かっしーのつぶやき
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子供たちには ありったけの物語を話してきかせよう やがてどんな運命でも ドッジボールのように受け止められるように (茨木のり子)
泣いても笑っても今日が決勝戦、大阪府立体育館。
がぶり寄り的な席で観戦とあいなった私らはパイオニアの選手達の入場を今か今かと待っていたわけですが、なぜかいつも一番にコートに乗り込んでくる筈のトモさんが一向に出てこない。気付けばユキさんもまだ来ていない。 何事かあったのだろうかと不安が頭をもたげかけた頃、二人が遅れて入場してきました。 小走りで少し急いで、でも二人ともとても研ぎ澄まされた美しい表情で。
ああそうか、決勝戦だもの。何かお互いに、確認しあうことがあったんだよね。 コールを待ってベンチにいる時もきゅっと手を握ったり何か言葉を交わしたりしていたトモさんとユキさんは、終始穏やかできれいで、でも静かに燃えていて熱かったです。
そして鳴る、試合開始のホイッスル。
決勝戦のトモさんは、寄らば斬るぞの気迫を放つ、その存在そのものが一振りの抜き身の刀のようでした。
この人は本気だ、と、幾度も身震いしました。 今までもサムライだの葉隠だのになぞらえて彼女を表現してきたけれど、それは本気でそうなんだ。 この人、本当に本気で、たとえば今この一瞬後にバレーボールが出来なくなってもいい、たとえ結果はどうなっても後悔だけは絶対に絶対にしない、って段階にまで、そのクオリティにまで、このコート上における自分自身の存在のすべてを今・一瞬の・このプレイに叩き込み刻み込み注ぎ込んでいるとしか思えない。
そのくらいものすごい気迫。 もしも水滴を落とせば、弾けるような音を立てて一瞬で蒸発してしまうだろうと恐怖するような。
それこそ呼吸する間すら惜しむようにチームメイトみんなに途切れなく声を掛け続け手を脚を動かしつづけるトモさん。 相手側のサーブを待って構えている間も、すぐ後ろに控える栗原に顔を傾けずっと何かを教えていました、本当にギリギリの瞬間まで、相手側がサーブを実際に打ってそれぞれがフォーメーション位置に駆け出すその直前一瞬前までずっとずっと、一言でも一音でも多くのことを指し示そうとするように。
トモさんが相手チームのスパイクをことごとくワンタッチして確実に勢いを殺すと、その打球はまるで招き入れられた如く流れるようにトスにつながり、そのまま返す刀で袈裟懸けにパイオニアのアタッカーの得点に変えられていく。 佐々木が鉈のような豪打を容赦なく幾度も撃ちおろす、天空のスナイパー・フールマンの攻撃はまさに電光石火のトール・ハンマー。
そしてユキさんが庄司や栗原にこれでもかこれでもかとトスを上げつづける、ユキさんが届かなければトモさんが上げる、そしてそれがガンガン得点になっていくのを見てたら、あまりのシブカッコよさに泣けてきました。
ここの若い子達は、シニアのお姉様方に本当に大事に、そして真剣に、心血注いで育てられてるんだなあと思いました。
いつか佐々木が冗談めかして言った「シニアの人」、 でもそのシニアさ加減は、伊達じゃあないのです。あの人たち、本気でシニアです、オトナなんです。 自分の仕事はキッチリこなしつつ、後進にもきちんと道筋をつけてあげられる。 自分のことだけでいっぱいいっぱいの人間には、こういう仕事はできないだろうと思いました。
こういう人達の下で、「これから育つ」ことができる若いもんは、本当に幸運だと思います。
3セット目あたりは本当に全員極上のパフォーマンス、面白いほど痛快にすべてのプレイが決まりまくるという感じ。 優勝が決まった瞬間、喜ぶトモさんが、 「うわーっ、まだやりたいっ!!」 って全身で言ってるような気がしたのは、私だけでしょうか。
