そうるが忙しいのはいつものこと。 「うち貧乏性やからなぁ。」って自分のことを言うそうるは。 ヒマがあればバイトを入れ。鬼のように忙しい日々を好んでる。 そんなそうるに対して。もうちょっとかまってくれーって思ってるのがあたし。 でもそんなうるさいことを言ってうざがられても困るので。黙ってるんやけど。
そんなそうる。昨日今日とはバイトは休みになってた。 「久しぶりにバイトないねん☆」って嬉しそうに言ってた。 それやのに。結局なんやかんやと忙しそうにしてた。 急に決まった用事らしくて。「休みがなくなる・・・。」って残念そうやった。
その用事とは。大学の研究室を決めるための見学。
あたしもそうるも大学の4回生。 就職するか院に進むか。もうそろそろ決めなあかん時期。 なんかいろんなことを考えて。疲れる時期でもある。 今年の春。桜はキレイに咲いたし。新緑はさわやかやけど。 どうにもあたしの心はスッキリとは晴れてくれへん。
あたし個人のことを言うなら。院に行くつもりはない。 今の勉強にそこまで執着してるわけじゃないから。 いつまでも学生でいられたらラクでええよなぁと思うけど。 (社会的に責任がない立場って意味でね。) もういい年なんやし。早くちゃんと自立したいってのもある。
でもいざ就職となったときに。どういう方面に行こうかまだ迷ってる。 病院就職。地域の保健師。企業の保健師。その他いろいろ。 選択肢はいくつもあるんやけど。うまく絞られへん。 あたしはほんまは何がやりたいんやろう。 この先どうやって生きていきたいんやろう。 そんなことを考え始めると。眠れん夜もいっぱいある。
そうるはというと。1、2回生の頃は院に行きたいって言ってた。 でもそれが。3回生の秋頃から就職しようかなって言い出して。あたしを驚かせた。 根っからの理系人間のそうるは。頭もめちゃめちゃいいから。 学士だけで満足するはずないと思ってたし。修士博士まで進むと思ってた。 でも。そうるは冬には就職活動を始めてた。
あたしだけじゃなくて。周りもそんなそうるが意外やったみたい。 「あんたは絶対院行くべきやって。」っていろんな友達に言われてた。 そしてそうる自身も。いつもはあんなに迷いがない性格やのに。 進路のことでは。ありえへんぐらいに迷ってた。
就職したいと言ってみたり。やっぱり院に行こうかと言ってみたり。 就職説明会に行ってきたり。エントリーシートを出してみたり。 その反面で。院試のことをだらだらとしゃべってみたり。 傍目から見てても。迷ってることは明らかやった。 そしていろいろ考えつつ。今は院に行く方向に固まってるみたい。 「やっぱりうちにはそっちが向いてる気がする。」って言ってたし。
なんか。あたしはつくづく自分が持ててないと思うんやけど。 そうるが就職すると言えば。社会人になることに魅力を感じた。 そうるが院に行くと言えば。学生のままでいることを素敵やと思った。 どうしてやろうって考えて。たどり着いた結論はひとつやった。
あたしは結局。そうると離れたくないだけなんや。
いや普通の恋人同士なら。離れたくないって思うのは当然のこと。 好きやからそばにおりたい。好きやから一緒に過ごしたい。 全部当たり前の感情やし。特別強調して言うことじゃないかもしれん。
でもあたしは。一緒におりたいって思う強さが異常な気がする。 もっとも。何が異常で何が正常かなんて誰にも分からんもんやと思うけど。
なんでやろう。絆の強さを疑ってるわけじゃないんやけど。 そうると離れることが。物理的に離れることが。あたしはめちゃめちゃ怖い。 それは。サークルの引退の時期にも感じたこと。 当たり前のように会える日常がなくなったとして。 それでもそうるは。あたしのそばにおってくれるやろうか。 そう思って。あたしは不安で不安でしょーがなかった。
必要とされてへんなんて思ってない。必要とされてるって信じてる。 でも。変わっていく環境の中で。変わっていく生活の中で。 そうるは。変わらずにあたしを求めてくれるやろうか。 遠く遠く離れたとして。学生と社会人とで全く違う生活をしたとして。 そうるは。それでも変わらずにあたしを好きでいてくれるやろうか。
「大丈夫。そうなってもそうるは絶対にあたしを好きでおってくれる。」 ・・・悲しいかな。あたしにはそう言い切ることは出来ん。
ねぇそうる。まだそうなってもないのに暗いことばっかり考えてごめん。 友達の遠方への就職が決まって。離れるってことが現実味を帯びてきたから。 あんたとのことも考えて。急になんか怖くなってもてん。
1年後。あんたとあたしは。どこで生活してるんやろう。何をしてるんやろう。 ちゃんと続いてるんやろうか。変わらずお互いを必要としてるんやろうか。 考えても分からんことやのに。考えたってしょーがないのに。 考え出したら止まらんくなってもてん。
ねぇそうる。あたしにもあんたにも。遠距離恋愛は無理なんやと思う。 でも。同じように無理やとしても。その理由はまったく違うとこにあると思う。 あたしは。離れてる寂しさに耐えられんくて無理なんやろうけど。 あんたは。離れてるうちに愛情が冷めて無理なんやと思う。
だってあんたは。もともとドライな人やから。孤独を愛する人やから。
決めつけてるみたいやけど。あたしにはあんたはそう映ってる。 やっぱりギリギリのとこで。人を必要とせんくなるような気がしてる。 あたしに注がれる優しい視線も。いつかフッと消えるような気がしてる。
愛されて。満たされて。世界で1番自分が幸せやと思える時間でも。 言葉にできん寂しさが。心の片隅にひっそりと残ってる。 いつまでこの幸せが続くんやろう。いつまで愛してもらえるんやろう。 愛に溺れるあたしのそばに。冷静な感情を抱くもう一人のあたしがおる。
・・・あぁ。あかん。また思考がマイナス方向や。もう寝よう。 |