...ねね

 

 全てフィクションです

【父との秘密】長い夜 - 2002年07月24日(水)

「さっき、姉ちゃんの部屋から、叫び声が聞こえたんだ。
 なんかあったのかと思って、急いで部屋に行った。
 そしたら・・・パパが裸で・・・姉ちゃんを・・・」

言いかけて、母がそれをさえぎった。
「本当なの?お姉ちゃん」
「うん」
突然こちらを向いた母に驚いて下を向いた。母の顔は見られなかった。
うつむいて毛布に包まったまま、あたしは首を縦に振った。

あたしの体は震えていた。
母に何を言われるのかと、怖かった。
お前は嘘つきだと言われたらどうしよう。
そんな事あるはずがないと言われたらどうしよう。
母に見捨てられてしまったらどうしよう。

しかし母は、あたしにはそれ以上何も言わず
パパはどこにいるの?と弟の方に聞いた。

「2階。もしかしたら、まだ姉ちゃんの部屋にいるかも」
「そう」

弟と母は二人で階段を登って行った。
上で、母が父に呼びかけている。
父が返事をしているのかしていないのか、あたしには聞こえなかった。
それでも3部屋しかない2階では、すぐに父は居場所を見つけられてしまったようだった。

「お姉ちゃんを連れて部屋に行ってなさい」
と、母の言う声が聞こえた。
階段を下りる音がしてそちらを向くと、弟が顔を出していた。
「パパとママが話をするって。姉ちゃんの部屋にそのままいるみたいだから、
 俺の部屋に行こう」


これから、あたしの人生で一番長い、
長い、長い夜が始まる。



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