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2005年02月03日(木) 特許分析で競合企業の戦略がスケスケの丸見え

特許関連のネタを2日間続けて書いたので、ついでに。

戦略コンサルティングと特許はほとんど関係ない、と思われがちなのだけれど、そうでもない。
知財戦略などの領域ではない。
クライアント企業の競合調査に特許情報を使うのである。

僕は、ハイテク系企業の中長期戦略の策定を行う事が多い。
その場合、クライアントの競合企業の分析が必要となる。
現状分析ではなく、競合企業が将来どのような戦略を取ろうとしているか、についての分析である。

コンサルティングは、ファクトベースでなくてはならない。
競合企業の将来戦略をファクトベースで語る必要がある。

その際に有効なのが、競合企業の特許分析。
競合と想定される企業をリストアップし、その対象企業が出願している特許、既に成立している特許を全て洗い出す。
そして、洗い出された特許を仕分けし、分析する。

すると、あらまあ不思議。
競合企業が将来、どこに進もうとしているかが、スケスケの丸見えになるのである。
どの分野にR&Dの投資を振り分けているかがわかる。
時系列に分類すれば、向かっている方向性もわかる。
さらに、既に製品化されているものと特許の出願時期の相関性を時系列にマッピングする。
そうすると、いつ頃どのような製品が出てくるかについても、予想することができる。

だが、特許にはとりあえず出願しただけ、というどうでもいい特許も多い。
その場合は、日本国内のみに出願しているか、世界各国に出願しているか、を見る。
すると、気合いの入った特許と、どうでもいい特許の仕分けができる。

ほかにも特許を使った分析手法はいくつもある。
特許情報をいじくり回すと、各企業の戦略がスケスケの丸見えになるのである。
企業側も、特許出願してしまうと、自社の戦略がスケスケの丸見えになることは承知しているので、特許に関しては、敢えて出願していない場合もある。
だが、そうは言っても、他社が同様の特許を先に出願してしまうと、自社が不利になってしまうリスクを抱え込む事になるので、結局、出願、ということになっていることが多い。

だが、コンサルタントが特許分析による競合調査を行うことはあまりない。
理由は、「あまりにも面倒くさいから」である。
特許文書は読みにくいうえ、分類仕分けの作業は、特殊スキルが必要であるにもかかわらず、単調。
地味。
退屈。
泥臭い。
時間もかかる。
出願されてはいるものの成立していない特許、特にソフトウエア、ビジネスモデル特許の大半は、アホとしか言いようのない特許だったりするので、特許文書を読んでいると、途中でPCを投げ出したくなってくる。
本来は、このような作業は専門の特許調査会社にお願いすべき事だと思うのだけれど、特許の本文も見ておかないと、重要な情報を見落とす可能性があるので、ちまちまと特許文書を読まなくてはならない。
そして、日本語の特許文書はじっくり読んでも、何を意味しているのか、さっぱりわからない事が多い。
海外に出願されている英文の特許文書のほうがずっとわかりやすい。
日本語特有の曖昧性のため、日本語の特許文書はワケのわからない文章になっている。
英文のほうが、ずっとずっとわかりやすい。
と、まあ企業の特許をちまちまと分析していくと、各企業の将来の方向性が透けて見える。

競合企業の向かっている方向性がわかったら、次は、「じゃあ、どう対抗するか」についての仮説を立てていく。
僕の場合は、「俺様オリジナル」のリアルオプションとゲーム理論をぐちゃぐちゃに混ぜた手法を使っている。
「俺様オリジナル」なのは、数学的にモデリングしているワケではなく、僕のアタマがリアルオプションとゲーム理論をぐちゃぐちゃに混ぜた論理構造になっているからである。

リアルオプションで競合企業の取るであろう戦略について検討する。
そして、その戦略に対してクライアント企業がどのように対抗すべきか、についてはゲーム理論を使う。
意外に正統派。
リアルオプションとゲーム理論をうまく混ぜて使えば、ロジックもすんなり通るし、定量化も容易。
理系の人(僕はコテコテの文系)にとっては、企業戦略の仮説に対する検証が簡単な数式で解けちゃったりするので、面白いかもしれない。
リアルオプションとゲーム理論については、ネットでも書籍でも情報があふれかえっているので、興味のある人は自分で調べてください。
リアルオプションとゲーム理論は、私生活の様々なシーン(雀荘等)でも活用可能なので、身につけておくと何かと便利です。
ただ、日常会話で使いすぎると、ただのヤな奴になってしまうので、気をつけましょう。

と、まあこんな感じで特許を分析していけば、競合調査にも活用することができる。
でも、面倒くさいので、あんまりやりたくない。




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