| 2006年03月05日(日) |
「ヴェラ・ドレイク」 |
2004年イギリス・フランス・ニュージーランド 監督 マイク・リー キャスト イメルダ・スタウントン フィル・デイヴィス エイドリアン・スカーボロー ダニエル・メイズ アレックス・ケリー エディ・マーサン ピーター・ワイト ルース・シーン
何軒もの家で家政婦の仕事をするヴェラ。帰りには隣人たちにお茶を入れ、一人暮らしの母親の面倒を見て。明るい彼女はきびきびと働き、誰にも優しい。 弟のフランクが経営する自動車工場で働く夫のスタン、洋品店に勤める明朗な息子シド、無口でおとなしい娘のエセル。大切な家族、4人で小さな、小さなテーブルを囲んで、お茶を入れる時間は、なによりも彼女が大切にしている時間で。 でもそんな彼女には、家族にも愛する夫スタンにも隠している秘密があった・・・
その秘密のシーンがあまりにも普通に始まったので、私は最初驚くことも忘れてみていたのだけれど・・ 何故、ヴェラは法律にそむくような、行為を何年も続けていたのだろう。もしかしたら、彼女の過去にその理由になるものが何かあったのかもしれない・・ちらりとそう思わせるようなシーンもあったけれど。それは明らかにはされない。彼女はただただ困っている人を助けたかった・・と繰り返すだけ。 悩み、怯え、戸惑う娘たちに(中には人妻もいたけれど)静かに、優しく声をかけるヴェラの姿を見ていると、やはり彼女たちの力になりたい・・とただそう思っていたのだろうなあ・・って思うけれど・・・。
ヴェラの秘密が発覚する日が、とても悲しい。 エセルと近所の若者レジー(寂しい境遇の彼をヴェラが食事に招いて、だんだんと親しくなっていく二人の様子はとても微笑ましい)の婚約パーティ。ささやかな、でも暖かなそのお祝いの席に招かれざるベルの音が響く・・待って・・今日でなくても・・せめて・・別の日に・・思わずそう思ってしまった・・
悲しみ、嘆くヴェラの姿・・でも彼女が一番辛かったのは、罪が発覚したことではなくって、この大切な日を・・自分が台無しにしてしまった・・このことだったように思う。 ヴェラを信じ、戸惑う家族たち。 真実を聞かされてからも、彼女を守ろうとする夫スタンの必死な姿や、兄とヴェラを支えようとする弟フランク、そして新しい家族として彼女に優しい言葉をかけるレジーの気持ちに胸を打たれました。
ラストシーンはお茶の時間。 ヴェラのいない・・テーブル。寂しく静かなシーン・・だけれど。 でもこれは決して悲しいシーンではないと私は思う。 食卓にあるのはヴェラお手製のティーコゼー。そして4人は(ちゃんとレジーもそこにはいるし)バラバラじゃなくって、向かい合ってテーブルに座っている。ヴェラに対して手厳しい言葉を言ったシドもちゃんと。 そこにいる誰もがヴェラの帰りを待っている・・そんな気持ちが感じ取れるから・・だから、これは決して悲しいお茶のシーンではない・・と。
何があっても、許していくということ・・・私に出来るかしら・・ 見終わってからも、しみじみ・・いろんなことを感じさせる映画でしたね。
イメルダ・スタウントンはじめ、俳優さんたちは、みんな演じている・・っていうのではなくって、もう、その人にしか見えない・・素晴らしい演技でした。
そしてお茶のシーンが満載でしたよ、冒頭からラストシーンまで!ですから。 ヴェラ手作りの、緑のニットでしょうか、ティーコゼーが可愛かったですね。決してスマートじゃないですけど・・暖かい、人柄を感じるような。 もちろんThe&Cinemaに挙げました。
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