってのも恥ずかしいね・・・」 「大丈夫だよ、これが本当の私の仕事だもの」 22歳となっていたが、それは明らかな「公称」である事は言うまでもない。 「歳?本当は26(笑)」 肌の具合や雰囲気などは随分若いので、さすがに26には見えないが。 「もう8年になるよね、この仕事。長いよねぇ(笑)」 まだ余韻の残る身体に服をまとう。 「本当に気持ちよかったよ。ありがとう」 「ハイ、これ」 彼女はノリカを自分の名前と出勤日の入った名刺を差し出し、別れの抱擁。 「まだ仕事続けるの?」 「一応ね。中卒じゃ今の時代、他の仕事ないし(笑)」 「そんなことないでしょ・・・子供は?」 「作る気になったら辞めるわ。まだもう少し掛かるけど」 「じゃ、また会えるかな」 「また来てよ、今度はサービスするからぁ」 「どんなサービス?」 「次に来た時のお楽しみよっ」 そしてインターホンでフロントと話をする。 「ノリカです。お帰りです」 ノリカはフロント脇のカーテンの奥で、最後まで笑顔で手を振ってくれた。 そしてカーテンが閉じ切った時、俺は現実の世界に戻った。 雑誌に大きく顔の出ていた売れっ子だったので、その後も店の広告に載っていた。 しかしノリカは一ヶ月経った時、広告から顔写真が消えていた。 「ハイ、○○○です」 「あのぅ、ノリカさんって娘を予約したいんだけど・・・」 「ノリカさんですねぇ、退店されました」 「あ、そうですか・・・何時頃ですか?」 「そうですねぇ、最近ですねぇ」 「どこに行かれたか、分かりますか?」 「そんなの知りませんよっ!」 やけに強い口調で断言された。 この店の問題ある接客態度は今回だけではない。 いくら風俗業だからといってこのような接客が許される訳がない。 サービス業である限り、店に金を落としていく客は「神様」なのだ。 特に電話は広告と並ぶ、その店の「第一印象」を左右する重要な客との接点。 不況風が特に冷たく吹き付けるこの業界でも、 客の気分を害し、みすみす逃すような接客態度は絶対に許されない。 裏にどんな組織が付いているか分かった世界ではないので、 表立った抗議や行動を起こすほど、俺は突っ張ってはいないが。 その店員の粗暴な口調に気分を害した俺は、そのまま電話を叩き切った。 もう二度と利用しない。 ノリカがいないのなら、割り切ってまで利用する意味もないのだから。 ノリカが他の店に移ったのか、この世界から足を洗ったのか。 実家へきちんとけじめを付けに行ったのか、大好きな恩師の家へ遊びに行ったのか。 今となっては定かではない。 |
| 2002年09月10日(火) 仰げば尊し。 『恩師との再会』 |
<前号より続く> ノリカは、湯の出るシャワー口を股で挟み、中央の割れた俗称「スケベ椅子」に座る 俺の身体を、前面から手馴れた様子で俺の身体を洗い流す。 「お客さん、いい身体しているね」 「そう?デブなだけだって」 「私、そういう男の人好きだな。だって私がデカイでしょ?」 「そうだね。男を見下ろすくらいだから(笑)」 「だから飛び込んでも抱きとめてくれるような人が理想」 「そうかぁ、いつでも飛び込んでおいでよ」 「いいの?でも私、すごくお金掛かるわよぉ(笑)」 「じゃあ、まずは貯金から始めないといけないね」 朗らかな会話で心をほぐしつつシャワーを終え、身体をバスタオルで拭き、 空調の利いた部屋で待つ。 「お客さんの仕事、当ててみよっか?」 後片付けを終えたノリカは俺の隣りに座り、断りを入れて煙草を吸いつつ、 そんなことを言ってくる。 「いいよ、当ててみな?」 「あのねぇ、学校の先生!」 突飛な答えに思わず吹き出した。 俺は拙い営業職だ。 「先生?」 「そう!それも体育でしょ?」 「なんでそう思うの?」 「だってぇ、直感!・・・と言いたいけど、第一印象でね」 「第一印象?」 「真面目そうだし、良い身体してるし・・・でね」 次の言葉が一番特徴的だった。 「シャワーに入る時『失礼します』って言ったでしょ?」 「そうだっけ?」 「だってね、先生たちって妙に礼儀正しくて。それも体育の先生」 「何で知ってるの?」 「そうやって挨拶して入ってくる人に仕事を聞くと、大抵が先生だっていうの」 こういう店に来る教師だって人間であり、男だ。 自分の給料や小遣いで遊ぶ分には何も咎められる事はない。 よく聞く話がある。 水商売や風俗で働く女性に対して、サービスの域を越えた無理な要求 (本番・変態行為をせがむ、個人的に会う事など)を強要してくる人の職業に、 教師や警察官などの公務員が多いという。 日頃から品行方正さを求められる、厳しい仕事だ。 不平不満の多い仕事柄やストレスが、そういった甘えとなって出てしまうのだろう。 「でね・・・この前さ」 その店になぜか岐阜県の教師達が数人、団体で遊びに来たという。 「組合の飲み会の流れで、どうしても断り切れなくて・・・って言ってた(笑)」 ここの店は岐阜県からの教師の客が多いそうだ。 こういう形で流れて遊びに来るのは珍しくないという。 「そこでついた人が、たまたま私の中学の時の生徒指導の先生だったの!」 「本当?!」 強面で接していた教え子と鉢合わせ。 教師としても、男としても面子が潰れかねない。 その話を聞いたとき、男としてその教師に同情する気持ちになる。 ノリカは岐阜県の飛騨地方の出身だといった。 家庭での問題、そして両親への不信感が彼女の歯車は狂わせた。 彼女が中学の時は「学校始まって以来のスケ番」へと成長した。 男子以上の長身で暴れる様は、相当の迫力と恐怖があっただろう。 彼女が荒れに荒れていた頃、何かと世話を焼かせたのが担任とその生徒指導の教師。 何かと問題を起こす度に、激務の合間を縫ってどこにでも出動させた。 「向こうも驚いてね、「『おい高田!ここで何やってるの?』って怒られた(笑)」 「高田?」 「あ・・・・本名。内緒ねっ」 話に興ずる彼女は自分の本名を思わず口にしてしまう。 「先生、どこで分かったの?って聞いたら・・・」 「身長じゃない?」 「そう!お化粧では誤魔化せても、こればかりはどうにもならないね」 「まあねぇ。整形手術で削る訳にも行かないし」 「(笑)でね、先生が言うの」 「何て?」 