落ち葉を拾っておやじに会って。 - 2002年11月11日(月) 今日は私の落ち葉収集日であった。 道の端に吹き溜まった赤や黄色に色づいた 落ち葉を黙々と拾うのだ。しかも、たった一人で。 暗っ! 何の為に?そういう声が聞こえてきそうなので説明しておく。 拾った落ち葉は、押し葉にしておいて、母の日やら、父の日やら、 ちょっとしたご挨拶などの、いわゆる”グリーティングカード”を作る時、 切ったり貼ったり塗ったりして使うのである。 拾った落ち葉の色や柄によってカードの出来は左右される、もっと言えば、 私のセンスが問われる!といっても過言ではないので、 一見、ふら〜〜と何の考えもなしに拾ってるように見えても、 実は一枚一枚を「使い物になるだろうか?」と、 厳しい職人気質な目で見極めているのである。 そう、真剣勝負。 どのくら気合い入れてるかというと、 日銭目当ての風来坊ふうの怪しいおじさんが、資源ゴミ置き場 に捨ててあるアルミル缶を、その日の引き取り値を考えつつ 拾うぐらい、の真剣さ。(分かり難い。) で、そんな調子で今回も家の近所を捜索していたわけだが、 自転車を引きながらひたすら下を見続け、道の端を歩く私の姿が、 よほど「この寒空にガックリうなだれる何かあった中年女」に見えるのか、 通り掛かる人々の視線がやけにジロジロと冷たい。 元気に拾っていても、北風ピューピューの中でそんな人々の反応をみると、 本当にしょぼくれ気分になるから不思議だ。 仕方ない。いい仕事をする時には、いつも孤独感が付きまとうものだ。 他人の目にも負けず、探しては拾い、拾っては探すを繰り返し、 30分ほど経った時、後ろで「50万円融資可!」の看板を 電柱に取り付ける作業をしていた一人のおやじが突然私に声を掛てきた。 そして、 「向こうのガード下を右に曲がったところがいいよ。 色とりどりで綺麗なもんだよ」 と教えてくれるのであった。 おやじによると、そこにはツタが枝を縦横無尽に這わせている塀があり、 たくさんの葉が美しく紅葉しているので、集めるにはもってこいの場所! なのだそうだ。 彼は50歳ぐらい。痩せ細った体にどす黒い顔をし、 ペラペラの薄手の黒いジャンパーがいっそう私に暗い印象を与えた。 「色とりどりのツタ」・・おやじの口から出たその言葉は、 彼がメルヘン路線だということをうっすら臭わせるが、 なんたって手には「50万円融資可!」である。 その看板に、どうしてもおやじが足を突っ込んでいるであろう闇の世界を 見てしまう。 教えてくれたことに感謝しながらも戸惑っていると、なんとおやじは、 「ほらほら、こっち」と言って、自分の自転車を漕ぎだし、私をその場所へと いざない始めてしまったのである。 そこまでしていただいては変に迷ってるのも何だと思い、仕方なく私も自転車で 着いてゆくことに。 軽快に走ってゆくおやじの後ろ姿を見つめながら、 「これは女性を狙う何かの罠ではなかろうか?」とか、 「着いたら、人気のない所で、仲間とか待っていてそのまま車に乗せられ 売り飛ばされたらどうしよう・・」等と考えてしまったのは、 今だ自分を高く見積もり過ぎているとしか言いようがない。 しかし、そんな私の心配をよそに、おやじはガード下の当たりの道の 分岐点まで来ると「ここ入って行くとすぐだから」と言い残し、 さっさと行ってしまったのであった。 色とりどりって・・今まで見たこともないような色もあるのか・・? 学会に発表できるぐらいなモンなのか!? 期待感で最近縮んだ胸を膨らませながら、どんどん自転車を進めていくが、 色を散りばめたツタの紅葉なんて、ぜんぜん見当たらない。 やはり、何かの罠か?と思いかけた時、 私は申し訳なさそげに這っている4本ほどのツタのつるを見つけた。 う〜〜ん、確かにツタ。確かに紅葉・・。 それはあまりにもしょぼい光景であった。 だって、葉は赤く色づいたものしかない。 色とりどりなんて、、、おやじ、疲れて目がチカチカしてただけじゃないのか!? しかも、落葉はまだみたいで、周辺には葉がほとんど落ちてない。 植物だって命あるもの。むしり取ってまで持って帰ろうとは思わない。 何だよ〜〜、、ダメじゃん、、、。悲しく引き返す他すべがなかった。 が、帰り道、私は自転車を漕ぎながら考えた。 冷たい目で通り過ぎて行った人が多い中、 私が落ち葉を拾う姿を、 あたたかい目で私を見てくれていたであろう、おやじ・・・・・・・。 そして・・ 声を掛けてくれた、おやじ・・・・・・・・・・・・・・・・・。 私をメルヘンの世界へといざなおうとしてくれた、おやじ・・・・・・。 なんて、素晴らしい、おやじ・・・・・・・・・・・・・・・・・。 もう2度と会うことも、いや、何故か会いたくないが、 私は心で呟いた。 ありがとよ・・・・・・・おやじ・・・・・・・・・・・・と・・・・・。 おしまい。 ...
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