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2004年07月29日(木) レッドシューズ

最近、西麻布のレッドシューズがお気に入りである。

初めて行ったのは確か昨年末だった。
80年代を振り返ろう、という飲み会企画で、数年前に僕がクリエエイター時代に一緒に仕事をしていた広告屋さんと二人で行った。

店に入った時、「トーキング・ヘッズ」の「サイコ・キラー」が大音量で流れていた。
ミュージックビデオの最高峰とされる「ストップ・メイキング・センス」のオープニングを飾っている曲である。
デビッド・バーンが「ラジカセ」をステージに置き、ラジカセの音にアコースティックギターで歌う。

僕らの世代にとっては最高に格好いい映像。
だって、コンピュータでも何でもない、ただのラジカセ。
なのに、デビッド・バーン。

僕の意識は、80年代に飛んだ。

店の照明は暗く、音は大きい。
巨大な音量のせいで会話はマトモにできない。

でも、僕はそういう店が好きなのだ。
レッドシューズでは基本的にロックしかかからない。
70年代から80年代にかけての音楽が中心。
たまに、90年代の音もかかる。

そして、僕の知らない曲はほとんどかからない。
僕のiPodをそのまま流しているかのごとき選曲。

レッド・シュースは80年代前期、坂本龍一やキクチタケオ等のサブカル系のアーティストが根城にしていた、いわゆる「伝説の店」だ。
一旦、つぶれたのだけれど、最近復活した。

基本的に80年代前期に流行った店なので、客の年齢層は高い。
でも、客の年齢層が高い割には落ち着きはない。
ゆったりとジャズを聴きながら、ではなく、あくまでもロックを大音量なのだ。
女性を口説くバーとしては最悪の店だろう。

だけど、僕にとってはとても居心地がいい。

僕は古いジャズやブルースのウンチクは苦手だ。
僕の年齢からして、せいぜいきちんと聴いているのは、60年代後期以降のロックだけだ。

僕が一番音楽を真剣に聴いていた時代、それは、中学生、高校生の頃だった80年代。
当時、3、000円のお小遣いでは、日本盤のレコードは1枚しか買えなかった。
でも、輸入盤だと2枚買えた。
結果として、僕は、洋楽しか聴かないガキとして育って今に至る。

僕は、本来学業に注ぐべきエネルギーを音楽を聴く事に費やした。
中学生から高校生にかけての僕は、3、000円のお小遣いで買えるLPレコードを擦り切れるまで聴きつづけていた。

銀座のジャズ系のバーで飲んでいたら、50歳を優に超えたマスターが僕の好みにあわせて、ジェフベックとゲイリームーアのブートレッグを大音量でかけてくれた。
普段はジャズが小さな音でかかっている、品の良いバーである。

トランスやテクノで儲けている某レーベルの社長ご一行様も別のテーブル席にいたのだけれど、無視して。
マスターは僕に自分がリアルタイムで体験してきた音楽を語った。
たぶん、僕とは20歳は違うハズなのだけれど、僕にはそのマスターの言いたい事は全て分かった。
僕は一体、何歳なんだ?

今の僕には、古い音源やブートレッグを捜し求めて中古レコード屋を回るようなエネルギーはもうない。
でも、たまに貴重なライブ音源やリハーサルの音源が出回ったりすると、ついつい買ってしまう。

そして、帰り際にマスターは僕に「ぜひ聴いてください」と言って、ゲイリームーアのブートレッグをおみやげにくれた。

でも、やっぱり、僕には銀座は敷居が高い。
六本木通り沿いの渋谷寄りのさびれた外れでヨタヨタしているのが、僕には居心地がいい。


■レッドシューズ
http://www.redshoes.jp/home.html




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