今日もガサゴソ
INDEX戻る進む


2004年02月13日(金) 荒削りな椅子に座って

二十歳の頃
とにかく社会に出て自活して行かねばならなかったので
学校卒業と同時に
就職で上京しました。

工場勤務で
原料に起因する故障を封じ込めるために
どんな入荷時の受け入れ検査をすべきか
考案する仕事につきました。

研究所と現場との隙間で
ナイスな二人のおじさんと
それはそれは新鮮な日々でした。

でも、仕事や生活のリズムができてくると
自分がしたかったことは
ココにはないのだという
焦燥に苛まれることになりました。

素敵な人々がたくさんいる会社だったのですが
見えない檻に閉じこめられているようでした。

週末、私はオートバイで一人で
行動半径を広げるようになりました。

私のことをどうしてか気に入ってくれた
とある喫茶店のマスターが
様々な人たちに引き合わせてくれました。

俺の旅は終わったが、
これからあんたが旅をする
行く先が見つかるまで
俺が見たすべてのものを
見せてやりたいが、それは無理だ
黙って、そこに座っていろ
ここに来る
いろんな奴らに会わせてやる

十年お店に通った客とも
一言も口を利かないこともあるという
無口で通っているマスターが
本当に様々な出会いをくれました。

その店のカウンターの隅っこの
荒削りな椅子に
目で促された日だけ座っている

映像作家のタマゴ、売れない小説家
レーサー、一等航海士、グライダーの操縦士
評論家、新聞記者、陶芸家、
人形作家を目指している若い人
薬剤師、ドラマー、役人、役者
演劇では食えないからってお笑い芸人になった女の子
ギャンブラー、ヤクザのアニキ
道ばたで針金曲げて売っている人
オーストラリアをバイクでぐるっと回ってきた人
スピード狂、闘病中の人
浪人生活が長くてパチンコで食っている男の子...

実に様々なことをしている人たちと
隣り合わせて

自分のことばかり考えていました。

そこでであった幾人かとは
今でも交流があります。

あの店はもうなくなってしまったけれど
今でも私は
あの荒削りな丸太をナタで削ったような椅子に腰かけて
足をぶらぶらさせて

今朝、へんな夢みちゃったなんて

誰かを笑わせているような気がします。

私は毎日旅をしている、そう感じているうちは
私のなかのある季節は
終わらないのだと思うのです。


ふくろうボタン
MAIL