朝早くに電話が鳴った
「今日の体育祭は決行です」 そうか・・・体育祭だったのか 自治会の役を受けているときは 参加していた それが苦ではなかった 行くつもりも無かったのに 「わかりました」と承諾する そして次の人へ・・・ 確認したとはいえ 行く気にはなれなかった この地に越してから そろそろ10年になると言うのに いつまでたっても よそ者と言う感じが抜けない 古い町ということもあって 地域の集まりと言うと 「若い者は誰だかわからない 知る者が少なくなってしまった」 と 必ず話題になる 近頃では マンションが建ち 畑を宅地にし よそから次々と越してくる人たち 以前は新しい者が来ると 「あの新しい家の・・・・さんね」 と すぐに覚えてもらえたらしい それも数が増えると もう覚えるどころか どこに家が建ったのかすら わからなくなったと言う
ここには 自治会があり 区に分かれ それがまた組み分れしている ご近所とのお付き合いが希薄になったといわれている時代に こんなに密接にお付き合いしているところも 珍しいのかもしれない 組内で 不幸があると 親戚と同様の席に着き 最期まで お供する つまり・・・それほどの付き合いと言うわけだろう 「あなたはいいのよ それほどお付き合いが無いから」 当初の私にとって この言葉は 気持ちを楽にさせてくれた そして今もなお変わらず 気遣いをしてくださるご近所に 10年たっても 仲間にはなれないのかという気持ちも生まれてくる 代々住み続け 後を取るものが地域を覚えていく 幼いころから知っているから 地域全体が家族みたいなもの 同居ではない私たちは 地域の人にとっても どう付き合っていいのかわからない存在なのだと思う
この時季になると 落ち葉を掃くために 長い時間 私が外に居ることになる 私はいつも忙しく飛び回っているものだから あまり私の姿を見かけることも無かったのだろう ご近所のお年寄りがやってきて 「時季になりましたね」 と 桜を見上げながら話しかけてくる 「ご迷惑をおかけします 行き届かないものですから」 普段手薄になってしまうことのお詫びもかねて のんびりした気持ちでお話をする
過日のスィートポテトのお礼にと おばあちゃんの手作りコロッケが届く 何でもおいしく作るおばあちゃん コロッケの味の 優しいこと・・・・ 気張らず できる範囲で 長い時間をかけて ここに馴染んでいこうと思う
あっち・・・こっち・・・・
「そのことなら みっちゃんに聞くといいよ」
「たかちゃんのとこは おばあちゃん大変だってねぇ」
「上から数えて 3件目がそうよ」
「私があきちゃんに言っとくよ」
いったいどこのみっちゃんが何を知っていて
たかちゃんのおばあちゃんがどうなって
上っていうのはどっちなの?
どこのあきちゃんに伝えてくれるの?
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