「学校何度も変わったけど、お前ほどのワルは居なかったって」 「相当やんちゃだったんだねぇ(感心)」 「私が学校で壊した所、まだ分かるって言ってた(笑)」 身振り手振りで面白く話をしてくれるノリカ。 俺は誰もが気にする事を、思い切って聞いてみた。 「でさ、したの?その先生と」 「・・・・しないよぉ!『お前とは出来ないなー』って、ずっとお話」 ノリカは一気に顔を真っ赤にして否定した。 「本当?」 「『お前は俺の中では、いつまでもあの頃の高田だ』ってお話だけ」 その生徒指導の先生とやらは、欲望よりも再会の喜びをとったのだろう。 「でもさ、昔は先生なんて皆大嫌いで、反抗ばっかりしてたけど・・・ 本当は一人になったときに、後から先生の言葉がずっとジンジン響くのね」 不良仲間や慕ってくる舎弟がいる手前では突っ張り通さざるを得ない立場だった彼女も、 一人になって冷静になると、彼らの説教や言葉を噛み締めるのだ、とこぼす。 特に・・・警察にも何度も補導され、学校という組織から見捨てられても仕方ない程 荒れ果てた彼女を、卒業まで決して見捨てなかった担任と生徒指導の先生。 彼女の耳に、そして心にその先生たちの言葉はしっかりと届いていたのだ。 当時への深い反省と感謝の気持ちが、愛嬌ある言葉の端々から伝わってくる。 「帰る時『元気にしている事が分かって良かった、早く嫁に行けよ』って言うの」 「で、なんて答えたの?」 「先生もこんな所で遊んでちゃダメだよって言ってやった(笑)」 ひどく荒んだ背春時代を過ごしたとは思えない和やかな笑顔で、舌をぺろっと出す。 人は何時までも、自分の親の前では子供だという。 ならば人は何時までも、自分の恩師の前では教え子なのだろうか。 ノリカ、いや稀代の不良『高田』は、彼の前ではまだまだ一人の生徒だったのだ。 いきなり彼女は俺に抱きついてきた。 「私ね、最後に『先生だぁい好き!』ってこんな風に抱きついちゃった」 「せ、先生どうしたの?」 「すごく照れてた(笑)」 無邪気な表情でおどけて見せる。 <以下次号> |
| 2002年09月09日(月) 仰げば尊し。 『第一印象』 |
誰にでも、外見での「好みのタイプ」というのがある。 女性なら身長、髪型、顔、体型・・・と相手の男性に求めるものがあろう。 それが恋愛感情や相手への意識に左右されない程度のものであっても。 当然、男も女性に対して好みがある。 『第一印象』という言葉がある。 それによってその人の人間性までもが大きく左右されてしまう、大変恐ろしいものだ。 それは恋愛感情でも、営業の商談などの仕事でも。 人と人との出逢いにとって、第一印象とは最も配慮すべき事柄である。 第一印象・・・すなわち、ぱっと見の『外見』。 人間の内面など、一見で分かるはずも無い。 全ては表向きの外見から始まるのだ。 風俗遊びの醍醐味の一つは、自分の求める外見上での理想のタイプの女性を選んで、 男の欲望を果たせることにある。 コンビニに置いてあった真新しい風俗情報誌を一冊所望した。 外面は写真週刊誌のような女性のグラビアで、中身に風俗情報が載っている。 家に帰って眺めてみる。 満面の笑みを浮かべて悩ましい肢体を見せる風俗嬢の姿があった。 「特集・ナイスバディなお姉さんに癒されたい!」 俺の目に留まったのは、安っぽいタイトルとそれに違わぬ内容の特集記事だった。 名古屋市郊外の街のファッションへルスに在籍するその嬢『ノリカ(仮名)』は、 長身で元モデルというプロフィールが掲載されていた。 『 22歳 身長171cm B 89(D) W 60 H 88 性感帯・・・うちもも 』 長身で細身の女性が好みな俺は、華奢に見える写真の彼女に興味を持った。 早速店に電話してみた。 「ハイ、○○○です」 「あ、雑誌を見たものけど・・・」 「ありがとうございます、ご予約ですか?」 「ええ、そちらのノリカって娘は今度いつ出勤ですか?」 「ええ、只今お休みを戴いておりまして・・・次回は日曜日になります」 「そうですか。どうも」 日曜日。 再び店に電話を入れてみる。 「ハイ、○○○です」 「ええっと、今日はノリカさんは出勤ですか?」 「ハイ、出勤してます」 「じゃ、予約をしたいんですが」 「じゃ少々お待ち下さいよ」 しばらく待ち受けのオルゴールが鳴る。 焦れながら待っていると、先程の少々横柄な態度の受付が出た。 「大丈夫ですが、大変人気の娘でー・・・夜11時からしか空いてません」 午後11時・・・ そして次の月曜日は仕事だ。 その店は名古屋の郊外にあるため、少々不便だ。 しかし男の欲望というものは、一旦火がつくと止まらない。 「・・・その時間でいいです」 「分かりました、11時からで予約お取りしてますから」 「ああ、はい」 「お時間30分前には必ず一度お電話ください。そしてあと予約時間には 必ず着くようにお越しください!でないとキャンセルになります」 名前を聞かれたので、偽名を答えた。 言い方にトゲがあり、この受付はどうも気に入らない。 予約は取れたが、今はまだ昼間。 夜まで、悶々とした禁欲の時間を過ごした。 午後9時ごろに家を出て、国道を北上してその街へ向かう。 考えているよりも時間が掛かり、遠い。 そして夜10時25分頃に店へ電話を入れる。 電話をしないとキャンセルになる。 そして10時35分頃にその店近辺に到着した。 しかしその風俗店が地図に載っているはずもなく、迷子になる。 予約時間までに店に入らないと、これまた即刻キャンセルになるという。 雑誌に紹介されている彼女は、キャンセルがあっても次にすぐ埋まる。 強気な態度の店側に、俺も不服ながらも従わざるを得ない。 途中、店の所在を携帯電話で問い合わせ、予約の5分前にようやく到着した。 受付で先程の偽名を名乗り、待合室へ通される。 そこで時間コースを決めるのだが、新風営法との兼ね合いだろう。 夜11時以降のチェックインは、60分以上は出来ない、と言われた。 さすが優良店を謳うだけある。 「では60分で」 「ありがとうございます、では1万8千円頂戴いたします」 たった1時間でこの高額料金だ。 折角の機会に大金をはたいて、『地雷』と呼ばれる低レベルな嬢や相性の悪い嬢に 遭遇してしまい荒れる客がいるのも、どこか頷ける。 待ち合わせ室のソファに座り、雑誌を読みつつ順番を待つ。 