蛇腹食堂
書人*なび太

   

  




衝動買いは良くないので。
2004年02月23日(月)
メガネを買い替えることにした。

最近一段と視力が落ちたの気になっていたが、
何より、地元のメガネ屋さんが、
2月いっぱい決算セールということで、
普段お高いメガネもかなり安く買えるとのこと。

話は若干逸れるが、
実を言うと、我が親類一同はメガネ一族である。
祖母は老眼と近視。
父も老眼と近視。
母は老眼と近視、乱視。
僕は近視とド乱視。
ちなみに叔父は生粋のド近眼だし、
その息子である僕の従兄弟は、
三十路に入るや急激に視力が低下し…、
と、いちいち上げていたらキリがないくらい、
メガネっ子大集合なのだ。
祖父の法事などで集まった日には、
寺のお堂をメガネ族が埋め尽くす。
すさまじいメガネ密度だ。
どこを向いても、
ユラユラと揺れる蝋燭を映したメガネ、メガネ、メガネ…。
なかなかに荘厳な風景だ。
おまけに仏壇上で微笑む祖父の遺影にまでメガネ。
我が祖先のお目目に一体過去に何があったのだっ!?
と問い詰めたくなることもしばしばで…。

まぁ、そんな家族の小ネタはともかく。

そんなわけで、このセールを機に、
我が家のメガネは一新される運びとなったのだ。
父も母も真新しいメガネを掛けているのを見て、
僕が居ても立ってもいられなくなった、
という事実はひっそりと隠しておくとして、
僕はいそいそとそのメガネ屋に向った。

メガネ族の皆さんなら既にご存知かと思うが、
最近のメガネは猫も杓子も細身細身…と、
やたらと縦幅の狭い(細い)メガネが大流行。
これ、車運転する時にえらい不便なのである。
ほら、ちょっと斜め上見るとそこはレンズの外でしょ。
ルームミラーなんて見えやしない。
仕方なく顔ごとそちらに向けると、
折り良く前の車が急ブレーキ踏んだりして、
オカマ掘りそうになることも幾度か…。

今回は意を決して、
この細身メガネと決別すべく、
店員さんにその旨を伝えた。

そして店員さんが持ってきてくれたサンプル。

「コチラ、『紳士用』になってしまうのですが…」

それは確かに「紳士用」であった。
まさに見紛うことなき「紳士用」であった。
あの…。
これ、いわゆる「鼈甲メガネ」デスヨネ?
これって社長とかがしてる奴デスヨネ?

あからさまに狼狽する僕に、
店員が矢継ぎ早に次のサンプルを手渡す。

「コチラですと、若干レンズは大きくなるのですが、
 いかんせん、形が大分変りまして…」

確かにそれは変っていた。
丸い。
真ん丸い。
レンズに貼られたラベルには「復刻版」の文字が。
装着後の姿が容易に想像され憂鬱になったが、
とりあえずおもむろに装着し、鏡の前へ…。

「…ッ!?ブフッー!(ゲラ」

そこに昭和初期の冴えない小市民が一人立っていた。

思わず自分で自分を笑った自分が悲しくなる。
必死に笑いを堪える店員を絞め殺してやりたくなりつつ、
「あの、他のありますか…?」

次に店員が持ってきたメガネを見て、
ふと「コイツ、客をバカにしたおるまいか?」と、
嫌な疑念が頭を過ぎった。

何と言えばよいのだろう。
まずフレームは無色透明のプラスチック製だ。
しかもかなりごつい。
形状は極めて四角に近く、
そして、エッジが立っている。
しかも、極めつけに、
メガネのつる(耳に掛けるとこね」)が、
笑っちゃうくらい波打っている。
もうね、コレかけた瞬間に、
「Hey!」とか「Yo!」とかしか言えなくなるんじゃねぇの?
そんな雰囲気を全身から醸し出しており…。



そんなブラザーメガネを手にしつつ、
店員と見詰め合う。
彼の顔が歪んで見えたのは、
裸眼で見ていたせいだろうか?
それとも涙?

「ちょっと考えさせてください…」

僕は結局何も買えずに店を出た。




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