かっしーのつぶやき
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2003年06月15日(日) 雨に唄えば

と言っても雨をついて新橋演舞場にまた行っちゃったよん、という意味です。
観て来ました「風のなごり」2回目。以下観て感じたことなど思いつくままに。ネタバレ大いに注意のこと。

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この土日を利用して、私の誘いにまんまと乗ってくれた(5/13付日記参照)我が母上&叔母上というグレートシスターズが来襲、じゃなくて上京。
土曜日には日本橋で買い物して赤坂で中華食べて新宿でフラメンコショー見て虎ノ門に泊まってそして日曜日は新橋演舞場で「風のなごり」観劇、というものすごいスケジュールですが、この梅雨空にもめげず本人達はいたって元気&いたって乗り気。

よく考えてみると我が母上は昭和16年生まれなので舞子ちゃんの設定上の年齢とそんなに変らないんじゃないかなあと。我が母ながらこのヒトは、なんでも少女の頃こともあろうにミュージカルダンサーに憧れていて、中学3年生の時、学校の進路相談申告用紙に大まじめに「進路:SKDに入りたい」と書いて先生と親と両方から大目玉を食らったようなヤツだったそうで(まあ、そんなヤツだからこそいまだに「おわら風の盆=リオのカーニバル説」をリリカルに語っちゃったりするわけですが)。とまれそんな彼女がこの「風のなごり」を観てどんな感慨を抱くのか、私としてもなかなかに興味があるところでございました。

というわけでそんなグレートシスターズには「終演後にはなにとぞ忌憚のないご感想をいただきたく〜」とだけ言い添えて、開幕。

* 「もう逃げるのは嫌。俊ちゃん、あたし、踊りたいのよ。ここの舞台で踊ってるようなダンス」
  「土下座でも何でもしたらいいじゃない。こんなふうに逃げ回ってばかりじゃ、先なんてないのよ」

 このセリフのあたり、今日はあんまり女女していなくて、しっかりした声音に聞こえて私としてはかなり好きな感じだったんですが、すかさずその脇でグレートシスターズは「なかなかドスが効いているわね」などと言い合っていてガクー。こういう感覚って人によってほんとにまるで違いますのう。
 でもそんなこと言いつつ、一方で我が母上は随所であっぱれ見事な拍手リーダーだったのでした。どのくらいリーダーかというと、2幕冒頭の「Shall We Dance?」の後、上手で舞子ちゃんと東田君が洋楽いろいろ口ずさみつつ話すシーンで、舞子ちゃんの後足上げポーズがチョンと決まった瞬間にすかさず拍手入れてたくらい(笑)。
 
*  「あのきれいな、八頭身の、日本人ばなれしたバタ臭ぁーい顔の、なんていうかこう、あああ厚化粧のグレタ・ガルボみたいな人」

 今日の舞子ちゃんの形容詞by耕作さん。
 
* 「私は、英霊の妻です!」

 このセリフ、たとえどんなにコミカルな言い回しであっても、1969年生まれの私がそれに笑ってしまうというのはこの国の歴史というものに対してあまりに不遜に過ぎるのではないかと内心思っていたんです。でも、本日再見するに、周囲のお客さんで明らかにその昔まさに英霊の妻であったり娘であったりしたとおぼしき年代の方々も、皆あはははと笑って見ていらっしゃる。なんだか不思議な感じでした。舞台の上のお話は確かにフィクションなのだけど、今こうして座っている観客席一人一人の中にまちがいなくそれぞれの日本近代史が在るのだよなあ、と当り前のことを改めて思わされました。

 私は英霊の妻というと坂口安吾の『堕落論』を思い出します。だからあの女の人が大旦那さんを「順ちゃん」と呼ぶのを聞いているうちに、なんだかだんだん泣けてきました。「あんた俊ちゃんて呼ばれてるんだってね、私は順ちゃんて呼ばれてるの」っていうセリフにも、なんだか深い人生の味があるんじゃないかって気がしたりもして。

* 「…あたし、甘えてたね。何もかも俊ちゃんに背負わせて、ごめんね。こんなあたし、重かったでしょう」

 ううう。せつないのう。舞子ちゃんのこの独白のあたりでは、私も含め客席のあちこちがもらい泣きしてました。
 言ってる舞子ちゃん本人もぽろぽろ泣いてたし、それを聴いてる俊太郎さんも目元がうるうるしてましたですよ。

 ううう。そうなのよ、生きていると、どうしたっていろんな出会いと別れを経験してしまうものなのよ。そのときにはどうしようもないことも、ずっと後になってからやっと解ることも、長い人生のうちにはどうしたって、あるものなのよー。
 舞子ちゃんが去った後、俊太郎さんがくしゃくしゃの白いハンカチを取り出して無造作にごしごしっと目元を拭ったんですが、その何気ない仕草の中になんというか人生の実感みたいなものが滲んでたような気がしましたねえ。

* 「ひとつ取り戻したと思ったらひとつがなくなる。人生、思うようにはならねえもんだな」
  「思うようにはならないことが、誰にでもあるがいよ。
   誰もが自分の好きなように生きられるなら、誰が歌を歌うが?誰が踊るが?」

 だーーーー(滂沱と流れる涙の音)。

 「レディ・ゾロ」を観た時も思ったんですが、私はこの西川さんという演出家の、物事の考え方が好きみたいです。
 なんというかね、自分でも忘れていた遠い昔のオサナゴコロみたいなものを、呼び覚まされる感じがするんですね。どうしてなんでしょう。

* 今日の新内は新内仲三郎さん、おわらは加賀山昭さん。この世の果て、彼岸と此方との境界から、いんいんと響いてくるようなその声音。お二方とも、凄まじい芸でした。

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そんなこんなで無事観終わりまして、グレートシスターズの本当に忌憚のないご感想の数々をうかがい、そのあまりの視点の斬新さに一同ゲラゲラ笑いながら朗らかに東京駅へお見送り。
私らがいらん前情報を吹き込んだからかどうかは知りませんが、彼女たちにもバッちゃん@藤本隆宏さんはなかなか好印象を与えていたようでした。
我が母上の表現によりますと、舞子ちゃんとのデュエットダンスシーンで彼が「ハイ、匠さん、ボク受け止めます!ボク待ってます!大丈夫ですから、さあ、どうぞ!」みたいなヒタムキな視線を一生懸命チャーちゃんに送っているその気配がすごく好ましかった、んだそうな(笑)。

かくてグレートシスターズは本当に雨にも湿気にもめげることなく、元気に東京を謳歌して故郷へ帰っていったのでした。お疲れさま〜。

そして私は、「風のなごり」新橋演舞場公演の観劇は今回にておしまい。次は京都南座に参上いたします。


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