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2002年11月16日(土) 細くとも長いつきあい

古い友人の結婚式に出席してきた。

西麻布の古い教会。
曇り空で少し肌寒い。

教会での式なので、とてもシンプル。
正しい結婚式。
カトリックの式次第に沿って粛々と進む。
儀式化されすぎているきらいはあるけれど。
賛美歌なんて歌ったのは何年ぶりだろう。

僕は新聞や雑誌、TVで見かける財界人や芸能人たちが前方のテーブルに鎮座しているような結婚披露宴に出席する機会が多い。
もちろん僕は後ろのほうのテーブルだ。
財界の大物がかわるがわる新郎を誉めそやす、出席できなかった大物はビデオでお祝いメッセージ。
結婚披露宴というよりも、「新郎の出世を願う会」。
新婦はどこへ行った?

僕は意外に女性の友人の結婚式に出席する機会は多い。
男性の友人はどうしても仕事がからむ付き合いが多い。
それに対し、女性の友人は純粋に友人関係。
男性の友人は濃く短い付き合いが多いのに対し、女性の友人関係は細く長い。

今日も新婦側の友人としての出席。
彼女とも実際に顔を会わせるのは年に1−2回くらいでしかない。
普段はメールのやりとりが中心。
細く長い。
仕事上の関係は全くない。

彼女と僕は同じような時期に以前勤めていた会社を辞めた。
クリエイターだった僕はなぜか戦略コンサルタントになり、SEだった彼女はクリエイターになった。
僕らは正反対の道を進んでいた。
お互いに正反対の方向からやってきて、瞬間的にクロスして、また逆の方向に向かっていた。

僕は彼女とのウェブサイト制作がクリエイターとしての事実上、最後の仕事となった。
一瞬の「点」のクロス。
僕は戦略コンサルタントを本職としつつも、クリエイターとしての活動も辞めるつもりはなかったのだけれど、実際にはそんな余裕はなかった。
何の予備知識もなく、異業種からいきなり戦略コンサルタントになってしまった僕は、相当の努力を強いられていた。
最初の1年くらいは、自分の全エネルギーを仕事に慣れることのみに費やした。
眠る時間もロクになかった。
オフィスに泊るハメになることも多かった。
仕事以外のことには時間的にも、精神的にも費やす余裕はなかった。

一方で、彼女も相当の困難に直面していた。
クリエイターのアシスタントとして、ゼロからのスタート。
極端な徒弟制度のなかで、精神的、肉体的に限界ギリギリのところにいた。
と、いうか限界を超えてしまったことも何度かあったようだ。

年月は経ち、彼女はクリエイターとして一人立ちし、僕も何とか仕事をこなせるようになっていた。
「点」のクロスでしかなく、僕と全く別の方向に進みつつある彼女とは疎遠になりつつも、細く長いやりとりはつづけていた。
彼女は苦しい時代を乗り超えて、一人前になり、結婚に至った。

僕らは一瞬の「点」のクロスでしかなかったけれど、細く長いやりとりは続けている。
「線」でも「面」でもない、「点」のクロス。
お互いにまだ「成功」とまではいかないまでも、別々の世界の新しい生活に少しづつ馴染みつつある。

濃くはなくとも細く長いつきあいって大切な気がする。
このサイトの目的のひとつは僕の周辺を通り過ぎていった人たちとの細く長いつきあいをキープすることでもある。
僕自身、これからどこに向かうのか自分でも予想がつかない。
少なくとも一箇所で安定的な人生を送ることが不可能であることは間違いない。
僕がどこに行ってしまっても、一生変わらないであろうURLやメールアドレスを取得している理由はそこにある。
www.junokuno.com
このアドレスは一生変えようがない。
僕はここにいる。
僕に連絡を取りたければCONTACTボタンを押せばいい。
今まで出会ってきた人たちとは細く長くつながっていたいと思う。




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