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2003年03月10日(月) ROIに頼りすぎる事は縮小均衡しかもたらさない

ROI。
ウザい言葉である。
ROI(Return On Investment)とは言うまでもなく、投下資本利益率のことである。
突っ込んだお金に対していくらのリターンがあるかを求める際に使う。
ROIという言葉そのものが一般化してしまったので、最近では日常生活にもROIが指標として使われるようになった。

今週末はホワイトデーだけれど、バレンタインデーのお返しをどの程度弾むべきかについて、頭を悩ませている男子諸君は多いはずである。
下心と投資金額のROI。
女子諸君もバレンタインデーの際には、ROIを考えてチョコレートを選んだはずだ。
女子の場合、義理だか本命だかわからないギリギリの微妙な最低額のチョコレートが最もROIが高い。
相手が勘違いしてくれる確率が高いからだ。
どうせ、そういうことを狙ってチョコレートを選んでいるに違いない。
心当たりがあるだろう。

不景気のせいか、どこに行ってもROIである。
投資案件や新規事業の企画の際だけではなく、何でもかんでもROI。
効果を計りづらく、かつ投資金額の大きい分野については専門的なROIの評価手法も作られつつある。
特にシステム投資を行う際に、投資効果と投資金額のバランスを事前に確認したり、広告やマーケティング費用といった今まで効果が計りづらいとされていた分野に対しての投資効果をROIとして見極ようとする動きが顕著だ。

僕は主張したい。

「ROIばかりに囚われるな」

僕の主張は、ROIをベースに企業経営をしろ、などということではない。
「たまにはROIを無視しろ」と言いたいのである。
確かにかつての日本企業はROIを無視した無謀な経営がまかり通っていた。
だけど、ここに来てあまりにもROIに囚われすぎのような気がする。

ROIは一見リーズナブルなのだけれど、ROIに頼りすぎる事は企業および経済の成長を止める事を意味する。
ROIをベースに投資を決める、ということは「確実に儲かる事しかやらない」ということなのだ。
そこには、リスク覚悟の挑戦的なビジネス展開、という発想がない。
確実に儲かることしかやらない、ということ。

ROIをベースに投資を決める事は重要なことだ。
無意味な投資や過剰な投資は避けるべきだ。
でも、たまにはババーンと。
なのである。

何でもかんでも、確実なことばっかりをやっていたら、そこには期待を超える成果も成長もない。
損はしないかもしれないけれど、大儲けはできない。

かつての日本企業は、海のものとも山のものともわからない段階での投資を行ってきたからこそ、世界的大企業になれたのだ。
二番煎じではなく、一番乗りを目指していたはずだ。
先んずれば人を制す。
短期的な成果やROIばかりを気にして挑戦を怠ってきた欧米企業を先見で制してきたはずだ。
だけど不況の今、日本企業はROIばかりを気にするあまり、挑戦的な投資に対してしり込みをし過ぎてしている。

ROIをベースに経営を語ることは一見クレバーに見えるけれど、過ぎたるROI重視は愚かな行為だ。
全てにROIを適用する事は縮小均衡にしかなり得ない。
ROI重視によって確実に収益は得られるかもしれないが。ビジネスとしては小さくなるだけだ。
ROIに頼りすぎた経営は、結局のところ縮小均衡に陥り、収益性は低下するだけ。

ROIばかりを気にしてはいけない。

もちろん、根拠のない無謀な投資は避け、クレバーな投資をすべきだ。
だけど、挑戦することも忘れないで欲しい。
経営者は数字だけはなく、もっと自分を信じて欲しい。
中間管理職は、中途半端な経営知識を振りかざしてはいけない。
部下の挑戦に余計な横槍を入れて邪魔をすべきではない。

でも、絶対止めて欲しいのはコンサルティングROI。
それだけは勘弁してください・・・。




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