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父の面会の帰り、Aさんが入院している病院に寄った。Aさんは以前私が働いている病院に入院していた。入院していた頃は気難しいわがままな患者と思われていた。Aさんはうつ病だったので、私には通じるものがあったのかもしれない。退院した後もAさんに会いたいと思っていた。
(中略)
私は何度も「Aさん、会いに来たよ。わかる?」と言って、手を握った。握力は結構強くて、ずっと私の両手を握っていた。帰ろうとしても、私の手を離さなかった。手を離すと私のバッグをつかんだ。「帰らないで」と言われているようで、後ろ髪を引かれる思いだった。でも、二葉のことも気になるので帰らなきゃならない。 「ごめんね。また来るからね。必ず来るからね」と約束して、帰って来た。
手のかかる患者や、わがままな患者ほど印象に残るものである。
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↑これは、先週の木曜日の日記からの引用である。
午後8時ごろ、電話がかかって来た。 「Aですけど・・・」と言われただけで、あの時のAさんの娘さんだとわかった。 「わかりますよ。こんばんは」と言うと、 「母なんですけど、今日の午前11時ごろ亡くなりました」 と、突然言われた。 一瞬言葉にならなくて・・・ 「そんな・・・・」と、後は言葉が出なくて、娘さんの話を聞いていた。
前に行った時、Aさんは私の手を離さなかった。あの握力の強さは確かに異常だった。最期の力を振り絞って私にすがりついて来たのかもしれない。 「また必ず来るからね」と約束したのに、会えないままに逝ってしまうなんて。娘さんに、 「本当にありがとうございました。こんなに優しい看護婦さんに出会ったのは初めてでした。母もきっと喜んでいると思います」と言われた。私は電話を切ってから涙が止まらなかった。
人間の命ってあっけないな・・・。
半年前には元気に歩いていた人が、サヨナラも言わないで逝ってしまうのね。
「必ず来るからね」と言ったのに、約束を果たせなかったことが悔やまれてならない。
今の私にできるのは、彼女の冥福を祈ることしかない。
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