rioshimanの日記
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中国の反日デモ、尼崎でのJR福知山線脱線事故など、このところ良くないニュースが流れ、暗い気分が続いている。その中で気になっていた日本橋三越での「三岸節子展」を見に行く。

三岸節子は私の好きな画家である。もう15年ぐらい前だろうか、油絵を始めて間もなく絵の先生に勧められて鎌倉近代美術館に彼女の大々的な回顧展を見に行った。その時に展覧会パンフレットを買って来たのだが、あまりに何度も何度も頁をめくるので、その冊子はバラバラに解体してしまって今は本の原型を留めていない。それほど彼女のように絵を描きたいという要求が強いのだが、特にヴェネツィアを描いたものはとても魅力的で絵を描く人にとってはたまらない作品だろう。 彼女の他の絵画集やエッセー等も出版されたものは全て読んで来たし、その時の印象があまりに強烈だったので、今回は又見に行ったとしても…と会場に足を運ぶのを躊躇していた。が、やはりどこか気になっていて気分転換にも出かけることにした。
三越日本橋本店は新館が出来てますます立派になった。一階には日本の情緒を感じさせる立派なショーウィンドも堂に入ったもの、この不景気な時期でもお金を掛けている。ここだけは別世界なのだ。
三岸節子展は新館7階ギャラリー。絵は暗い部屋の黒パネル上に重厚な額に入ってきちんと飾り付けられ頓挫していた。これは三岸節子の感じではないな、とすぐに感じた。以前の鎌倉で見た時の、光が自由に当たっていて粗野とも思えるような展示方法が彼女の開放的なイメージの絵に趣きを与えマッチしていたと思う。そうして彼女の描いた風景画がぐいぐいとこちらに伝わって来た。外からの明るい光がいい具合に展示部屋にも入っていたようだった。そして周りを緑の木立に囲まれた自然的な立地場所が。 今度の三越は東京都心のど真ん中、その様な雰囲気の全くない人工的な入れ物。
彼女もこうして伝説の一人になって行くのだなぁと思った。
ただ、彼女が63才になって初めてフランスに住み、絵画に全身の情熱をぶつけたというのが羨ましかった。隣で見ていた中年女性もそんな会話を友人と交してしていた。わたしも外国に住んで絵を描いてみたい衝動にかられている自分を感じていた。
彼女の今回の作品中、シチリア・タオルミーナ古代劇場を描いた大きな作品の赤色がとても印象的だった。私がタオルミーナを訪れ、この劇場に立ったあの時から、どれくらいの時間が私の中を流れ去って行っただろうか。
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