台所のすみっちょ...風子

 

 

満腹パラダイス - 2002年10月11日(金)

月曜日の夜10時、旦那が3泊4日の出張からやっと帰ってきた。

久しぶりに会ったので、改めて「モアイ像にソックリだ」と、

迎える笑顔の下でこっそりと再発見してみたりする。


で、4日ぶりに帰って来た旦那が荷物を置くのもそこそこに、

体温計を脇の下のちょこんと入れて、熱を測り始めた。

顔色も悪く、咳も出る。

熱はなんとなんと39度であった。

普通に考えれば、休みもなく九州に飛んだのだから、

”体がお疲れで風邪引いたのね”ということだ。

だが、私は気がついていた。

この熱が実は「満腹熱」だということを。



「満腹熱」というのは、

食いしん坊な野郎が、大量に見境なく食事を

することによって出る熱のこと。

もしくは、めったに口にしない高級な物を

たらふく食べた場合に出る熱。

前者は、

消化時に胃が活動するも、入ってる量が多過ぎて、

オーバーヒートをした為に出てしまい、

そして後者は高級な食い物に対する免疫不足で、

異物大量に入りました〜、やっつけまぁ〜す!”と

体が戦う過程で出るのである。


ホントかよ。


そもそも、私が彼のその”満腹パラダイス”加減を知ったのは、

出張3日目の夜、彼が携帯で博多の街からかけてきた一本の

電話によってであった。

彼は佐賀に叔母さんが、博多には友人がいる。

聞けば、一日目の夜は友人のおごりで

蟹三昧(蟹雑炊付き)のコース。

2日目の夜は叔母さんのおごりで佐賀の海の幸を

たらふく食らい、3日目の昼はこれまた叔母さん持ちで鰻丼の特上、

そして特筆すべきは、私にそうやって電話を入れる直前まで、

友人のおごりで、寿司を食い放題していたということ。

回転寿司ではない、白い板前帽をかぶった職人さんが

にぎにぎしてくれる店だ。

上質なトロやウニが彼の思うまま。


どういう事なのか!?

これでは、出張という名の

「九州の秋を食らう!魅惑の佐賀、福岡グルメツアー!」

ではないのか!?

博多の街をかっ歩しながら、私に延々と語られる満腹話。

それを延々と聞かされる微熱持ちの私。

その上、途中でラーメンの店を見つけた彼は

「おっ!博多ラーメンの店だ!ホラ、店のテーマソング、聞こえる〜?

俺、最後にこれ食って帰るわ〜、じゃあね〜〜」

と電話をプツリ。

確かに受話器の向こうでは、

”博多オ〜ジャンオ〜ジャンジャン!!””博多オ〜ジャンオ〜ジャンジャ

ン!!”

と、ただオ〜ジャンジャンというフレーズを

繰り返すだけの曲が流れていた。

その不思議な音色に心惹かれるのも分からんわけではない。

だが、

まだ食うか。


私と電話している最中もヤツは

「もっと食いたい・・もっと食いたい・・」と、

視角と臭覚を研ぎ澄ましていたに違いない。



布団の中で辛そうにしている彼。

それは食の桃源郷を楽しみ過ぎた男の悲しい結末であった。


恐ろしや、「満腹パラダイス」


                おしまい。



...




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