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彼とドライヴ。 長距離ドライヴ。
行き着いた先は実家。 どうしようもなく腹立たしい言葉の数々。 あたしは勝ってはなかった。 彼女はあたしに構いたくて仕方がなくてさみしくてさみしくて さみしい人間なんだ、と思い込んでやっと 胃の軋みがおさまった。
中国に留学しろだとか就職がどうのとか 口を挟んでくる。 お前はダレだ。 あたしは知らない。 知らない人んちの鍵で知らない人の保険証を届けに知らない人のうちにはいる。 阿呆みたいだ。
空気がよどんで物が散らかり果ててしまってる部屋。 うさぎが跳ね回って干草が床に散らばって、なのにそこで布団を敷いて眠る彼女。 おかしい、と思う。
今も彼女は、あたしが専門学校を辞めたことを夫に話していない。 全て、夫の所為だと兄の所為だとこじつける事も簡単なのに。 いや、彼女は病気だ。明らかに病気なんだ。 会話が通じない。あたしは、病気で言葉が通じない異邦人と会話をしている。 成り立つはずもないのに。 あたしは、彼女の夫のまえで胸を張れたらいいのに。 一度も振り向かなかったあいつが。 マイナスを全て見せないようにしている彼女。 彼女の夫に本当のあたしは一生見せることはないだろう。 すべて、あなたのためを思ってといって、隠している。 彼女の夫の中で成長する術のないあたし。
どうすればいい?どうすればいい?どうすればいいの?
また、あともどりしてる自分がもどかしい。 街中に貼り付けられてるあの看板を見るだけで腹立たしくて空虚な気持ちになる。
とんでもなく切り離された、現実と現実。 どっちも現実。 彼といるときのほうがあたしはあたしらしくふるまえる。 だからあたしは、絶対に彼を選ぶ。 どんなに愛着のある物ものをならべたてられてもあたしは彼を選ぶ
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