告白。ただ、どうしようもない、告白。

2003年05月02日(金)

帰ってきた。

姉の部屋で物音。

紐を持って向かう。

姉が、居た。


「死んで。」

穏やかに、言った。

「死んで。」

穏やかに、言った。


姉は、泣き出した。

興奮して泣きながら叫んだ。

「もう分かったから!
 殺してくれたらいいから!
 深海がやりたいようにやってくれたらいいから!」


そっか。

…姉の首に紐を巻いて、力一杯引いてみた。

いちびょう。
にびょう。
…さんびょう?

分からない。

姉は泣き顔のまま私を見てて。

私はその姉の首に紐を巻き付けて、引いていて。




…待ってよ。

違うよ。

違う。

なんで、なんで、なんで。

私が殺人者になる?

私が姉を殺す?

私が?

私が?


違う、そうじゃない、怖い、嫌だ、違う違う違う…


何秒だろう。
きっと五秒も経たなかったと思う。
ほんの、数秒。

姉の首を絞めていた紐を緩めた。


「自分で死んで。」

さらりと、言った。

「自分で死なれへん!
 どうやって首絞めたらいいん!?
 自分で首絞められへんもん!!」

「首、吊ればいいやん。」

「そんなんできひん!
 深海が殺してや!」

「嫌や、自分で死んで。」




なんなのこれ。

なんなのこれ。

私と姉の、会話。

変。おかしい。

家族。

人間。

殺人。

誰か、助けて。



泣きながら叫ぶ姉と。

表面上は冷静に、姉に死を促す私。



苦しい。
苦しい。
苦しい。

苦しい?

…私が姉を殺すのを躊躇ったのは。

「姉が死んでしまう」ことが怖かったんじゃなくて。

「私が姉を殺してしまう」ことが怖かったから。


保身。

それ以外の何物でもない感情で、私は姉を殺すのを止めた。



醜い。

誰よりも、何よりも。







母が、泣く姉を落ち着かせて、祖父母の家へ連れていった。

私は何も。

何も。

ただ、見送った。

自分の部屋へ帰って、少し、考えた。


一つだけ、分かったこと。
(今となっては大いに外れた予想。)


私は姉を殺そうとしたこと、後悔しないだろう。

何故か、そんなことを考えていた。


姉は、その日はもう見ていない。
たぶん、病院に戻った。たぶん。知らない。



2003年05月01日(木) つかのま

暫く。

暫くはそれでも平穏だった。

姉がいない家。

私はその状態が好き。

ずっと帰って来なければいいのに。

ずっとこの平穏が続けばいいのに。




でも、続かない。

私と姉は家族だから。

この家は私の家でもあるし、姉の家でもある。

姉が帰ってくるのはこの家。

家族が一緒に住むこの家。


……嫌。
もう、嫌。

あんな人もう嫌。
この家に入れたくない。
この家には絶対に入れないから。

…感情は勝手にどんどんと膨れ上がっていった。
一人歩きを始めると、もう、止まらなかった。


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深海 [MAIL]

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