かっしーのつぶやき
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2006年03月05日(日) You Raise Me Up

 You raise me up so I can stand on mountains
 You raise me up to walk on stormy seas
 I am strong when I am on your shoulders
 You raise me up to more than I can be
  
         (Celtic Woman "You Raise Me Up")


そして今日もトモさんはコートの中の子達に向かって叫んでた。
試合開始の笛が鳴ったその瞬間から、トモさんの身体の中で何かがカウントを開始したような気がした、それからずっと。
選手交代で自分がコートに入った時だけじゃない、アップゾーンでひとり走ってる時だって、
コートチェンジで荷物を抱えて歩いてる時だって、真一文字に口を結んで勝利を祈っている時ですら、
その全身がいつだって、コートに向って、選手に向って、ボールに向って叫んでた。
絶対落とさない、絶対負けない、あたしたちは絶対に勝つ。
最後の1点のボールが落ちきってゲームセットの笛が鳴るその瞬間まで、トモさんの全部が、叫んでた。

コートの中も外も関係ない。ここにあたしがいる限り、あんた達を負けさせない。

トモさんの、その存在がいつだって、何かを指し示し、励まし、奮い立たせてた。
トモさんの、その一声一声の熱さ烈しさ、それはそのままチームへの、バレーボールへの愛だった。


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かくして第12回Vリーグは、パイオニアレッドウィングスが2年ぶり2回目の優勝を果たしました。
相手の久光製薬スプリングスも、それぞれが全力を尽くして戦った、まさにベストマッチ。
どちらが勝ってもまったく不思議はない、気力・実力ともに拮抗した対戦でした。
バレーボールファンとして、本当にいいものを見せてもらったと思います。

ありがとう、そしておめでとう、パイオニアレッドウィングス。

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以下、思い出すままに書き連ねます。

優勝の瞬間、トモさんはベンチに座っていて、決した瞬間、やったー!!というように両手を上げてやっぱり叫んでました。
あとはもう、誰もが立ち上がってみんな笑顔笑顔で、抱き合い、泣き、歓声をあげ、もうもみくちゃ。

フランシーの胴上げの後、セリンジャー監督の胴上げ、その前も後も全員が泣き笑いハイタッチ&ハグ。
私の席からはちょうどコートの対角になってしまったので、もみくちゃの人垣でトモさんの頭のてっぺんしか見えない。
それでもずっと見つめていると、人垣のすきまから、トモさんのちょっと涙を含んだきれいな笑顔が、見え隠れしました。

そんな中、いろんな人とハグしていたトモさんと、マッチョさんとが目が会った時のこと。
それまで笑顔だったマッチョさんの表情が、ほんとに、言葉にしようのないほど、せつない顔になりました。
こちらからは見えなかったけれど、多分、トモさんもそうだったんじゃないかと思う。
長い間こらえていたものを、今やっと開放できるというような、そんな仕草で、トモさんとマッチョさんはお互いに手をのばして近づきぎゅっと抱き合ったまま、しばらく動かなかったから。
何にも言わなくてもお互いの気持ちは通じているのかもしれない、そう思えるような、切なくてせつなくて、見ているだけで胸がしめつけられるような、それはそういう抱擁でした。

その後も勢い余って、いろんな人が胴上げ。みんな晴ればれ笑顔、トモさんも笑顔。
と、笑顔でその輪の中にいたトモさんの頭が、突然ひょこりと高いところに上がったかと思うと、あっと思う間もなくトモさんの胴上げになりました。
去年の黒鷲の時はやだやだやだって言って逃げてたけど、今回はそんなこと言う間もなかったようで、びっくりしたような照れくさそうな、そんなトモさんの笑顔が、宙に舞いました。