かくして、決勝戦は、パイオニアレッドウィングスの快勝で幕を閉じました。 嬉しくてほんとに地に足がつかない・じっとしてなんかいられないって感じで、みんなピョンピョン飛んで喜びあってる姿は本当に楽しそうで微笑ましかった。 感極まって泣いちゃって、トモさんに抱きついて「ふええぇぇん」ってなっちゃってる栗原も可愛かったなあ。 あっちでもこっちでも誰かに抱きついては「ふええぇぇん」、アチャコさんがなんともあったかーい笑顔でその栗原をヨシヨシしてあげてたのも、フランシーが泣いてる栗原の頬に両手を添えて優しく覗き込んで「泣かないで、笑って笑って!」みたいに微笑んでたのも、なんだかみんなみんな心の底から嬉しそうで和やかで、見ていてハッピーだったなあ。
そして本当に、つか案の定(苦笑)、示し合わせたようにまったく接触が無いなあ>レオトモ
まあしょうがないかー、二人とも責任ある立場だしー、同じチームに所属して黒鷲で大暴れするのは今回が初めてのことじゃないしー、まあここはひとつ若い人に華を持たせてー、…などと無理矢理自分を納得させつつ、佐々木と栗原がインタビューを受けている間エンドラインの後ろのほうでクールダウンしているトモさんたちを見ていた私でした。
そしたら。
インタビューを終えてチームフラッグを持ったままみんなのいるあたりに戻ってきた佐々木が、栗原狙いの報道陣&カメラマン諸氏の黒い人垣に取り巻かれつつ、ふっと方向を変えてトモさんの所へ。
トモさんは近くに来たその佐々木と栗原に向かって、おーおーよくやったねー、お疲れー、みたいな感じで、床に座ったまま手を差し伸べてパチパチパチと拍手をしてほがらかに迎えます。 すると佐々木がそのトモさんに、特に会話もなく、ひょいと片手を差し出しました。 一瞬、え、という感じになったトモさんも、佐々木の顔を見ながらつられたように片手を差し出して。 それまで試合中もさんざん気合いを込めて手を握ったりしてたし試合後もお互いいろんな人とあっちでもこっちでも優勝おめでとうタッチをしてたので当然ここでレオトモも「お疲れ&おめでとタッチ、さもなくば握手」をするんだろうな、てことはうわ試合が終わってからやっとこれが最初のレオトモ接触だよ(笑)、なんて思って見ていた私でした、が。
そしたら、佐々木はトモさんが座ったまま差し出したその手の手首あたりを掴んだかと思うと、ぐいっと引き寄せるみたいにトモさんを立ち上がらせて、で、その後とくに言葉をかけるわけでもなく、応援席に挨拶しに行ってしまいました。
トモさんですらちょっと虚を突かれたような感じ、傍から見ていた私はさらに輪をかけて茫然。
何、今の。
何なの、その仕草は。
まるで熟練した職人が永年使い込んだ愛用の鑿を手に取るときのような、自分の一部を扱うようなその感じはいったいどういうわけなの!!!(ドカン)
抱擁するわけでも言葉を交し合うわけでもなく、目と目で互いの呼吸をはかったかと思うと突如としてそのような行動に出る佐々木の、つかレオトモのその関係性・精神性をいったいどんなふうに解釈すればいいんだ!!(号泣) 嗚呼、この深遠なる綺羅の謎を胸に抱いたまま新幹線に乗って帰れというのか!!なんてことだ!! もうこのワンポイントだけでも大阪まで遠征した甲斐ありまくり・まさに人生是一点豪華主義。あああありがとうありがとうありがとう。
さてレッドウィングス、応援席から祝福のコールを受けた後、お待ちかねの胴上げタイム。セリンジャー監督が二度三度と宙に舞います。それ見てたら、ああ本当に彼女達が優勝したんだなあと感慨もひとしお。本当によかったね、よかったね。 選手達の周りをとりかこむカメラマンの数がものすごくて、私たちの席からはほとんど人の背中と足しか見えない。まあ仕方ない、とにかくみんな嬉しそうだし、後はネットニュースの映像でも見られれば、 …と思っていたら、人垣の中から 「やだやだやだやだ、絶対・やだ!!」 という笑顔を含んだ必死な声。ああ、トモさんだ(笑)。 姿が見えなくても何が起きてるかよくわかるそのあかるい声に続いて、トモさんの細い体がぽおんと宙に放られるのが見えました。
