rioshimanの日記
DiaryINDEX|過日|NEXT
昨年のギリシア旅行から帰って以来、関連本の読書が加速している。特に私の好きな国イタリア、ギリシア、スペイン、ポルトガル物に集中しているが、それに今迄全く興味のなかったとも言えるビザンティン美術等も加わって来た。
ギリシア本については出発前に出来るだけ読んで出かけたのだが、何せ初めて訪れる土地ばかり。頭に描くのは空想の世界でしかありえなかったのだが、帰国して同じ本を再び読み返してみると今度は現実の世界としてズンズンと頭の中に入って来る。土地名が出てくれば地図が浮かび、訪れた場所は風景が目の前に浮かんで来る。
その中で川政祥子著「ギリシア・愛と詩の島」を再び読み返していた時のこと。
今度のギリシア旅中で私が強く印象に残ったのは「レスヴォス島」、その中でも「モリヴォス」と「シグリ」という二つの土地が特に心に留まっている。特に「モリヴォス」はこの島中で重要な位置を占めているらしく、この本でも全頁の半分ぐらいを割いて話の舞台として出て来ている。 私はここモリヴォスには6日間宿を取り丁度1週間を過ごしたのだが、この本を読んでいてアッと思い当たることがあった。
私が泊まっていたのは貸ROOMだったので食事は外ですることになるが、観光客たちは勿論美味しい食事も旅の楽しみなのでこの町でもレストランの数は不自由することはない。観光客が通る道の両脇にはテーブル・椅子を店頭にずらっと列べ、食事客を一人でも引き込もうと全ての店は精一杯の努力をしている。モリヴォスはまた世界的会議の会場としても使われている場所である。
この町に到着して二日目だったと思う。港でスケッチを終えて宿に引き返す途中のこと、海に沿って一本のメイン道路が通っているのだが、その道から宿に向かって斜めに登ろうとする坂道に目ぼしいレストランがあった。店の名は「ベティのレストラン」その英名はこのギリシアではちょっと違和感があった。面に出ているメニューもギリシア料理なんかではなくイタリアやフランス料理名も明らかに含まれている。それらを興味を持って眺めていると中から声が掛かった。女店主である。
彼女の客への誘いはとても巧みだった。非常に慣れていた。私がギリシア人に抱いているイメージからは遠く離れた、パリやローマなど都会に住む人が持ち合わしている洗練されたセンスが見られた。 こちらに勧める料理も相手の気を引くような説明でとても美味しく思える。その沢山ある料理から手頃なものを3品ぐらい注文したのだが味も確かなものだった。
その時の会話で私が日本人だと分かると彼女は言った。「私も日本人の友達がいるのよ!」 めったに日本人なんか来ないようなこの島で、私はマサか、冗談だろうと半分半疑で信じられなく、うなずくだけで言葉をそのまま流してしまった。彼女の友人は神戸に住んでいると言ったような気がする。また日本は広いからなぁと頭に地図を思い描き、今は首都圏に住んでいる私はそのままに話は発展して行かなかった。 レストランの二階部分は海が真っ正面に見える絶好の貸ルームになっていて(外面はエンジ色に塗られ女性向きに思えた)、その部屋の停泊も勧められたような気がする。
ところが上記「ギリシア・愛と詩の島」を読み返しているとモリヴォスが登場し、その中に「ベティのレストラン」も出て来たのである。 本の内容は彼女の祖父がモリヴォスに移り住んでレストランを開いた頃からの歴史も併せ筆記され、著者がギリシアを訪れた時には必ずモリヴォスのこの友人に会いに行くという様子が数頁にわたって面白く描かれている。
|