今日もガサゴソ
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昨日書いたおもちゃのティーセットの思い出が もうひとつあります。
私が学生の頃、夏休みに従姉妹のカヨちゃんが遊びに来ました。 カヨちゃんは母の弟の子で4歳でした。 この子は、私が四五歳のころと生き写しというくらい似ていて、 私の両親はもう夢中で可愛がるのでした。
カヨちゃんも4歳になったし、どれ、そろそろ良い頃かなと あのティーセットを出してきて久しぶりのお茶会を開きました。 夏だったし、七輪は家庭から姿を消して ホットプレートなるものが活躍します。
子どもの手のひらに丁度おさまるお皿やお茶碗が カヨちゃんには驚きだったらしく それはそれはうやうやしくティーセットを扱い 大人達にホットケーキや紅茶を配ります。 カヨちゃんは興奮して上気していました。
どうしてこんなおもちゃがあるの? これはほんもののおもちゃなのね
ほんもののおもちゃ、という響きの心地よさよ。 お茶会が終わって、食器を洗って片付けるところまでが お遊びなのだけれど カヨちゃんは四歳にして凄い理屈をこね始めました。
おもちゃは子供のもので、 お姉ちゃんにはもう必要ないのではないか。 こんなおもちゃは、カヨちゃんにこそ ふさわしいのではないか、 というのがカヨちゃんの弁で、これには参りました。 四歳にして、この説得力。 私の気持ちもグラグラ揺れるのだけれど でも、やっぱり、私には大切なおもちゃで これをホイとカヨちゃんに譲ることはできませんでした。
散々泣かれて、でも、いくら欲しくても 誰かのものをむやみに欲しがってはいけないことを 知らなくてはいけない年齢でもある気がして みんなで切ない思いを分かちあいました。
その後、カヨちゃんの両親や、私の両親や伯母が 方々探し回ったのですが 同じような瀬戸物のティーセットを見つけることができなくて みんなでモヤモヤとした気持ちを持てあましていました。
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その年の冬休みが始まる前日、教室の窓から見た吹雪は 凄まじいものでした。雪が水平に吹きつけているのです。 雪に強い東北本線も、これではあぶないかも知れない。 でも、荷物はまとまっているし、何とか帰省したいものだと 学校が引けた後、駅に向かいました。 仙台に帰省する子と、列車通学の同級生と一緒でした。 やはり、強風のため架線事故があって東北本線は停まっていて 復旧の見込みはたっていないということでした。 このままアパートに戻ろうかどうしようかと思っていたら、 列車通学の子の家の人が車で迎えに来てくれるというので 列車が復旧するまで、その子の家でお世話になることにしました。
何しろ吹雪で道路事情も悪いので 駅前でしばらく時間つぶしをしなくてはいけませんでした。 ふと思い立って、おもちゃ屋に入りました。 クリスマスだったので、大棚ざらえをしたのか 通路までオモチャで溢れていて、 その中に、すすけた箱の、でも、間違いなく ディズニーの絵柄のティーセットがあったのです。 値段のシールも判読が難しいのをよくよくみると 「1400円」とありました。 レジに持っていくと、店主が箱をせっせと拭いてくれて 拭いてもどうしても箱は日に焼けてすすけていまして 気の毒がって、千円にまけてくれました。 いいのよ、中身は瀬戸物なんだから。
その日から二晩、友人の家でさんざんご馳走になって やっと動いた列車で帰省しました。 ティーセットの発見は、大手柄と褒められて 今度は誰がカヨちゃんにそれを届けるかでもめにもめました。 だって、みんな、カヨちゃんが喜ぶところを見たいじゃない。
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結局、その冬は、豪雪のため 盛岡までそのオモチャを届けることはできなくて 翌年の5月に、両親と祖母と伯母が 4人で盛岡に出かけました。
カヨちゃんは、そのオモチャのことを忘れてはいず 他のおままごとを買ってあげようという 提案も拒んで、あのティーセットにこだわっていたそうです。
だから、それを受け取ったとき それはそれは驚いて、箱を開けることさえためらって のぞき込んではため息をついていたそうです。 お届け人たちが帰るときも 玄関までぴゅっと出てきて
かよちゃんはいそがしいので....
と、箱の方に吹っ飛んで行ったそうです。
それから何年も経ってから カヨちゃんの母親に、しみじみとお礼を言われました。 そして、カヨちゃんはあの瀬戸物を ひとつも壊さずに、大切に持っていると教えてもらいました。
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