しかし11時を過ぎても一向に俺の順番が来ない。 10分、15分・・・時間が過ぎる。 あれだけ客に「時間に遅れるな」と言っておきながら、無断の遅延だ。 俺は店員にどういうことか尋ねた。 金髪の店員は訝しげに、横柄な口調で待つように言うだけだった。 俺は機嫌悪く、ただ待つ。 20分を過ぎた頃だ。 「お待たせしました!ノリカちゃんご指名のお客様!」 顔を上げると、カーテンの向こうに行けと指示される。 俺はそのカーテンの中に足を踏み入れる。 「お待たせしました、ノリカです」 見上げると、そこには雑誌で見たノリカがそびえ立っていた。 プロフィール通りの長身に加え、当時流行の厚底サンダル。 身長175cmの俺が見上げるほど高い。 「では案内しますね」 店内の急な階段を上がり、部屋へ通される。 飲み物を貰い、飲みながら雑談。 「身長高いねぇ」 「そうでしょう。嫌なの。男の人を見下ろすのはいい気持ちだけど」 「実際は(公称より)もっと高いんじゃない?」 「本当は174cm。でもデカイ女は可愛くないし、あまり低く言ってもバレちゃうし」 公称よりも3cm高かった。 そして10cm以上の厚底サンダル。 ゆうに185cm近い長身から見下ろされていたことになる。 ノリカは長身だが、乳房以外の身体つきは随分華奢だ。 そして何よりも足が長い。 尻も上を向くほど上がっている。 元モデルだ、と言われてもあながち嘘とは思えない。 「じゃ、シャワー行こうか?」 俺はノリカに促されて、服を脱いでシャワー室に入る。 「それじゃ、失礼します」 「うふふっ、どうぞ」 いつもの口癖に、ノリカは何か意味ありげな含み笑いを残した。 <以下次号> |
| 2002年09月07日(土) 過ぎし夏のmemories。 『再会』 |
| <前号より続く> 「この前、凄く濃厚なkissしたよな」 「・・・覚えてるよ」 「俺、あの後凄く余韻が続いて・・・しばらく眠れなかった」 「・・・嘘」 「本当だって・・・次にしたら、俺は藤崎・・・みゆきのこと欲しくなるって思った」 「・・・」 「藤崎を初めて女だと思った・・・考えてたんだ・・・もう一度kissしたい、と」 「・・・」 「俺と藤崎の関係が壊れる事が恐い。でも・・・男だからな、俺も」 「・・・やっぱり下手だよ、平良」 「・・・」 「下手だから安心できるの・・・私だけが馬鹿を見てるんじゃないって」 俺は藤崎をそっと後ろに倒し、覆い被さる。 「俺、今夜は藤崎が、抱きたい」 「・・・嬉しいよ」 俺は唇を重ねた。 藤崎も前回以上にねっとりとした舌遣いで俺を溶かしに掛かる。 しかし明らかに前回とは違うところがあった。 藤崎はkissの最中に声を漏らし、息苦しそうに何度も口で呼吸する。 俺は藤崎の髪を撫で、腰や胸を服の上から優しく撫でる。 俺自身はジーンズの中で、恥ずかしいくらいに藤崎を求めていた。 俺は藤崎の上半身を脱がせた。 小ぶりな乳房に、さらに小さい乳首。 「小さいから恥ずかしいの」 「気にするな」 俺は藤崎のkissに負けない繊細さで、舌先で乳首を転がす。 途端に力が抜けて、可愛い喘ぎ声を漏らす。 「声が出ちゃうよ、恥ずかしいよ・・・」 「出してもいいから」 俺も藤崎も間もなく全裸になった。 藤崎は、彼女自身を求め勃つ俺自身を手にとり、神妙な顔をする。 「何見てるんだよ」 「私には無いもんだからね、不思議だなぁって」 「俺はこっちの方が不思議だって」 俺は右手を伸ばし、藤崎自身に指を這わせた。 くすぐったいのか、恥ずかしいのか、腰を退き顔を大きく背ける。 ヘアを掻き分け、中指が突起のその奥へ滑り込ませる。 嬉しくなるほど、彼女も俺を求めていた。 藤崎の突起を指先で円を描くように撫でる。 途端に力が抜け、可愛い声を出す。 「平良、ゴム持ってる?」 「ああ、あるよ」 「・・・お願い、付けて」 藤崎の言葉に、俺は押入れから布団を出して敷く。 そして彼女の前でスキンをつけた。 二度とあんな辛い時間を過ごしたくない。 そんな彼女の気持ちが痛いほど伝わる。 今度は藤崎がカバンから何やら取り出す。 錠剤だ。 「私ね、ゴムだけじゃ不安なの・・・」 彼氏との時も使うの、と殺精子剤を彼女自身の奥に差し入れる。 これでようやく受け入れ準備完了。 「そんな重装備だと、他の男なら退いちゃうよ」 「だって、恐いんだもの・・・」 自分の『過去』との闘いの、本当の勝利はまだ先にありそうだ。 藤崎は横になり、そっと身体を開く。 俺は小柄な彼女に覆い被さり、瞳を見つめた。 ゆっくりと両腿の奥へ腰を沈める。 俺は藤崎と一つになった。 藤崎の深奥に俺自身の先が当たる。 そのたびに大きく息を吐き、可愛い声をあげ、俺にしがみ付いてくる。 「みゆき、俺・・・みゆきの事、好きになっていきそうだ」 「平良、私も・・・本当よ」 「みゆき・・・」 「ダメ、何だか・・・名前で呼ばれちゃうと、おかしくなっちゃうぅっ」 「いいよ、誰よりも感じてみろ」 「ダメ、本当に平良の事、好きになっちゃうから・・・苦しめないで・・・」 決して派手な声を上げる訳ではない。 藤崎は全身で俺の感触を味わっている様だった。 「ねぇ、もっと奥、突いて・・・そう・・・」 俺は藤崎の要望通り突き上げた。 「・・・ウゥッ!ンフゥッ・・・」 「イキそう?」 「聞かないで・・・ああ、ダメェ!」 数回強く突き上げた時。 小さめの悲鳴と共に、彼女自身が芯から痙攣するのが分かった。 頬を染めた藤崎は恥ずかしそうに俺に強くしがみ付く。 「平良、まだイッてないよね・・・?」 「俺?ああ・・・ゴム付きだとイケないんだ」 俺がまだスキンになれていない頃で、もともとつけるとイキにくい体質。 ゴムの感触が、何とも俺の性感を阻害する気がする。 でも精神的には充分満足だった。 「ゴメンね、私だけ先に・・・」 「いいよ、気にしてないから・・・痛くなかったか?」 「大丈夫、少し痛いのはいつもの事だから・・・」 まだ経験の少ない藤崎は、少し痛みが残ると言った。 拒絶反応から痛みを覚えたのでないようなので、良かった。 藤崎にシャワーを貸し、また布団でまどろむ。 そして始発電車に合わせて彼女を駅まで送る。 歩いて送る道中、なぜか何も言葉を交わさなかった。 照れなのか、後悔なのか。 