今日もガサゴソ
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父の実家のアンナさんは(父の長兄) 飄々として不思議な印象印象で、 厳しい無口な人かと思っていたら 実はそうではありませんでした。
アンナさんが話してくれることが 物語なのかテレビのドラマのことなのか本当のことなのか 良くわからないままに 引き込まれていました。
地震の後、物見高い者たちは港に出かけて行く。 波が押し寄せる前に 一度潮が引いてはるか沖の方まで海底が露わになるそうです。 そうなったら人々は 青ざめ黙々と山の方に逃げます。 わいわい港に向かった人々が黙って小走りに戻るときは 即座に逃げること、だそうです。 何ともないときは、みな声高に 「津波が来るぞ〜」などと大声を出す、というのです。
津波の第一波の破壊力はすさまじいものだそうです。 高波がどーんと押し寄せる津波も恐ろしいものですが ざわざわとくるぶし程の波が押し寄せる津波も相当なモノだそうです。 小さな地震のあとに 潮位が上昇する程度の津波を観測する場合がありますが、 人家に被害が出ないだけで、海底はめちゃめちゃに荒れるのだそうです。
そういう話をとても臨場感たっぷりに聞かせてくれたものでした。 そんなときに人がどんなに懸命に生き延びるか どんなに醜いことをしてしまうのか おかしなことをして命をおとしてしまうのかを 話してくれるのでした。
また、アンナさんは いつもぴかぴかの自転車で市場に買い出しに行っていました。 自転車の後ろの大きなかごから出てくる みずみずしい果物や木箱に入った海産物が楽しみでした。
むがし、アメリカ映画を見だれば、白黒だもな。 ウオーターメロンづ果物はうめそだな食ってみてなど思ってだのよ。 初めでこのウオーターメロンづもの食ったどぎは がっかりしてよ。 映画ではあんこが詰まったように見えだのよ。 食ったれば水ばりで、いやいやがっかりしたもな。
ある時は「猿の腰掛け」という大きなキノコを ごりごり刻んで煎じて飲んでいたり。 なにぶんにもガンにならないそうなんです。
縁側のアルマイトの洗面器には大きな黒い亀がいて ひなたぼっこをしていました。 もう20年も飼っているといいました。 無愛想なペットですが、アンナさんのもとに来たときと同じように どこかに家出してしまったようです。 短い間ですが 猿を飼っていたこともありました。 窓から飛び込んできたインコを 溺愛していたこともありました。 このインコもまたある日ふっと窓から逃げていきました。
アンナさんは若い頃、床屋の修行をしたそうです。 焼きごてを使ってパーマをかける腕を持っていたそうです。 戦後、自分の床屋を開業することはありませんでしたが いつもハサミはぎらぎらするほどに 手入れをしていました。
アンナさん、そろそろ九十歳になるはずですが 身のこなしも軽く、 自転車もハサミもピカピカで 刀剣類の研究などしているようです。
また面白い話を聞かせてもらいたいなといつも思います。 子供の頃 お盆にはアンナさんに手を引かれて お墓の掃除に行ったり迎え火を炊いたり 海の灯籠流しを見に行きました。
猿の腰掛けでもなんでもいいから飲んで 長生きして欲しいと思います。
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