かっしーのつぶやき
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観て来ました「風のなごり」。以下観て感じたことなど思いつくままに。ネタバレ大いに注意のこと。
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* 「風のなごり」、ごく素直にまっとうな良い話でした。もう少し男女のメロドラマ調なのを予想してたんですが、メロドラマというよりは人情もの、とでもいうか。観終わったあとは、なにやら夏の夕立の後のお空のような気持ちでしたね。
多岐川さんが、たとえ作業着にゴムの前掛けをしてケラケラ笑っていても、まるで白い芙蓉の花のように美しかったのが印象的でした。 あー、あとやっぱり波乃さんはすごかった。うまい、っていうのはこういう役者さんのことをいうんだろうなあ…。
* そして舞台美術がとにかく素晴らしい。小道具もとことん凝ってて、お花やらソファやらほんのちょっとした所まで手が入ってる感じなのが見ていて気持ちよかったです。3幕ラストあたりの照明とか、もう心憎いばかり。
* さて、前情報でチャーちゃんの演じる西野舞子さんの芸名は「チェリー」だと聞いて、アホな私らはヒソカに「あの時代でチェリーっつーとやはりあの♪わーかいムスメが、うっふーん♪のチェリーなんだろか」とか冗談言ってたんですが、そしたらさすがにチャーちゃん本人じゃなかったけど思いっきり本当に花道でダンサーお姉さんズに歌われてしまいましたですよ、水玉フレアスカート姿で♪黄色いサクランボ〜♪を。うおお。
* そして問題の舞子ちゃんは、その黄色いサクランボ〜♪の歌の後にキンキラのついた黄色いロングドレス着て登場。 ひとりだけロングドレスで周囲の人との対比が鮮やかなせいか、思ってたよりもずっと背が高くそして頭が小さく見えて、改めてびっくり。
* 個人的に超気になっていたバッちゃん@藤本隆宏さんは、チェリーさんにちょっとホの字の、気のいいダンス仲間というような役どころ。 いかにも当時のキャバレー舞台用って感じの胸元にフリフリがいっぱいついた水色のシャツがヘンに似合ってて、雰囲気出てます。
藤本さんの、あのガタイのよさから醸し出される独特の暑苦しさ(注:褒め言葉)って、どことなくあのマイトガイ小林旭に通じるものがあると思います。ああ、あえて念のために申し上げますがこれは決してギャグな意味ではなくてですね、あの彼の厚い胸板とかパンパンの太腿とかそういう「姿」そのものから生まれる密度の濃い存在感には、もう理屈じゃなしに、観ている人を否応なくどーんと昭和30年代へ運んでいってくれる視覚的説得力みたいなものがあるんですね。これは私、うかつにも実際に観るまで気が付きませんでした。ある意味、彼は実にナイスなキャスティングなんではないかと思います。
* そして同じようにチャーちゃんにも、セリフでくどくど説明しなくても彼女があのプロポーションで登場するだけで、観る人に「ああ、この娘は本当はこんな田舎や場末にいるべき人じゃないんだろうな」みたいに思わせてしまう、なんというかもうどうしようもない異分子感(いい意味の)みたいなものがある。
作中、いわば八尾(田舎)代表みたいな位置付けの耕作さんが、東京(都会)代表みたいな俊太郎さんに向かって舞子さんのことを「あの八頭身の、厚化粧のグレタ・ガルボみたいな人」って表現してたところがあるんですが、あれって、「厚化粧の」ってところに紛れて一瞬気がつかないんですけど、ある意味すごいセリフだと思うんですね。だって「八頭身」の「グレタ・ガルボみたいな」人、って表現して「ああ、あの娘ね」ってみんなに通じてしまう、そういう姿形を持った人なんだってことなんですよ、あの舞子ちゃんという娘は。 そういう一種異様な容姿を持った人というのが、周囲の人間にどういう印象を与えるものなのか。
「薔薇ノ木ニ 薔薇ノ花サク ナニゴトノ不思議ナケレド」って歌ったのは、あれは北原白秋でしたっけ。
彼女があのどうしようもなく日本人ばなれした容姿を持っているからこそ、最後に舞子というキャラクターが選びとる道に、セリフで説明する以上の強い説得力が生まれるんじゃないかなと私は思うんですね。
* 1幕の最初ではヤクザに凄まれてガタガタ震えて「俊ちゃ〜ん!」って怯えてた舞子ちゃんが、2幕で実際に俊太郎さんに置いていかれてみて、イザとなったらしれっと「誰のことですか?」「あの人にはマネージャーをやめてもらいました」と知らん顔して言いぬけることが出来てしまった。 あの時の、怖くて蒼白になりながらもとっさの機転でハッタリかましちゃった、そんな自分に自分でびっくりして混乱してる、みたいな何とも言えない複雑な雰囲気が良かったです。その後俊太郎さんが残して行った煙草とライターをそっと手にとって胸に抱くんですが、その仕草が、ああもう本当は彼女はただ心細いだけじゃなくなっちゃったんだなあ、って感じがして。
* 「いろいろ、話してくれて、ありがとう」と舞子ちゃんが琴子さんにお礼を言ってぺこりと頭を下げる仕草が好き。 私は、チャーちゃん(の演じる役)が、年上の女の人とからむのが好きなんですわ。「レディ・ゾロ」でも、ジェシカ様とちょっとだけからむ舞踏会のシーンが大好きだったし。だからここも好き。
* そしてそして、舞子ちゃんが最後の最後に花道で振り返って俊太郎さんに手を振るんですが、その時の、そろそろと右手を上げる仕草、これがまた何ともいえず切なくて、良かったです。
手のひらをね、ぱっとは上げないんですよ。そーっと上げるの。なんだか、「あ、あたし今、バイバイしようとしてるんだー…」って自分自身でその瞬間・瞬間、思いながら手のひらが上がっていく、みたいなそんな感じが、そのほっそりした姿とあいまって、なんとも切なくて。 その、自分の気持ちとはぽかんと離れた感じでそれでも身体は動いていってしまう感じ、「ああ、今、終わっちゃうんだ」って他人事みたいに思えてしまう、そんな別れの場面の切なさが、舞子ちゃんのその背中や細い腕やちっちゃい手のひらから、ほろほろほろほろこぼれていくみたいで。
そして手を振る。子供みたいに、ひらひらひらって。そしてくるりと踵を返して、ひとりで、いっしんに駆けていく。
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その他いろいろ思うことは多々ありましたが、なんせ長くなるのでそれはまた後日。 舞子ちゃんのことを中心に思い出ししてたら、なぜか「夢の途中」ってあの歌が頭の中を回ってしまいましたですよ。照れますね。
♪ スーツケースいっぱいに つめこんだ 希望という名の 重い荷物を 君は軽々と きっと持ち上げて 笑顔見せるだろう ♪
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