丁度いい時間に駅へ到着し、藤崎は礼を言って改札口の中に消えていった。 晩秋の早朝は、吹く風が冷たい。 藤崎はそれからも何ら変わり無い態度で、俺と接してきた。 電話も、絵葉書も、サークルへの参加も変わらない。 彼女の飲みっぷりやじゃれる様子を見ていると、 あの夜の出来事はやっぱり夢だったのかな、と思えるほどだ。 平成7年1月17日。阪神・淡路大震災発生。 テレビで刻々と現地の惨状が伝えられる中、俺の実家が関西だと知っていた彼女は、 その朝に心配して電話を掛けて来てくれた。 幸い実家の無事を確認していた俺は落ち着いていたものの、 彼女の優しさに改めて嬉しくなる。 大学卒業を控えた3月。 藤崎は卒業記念に何か普段出来ない事をやろうと話を持ちかけてきた。 「何が良い?」 「行ってみたい所がある」 「どこ?」 「ストリップ小屋!一度見てみたんだよね」 「ストリップゥ?いいじゃん、自分が鏡の前で脱げば」 「他人の裸だから見たいんでしょうが!」 後日、俺と藤崎、その友人2人と4人で名古屋銀映へ出向く。 舞台上の踊り子達が皆、俺達の方をジロジロ見ていたのが印象的だった。 自分達と年の変わらない女性が自分達の裸と踊りを見ているのだから、 何かと動揺するのも分かる。 平成7年春。大学を卒業。 社会に巣立った藤崎は、就職先でトラブルに遭い、精神的に参ってしまう。 引きこもるようになり、元気を無くして相当痩せたよ・・・と友達伝いに聞いた。 自分からはあまり弱音を吐けない藤崎。 しかし彼女からは何の音沙汰もなかった。 心配になった俺は電話を掛けたが、彼女は電話口に出なかった。 それ以来、しばらく彼女とは連絡が取れなくなる。 それからほぼ3年後。 サークルの知人の結婚式の二次会で偶然藤崎と再会した。 心ならず休職した後、職場も変えて幾分か明るさが戻ったものの、 まだどこか疲弊した様子だ。 外見上でも、幾分かやつれたようだ。 彼とはもう10年近い付き合いになるが、まだ結婚には至らない。 藤崎は導眠剤や抗鬱剤を手放せないうちは結婚も出来ないよ、と打ち明けた。 実は彼にその辺の事情は話せないでいた。 彼と彼の家族に余計な心配を掛けまいとする彼女の気遣いでもある。 自分の過去との対決、そして新しい環境でのストレスや様々な葛藤が 雪崩のように彼女の心を襲い、苦しめていた。 俺は藤崎が見た目や行動とは違う、繊細な女だという事を知っている。 いくら努力して変身しようとしても、人間の本質は変わらない。 俺にはどうする事も出来ない、藤崎が自分自身で乗り越える試練である。 俺は藤崎に学生時代と同様に接していた。 懐かしい顔が並ぶ会食の時、俺は藤崎に冗談めかしに耳打ちした。 藤崎と彼の結婚の時、二次会には出るやるから、と。 平良なんか呼ぶ訳無いでしょ!と彼女から何年振りかの肘うちを喰らった。 呼べる訳無いじゃない・・・と彼女の呟きが続く。 何故かは聞かなかった。 俺は藤崎との、夏の終わりのあのkissを交わした夜を覚えているから。 そして、秋風の冷たい夜に一度だけ結ばれた夜を忘れていないから。 宴の終了直前。 まだ調子が優れないから・・・と語っていた彼女は会場を後にした。 「彼が迎えにきているんじゃない?」 「誰かの幸せを見せ付けられると、自分も浸りたくなるんだって!」 「平良君、あれだけみゆきと仲良かったんだから、探っておいでよ」 先程の血の気の薄い、陰のある表情を思い出す。 酒に勢い付く女達の陰口交じりの冷やかしも聞こえたが、俺は違うと感じた。 ・・・・・・ その久しぶりの再会以来・・・ 藤崎からの連絡は完全に途絶えた。 そして彼女の動向は一切俺のもとに伝わってこない。 |
| 2002年09月06日(金) 過ぎし夏のmemories。 『長く深いkiss』 |
<前号より続く> 俺は藤崎のおでこに口付けた。 衝動が押さえきれなくなり、次に鼻の頭に口付ける。 腕の中の藤崎の体温と肌の柔らかさが、俺の理性を徐々に壊し始める。 藤崎の右頬に口付けた所で、彼女は目を覚ました。 「何したの?」 「・・・分からんかったか?」 「・・・分かってたよ・・・髭が痛い」 俺の頬や顎の、伸びかけた髭が痛かったようだ。 俺は半ば開き直って、藤崎の顔のあちらこちらに口付けた。 腕の中の彼女はくすぐったがっている。 でも決して抵抗しない。 俺は思い切って、藤崎の唇を奪った。 一瞬きつく身をすくめた藤崎。 調子に乗りすぎたか? しかし俺も男。 湧き立つ欲望と苦い教訓との対決では、欲望に歩がある。 藤崎の唇を再び奪おうと俺の腕で抱きすくめた。 「待って・・・」 うめくように藤崎は言った。 怒ったのか?嫌だったのか? 藤崎は俺の腕から抜け出た。 そこから俺を下から仰向けに押しのけ、今度は彼女から覆い被さって来た。 「平良・・・」 藤崎は仰向けになった俺の顔に、自分の顔を寄せた。 そして俺の唇を奪った。 藤崎の舌が俺の唇を割り、入ってくる。 そして俺の舌に絡ませてくる。 ねっとりと粘液と粘膜、舌を絡ませ合うDeep kiss。 数秒、数十秒・・・まだ終わらない。 kissで全身の力が抜ける・・・とは聞いたことがあるが、俺は初めて経験した。 彼女の腰に廻していた俺の手は、いつしか添えているだけになり、 足腰の力が抜け、正しく藤崎に身を任せるような格好になる。 俺の方が思わず声を上げそうになった。 1分、2分・・・藤崎はまだねっとりと俺に舌を絡ませ続ける。 息が出来ないほど俺の鼓動が高まる。 どれだけの時間、藤崎と舌を絡めあっていただろう。 東向きのベランダに掛けたカーテンの隙間からは、朝日が差し込む。 ようやく藤崎は俺から唇を離した。 混ざり合った唾液の一筋の糸が、朝日に照らされ錦糸のように輝く。 「平良・・・友情を込めて・・・だよ」 藤崎は俺を見つめて、そう言った。 「でも、今日はここまでだから・・・」 何故だろうか。 これだけ濃厚な接吻の後なのに、不思議と互いにその先へ行く気持ちはない。 少なくとも俺には確実に無かった。 その証拠に俺自身は全く勃っていない。 言葉を交わさなくても、彼女の気持ちまで伝わるような気がした。 「ああ、分かってる・・・分かってるよ」 その後、藤崎と抱き合いながら朝を過ごし、ファミレスで朝食を摂った。 