シャドーボクサー - 2003年02月25日(火) 昨日は指導員のバイトの日。 日曜日の夜、次の日が週のスタートということもあってか、 客は少なめであった。 遅番で入ったもののまったく暇。 「ほわぁ〜〜、、何しよっかな〜〜・・」などと、受付であくびの一つや二つ、 三つも四つもしていると、あと30分程で閉める時間になる夜7時半頃、 一人の女性がフラ〜〜〜〜〜〜〜〜〜リやって来た。 胸のあたりまである長い黒髪には艶がなく、青白い顔には化粧もしてない。 背が高い上に痩せているから、”フラ〜〜リ”やって来たその姿は、 「何気なく立ち寄った」というよりは、「私、倒れそうでして・・」と いった感じだ。 私が彼女と会ったのは、これで2回目。 わがままな人々も多くやって来る中で、うるさいことも言わない、 質問もしない”良い客”である。 会員名簿に名前、年齢などをササっと記入し、パソコンの番号札を 渡そうとすると小声で彼女が言う。 「あのぉ〜・・・・・・・今日は・・・・印刷・・・・したいんです・・」 うちは、印刷する際に申告してもらうことになっているので、 「ハイ!印刷するときは言ってくださいね!」と元気いっぱい 笑顔で答えると、彼女は長い髪をサワ〜っと揺らし、 無言で首をコクリとさせるのみで、必要以上に力んだ私の声だけが、 フロアーに響くのであった。 そして、それから10分後。 「あのぉ・・・・・印刷・・・お願いします・・・・・・・」 声をかけられ、「はいはい」とプリンターの準備をしに彼女のもとへ 行った私が見たもの。 それは、パソコンディスプレイいっぱいのジョー。 色鉛筆で書き殴った青空のような背景に、ファイテイングポーズをとるジョー。 「あしたのジョー」の姿である。 こんな、格闘技とは縁もゆかりもまったくないような ひ弱そうに見える人がジョー。 まったくビックリしたジョ〜〜〜。 ・・・なんちゃって。 動くプリンターの音を聞きながら、そういえば・・・と私は思いだした。 「この前も彼女はジョーを見ていた。で、ジョーの雄姿を印刷していた」と。 夜8時。そろそろ閉めますという私のかけ声で彼女はフラ〜〜っと立ちあがった。 印刷したジョーを一枚持って。 彼女は30代半ば。 寒い夜に・・・・ 一人の中年の女性が・・・・・ 地味なこの場所へやってきて・・・ 架空のヒーロー、ジョーを慕う・・・・・ いったい何故・・?何を思って・・? 使用量100円を払って立ち去るその後ろ姿を見送りながら、 私は歌うのだった。 ♪明日はぁ〜〜〜〜どぉおっちだぁ〜〜〜〜〜〜〜♪・・と。 おしまい。 ...
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