佐山葉月の日記
うかうか一年。地味でぽやんとした趣味の毎日。

2003年03月30日(日) お題もうひとつ。

いい天気でしたけれど、薄着過ぎたらしくてちょっと風邪気味です。
季節の変わり目ですからね…皆さんも御自愛ください。


今日は野暮用が多く、色々と出掛けておりました。
表参道など行って、延々と伸びる人込みに恐怖してとっとと用を済ませましたが。




えー、反響はないんですが(苦笑)また100のお題を書いてみました。
今回はプラです。王道(?)なのに書いたことのなかった組み合わせ、
竜太朗&明です。プラだからノーマル小説。
(基本的にプラでCP書けないからな…)



参考:http://plaza22.mbn.or.jp/~SignF/
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003:荒野(竜太朗+明)


 ふとパソコンの画面から顔を上げた明は、いるものと思っていた竜太朗の姿が見当たらないことに気付いた。
「…れ?太朗は?」
 数分前まで近くでへらへらと他愛のない話をしていたはずだった。自分のやったパソコンはちゃんと使えてるのか、と聞かれてもごもごとはっきりしない返事をする彼に苦笑して、画面でレクチャーでもしてやろうと電源を入れ――顔を上げたら、もういなかった。
「リーダー、竜太朗はどこ行ったんだ?」
「さあ?ふらーっと出てったけど」
 一瞬だけ読んでいた雑誌から目を上げた正は、小首を傾げてすぐまた雑誌に視線を戻した。ふうん、と呟いた明はさして気にするでもなく、そのままパソコンから離れて煙草に火をつける。
 珍しくないことだ。奴が、こうやってふらりと一人でどこかに消えて、やがてまたふらりと戻って来ることなど。



「―――あれ、皆揃ってるの?」
 しばらくして、遅れる、と連絡を入れていた啓史が姿を現した。すいません遅れて、と荷物を置きながら、それでもやや不思議そうな顔をする。
「おはよブッチ。どした?」
「ん、いや、さっき踊り場のとこでさ、竜太朗くんがいて。ぼーっと煙草ふかしてたから、まだ皆揃ってなくて待ちなのかなーって思ったんだけど」
「いや、お前待ちだから今は」
「あ、やっぱり?」
 悪びれなく笑った啓史は、一旦近くの椅子に座って煙草を取り出したものの、しかしやはり少々気詰まりに感じたのだろう。だったら呼んで来ようか、と言った。
「俺来たし始めるよーって」
「何だ、やけにしおらしい。――いいよ、俺が行くわ」
「え、本当?なかちゃんこそ何でわざわざ」
 立ち上がった明を、啓史がきょとんとしたように見上げる。別に、と応えた明は、それが答えになってないことは自覚しつつも言い訳じみたことも言えなかった。
 ……何を言っても言い訳になってしまうような、気もした。
「…話の途中で消えやがって、どこ行ったんだって思ってたの」
 結局言った言葉はやっぱり言い訳のように感じられて。部屋を出るとき視界の隅に入った正が、笑いを噛み殺していたのも悔しくて無視した。



 教えられた踊り場は、控え室からやや遠く、見えにくいところにあった。入り口を間違えた啓史が階下から見上げて、偶然発見したような、薄暗い場所。小さな窓が開いていて、竜太朗はそこから半身を出すように、ぼんやりと外に煙りを吐き出していた。
 やや上の階よりその姿を見つけた明は、しかしそのまま近付くのを躊躇った。――――ぼんやりと半身を浮かせた姿は、彼の吐き出す煙のようにゆらめき立つようにどこか存在感に欠けて、風景の一部だった。
 時々、明は竜太朗のこんな姿を見る。その度に、彼は荒野にいると感じる。
 それは下らない話をして笑い合っていた次の瞬間にでも、仕事の合間のふとした時にでも、急に見せる姿で、その姿はひどく頼りなくて、しかし美しくもあって、結局明は何も出来ない。ただ、荒野に立つ彼の姿を見つめるだけで。
「…あ、明?」
 ゆっくりと近付くと、気配に気付いた竜太朗が振り返り、明の姿を認めて笑った。
「ブッチ来たぜ。何やってんだよお前」
「…別に。外、見てた。いい天気だね」
 視線を外に戻した竜太朗を見て、ああ、まだそこにいるのだ、と思った。竜太朗の瞳は半分どこか遠くを見ていて、それは彼の立つ荒野を見据える色を―――たとえば絶望と切望がないまぜになったような、決心と揺らぎが同居したような―――そんな色をしていた。
 明は一瞬その瞳に魅せられたように息を呑み、そしてゆっくりと息を吐いて、言った。
「…早く、戻って来いよ」
 振り返った竜太朗は、ひどく眩しそうな笑顔で頷いた。そして窓から身体を離す。



 仕方がない、と思った。自分にできることは何もない。理解することも、支えてやることもきっと、できない。
 だからせめて、呼び戻してやろう。その景色から、何度でも。
「お前、ほんっとふらふらどこ行くか解んねえ」
「そんなことないじゃん」
 へら、と笑って横を歩く竜太朗はもう揺らいではおらず、その存在は確かだと思った。そして自分はずっと進むのだろう。



 荒野をゆく君とともに。


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うーむ。ぼんやりした話になったなあ…
テーマとしては面白いので、もっと掘り下げたかったかも。


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佐山葉月 [MAIL]