あまり会話の無い、照れ臭い時間が過ぎる。 そして朝7時過ぎの電車に乗り、彼女は家路に着いた。 駅まで彼女を送った後の帰り道。 濃厚なkissの余韻がごく軽い痺れのように、まだ唇に残る。 大学の連中には誰にも話せない、一線の突破。 俺と藤崎だけの秘密。 kissが好きな女性は多い。 kissを嫌う風俗嬢も多い。 理由は全く同じ。 kissは人の心を最も強く揺さぶる行為だからだ。 愛する相手とのkissなら、自分の肉体が溶け落ちるほど交わしたいだろうし、 風俗嬢にとっては『身体は売っても心までは売らない』意地の防波堤でもある。 唇を重ねる行為がどれほど大切なものなのか、分かった。 俺はこの日を境に、kissという行為を大切にするようになった。 それは今でも変わらない。 その後も藤崎とは奇跡的に良い友人関係を保つ事が出来た。 彼女から暇な夜に電話が掛かってきて、馬鹿話で盛り上がることもあったし、 海外などの旅行先から絵葉書を送ってくることもあった。 サークルの飲み会にも参加し、いつものようにじゃれ合う。 秋の大学祭でも、交流会の模擬店にも遊びに来てくれた。 あの一夜の出来事が、まるで俺が勝手に見た夢のように。 大学祭も終わった11月中旬。 三度、藤崎から誘いを受けて二人で飲みに行く。 藤崎は長く付き合う彼への不満と、彼との結婚を含めた将来設計に対して 強い不安を抱えていた。 その相談を俺に持ちかけてきた。 相談とは言えど、俺は何も意見できる立場ではない。 彼女の話を聞き、頷いて自分の意見を述べるしかなかった。 その後、藤崎は前回と同様に俺の部屋に来る。 夜も更け、ベランダを横切る北風の音しか聞こえない時間。 藤崎は唐突に言った。 「平良、私がこの前失礼な事言ったの、覚えてるかな?」 「お前、いつも失礼だから・・・どのことか分からんなぁ」 「いつか平良の事を『口説き下手』だって言ったこと」 「そんなこともあったっけ?まぁいろんな女に言われてるからね・・・」 「口説き下手だけど、聞き上手。だから安心して何でも話せるの」 「俺は口説きも上手くなりたいんだけどな」 「じゃ、私を口説いてみてよ・・・」 「・・・?」 「私を口説いてよ」 「・・・お前、酔ってる?」 「うん、少しね・・・」 そう言うと藤崎は俺の左肩に頭をちょこんと乗せ、少しうな垂れてみせた。 <以下次号> |
| 2002年09月05日(木) 過ぎし夏のmemories。 『衝動』 |
<前号より続く> 「だって、トラウマって逃げてるだけじゃ解決しないもんな」 「私、弱いよ。ダメだって」 「でも試行錯誤してでも、そのトラウマに立ち向かっているじゃんか」 「私・・・もがき苦しんでいるだけ。前へ進めないの」 人間は自分の「過去」というどうしようもない呪縛に囚われることがある。 大抵の人間はただ封印したり、割り切ったり・・・と過去から逃げようとする。 しかし当人の心の奥にヘドロのようにべったりこびり付くトラウマからは、 どのような手段を持っても、決して逃げ切れるものではない。 時には自ら「過去」を実力で断ち切る、勇気と行動が必要になる。 大抵の人間は頭で分かっていても、つい逃げ腰になる。 『人間は忘れる能力のある動物である』と言った識者がいる。 人間が忘れるような事は、実はその場となってはどうでもいい事ばかり。 本当に忘れなければならない、忘れた方が良いトラウマや記憶は決して消えない。 特に他者から深く刻み込まれた恐怖や不信感、嫌悪感や悲しみなどは。 『過去』は忘れるものではなく、乗り越えるもの。 誰もがその方法が見えずに、皆もがき苦しみ、逃げ回る。 無責任なインテリが吐いた格言など、俺は大嫌いだ。 自らの過去に追われ、些細な欲望におぼれ、 自分に克つことさえもままならない。 人間というのは脆く弱い動物である。 藤崎の酒好き、格闘技好き、風俗やAVへの興味・・・ アルコールで自らの弱った心を鼓舞し、勇気付ける。 画面に移るプロレスラーの勇姿に、自分のトラウマとの闘いを見出す。 AVや風俗を見つめる事で、彼女が最も心を痛めた「男の性」と対峙する。 彼女の深奥にある点と点が、俺の中で線として結ばれていく気がする。 「藤崎・・・その話がさ、今度は笑い話で話せるようになるといいな」 「・・・」 きっとそんな過去の話が笑って話せるようになれば、 彼女の『過去』からの呪縛が断ち切れたことになるだろう。 「あははは、何か、酔っ払っちゃったかも・・・」 藤崎は安心したのか、糸を垂らしたあやつり人形のように脱力し、 その場で後ろに倒れて床の上に寝そべった。 「平良ぁ、このまま寝かせてよぉ・・・」 「ダメだって、風邪引くだろう」 俺は部屋の押入れを開け、タオルケットを引っ張り出し、藤崎に掛けた。 いくら室内でも半袖のブラウスとスカートでは身体が冷えると思った。 無防備に寝息を立てる藤崎を尻目に、俺は後片付け。 そして布団を引き、藤崎を寝かせた。 六畳一間の狭い部屋だ。俺は藤崎の布団の横で雑魚寝をする。 「・・・何そんなとこで寝てるの?」 「起きてたのか・・・俺だって男だぞ、いくら藤崎でも・・・」 いくら藤崎でも、一緒に寝れば俺の「男としての欲望」が押さえきれなくなる。 「布団においでよ」 「だからダメだって・・・」 「じゃ、私が出るもん」 起きていた様子の藤崎は、そう言うと布団から横に転がり、出ようとする。 「分かった、寝てろよ」 俺はちょっぴりの動揺を押さえて、藤崎と同じ布団に入った。 彼女の肌の温もりが俺の肌に染み入るようで心地良い。 「平良・・・ありがとう」 藤崎は俺の首に腕を廻し、抱きついてきた。 決してチョーク攻撃ではない、柔らかい抱擁だった。 「なぜお礼なんか?」 「私・・・自分が不安だった・・・」 髪形を変え、服装を変え、格闘技に没頭し、酒を飲む・・・ それ以外も含めてのトラウマを断ち切るための一連の行動も、 実は無意味なのでは、と不安で一杯だった。 何も変われない自分自身を見て、自分は無能なのかと絶望しかけていた。 彼からも昔の方が良かったよ、と言われたという。 しかし変身した経緯とその理由は言えない。 その彼と過去の先輩は知人同士でもある。 安心したのだろう。 少しでも睡眠を取る為に、俺は部屋の電気を消した。 そして先程と同様に藤崎を抱きすくめる。 