かっしーのつぶやき
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| 2003年02月23日(日) |
レディ・ゾロ観戦記 6 誰がために |
いよいよ東京公演も最終回…じゃなくて、千秋楽です。以下今までで最長の観戦記、ネタバレ大いに注意のこと。
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* 音楽をきちんと学んだことのない私には、正直なところ歌というものの技術的な部分はわかりません。ただ私が感じることができるのは、自分にとって気持ちの良い歌を聴いていると、ただ聴いているだけでその歌の「情景」みたいなものが頭に描き出されるということ。よい歌、気持ちの良い声音は、筆の代わりに音で、私の頭の中に直接、絵を描きこんでくる。ジェシカ様の歌声は、私にとってそういうものでした。
そのジェシカ様の、本日千秋楽での独唱を目をつぶって聴いていたら、私の頭の中に、渺茫とした乾いた風景の中でただ独りきりで立ちつくしているジェシカ様の映像がありありと浮かんできて驚きました。そしてそのジェシカ様の心象風景の中の風や光までがリアルに肌に感じられるような気がしてきて、「ルドルフさんと別れてから、ジェシカ様の心はずっとこんな所に居たんだ」と思ったらもうだめでした、あとからあとから涙が溢れて止まりませんでした。
2/18の日記に「タニアはどんな思いを抱いて、どんな目をして船に乗ってきたんだろう」と書きましたが、今日のジェシカ様の歌を聴いて、ジェシカ様もまた同じなんだと卒然と思い至りました。彼女もまたタニアと同じく、言葉に出来ない苦しい思いを抱えて、長い年月ただひとりの人を思いつづけながら必死で生きてきた人なんだと。 「あなたがスペイン総督の妻だということを忘れてはいけない」とルドルフさんに言われて、ジェシカ様がふと口調を変えて歌うように言う「忘れたことなんかないわ一時だって」という言葉、それはタニアがルドルフさんに斬りかかりながら歌う「16年間忘れたことはない/父を斬り伏せたお前のその顔を」という言葉と、どこかで対になっているんだと。
…って考えたら、その立場の違う二人の思いを両方とも自分の胸ひとつに受けとめて、それでも情に流されず強靭な精神力でもって明晰に頭脳を働かせ続けるルドルフさんて、本当に強くてかっこいい、本当のヒーローなんだなあとつくづく思いました。 そして在りし日のドン・ディエゴ・ヴェガが彼をこそゾロの跡継にと考えたその目もまた、本当に正しかったんだと。
* 終盤、焼け落ちるヴェガ邸の中で対峙するレイモンドとタニア。 レイモンドの「ヴェガ家の痕跡をこの世から完全に消し去ってやる」という言葉を聞いたときの、タニアの目が凄まじかった。 その瞬間、タニアの眉間でバシッ!と火花が散って、その両の目から黒い炎を噴いたのが確かに見えた。あれは、そういう意味の目だった。あのときタニアの中で、何かが決断されたんだってことが、よくわかった。
その決断とは何か、を語るには私の言葉はあまりにも未熟な気がするのでここでは語らない。
* 最後の決闘の場面。スタントさんに代わってからも涙が止まらない。あの音楽が、炎の音が、胸に迫って苦しい。
何でなんだろうと、ずっと考えてた。あれだけ匠ひびきの身体を見続けてきた筈の私の目が、最初はスタントをまったく見ぬけなかった。当初、それは単に私がマヌケで、あの前所属劇団の経営方針に毒されていたからだと単純に思っていたけど、でも、それだったらどうしてあれがスタントさんだと判って見ている筈の今でもこんなにも涙が溢れてくるんだろうと、その後もそれがずっと不思議だった。
今日、千秋楽、あの段上で闘う二人を見ていてやっぱり苦しいほど泣きながら、なんとなく解った気がしました。 ああ、それもこれもみんなこのスタントさん達が、真の意味で「プロ」だからなんだ、と。
彼らはただ単にアクションをこなしているのでは決して、決してなくて、あの二人は今、草刈正雄が演じたレイモンド・トーラスという人物、匠ひびきが演じたタニア・ヴェガという人物を、見た目だけでなくそのキャラクターの心根までもその身体の動きひとつに映し込んで動いている。アクションに長けた人たちだからこそ、身体の動きによって何が表現できるのかを、アクションが作品自体の完成度をどれだけ高めることができるのかを、ほんとの意味で知って動いている。だから、その「作品」を観ている私の目にはそれはまったく本人---「レイモンド・トーラス」と「タニア・ヴェガ」だとしか思えないし、そしてたとえスタントだとわかったとしても、作品そのものから受ける感動は寸分も変わらないのだと。
ベルナルドさんの歌の言葉のとおり、「おのれの名誉のためでなく」、彼らは戦う。 煙が立ちこめて音楽が響いて、そして私の目にはそこに、あの端正な顔を歪ませて怨念を迸らせるレイモンドの姿が見える。ボロボロになって血を流しながらそれでも父の形見の短剣を手に執るタニアが見える。あの時、黒い炎を噴いたあの目が、今こそ何かを断ち切ろうとして、敵の懐に飛び込んでいくのが見える。
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…上手く言えなくてなんだかナサケナイ。
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カーテンコールは何度も何度も続いて、最後はスタンディングオベーションになりました。 幕が降りてしまうのが、今まで眼前で展開していたあの作品世界が閉じてしまうのがもう惜しくて惜しくて、観客それぞれが必死に拍手して、何度も登場人物たちを呼び戻しては終幕を引きとめる、あの熱狂、あの昂揚感。久しぶりに味わいました。頭上に手を挙げてばんばんカーテンコールの拍手しながら、「うわー、今、舞台観てるーっ!」って、ものすごく熱い気分になって、これまた涙が止まりませんでした。
そして本当の本当にもう幕が閉じてしまった後、ざわざわと帰り支度をする客席の中で茫然としながら「あああ、ほんとに終わっちゃったよう…」と半泣きになっていたら、そんな私の肩をポンと叩きtimutaさんが冗談顔で、「泣くな、レディ・ゾロは今でもキミの心の中にいる」などと言いやがるので危うくマジ泣きになるところでした。
「音楽活劇 レディ・ゾロ」。いい舞台でした。大好きな作品です。墓まで持って行きます。
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