みんなより少し高いところにある、フランシーのにこにこ笑顔。
あれ、フランシーの手に、なにか緑色のものが握られている…
ああ、あれは確か、マッチョさんがリーグ中ずーっとお守りみたいに持ち歩いていた、ちっちゃなカエルのぬいぐるみだ。
第10回リーグも第11回リーグも、スタッフと一緒に試合を見てたあのカエル君だ。
そうか、第12回の優勝も、一緒に越えたんだね、カエル君。

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やがて表彰式が始まるので、ひとしきり喜びに湧いた選手達は、お揃いの白いシャツを着て表彰台へ向うためコートサイドを歩いていきます。
と、歩いていくトモさんに視点を移すと、
手が。
トモさんの手が、佐々木に握られてるではないですか。

今まで、いろんな試合でトモさんと佐々木のタッチとか掌ギュー、はたくさん見てきましたが、どれもみな「気合注入タッチ」という感じの、「今日も勝つよ!」「まかせろ!」的なノリだったんですね。
でも、その時の二人の様子は、ちょっと違って見えて。

バシッ!ギュー!とやるんじゃなくて、トモさんがそのてのひらを上からふんわり、佐々木が下から支えるみたいにして握ってて。
二人ともほんと穏やかな、きれいな笑顔してて。
体育館のライトの具合と私の妄想頭がたまたまそう見させただけなのだろうけど、なんだか、不思議に透明感のあるような景色で。

自分のやるべきことを十全の意志の力で成し遂げた人同士って、こんなふうに、無言でただ寄り添うだけで、いいのかもしれないと思いました。
てのひらから、何もかもがみんなお互いに流れこむみたいな気が、するのかもしれないと思いました。


…トモさんはちょっと、照れくさそうだったけど(笑)

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表彰台に登っても、トモさんと佐々木はなにやらしきりに話しておりました。ずっと笑顔で、表情をくるくる動かして、話すトモさんのやさしい横顔。
トモさんが右隣りに立つ佐々木の片耳のピアスを指差して、大丈夫なの?みたいな仕草をすると、佐々木はくりくりとピアスを触ってみせて何か答え、トモさんはああ、そうなんだというようにこくこくうなずいて。佐々木がなぜか3枚重ねて着た白Tシャツを「ホラ見て、3枚」みたいにめくって見せたりして、トモさんの左隣りのアチャさんと3人で笑ったり、あれやこれや、ほんとに寛いだ顔で、楽しそうでした。

突然、バシュッ!とスモークがたかれ、さらにお祝いの銀紙ふぶきがキラキラ降りてきました。
おどろいた猫みたいなびっくり顔のトモさんをよそに、佐々木はもう、はしゃぐはしゃぐ。
初雪とか桜の花びらを拾おうとして夢中で追いかけ回す子供みたいに壇上で前に出て、しきりに銀紙を空中で掴もうとして、なかなか掴めなくて、なかなかやめなくて、しまいにはトモさんとアチャさんに
「もー、やめなさいってばこの子は!(笑)」
みたいに腕を押さえられちゃって。
それでも嬉しくてしょうがないのか、今度は足元に積もった銀紙を掌にすくって、右に左に降りかけだして。
やがて佐々木は、あろうことかトモさんがアチャさんの方を向いて話しているそのすきに、後ろからトモさんの頭のてっぺんに、銀紙をほろほろと積もらせました。
すぐにはバレないように(笑)、後ろからそうっと積もらせたものだから、しばらくの間トモさんは佐々木のイタズラに気付かず、頭の上に銀紙の山を載せたままそのままアチャさんと話してて、その姿がもう、微笑ましいやら可愛いやら…
やがてトモさんが佐々木のほうを向いた拍子に、その時はじめてぱらぱらと頭の上から、トモさんの顔に銀紙がきらきら散りかかって。
わ、何?って驚くトモさん、笑い転げる佐々木とアチャさん。
ほんとに、幸せな、幸せな景色でした。