交流会での飲み会では、決して感じることのなかった気持ち。 いつしか俺は眠りに落ちた。 近所を走る新聞配達のバイクの音で目が覚めた。 ほんの1〜2時間の睡眠。 先程と同じ格好で寝息を立てる、藤崎の髪をそっと撫でる。 そして手串で髪を掻き上げた。 手入れの行き届いた髪は、何の引っかかりもなく指の間からサラサラとこぼれる。 俺の腕の中にある藤崎の顔と俺との距離は、ほんの20センチ足らず。 俺は藤崎に口付けしたい衝動に駆られた。 しかし20センチ足らずの距離の克服に、何度も躊躇してしまう。 下手すると、今までの関係が水の泡となるから。 俺も過去に恋愛感情のこじれともつれから、 異性の友人やその関係の友達を失った苦い経験がある。 人間とは・・・特に男とは、本当に弱い生き物だ。 過去の教訓も、湧き立つ欲望を押さえる歯止めにはならない。 考えてみれば、俺にとっても・・・ 過去のトラウマと対峙し、乗り越えるきっかけになったのかもしれない。 藤崎をぎゅうっとさらに抱き締める。 腕の中の藤崎と俺の距離は、数センチ。 俺の早鐘のような鼓動が、聞こえて伝わるのではないか・・・ それほど早く、激しく脈打つ。 <以下次号> |
| 2002年09月04日(水) 過ぎし夏のmemories。 『表情』 |
<前号より続く> 深く濃い青の空にそびえる、白い雲。 その空の天井と同じ高さに浮かぶ、鰯雲。 攻撃的な夏の日差しも、夕暮れになれば心地良い北風が舞い込む。 三次元の夏空と、二次元の秋空が重なり合う。 夏と秋が出逢い、溶け合い、やがて別れ行く。 そんな季節になった。 大学の夏休みというのは、本当に長い。 俺の通う大学も、9月半ばまで夏休みで休講だった。 盆明けのゼミ合宿から帰ってきた、9月はじめの事。 藤崎から久しぶりに電話があった。 「平良?久しぶり!」 「ああ、お久しぶり。無事生きてたか?」 「私は実家だからね。平良みたいに寂しい一人暮らしじゃないから」 「放っといてくれっ」 話は他愛も無いもの。数十分経った頃だ。 「また飲みに行こうよ、ちょっと発散したいし(笑)」 「ああ、いいよ。何時が都合いい?」 「う〜んとね・・・3日後の火曜日」 藤崎と会う約束をした、3日後の火曜日。 前回と同じように待ち合わせし、前回とは違う店へ向かう。 藤崎は肩まで髪が伸び、さらに女性らしくなった。 乾杯の後、酒が進んできた時に、藤崎はカバンの中から手帳を出した。 「今日は平良に、私が女だっちゅう証拠を見せようと思ってね」 その手帳は、彼女が高校生の時の生徒手帳だった。 「見てみぃ」 手帳の表紙裏に貼ってあった写真は、高校3年生だった頃の藤崎。 現在の彼女とは違い、ロングの髪で可愛く写っている。 今の彼と付き合いだした頃の藤崎は素直に可愛かった。 さらにカバンから出してきた数枚の写真には、クラスでの放課中のひとコマ。 無邪気な友人達のピースサインに楽しげな雰囲気が伝わる。 しかしどの写真も藤崎の少々表情が暗い気がする。 「何か、藤崎の表情暗いなぁ」 「分かる?・・・この頃って、何だか素直に笑えなかったんだよね」 今まで俺が抱いていた藤崎のイメージとは明らかに違う一面を垣間見る。 「何か、色んな悩み事があったんだ」 「そういう深刻・・・なものでもないかな」 そう否定してはみるが、思い出したのだろう、表情が一気に曇る。 この真相はのちに彼女の口から断片的に語ってくれた。 藤崎は当時付き合っていた先輩と高校2年の冬に初めて結ばれた。 そして何度目かのSexの時。 調子に乗る先輩に、避妊具無しで中に射精された。 その後生理が遅れた彼女は妊娠かと疑い、精神的に落ち込む。 男と違って女性には妊娠をはじめ、様々なリスクが生じる。 親にも学校の先生にも、友達にさえも話せない悩みが重く圧し掛かる。 妊娠、中絶、手術費用、学校中退・・・彼女の脳裏には様々な言葉が飛び交う。 とても高校生活を満喫できる状態ではない。 その事を先輩に話したところ、責任を取り切れないと感じたのか、 その男はおかしな理由や因縁を付けて一方的に去っていった。 そうして彼女は誰にもこの事を打ち明ける事が出来ず、 自分一人で全てを抱え込み、憂鬱な時間を過ごしていた。 表情の暗い一連の写真は、この時期に撮られたものらしい。 無理に平静を装う藤崎の表情は、どこか痛々しい。 結局、生理不順により遅れただけで妊娠に至らずに済んだのだが、 先輩の心無い振る舞いなどで受けた恐怖感と男性への不信感は相当強く残っていた。 それからしばらくして告白して来た別の男と新しく付き合うようになる。 それが今の彼だ。 藤崎に優しく接し、献身的な態度をとる彼のことは大切に思っているのだが、 過去のトラウマから抜け出せず、男という性を信頼できずに今に至る。 藤崎の意外な過去の告白に、俺はいつものように茶化さずに黙って聞いていた。 「優しいし、いい奴なんだけど。ダメだね・・・どうしても・・・」 どうしても、の続きの言葉は出てこなかった。 何が言いたかったのかはわかっているつもりだが。 「藤崎、店変えようか」 「いいよ」 湿っぽい話が続いていたので、気分を一新したいと思い店を変えようと思った。 「どこ行こうか?」 「私ね、平良の部屋に行ってみたい」 「俺の部屋?いいけど・・・」 「そこで飲みなおそう!」 「それはいいけど、終電は?」 「いいよ、明日の朝まで飲んでれば」 どうせ学校もバイトもないし、と笑う藤崎の横顔は幾分か安心している様子だ。 俺は次の日はバイトがあるのだが。 近所の酒屋を兼ねたコンビニで酒と肴を買い込み、俺の部屋へ連れて行く。 たまたま掃除したばかりで綺麗にしていたのが幸いした。 俺は藤崎を招き入れ、冷蔵庫を開けて準備をしていた時。 「平良ぁ!これ見るよぉ!」 俺が部屋を覗くと、藤崎は俺が隠し損ねたレンタルAVを手に持っていた。 たまたま観た後、デッキの脇に放ったらかしにしておいたものだった。 ほんの数秒の片付けをサボったことを後悔した。 缶ビールや水割で唇を濡らし、肴をつまみつつ、藤崎とAV鑑賞。 「すごいねぇ、この体位!私やったことないなぁ・・・」 「ちょっと、この声派手過ぎない?」 「演技下手だなぁ、この子」 「思ったよりもつまんないなぁ」 口うるさい姑のように事細かく揚げ足を取る藤崎を尻目に、気まずさに黙る俺。 