無責任。 - 2003年02月14日(金) 午後2時半。秋○原のベッ○ーズは今日も遅めに昼食を とろうとする人でいっぱいであった。 ベーコンエッグクロワッサンとホットコーヒーを受け取り、 カウンターにひとつだけ空いていた席に腰を落ち着け、なにげ なく右隣に目をやると、そこには非常に不可思議な男女が2人座っていた。 男の方は年の頃なら20歳前後。やせ形、マジメ、オタク、オドオド、 といった感じの青年で、女の方は「おまえら何処で知り合った?」 と聞きたくなるような明らかに男とは別世界の住人であった。 「ここが目!」「ここが眉!」「ここが口!」と、白く塗り固められた 顔の上で、それぞれのパーツがお互いに気を使うことなく主張しまくる 化粧の派手さは「ママ〜今日の分、ツケといて〜〜〜!」と、 私の頭に何の意味もなく、”スナック「さくら」”という言葉を 浮かびあがらせるほどだ。 香水もきつかった。 もの凄い勢いで臭ってくる。 まるで点け始めた石油ファンヒーターのようで、 そのレベル設定は”強”並み。 「飲食店では”弱”にね!」がマナーである。 いったいどういう関係なのか?と隣りの会話に耳を傾ける。 どうやら話題は男の大学生活についてらしい。 そして”さくらのママ”は男が話すことにいちいち頷いて相づちを打ち、 何故か手元のノートにメモを取っている。 ノートに並ぶのは短い単語ばかり、男の話の中で彼女にとって大切!と思われる キーワードを拾い、書きとめているようでもあった。 男は学生生活のこと、試験のことを真っ正面だけを見てボソボソと、 しかし途切れることなく話し、”スナックさくらのママ”は 「それは凄いわ〜」「さすがだわ〜〜」「大丈夫よ〜」 などと、彼を励ましたりしている。 話を横で聞いてるうち、私の頭の中では次第に 「地方から出てきて、今だ東京の生活に馴染めない孤独な青年が、 街で何らかの目的で近寄ってきたオバサンに、その淋しさをつい話して しまっている」というストーリーが出来上がってしまっていた。 そう、彼女には絶対に下心があるに違いなかった。 だって、変である。会話の様子から見て親しい感じでもない2人が、 こんなファーストフードのカウンターで「青春お悩み相談室」なんて。 男の話の中から何を探ろうとしているのか? メモったキーワードは何に利用しようとしているのか? 何かを売りつけるつもりなのか? または、何かの団体への勧誘なのか? そういえば、私は予備校時代の男友達Mから上京したばかりのある日、 街で見ず知らずの女性から優しく声を掛けられ、うっかりついて行ったら 変な家に連れていかれ、気がつけば裸になって水風呂に浸かっていた・・ それは新興宗教絡みだった・・・という恐ろしい話を聞いたことがある。 これは、同じ地方出身者としては、黙ってはいられない。 私は彼を勝手に「地方出身者である」と決めつけた上で、 ”いよいよ”の時は助けてあげようと言う気にまでなっていた。 いつ出るか・・いつその時が来るか・・・と待って待って20分。 ふと時計を見ると、時間はすでに2時55分。 「いっけね〜〜、、三鷹で待ち合わせがあったんだ」 私は急いで席を立った。 彼の無事を祈る。 おしまい。 ...
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