2005年フランス 監督 ディアーヌ・ベルトラン 原作小川洋子 キャスト オルガ・キュリレンコ マルク・バルベ スタイブ・エルツェッグ・エディット・スコブ ハンス・ジシュラー
小川洋子さんの原作をフランスの女流監督が映画化。 あの独特の世界をどんな風に映像化しているのか、とっても興味があったのですが、これはね〜、大満足でした。
少し、小川さんの世界とは違うんです、色合いというか、温度というか。小川さんの世界って、どこか色が少ないというか、私の中では「白」のイメージなんですね。静謐で、ひっそりとした・・底深い。 その「白」のイメージに映画は美しく色付けして、よりミステリアスに、そしてやはり!フランス映画ですよ〜!!その漂うエロスは、ただものではありませんでしたね〜。
まず、主人公(原作では「わたし」と書かれていましたが)イリスを演じるオルガ・キュリレンコ、彼女の存在がとても大きいです。 若く、清楚な。そしてある瞬間、はっと香り立つようなその瑞々しいエロス。 暑い夏の日を描いているんです、標本室での彼女の首元や、うなじに汗がにじんでいるんですが、そのあたりの描写がとても繊細で、なんだかそれだけでドキドキしてしまうんですよ。
そして白衣の標本製造士。感情を見せることなく、ただただ彼女を見つめる視線。うわ〜〜、ゾクゾク。彼が雨に濡れて飛び込んできた朝、カフェオレボウルに熱いお茶を入れて渡すシーンがあるんですよ。そのときのボウルが透明な、ガラスで、お茶の色がなんともいえず、美しいんですね。そしてそれを飲み干すイリスの濡れた髪、喉、張り付いたワンピース。 そのあとの浴場のシーンに続く、ドキドキのシーンです。
またこの映画には原作に無い、オリジナルなキャラが登場します。イリスは港町の小さなホテルを相部屋で借りることになるのですが、相部屋の相手が、夜港で働く船員コスタなんですね。彼女とは、入れ違い、ホテルの部屋ではお互い、相手が出て行ったあとの部屋で過ごすのですが。 彼の存在が、この映画の中でとても活きていると思います。 同じ時間を過ごしながら、謎めいた標本製造士と、すれ違いながらも、なにか感じるものがあるコスタ。お互いの存在が、お互いを際立たせてると思います。
映像の美しさ、そして女性監督ならでは・・でしょうか、イリスの洋服もいいですね。赤いワンピース、白いスカート。そのシーン、シーンの彼女の表情や、気持ちを自然に浮かび上がらせているかのように思えるようでした。 ホテルの部屋にかけられた彼女のワンピースが風に揺れて、それを帰ってきたコスタが見つめるシーンも素敵です。
なんだかひとつひとつのシーンを挙げると、限りなく書いてしまいそうな気がします〜(苦笑) それほどに雰囲気ある映画でしたね。 浴槽でふたりが抱き合うシーンは、原作よりずいぶん、どっきどき!でしたが。ひとりで観てて良かったわ・・こどもが一緒だとここはちょっとどうしていいか・・分からないなぁ(汗)いえ、とても美しいシーンでしたけどね。
彼がイリスに贈った靴、原作では「黒」でしたが、映画では「赤」い靴でしたね。 足首に巻いたリボンが美しい・・彼女の足を「犯し」てゆく靴。これはやはり、あの「赤い靴」をイメージしたものでしょうか。
最後までその雰囲気を壊すことなく、見事に描かれた作品だと思います。 原作本のコーナー、お茶のシーンのある映画にも挙げました。
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