一通り見終わって、ようやく落ち付いた飲み会になる。 テレビに向かって二人並んでいたが、位置も変わらずそのまま飲み続けた。 「彼とは見ないんだ、AVは」 「なぜ?一緒に見て試せばいいじゃん」 「だって、恥ずかしいじゃん!」 明るい話をしようと心がけるも、会話は自然と過去のトラウマに関する方向へ。 藤崎は俺に過去を清算するように、一つ一つの出来事や当時の感情を吐露する。 大学に入って髪形を変えたのも、過去のトラウマを断ち切るためだという。 それまでスカートしか穿かなかったのにジーンズにしたのも。 高校時代の思い出の品だって多数捨てたそうだ。 全てはあの頃の鬱な自分を殺し、生まれ変わるため。 「藤崎・・・」 「うん?」 「強いな。頑張ってるな」 「え?何が?」 彼女は自分の思いとは違う俺の言葉に、思わず耳を疑い、聞き直す。 <以下次号> |
| 2002年09月03日(火) 過ぎし夏のmemories。 『改札口』 |
<前号より続く> そして春休み明けの4月。 大学の構内最大の611教室は久しぶりに満杯となった。 平成5年度の第3学年・履修ガイダンズである。 俺と藤崎は進むコースが違うこともあり、履修する教科も重なる事もなく、 一緒の授業も無くなった。 そして新歓コンパ後、飲み会を開催する機会も少なくなった。 藤崎とも少々疎遠になりつつあった。 そんな頃、藤崎から電話が掛かってくる。 他愛もない会話から、最近のサークルの不満へと話が移る。 彼女の不満は、例の飲み会の開催がないこと。 「平良ぁ、最近飲み会やんないの?寂しいじゃん」 「ああ、俺も含めてみんな忙しくてな。音頭をとる人がいないんだ」 「ここで一発やって男を上げろよ」 「俺も朝から晩まで授業とバイトで詰まっているんだ」 「しょうがないなぁ・・・でもまた飲みたいね」 「ああ」 「今度、飲みに行こうか?」 「あ?」 「行こうよ・・・二人だけで」 「藤崎と?いいよ、そりゃ・・・」 大抵は口約束で終わるものだが、藤崎は来週の金曜日に会おうと指定してきた。 約束の金曜日。 指定された名鉄豊田市駅の高架下にある本屋にて待ち合わせ。 「分かりやすいように、エロ本コーナーの前で待ってて」 奴はそんな条件をつけてくる。 俺は当然守るはずもなく、近くの文庫本コーナーで様子をうかがう。 後ろから俺のふくらはぎを爪先で蹴る奴がいる。 驚いて振り返ると、藤崎だった。 しかしいつものボーイッシュなだけの彼女ではなかった。 今日はジーンズではなく、白い帆地のスカートをはいている。 そして軽く化粧を施し、小さいイヤリングを付けていた。 藤崎は俺の顔を見た途端、恥ずかしそうに少し俯く。 「藤崎ぃ、なんかいつもと違うなぁ」 「何よっ、ジロジロ見るんじゃないって!」 恥ずかしさからか、藤崎は半ば怒った口調で俺に喰いつく。 俺と藤崎は二人で行きつけの居酒屋に向かった。 カウンターで二人肩を並べて、瓶ビールを注ぎ合う。 明らかにいつもと違う藤崎は、 決して俺と目を合わせることなくグラスを軽く合わせた。 いつもと違う、乾杯。 俺も何だか調子が掴めず、グラスのビールを一気に空ける。 「いくねぇ、平良。じゃ私も・・・」 藤崎も負けじとグラスのビールを空ける。 いい飲みっぷりだ。 「瓶じゃ何だから・・・やっぱりジョッキで行くか?」 「いいねぇ、そうこなくちゃ!」 アルコールの勢いを借りて、俺と藤崎はいつもの調子を取り戻す。 よく飲みよく喋る、賑やかな酒席となった。 俺は今宵の疑問を切り出した。 「しかし藤崎、今日どうしたの?化粧にスカートとは」 「いいじゃん、たまには。私だって女だよ」 「女?生理かよっ?」 「違うよ!馬鹿っ(肩へパンチ)」 「痛て・・・でも何か調子狂うよ。思わず口説きそうになるもの」 「ば、馬鹿!ダメだよ、ダメダメ」 「今夜は下の名前で呼ぼうかねぇ・・・みゆき、今夜は帰さないからな・・・」 「あのねぇ、ダメだったら。調子狂うから・・・(笑いながらパンチ)」 凶暴ではあるものの、やはりいつもの藤崎ではなかった。 いつもは感じない女の色気を感じる。 考えてみれば、藤崎も21歳。 大人の女性だ。 俺の心の中で、藤崎のポジションが微妙に変わってきていた。 女として、意識して彼女を見るようになっていた。 酒の勢いだけじゃない。 彼女の変貌だけでもない。 これは、ほのかな恋愛感情なのかもしれない。 酒が進むに連れて、藤崎も頬を染めトロンと潤んだ瞳で俺を見つめている。 いつもの飲み会では見せない表情だった。 俺と藤崎は終電時間間際まで盛り上がった。 「平良、もう帰らなきゃ・・・」 「何だ、もうそんな時間かぁ」 俺は店での清算を済ませて、徒歩で藤崎を駅まで送る。 「いやぁ、今日は面白かった・・・藤崎が初めて女に見えた(笑)」 「あのなぁ、私は女だっちゅうの!」 「いつもの格好じゃ男に見えるって。お前、胸も小さいし」 「悪かったなぁっ!(笑)」 フルスィングの袈裟切りチョップが俺の背中を襲った。 改札口。 藤崎は定期券を自動改札に差し入れ、構内に入る。 「平良、今夜はありがとう。本当に楽しかった」 「あ、ああ。俺もな」 「でも平良、口説き下手だよね」 「あ?」 藤崎の意外な一言に、先程のチョップの痛みでも醒めなかった 心地良い酔いが飛びかけた。 「だからもてないんだって、平良」 「・・・」 「じゃあね、また学校で!」 ちょっぴり心に引っかかる言葉を残して、 藤崎は終電が滑り込むホームへと消えて行った。 藤崎を女として、初めて意識した夜。 <以下次号> |
| 2002年09月02日(月) 過ぎし夏のmemories。 『写真』 |
