2004年ウルグアイ 監督フアン・パブロ・レベージャ キャスト アンドレス・パソス ミレージャ・パスクアル ホルヘ・ボラーニ
ウルグアイの映画です。ってウルグアイってどこだろうか・・ 題名の「ウィスキー」はお酒のことじゃなくって、写真を取る時に笑顔を作る言葉、日本で言う「はい!チーズ」のことだそう。
朝の風景、古びた工場のシャッターの前で今朝もハコボを待つマルタ。工場主とそこで働く女性。 ハコボはシャッターを上げて工場のスイッチを入れ、マルタは彼のためにお茶を入れる・・それが彼らの日常の朝の風景。 繰り返されるその風景の中、ある日日常とは違う出来事が起こって・・。
もう、なんていうんだろう、最近こういう映画がとっても好きなのです。 会話も少なくって、そしてなんて説明の無い映画なんでしょうか。 なぜ、ハコボは弟エルマンの前では結婚していることにしておかなければいけないのか、彼らの間には何があったのか、母親のことや、工場のこと。 3人の胸のうちも。 ふっとした彼らの表情や会話から、想像したり、思ったり。 たとえば、再会した時、お互いに交換しあう、靴下にしても。あんまり上手そうじゃないけれど、ラッピングして渡すハコボとそのまんま、値段も分かるまんまのエルマン。もうこれだけのことで彼らの性格や、工場の状態やら・・いろんな風なことを思い浮かべてみたりする。
それはもう、想像の余地がた〜〜っぷりとある映画なんです(笑)だからきっと見た人ひとりひとり、いろんな風に取れる映画なんでしょうね。
ハコボもマルタもエルマンも、3人ともすごく地味なんだけど、味があって。見れば見るほど、愛着が湧いてくるのです。 特にマルタ。最初はちょっと恐そうな顔のおばさんだなあって思っていた彼女が、セットした髪を誉められてにっこりするところや、エルマンと楽しそうに話すシーン。さかさま言葉なんて、すごくキュートなのです。(でもこのさかさま言葉って言うのも彼女の孤独が・・感じられたりするんですけど)これまで外には出ていなかったけれど、彼女の内にはとても可愛らしくて、人生を楽しみたい・・そんな気持ちがあるんだなあって。
ハコボは・・もうなんでしょうかね・・枠の中にはまってしまって・・そこから出られなくなってしまったような。無骨なんだけど、でもお母さんの看病とか、たぶんしたんだろうなあって思ったり。 エルマンも、一見すごく明るくて順風満帆に見えるけど、でも内には仕事ばかりしてきたことへの、後悔や、母親や兄に申し訳ないと思う気持ちとか。 そんな3人の閉ざされてきた感情が、ほんの少し、見えてはまた抑えられ。なんともいえない、味わいを醸し出しているのです。
ラスト・・・(ネタバレありですから未見の方は読まないでね)
これね、あなたはどういう風に取りましたか。
私は、シャッターの前にマルタがいなかったとき、ものすごくドキッてしましたよ。次の瞬間頭に浮かんだのは「ああっ、もうハコボダメじゃない!」ってことでした。「あぁ・・もうもったいない〜」って。 あんなに素敵な女性、なんでしっかり捕まえとかないのでしょうかね・・部屋だって、あんなに綺麗にしてくれたんですよ(あれには私感動しましたもん)同じ部屋でちょっと一緒に会話したり、何かを一緒にしたりしていたら。 ま、それはハコボだけのせいではないのですけど。どちらも感情を抑えてしまってましたもんね。 最後の感謝だって・・ああいう風に包まれたものでは無くって、もっとあったでしょうに〜!気持ちを表すものが・・って・・ね。 マルタは、どこかに旅立ってしまったのでしょうか・・エルマンのところに行ったのではないと・・私は思ったのですけどね。あの手紙も、何が書かれていたのでしょう。愛の告白、う〜ん、そうは思えないんだけれど・・そうじゃないと思う・・彼女らしい、感謝の言葉・・逆さ言葉で書いてたりして。いや、でも結構大胆な行動もありましたよね、ホテルで・・。
毎朝、毎朝、自分のためにお茶を入れてくれた女性・・彼女の存在の大切さに気付いても、顔には出しそうにもない・・ハコボですが・・ どうなるのでしょうか・・これから。 電話のあと。
そういう意味で、この映画は、またここから、お話が作られてゆくのかもしれませんね。私たちの頭の中で。
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