...ねね

 

 全てフィクションです

【DRESS】 - 2003年01月30日(木)

「ママ・・・遅いな」

テレビの中では勇者たちが緑のフィールドにぽつんと立ち尽くしている。
いつもなら長くファミコンで遊んでいれば
たちまち母がやって来て「目が悪くなる」と言ってスイッチを消される。
だけど今日は、文句を言ってくる人が誰も居ない。

一体何時間遊んでいたのか、部屋の中はすっかり暗くなっていた。

僕はお腹がすいて胃がキリキリと痛んだ。
ゲームの画面を切り替え、そこに現れた文字列をノートに書き写す。
当時のゲームソフトには「セーブ」という機能が無かったので
セーブデータを残すにはゲームのデータを表す
かなとアルファベットの文字列を書き写さないといけなかった。
僕は注意深く文字を間違えないようにノートをとると、
もう一度冷蔵庫を物色する事にした。

冷蔵庫には、豚の小間切れ、とうふ、キャベツ、しいたけ、
ニンジンとサトイモを茹でた物と納豆、アゲなど
そして味噌や調味料が入っていた。
やはり、すぐに食べられるような物は無い。

僕はとりあえずご飯を炊こうと思ったが、なにせ米も研いだ事も無い。
当時は男子は家庭科というものも無かったので包丁の使い方すら分からない。
それでも炊飯器から内釜を取り出し、そこに米を入れた。
そういえばこの前の技術の授業の後、
女子はご飯と味噌汁を作ったという事を思い出して
その時に見せてもらった家庭科の教科書の図解を一生懸命思い出しながら
水で流し、適当に手で揉み炊飯器をセットした。


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