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今日この試合を見届けるために、今季、がんばって追いかけてきたんだと思います。
去年のあの3月から夏を越え秋を耐え、投げつけられる悪い噂やニュースも心の真っ芯で受け止め、
冬の寒さに震え、豪雪に悩み、時には思わぬ敗戦に心傷つきながら、それでも、
今日のこの試合このみんなの笑顔と涙を見届けるまではと、私は私なりに、歩いてきたんだと思います。
多分、選手もスタッフもファンの人たちも、みんなみんなそれぞれ、そうやって歩いてきたんだと思います。

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さて表彰式が終わって、選手達が退場口あたりに流れてきた時、応援団からまたあの「We will rock you」の音楽が流されて、ほぼ条件反射的に手拍子を始めてしまう選手達。みんな幸せそうで楽しそうで、見ているこっちも笑顔&拍手の大放出。あれって言わば「とてつもなくノリのいい舞台を観た後の観客席の状態」で、何度アンコールの拍手をしてもしてもし足りない、って心境なんだろうなと思いました。この感動と幸せを、一分一秒でも長く味わっていたい、という…。その「We will rock you」コールのエンドレス状態に、式典嫌いで照れ屋の(ということにしておこう)トモさんは、おしまいの頃には「んもー、カンベンしてー、早く帰してー」みたいに、近くに居たアチャさんと苦笑い。

しかしその後、トモさんはどこかのTV局の取材につかまりしばらくコートサイドでインタビューされていたために、気がつくとパイオニアレッドウィングスの面々は全員控え室に帰ってしまい誰もフィールドに残っておらず、マジで最終退出者になってしまったのでした。一人残っていたトモさんを、退出口につめかけていたファンがただ通すわけもなく、トモさんの姿が見えなくなった後もなかなかその付近からはファンの人だかりが消えなかったことでした。
…そして、ということは、観客の目もなくなって一段と破目をはずして盛り上がっているであろう選手控え室にトモさんは大トリ(笑)で入っていったことになるわけで、それがいったいどんな事態を引き起こしたか、想像すると、ちょっと楽しい…。

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そんなトモさんを最後まで見続けていた私らも危うく観客席の最終退出者になるところでした(笑)

帰りがけ、客席通路にパイオニアのファンの知人がいるのに気付いて、
「わー、おめでとうございますー」
と寄っていったら、突然、彼女の両目からぽたぽたぽたと涙がほとばしり落ちました。
よかった、ほんとによかったと言いながらそれでもぽたぽた涙が止まらない彼女でした。
お互いウルウルしながら肩に手をかけ握手をし、またきっと体育館で会おうね、と言葉を交わしていたら、なんだかいろいろあった雑念もみんな空の彼方へ飛んでしまって、自分までとてもピュアな気持ちになっていくのが判りました。

いろんな人がそれぞれの立場で生きていて、考え方も人生の選択もそれぞれ違うはずなのだけれど、こういう時って、ふと心と心のどこかがチカチカと響きあうように、一瞬、同じ場所に立てるもんなんだな、と思いました。
それは本当に今この時、一瞬だけの感覚なんだけれど、たぶんだからこそ大事な、大事な瞬間なんだろうなと。

私も彼女も、まるでたった今まで見ていたパイオニアの選手達のように泣き笑いしながら、
また来ようね、コートで会おうね、と言い合うのは、なんだかとても、純粋な、やさしい気持ちでした。

トモさんがいつか、
「試合が終わった時に、会場に足を運んでくれた観客のみなさんが、それぞれの選手になったような気分で家路につけるような試合をしたい」
と言っていたのは、こういうことなのかな、と思いました。
こういうことでもあるんだな、と、思いました。
トモさんのあの言葉の意味が、今はじめて聞いた言葉のように、また新しく心に降りてくるような、そんな気がしたひとときでした。


体育館から一歩出れば、外は春の気配あふれる薄暮、まさに黄金の午後。
すぐには去り難く、しばらくはtimutaんと一緒に、西日を受けてたたずむ東京体育館を、ぼうっと見上げておりました。


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