冷たいけれど澄んだ空気。
新年を迎え、今日はお客様が到着するのを待っていた。 「寒いですから部屋は暖めておきましょうね」 私がお招きしたお客さまと、ユーキ様・どくたあさんの間には面識がない。
テーブルにはユーキ様と私で作った家庭料理が並んでいる。 実はユーキ様が「おもてなし料理を作る」と言っていたのだけど…プリの前女王から教えていただいたという料理は、教えた方ほどの破壊力はないとは言え下手をすると一個中隊が壊滅するぐらいの力はあるかもしれない。 本人に悪意は無い。 でも同居している私やどくたあさんはともかく、いつもお世話になっている方を巻き込むわけにはいかない。
「なんかご家族はいらっしゃらないみたいなので、家庭料理の方が喜びますよ。きっと」 「そうですか?」 「そうですとも」
何気なく強調して念を押す。 ロギの方からいただいたシャンメリーを冷やしておき、準備はOK。
「で、マーナさん、アレはどうしました?」 「ああ、市松ならもうすぐ焼けると思いますよ。…でも妹さんが来られないのは残念ですねぇ」 「ええ、届けてあげたいぐらいですよ」
ユーキ様の口調がちょっと怒っているように感じられるのは気のせいかしら?
市松…「湖に潜む市松−壱」は私がウマリの新領主さまに質問した記念にスレマスからいただいたもので、実はプリの湖で獲れる魚。 姿は市松人形そのもの。 これの調理法についてプリに住むユーキ様の妹さんに問い合わせをしたところ、「塩焼きがいい」とのお答えをいただいたのだけど…。 (そのあと蒸し焼きって言ってきたのよね) 顔を焼くと言う行為が嫌だったので、塩釜焼きにすることに。 淡水魚できっとお味は淡白なんだろう。 活け造りという話もあったけど…頭(つまり顔)と尾じゃなくて足を残して「ピチピチ☆」ってされても…ねえ(笑)
市松を大量の岩塩で包む。 人間の赤ん坊大の大きさなので、これが結構重労働だった。 ホントは内臓とか出しといた方がいいのかなと思ったんだけど、見た目でパス。 卵白と岩塩を混ぜて粘土状に。 塩を剥がす時、皮(着物?)が塩に着いてはがれてしまうので戻しておいた昆布で丁寧に巻く。 顔が剥がれたら嫌だものね。 それを岩塩で包んでオーブンへ。 あの大きさだから1時間はかかるかな? メインだから先にテーブルに置いておく必要はないし。
「じゃ、マーナさん。お客様もそろそろみえる時間ですし、どくたあさん呼んで来てくださいな」 「はい。…なんかどくたあさんナーバスっぽかったですけど」 「それは市松のせいじゃないですか?」 「否定できませんね」
そのとき、ドアの外に取り付けてあるベルがカランカランと音を立てた。 「いらっしゃったようですね。じゃ、僕がどくたあさんを呼んで来ましょう」
さて。 何も知らないお客様はこの料理を喜んでくれるのかしら?
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