先ごろの盆前。 実家に帰るべく、荷物の整理をしていた時のことだ。 普段触はらない本棚から、実家で暇を持て余す時にでも読もうと、 買っておきながら読んでいない本を探していたときに、2枚の写真を見つけた。 大学時代、図書館前で撮った写真だった。 写っていたのは、俺とカメラを持つ友人の彼女、 そして当時の悪友だった女の子の3人。 サークルの関係で撮った写真だったと思われる。 当時はまだ冬だったので、3人とも厚手の上着を着ていた。 もう1枚は俺と悪友が「お約束」でじゃれあっている写真。 俺はその子にコブラツイストを掛けられいる。 必殺技に勝ち誇った顔の彼女に、苦痛に苦悶の表情を浮かべる俺。 全てはその写真のための演技だったのだが。 そんな悪友だった女の子・藤崎と写真を撮る時は必ずまともには写らない。 どちらかがプロレスの技を掛けているか、首をしめているか、だった。 俺はこの藤崎と、きっと一生忘れられない時間を過ごした。 まだ春先だったこの写真の、約半年後の夏の終わりのこと。 数年前の、夏から秋へと移ろい行く丁度この季節だ。 藤崎との出会いは、大学のサークルだった。 俺の所属する留学生交流会にいた訳ではなく、ゲストとしての参加だ。 ゲストとは非会員の参加者のことをいう。 俺は留学生交流会では日本人代表を任されているとはいえ、 主な仕事はコンパなどの飲み会での幹事業。 やはり女子大生に参加してもらえると、留学生も日本人も喜ぶし、 男はおろか女子にも喜ばれ、華やかさも増す。 俺は女子のゲストは積極的に受け入れていた。 そんな交流会に他の女友達と共に顔を出していたのが藤崎だった。 彼女は、今から考えても個性的・・・いや、はっきり言って変わった奴だった。 顔立ちの整った美人だったが、髪はボーイッシュにカットしていた。 そして化粧もほとんどせず、髪も染めず、ピアスの穴も無い。 160cm足らずで小柄だったが、いつもビンテージのジーンズで決めていた。 藤崎はどこから見ても少年っぽい風体の女だった。 それでも高校時代から付き合っている彼がいるそうだ。 変わった女と付き合う、変わった男もいるものだ。 俺と藤崎はサークルの飲み会で初めて出逢った時から意気投合した。 しかし藤崎という女は、どうも普通の女の子と違う感性を持っているのか、 話の内容が突飛だった。 彼女は熱狂的なプロレスファン。 当時の新日本プロレスの看板選手だった『闘魂三銃士』のファンだと言う。 「蝶野もいいけど、武藤だよね・・・技もだけど、あの気取り方がまた良いよ」 「そうかぁ、俺は全日が良いんだけどなぁ」 「やっぱり新日だって!観てても闘いが熱いもん」 「そういやぁ、この前FMW観てきたよ。大仁田負けちゃったけど」 「大仁田?!観てきたの?なんで誘ってくれないんだよぉ!」 俺はその後、藤崎に怒りのチョーク(喉の気管締め)攻撃に遭う。 初対面だったのにも関わらずだ。 また藤崎はAVや風俗にも興味があると俺に言った。 俺は当時、まだ風俗の世界を知らなかったこともあり、驚いたものだ。 「男って羨ましいよね、そういうところ(風俗)に遊びにいけるじゃん」 「いいじゃん、藤崎も金持っていけば。見た目なら男と分からないから」 「馬鹿、服脱いだら分かるでしょ?股座に付いていないんだから」 「AVだって分からないって、借りるくらいなら」 「だって実家の近所のレンタル屋には友達がバイトしているんだよ」 「いいじゃん、彼に借りて来いって言えば」 「言えるわけ無いじゃん!平良だから言えるんでしょうが!」 俺はその後、藤崎に怒りの逆水平チョップを数発喰らう。 生中のジョッキを持っていたのにも関わらずだ。 度重なる乱行に幾度もビールがこぼれるが、隣りで奴はニコニコと笑っている。 俺と藤崎は大学の同級生なので、授業や講義でも顔を合わせている。 俺は意識していなかったので気付かなかったが、 向こうは俺を知っているという。 「だって、平良いつも俯いてさぁ、舟漕いで寝てるじゃん!」 「高倉(教授)が壇上で眠たくなる講義やってるんだから仕方ない」 「この前、身体をビクつかせて起きたよね。あれ笑った!」 「藤崎なぁ、俺を見てるんじゃなくて授業に集中しろよ!」 「いやぁ、面白い奴だなぁって思ってさ」 「俺に惚れてるの?正直に言ってみな?」 「馬鹿!平良に惚れてるわけないでしょう?!」 俺と藤崎との一連の様子は、他の人たちから見ると一種異様だったそうだ。 延々と盛り上がる二人を残して帰ろうかと相談していたくらいだという。 それから藤崎はよく俺に話し掛けてくるようになった。 朝の挨拶代わりのキックやエルボー(肘打ち)に始まり、 空き教室で延々と雑談したり、互いのレポートを邪魔しあったり・・・と。 しかし俺と藤崎には、いわゆる男女の関係は一切無い。 会話も大抵は雑談にプロレス談義、たまに猥談も。 俺も男友達と同様に接していたし、彼女もそれを望んでいた様子だった。 そして藤崎には長く付き合っている彼もいることだし、 それによってあまり彼女の周囲の女友達に誤解されるのも良くはない。 藤崎は交流会の飲み会には欠かさず参加し、酒に酔っては俺に狼藉を仕掛ける。 やられっ放しでは済まさない俺も手荒い逆襲。 当然、相手は女性なのでそれなりの手加減はしているが。 「平良君って、みゆき(藤崎の名前)と本当に仲良いよねぇ」 「でも、何だか違う・・・みたいな」 「どちらかと言うと、恋人関係って感じじゃないよね」 「いつも兄弟喧嘩している感じだもんね」 サークルのかしましい女性連中が何かと俺と藤崎の関係を詮索するが、 どうにも当てはまる形容詞が無い様子だ。 何時の間にか、俺の隣りに移って来ていた藤崎は熱燗の猪口を片手に 必死にスルメをかじり、ホッケに喰らいつく。 本当に色気の無い奴だ。 呆れ半分で藤崎を見遣ると、頬を酒で真っ赤にした虚ろな目の奴は、 俺に二合徳利をぬっと差し出す。 この野郎、もっと飲め!というのだ。 こいつとは絶対に付き合うことも、寝ることも無いな・・・心からそう思った。 交流会の飲み会の後は、これも定番のカラオケ。 駅近くのカラオケボックスに移動する。 特に女の子は終電の関係で遅い時間まで付き合えないので、 短時間でかつ高いテンションで突っ走る。 終電で帰る藤崎も少々古めの歌を次々と歌いまくる。 彼女の大学の友達は大人しい娘が多く、あまり羽目を外す機会がない。 俺達の飲み会が、今や彼女の数少ない「爆発の機会」なのだ。 そんな関係のまま迎えた春休み前。 図書館で仲間と会い、たまたま持っていた使い切りカメラで俺と藤崎は 先ほどのふざけた写真を撮ったのだ。 今思い出しても、頬がニヤリと緩むほど楽しい時間だった。 <以下次号> |
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