翠の日記

2004年08月11日(水) 小川洋子その後(単行本)

単行本を読んだ順に

『やさしい訴え』1996
 閉じた空間は別荘なので、珍しく不思議要素のない話。誰も悪い人がいない三角関係がもどかしくて、せつない話でした。
 失ったものの重さの違いが、薫さんに届かなかった理由かな。

『沈黙博物館』2000
 閉じた空間は国籍不明の町。固有名詞が出てこないので、童話のような印象もあります。殺人犯は意外でしたが、兄さんはたぶん…なんでしょうね。沈黙の修行僧に関する描写が、舞台をさらに現実から遠ざけてました。
 
『貴婦人Aの蘇生』2002
 Aの刺繍をする老婦人が出てくるので、『偶然の祝福』と同一人物かと思いましたが、瞳の色が違ったので別人でした。姪に感情移入しやすくて、読みやすかったです。とくに毛皮商人を訴えないあたりが。
 最後の記事に、貴婦人への思いが込められていて、毛皮商人は良い人になってしまったのが意外でした。

『ブラフマンの埋葬』2004
 ブラフマンが、謎の生物でした。単行本なのに、短編を読んだかのように、さっぱりしていました。これが洗練ということなのでしょうか? ひと夏の出来事としか言いようがありません。

『博士の愛した数式』2003
 作者の書く母子家庭の子どもは、本当に賢くて良い子です。『街』という作品集に収められている『ガイド』の子どももそうでしたが、母親を助けるために、早く大人になるんですね。でも、見かけは子どもですから。博士にとって子どもがとても愛すべき存在なのが、ひしひしと伝わってきました。
 途中どうなるのかと思う場面がありましたが、ラストが穏かで、ほっとしました。

 『博士〜』を最初に読んでいたら、他の話は読まなかったと思いますが、『博士〜』が読んでいて一番面白かったような気がします。
 好きな雰囲気の話(90年代発表の話)と、面白い話は別ですからね。


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