壊して欲しい、そう強く思った。支配されたい。
他の人じゃダメで妄想でも満たされなくて切なくなった。
突き動かされた瞬間。
「口でいかせて」
なんてひどいんだろう、さっき白々しくも射精したばかりなのに。
眠れないのはバイクの所為であたしの所為ではないんだ。
彼に従うように、でも「脱いで」、投げやりに口の端をゆがめてひどく面白そうに言ったと思う。
真っ暗だったから、あたしにも分からない。
触ってるうちに大きくなった彼のペニスを舐めても心はまだカサついてる。
いつものように咥えていつものように柔らかい舌でいかせるはずだった。
咥えて舐めて舌が麻痺しそうになっても舐めて、吸って、そのうちにあたしも自分の欲望に吸い込まれた。
もっと感じたい。
そう思ったら今日までのあたしは自分の唾液に解けてしまってどうでもよくなって
ただもっと彼を感じたくなった、咥えたまま。
だから言った。
「頭を、髪を、掴んで。歯は当てないようにするから、乱暴にして。」
頭を押さえつけられたあたしは急に彼を近くに感じて息苦しくなって、それが快感で堪らなかった。
あたしだけがこの興奮を感じてるのが切なくてもっと強く舌を硬くして唇で彼を求めたと思う。
けど、男のペニスってひどいものでそれには応えられないとばかりに「ちょっと強いかも」と彼は言った。
やっぱり寂しくなってがっかりしながらそれでも彼が求めるがまま、あたしは彼を噛み千切ってしまいたいくらいの欲求を抑えながら舐め続けた。
頭を押さえつけられる度に彼にすべてを支配されるような甘い妄想に囚われてこのまま死んでしまえたら、と思う。
でもその先を考える。彼の絶頂の瞬間は、あたしはどうして居たいか。
かれの絶頂の瞬間、それこそあたしの欲望がパンクして暴走が始まる瞬間。
どう頑張っても、彼がいってあたしもいって、なんて生ぬるいことは頭の片隅にも置いては置けなかった。
彼が「それ、いい」というポジションを保ちつつ舐めながらそんなことを考えてガス抜きしてたあたし。
でもやっぱり彼がとても好きで彼はあたしのことを好きだと言ってくれるから、あたしは彼の言いなりになって舐めてた。
そうすることでそう考えることであたしの欲望はさらに加速していく。
体ばっかり濡れてるのにこの満たされない感じはなんだろう。
彼がすっかりいってしまってあたしは精液を舐め尽くしてそれでもまだ舐めてた。
彼はもう眠れそうな様子。
あたしはまだ眠れなくてすでに意味をなくした習慣のオナニーをする。
ごめんね、いかせられなくて、そう彼は言うけどそうじゃない。
確かによく考えたらなんでこんなにいやみったらしいことを彼に見せ付けてるのか分からなくなる。
でも良く考えることでもなくてただ習慣で手が汚れたら洗いたくなるくらい当たり前の生ぬるいようなでも必然の欲求なんだ。
現実には、彼はあたしを痛めつけてくれない。たとえしてくれても、そこでまたすれ違う。
だからあたしはあたしの中で処理をする。
でも知ってて欲しいからとなりでする。彼が起きてるうちに。
いい加減使い慣れたローターに手を伸ばしてクリトリスを刺激する。
そのうち、さっきの興奮を呼び覚ましてまた支配して欲しくなる。
もう少し前の時間にセックスしたときは、そんなこと思いもしなかったのに。
彼はたまに「全部あたしのものだ」といった。そしてあたしは彼のものなのだ。
冗談か本気か分からないけどそんなことも頭を掠めて、あたいしは妄想を広げていく。
ふと現実の彼を感じたくなって頭の上の手に触れた瞬間彼がいったのは「すごい汗かいてる」。
そう、あたしはものすごい汗をかいてた。多分ものすごく興奮してた。
大して気持ちよくないローターの刺激でいけるのは多分この興奮の所為だ。
その頃あたしは現実の彼の手がひんやりしてることで何故かイケナイことをしてる気持ちになっていきそうになった。
でも妄想が追いつかなかったからいけなくて、「胸を触って」といった。
鋭い刺激が乳首から脳に走ってつい声が出る。
ダメだ、やっぱり彼じゃなきゃダメだ。
すごくいきそうになるけど彼に触られた興奮でまた妄想が頭をもたげてきて上へ上へとあたしを追いやる。
刺激と妄想の追いかけっこ。
しばらく追いかけっこをしたらついにあたしもいってしまった。