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2005年02月02日(水) 「訴えられ屋」は商売になるか?

僕は、ずっと前から「訴えられ屋」という商売ができないかな、と考えている。
「訴えられ屋」というのは、その名の通り、「被告人請負業」である。

本日のネタは、昨日の知的財産関連話の続き、と捉えてもらって良い。

知財は非常に重要な戦略要素である。
資源もなく、労働コストも高く、今後、高齢化により就労可能者が激減することがわかっている日本にとって、唯一の生き残る道は「知財国家」である。
企業単位でも同様で、知財保護は最重要課題のひとつである。

だが、「一太郎」判決にみられるように、個別企業が特許を侵害しているかどうかについて判断を行うことは、非常に難しい。
特許侵害に対する判断は、侵害を訴える側、訴えられる側の両者ともに難しい。

製品やサービスを開発する側の企業は、自社が開発した製品、サービスについて、訴訟リスクを避けるために、特許侵害を犯していないかについて、細かく検証しなくてはならない。
しかし、現実問題として、特許侵害に関して事前に詳細な調査を行う事は事実上不可能である。
一企業の法務部門、知財管理部門だけでは、判断がつかなくなりつつある。
商品、サービスのライフサイクルはどんどんと短くなっている。
自社製品が特許侵害を犯していないかについて、細かく検証している時間的余裕もない。
ソフトウエア特許やビジネスモデル特許特許については、解釈があいまいな部分が多く、社内のチェックだけでは、判断がつかない場合も多い。
ある特定領域について、特許の出願状況を調べてみると、考えうるほぼ全てのアイディアが、特許として既に出願されている。
もちろん、出願されている特許(ソフトウエア特許、ビジネスモデル特許)のほとんど全ては、特許庁により却下され、成立しないのだけれど、仮に成立してしまった場合、出願済みの特許に抵触するアイディアを採用した企業は、訴訟のリスクを抱えることになる。
そして、成立済みの特許に関しても、裁判を経ないと本当に特許侵害かどうかについて、判断がつかない事も多い。
なかでもソフトウエア特許、ビジネスモデル特許は、判例も少なく、日々進化するテクノロジーのなかで、どんどん時代とズレていく。

そこで登場するのが「訴えられ屋」である。

「訴えられ屋」は、企業の訴訟リスク回避のために、敢えて特許を侵害し、被告人となる「被告人請負業」。
ソフトウエア特許、ビジネスモデル特許がどの範囲まで有効かについての判断がつかない場合、議論を司法に持ち込む。
訴える側がクライアントである。
「訴えられ屋」は、クライアント企業から依頼を受け、クライアント企業の特許を侵害する。
そして、クライアント企業から訴えてもらう。
訴える側も訴えられる側もグルである。
判例を作る事が目的。

逆パターンもある。
企業が、自社の企画している製品やサービスが特許侵害であるかどうかがグレーゾーンである場合、「訴えられ屋」が代理人として特許侵害を行う。
この場合、「訴えられ屋」がそのまま特許侵害を行ってしまっては、本気の裁判になってしまうので、特許を侵害する先の企業にも仲間に加わってもらう。

今、僕が問題だと思うのは、特許侵害の有無がボトルネックとなり、企業のサービスや製品の開発に支障を来していることである。
これは、営利企業だけの問題ではなく、オープンソースの世界でも大きな問題となっている。

研究開発系の企業に出資を募り、「訴えられ屋」を開業できないかなあ。
需要はあると思うのだけれど。
特許侵害に対して、訴える側も訴えられる側も同じ仲間として、協力して裁判所で議論する。
裁判所は、ケンカの場ではなく、議論の場。
数年後、僕は100件くらいの事案で被告人になっているかもしれない。

■オープンソース:無償の法律顧問センターが発足
http://hotwired.goo.ne.jp/news/20050203104.html
■「一太郎ショック」で鳴り響くソフトウェア産業への警鐘
http://japan.cnet.com/news/biz/story/0,2000050156,20080442,00.htm?tag=nl




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