...ねね

 

 全てフィクションです

【父との秘密】 - 2002年09月08日(日)

たすけて・・・

声にならない叫びを搾り出そうとあたしはもがく。
この騒ぎを聞きつければ弟が駆けつけてくるはず。
だがまだ帰って来ないのか救いの手がそこのドアを開ける事は無かった。
寝ているはずの母に助けを求めるしかない。

「ママ・・・ママ・・・」

みぞおちが痛い。
息が、苦しい。
もう駄目

そう思ったときにドアが開いた。
母が顔を覗かせた。

助かった!

そう思ったのもつかの間、一向に母は何も言わない。
ただ、父があたしを足蹴にしているのを見ているだけだ。
青白い顔をして、父のする事を黙って見ているだけだ。
あたしは絶望した。
この人は、結局父には逆らえないんだ。
歯向かう事も出来なければ、別れる事も出来ない。
あたしは・・・こんな人に助けを求めようとしたのか。


人間、土壇場ではすごい力が出ると言うが
その時のあたしもまさにそうだったのだろう。
いきなりあたしは起き上がって枕を掴み、振り回した。
声は出なかった。
涙も出なかった。
あたしは自分の身は自分で守らなければいけない事を一瞬で悟り
無表情のままとてつもない勢いで枕を振り回していた。

父は暴力的ではあったが、元々は小心者なのだろう。
弟に殴られた時も大人しかった。
今、あたしが暴れ出して
どうしていいのか分からない顔をしていた。
ただ、驚きの顔を向けながら、あたしのなすがままになっていた。


あたしはなんだか気分が良かった。



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