日々の泡

2011年11月19日(土) シャーリイ・ジャクスン著「ずっとお城で暮らしている」読了

昨年10月に一度四分の三ほど読み終えたあたりで返却期限が過ぎ、たまに書架を見ていたのだがみあたらず、ようやく他の本を探している時にたまたま見つけた。せっかくなので、その時の読書録をペーストする。

不思議な小説である。「あたしはメアリ・キャサリン・ブラックウッド 18歳 姉さんの今スタンスと暮している。運さえよければオオカミ女に生まれていたかもしれないと、何度も考えたことがある。」そんな一文から始まる。彼女は題名とおり姉と叔父と城に住んでいて、週に2回、村に姉に頼まれた食材などを買いに行く。図書館とコーヒーショップにも寄る。村人たちは彼女を遠巻きにして観察する。子供たちはあからさまに彼女への敵意を見せる。彼女たちの両親、叔父の妻は6年前に一家で食卓を囲んでいる時に毒にあたって命を落とす。食事を作ったコンスタンスに疑いがかけられるが最終的に嫌疑は晴れる。それなりにお互いをいたわりながら日々を暮している3人。そこへ従兄弟であるチャールズが一緒に住むようになり、徐々に平穏はひび割れて行く。多分惨殺はメアリキャットによるものだろう、と予測する。薄い本なので、あと少しで読了できそうだが、夜遅くに読みたい本でもない。
著者はサンフランシスコ生まれ、カリフォルニアで少女時代を過ごした。

なかなかうまくまとまっている。どうやら年々脳が劣化しているらしく、過去の自分の文章に驚くことがある。

ついに微妙なバランスを保っていた平安が崩壊する。彼女たちの平穏な日々を乱したチャールズに感化され こもったままで過ごしてきたことを後悔するようになったコンスタンスの言動に危機感を覚えたメアリキャットはあらゆる呪術のようなものを動員してチャールズを追い出そうとする。彼が自室として使っている父親の部屋に忍び込んだメリキャットはまだ火のついているパイプをゴミ箱に払い落とす。やがて火は屋敷の天井を崩壊するが、それよりも火事を止めようとして呼び込んだ村人たちが今までの憎しみを晴らすかのように屋敷内をめちゃくちゃにする。この混乱でジュリアン叔父さんは死に、二人は台所で寝起きする。服も焼けてしまったのでメリキャットはテーブルクロスを着る。食料品もつきる筈だったが、ある日村人がやってきてブルーベリーのパイを置いていく。その後も詫びのメモが付いた卵などが置かれるようになる。
そうそう、村人たちが彼女たちを憎む原因は一家惨殺ばかりではなく、彼女の家屋敷が塀で囲まれていたため、村人たちの近道を封じてしまったことにも原因があった。今や塀が破壊されたため、自由に行き来することができるようになったため、村人たちの怒りも溶けてきていたのだ。

「おさとうに入れたの」
「知っているわ。すぐわかった」

「姉さんはおさとうを絶対に使わなかった」
「そうよ」
「だからおさとうにいれたの」

恐ろしい会話が静謐の中に交わされる。
父親に怒られたメリキャットは一家の食事には加わらず自室にいた。一家はブルベリーにかけた砂糖で死に至ったのである。
なぜメアリキャットが姉を除く全員を殺害したのかは今一つ私にはわからなかったが、メリキャットは周囲の雑音に耐えられなかったのだろう。それにしても、ジュリアンおじさんはその殺害から辛うじてまぬがれ、その後病弱な体となり車いすの生活を送るわけだが彼を支えていた惨劇の日の正確な記録を残すという作業であり、彼はいつもそのことを口にしていた。今思えば恐ろしい話である。


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