コートに集合して写真撮影、最前列にフランシーと並んで膝立ちのトモさん。待ってる間にフランシーがおどけて片膝を立てて片手でぐっとチカラこぶポーズを取ると、隣のトモさんもおどけて「きゃー頼もしいー」みたいな感じにぺとっと腕を組んでみたりして、もうむちゃくちゃほのぼの… 記念の写真だからいろんな人に一緒に映ってほしいのでしょう、佐々木が誰かを呼んでは何度も立ち上がる。トモさんも伸び上がって手を振って呼ぶ。なかなか揃わない面子に、今度はトモさんが佐々木の手首を掴んで引き寄せて何か指令を出すと、それを受けて佐々木が立ち上がって誰かを呼びに走る。ああ、そのレオトモの、お互いの手首を無造作にひょいっと掴んで引き寄せるその感じ、それをこの目にこの胸にしかと納められただけでもはるばる大阪まで来た甲斐が(以下同文)。
男子の決勝戦が終わった後、表彰式と閉会式。 入場を待つ間、通路のたもとで、客席に座っているチームスタッフらしき人と話しているトモさんは、仕切りの柵に両手をかけて寄りかかりちょっと退屈そうにふにゃふにゃしてる。なんだか力みが抜けていて可愛い。大会が終わった後の運動部の男の子みたいだ。ヘンな喩えかなあ?でもそんな感じ。汗が引いて、身体の中はまだ試合の余韻で火照ってて、なんかちょっと物足りないような、でも我ながら十二分に暴れきった後のキリのいい感じはそれはそれで楽しんでるような。 表彰式で整列してる間も、どことなくくたくたひょのんとして立っている。 とどめに退場の時、あーやっと終わったって風情でてとてと場内一周した後、退場口で手を広げて迎えてくれたセリンジャー監督の腕に、何を思ったのか「えいっ」って感じで軽いパンチを一発。 …、トトトトモさん?! 今いったい何を?パンチ食らわしましたか監督に? 「目が点になる」というのはまさにこのことって感じの一瞬の出来事で、それに対し慣れた様子で「ハイハイ、さあ帰ろうねー」みたいな感じで事も無げにあしらうセリンジャー監督には、なんとなく老練な猛獣使いの風情がありましたよ…
なんだかやっぱり、やんちゃな男の子みたいだ、トモさん。 5月3日に大阪に来て久しぶりにトモさんを見た時も感じたけど、なんでなんだろう、今回は。 単に髪型のせいか、立ち居振舞いの印象からか。トモさんの心構えに、颯々の気漲るような気がするからか。 それとも、ただ、今が、あんまり眩しい新緑の季節のせいなのか。
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というわけで、いやー、勝ったよー、優勝だよーと呟きながら、ちょっとボーッとしてまだ早い夕方のあかるいなんばの街を駅へと歩く。 ビール飲みたいねえ、ああ飲みたいねえ、とtimutaんと言い合って、トモさん達も今日は本当においしいお酒が飲めるよね、と思った瞬間、うっと胸が詰まる。 涙はあとから来るらしい。
新大阪駅でおべんとうと冷えたビールを買って、のぞみに乗る。 京都のあたりの新緑がほんとにきれいで、ぽかんと晴れた夕方の光に映えて、ちょっと酔っぱらってきた目にしみるよう。
あの3月末から1ヶ月ちょっと。長かったような、短かったような。 侍大将・吉原知子を追いかける気ならたとえ足軽雑兵といえども、と、自分の中の鋤鍬の如きサムライ魂をそれでも必死で磨きつつ、今回、瞬きの回数も惜しむ思いでひたすらトモさんの実在を、その一瞬一瞬を、出来る限り自分の瞼の裏に焼き付けようとし続けたこの3日間でした。そういう意味で、黒鷲旗が負けたらそれで終わりのトーナメント戦だったのは私にとってとても意義深かったです。今日、今、ここで、己れの十全を尽くして生きる。そのことのリアルな切っ先が、いつでも喉元にあったから。
私が今日見たトモさんは、見たその一瞬一瞬が過ぎ去ればことごとく「私の中のトモさん」になってしまって、トモさんの実在とは光の速さで遠く離れていってしまうのだけれど。 それでもまた逢えたらこんなに嬉しいことはなくて、そして明日どんなことが起こるのか、それは誰にもわからないから。
だからね、とビールの酔いが回って眠くなってきた頭で、ちょっと涙目になって、思いました、
逢いたくなったら、逢いたくなったら… 目を…つぶるんだぁ…。
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