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2002年12月06日(金) 経営者不在の日本企業

カジュアル衣料安売王の話を聞く機会があった。
角刈りメガネの経営者は山口弁で「日本企業には経営者が圧倒的に不足している」と繰り返していた。

確かにそうである。
僕は日本企業の経営者と話すたびに、違和感を覚える。
日本企業の経営者のほぼ全員が「経営者としてのプロフェッショナル」には見えないのだ。

日本企業の経営者である社長や取締役はサラリーマンの「アガリ」のポジションである。「プロフェッショナル」としての経営スキルを持っている経営者はほとんどいない。
サラリーマンとして優秀な成績、成果を残した人が経営陣に昇り詰める。
経営者としてのポテンシャル、能力、スキルが評価されて経営陣に加わるわけではないのだ。
優秀な社員に対するご褒美としての経営陣入りでしかないので、専門的な経営スキルなどそもそも全く持っていない。
企業の経営戦略について日本企業の経営陣とお話をすると、あまりもの経営者としてのスキルのなさに愕然とする。
戦略的な思考力も経営に関するスキルも知識もまるでない。
担当領域のオペレーションの改善くらいにしか興味もない。
日本企業の経営陣に求められるスキルは欧米企業のプロフェッショナル経営者に求められるものとは質が違うのかもしれない。
でもそういった事を割り引いてもレベルが低すぎる。
アンタはただのサラリーマンの親玉か?
それでも経営者なのか?

執行役員というポジションがある。
「なんちゃって取締役」である。
企業経営においては大量の取締役など必要としない。
本来の取締役とは経営者である。
企業経営そのものには何の関係もない「アガリ」ポジションのご褒美としての取締役など、企業経営そのものには全く必要ではないのだ。
本来の経営とは何の関係もない取締役がたくさんいても、経営的には何の役にもたたないばかりか、取締役会での議論をややこしくするだけである。
マトモな企業は本来の経営とは関係のないオペレーション担当の取締役を取締役会から排除する必要に迫られた。
でも、取締役は「アガリ」のご褒美だから、今更取締役の肩書きをハズすワケにはいかない。
苦肉の策が執行役員制度である。
ハズされた元取締役に対するプライド維持のための呼称が執行役員。
法的には執行役員は取締役ではなく、経営陣でもない。
単なる社内の呼称でしかない。
外資企業の課長クラスの役職名であるバイスプレジデントと同じようなものかもしれない。

創業経営者は、それはそれで立派な経営者ではあるのだけれど、気合とか熱意、カリスマ性で会社を経営している。
優秀な経営者ではあるんだけれど、プロフェッショナル経営者ではない。
経営者としてのスキルや知識があるというワケではない。

欧米のベンチャーキャピタリストやインキュベーターがベンチャー企業のサポートを行うとき、成長過程のある段階で創業時の経営陣を強制的に入れ替えることが多い。
企業が成長してくると経営陣入れ替えの必要性が出てくるのだ。
ベンチャー企業の創業時の経営者に必要な能力と成長期の経営者に必要な能力は異なる。企業の創業に必要な能力は熱意やバイタリティーだが、ある程度大きくなった企業を更に成長に導くためにはプロフェッショナルスキルが必要となる。
そのフェイズをメザニン(mezzanine)という。
中二階とか踊り場という意味だ。
ベンチャー企業から脱皮するために必要なステージだ。
いつまでもベンチャーから脱皮できない企業は、メザニンステージの過ごし方を誤っているケースが多い。
メザニンステージでは創業時に貢献があった人間でも、次のステージに向かうための能力の足りない人間には経営陣から降りて貰う必要がある。
残酷だがしかたがない。
充分な創業者利益を与え、きちんとした処遇を与えた上で去ってもらうべきである。
だが、日本のベンチャー企業は創業者がそのまま居座っているケースがほとんどである。

日本企業の経営者は経営者としてのちゃんとしたプロフェッショナルスキルを身に付けるべきである。
いつまでお山の大将でいるつもりなのか。
僕は「日本企業には経営者が圧倒的に不足している」という言葉を「プロフェッショナル経営者が不足している」という意味にとらえた。
日本企業の経営者の皆さん、お願いですから少しは経営のお勉強をしてください。
もしくは、若手に道を譲ってください。

角刈りメガネの経営者は、戦略コンサルタント出身者やMBA保持者を採用することによって、自分のスキル不足を補った。
そして、帰りに新しくはじめる八百屋のの品物だと言ってみかんをくれた。




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