雪さんすきすき日記
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2018年07月18日(水) 続・「ホタルノニッキ」のこと

 外気温が危険。

 実績を全て達成したので、「ホタルノニッキ」(日本一ソフトウェア)の感想を。

 二匹のホタルを操作して、角の生えた少女ミオンを誘導して廃墟の底から外の世界に導き出すアクションパズルゲーム。
 操作はマウスで行う。左ドラッグでホタルの移動。ミオンは直接操作することはできず、このホタルに向かって移動する。ホタルとミオンの間にはしごがあればそれを登らせたり、ミオンが木箱に触れた状態であればそれを押したり引いたりさせることもできる。また、右クリックで影の世界に入り込む。影の世界では時間が停止して画面が暗転し、物体の影のみが表示される。この影の世界で右ドラッグすることでカゲホタルを移動。カゲホタルは影の上のみを移動することができて、仕掛けの上で光る点を右クリックすることでその仕掛けを作動させることができる。
 道中面ではホタルでミオンを誘導してカゲホタルで仕掛けを動かし、出口に到達するとクリア。また、4面ごとにボスが登場。ボス面では同様にホタルとカゲホタルでミオンや仕掛けを動かしてボスを攻撃し、倒すとクリアとなる。ミオンが敵や罠に触れたり、高所から落下するとミスとなり、セーブ地点から再開する。

 直接ではなく、誘導して間接的に自機を操作するという作品はいくつかプレイしてきたが、この作品も同様のシステム。ミオンは基本的にはホタルに向かって忠実に動くのだが、やはりこの類のシステムの宿命か、はしごを登り切ったり降り切ったりせずに止まったり、段差など入り組んだ場所では思い通りに動かないこともあった。ただ、そのような場所での動きの癖さえ把握してしまえばちゃんと素直に動いてくれる。操作に慣れれば、箱を動かした後に一度箱を手放して、さらにその後箱の上に登ったりするといった一連の動作も滑らかに行えて、個人的には世間で言われているほど操作に難は無かった。ただし、そこに到達するまでにはゲームが半分くらい終わっていたかもしれない。
 カゲホタルのシステムはこの作品独特のもので、影さえつながっていればかなり遠くの仕掛けも動かすことができる。そして、この影を繋ぐというところがパズル要素となっており、自機や地形だけでなく、罠や敵などあらゆる影を利用してパズルを解いていく。影が繋がる時間が短かったり機会が一度切りだったりする場面も多く、影を繋げるための発想に至るまでの試行錯誤を楽しませてもらえた。
 また、アクション要素としてもカゲボタルの活用の場面は多く、特にボス戦ではホタル共々かなりせわしない動きを要求された。そのボス戦だが、それぞれ倒し方が異なり、しかもそれが明示されないので、まずは倒し方を探るところから始める羽目になる。間接的にミオンを操作しなければならない状況でさらに過酷な要件を突き付けられるのだが、仕掛けとボスの弱点をどう結び付けるか、ここもまたいろいろと考えを巡らせるのが面白かった。中でも、2ボスでは最後の一撃をどう凌ぐかが分からず散々苦戦したが、その分発想が的中したときの快感は格別であった。

 ここから先はネタバレ全開で物語について。
 この作品を始めたのは誘導するというシステムが面白そうなのと、かわいいミオンを廃墟から地上に導くという物語に興味を抱いたのが理由だった。システムについては予想どおりの面白さであったが、物語については途中まではそのとおりだった。途中までは。
 華奢なミオンには似つかわしくない廃墟をホタルの力を借りながら危なげに進む姿を見ていると、落ちたり潰されたり斬られたり焼かれたりといった過酷な状況を乗り越えてきっと最後には外の世界に出られて幸せな結末を迎えるのだろうと思っていたが、どうも先に進むにつれて様子が不穏になっていく。過酷な状況は一向に衰えるどころか益々酷くなり(まあ、これはゲームだから当然だが)、しかも先に進むと外に出るどころか画面が乱れていき、世界の現実味が薄れていく始末。そして、そんなあやふやな世界を乗り越えた先には確かに外の世界が待っていたが、それは思い描いていたような幸せな空間ではなく奈落の底へとつながるものであった。そして繰り返される廃墟の底からの脱出。外に出るという希望は見事に打ち砕かれたのだった。
 その高まる不穏さに拍車を掛けたのが、道中で拾うことができるキオクノカケラというアイテム。このアイテムを取ると、ミオンのものと思われる過去の記憶が再現される。こちらも最初の頃はミオンの幸せな家庭が再現されて、もしかしたら外に出るとこの幸せがもう一度訪れるのではないかと淡い期待も抱かせたものである。しかし、突如襲った悲劇とその後の狂気が壮絶で、その期待は脆くも崩れ去った。ミオンは死亡したオリジナルのミオンを復活させるために両親が作ったクローンだったという衝撃の事実や、その過程で様々なおぞましい実験が行われていたという場面が二頭身のキャラクターで描かれることにはただただ狂気しか感じられず、後半これ以上の衝撃は無いだろうと思いながら次のキオクノカケラを取ったら更なる衝撃的な内容で打ちのめされたりと、下手なホラーゲームよりもずっと恐ろしかった。あと、4ボスとの戦闘も、それまで鬱屈としていた雰囲気から一転した能天気な音楽に乗って繰り広げられる大道芸のような内容に狂気しか感じられなかった。
 そして、止めを刺したのが考察。真のエンディングを見ても不明瞭な点が多々あったので考察サイトを見たのだが、もう救いはまるで無かった。誰も悪くは無いのに、誰も幸せにはならなかった物語で、オリジナルとクローン両方のミオンの残酷な境遇には同情の念を禁じ得なかった。最後に両者が相容れたことだけが唯一の救いと思われる出来事であった。
 それにしても、考察の中でチャプター3から4に移る際に画面が乱れて仮想現実へ移行するという点については疑問を抱く。そもそも、オリジナルミオンの精神体という存在形態や、敵の蠢く影といった存在が非現実的で、プレイ中ずっと違和感を覚えていた。もしかしたら、この世界は最初から仮想現実で、本来は現実世界を再現していたものが、何らかの原因で異常をきたして世界は廃墟になり住人は蠢く影になってしまったのかもしれない。そして、その原因というのが、キオクノカケラの1つにあった、オリジナルミオンがクローンミオンと出会ったときに世界が乱れたことではないかと。考察としては全然不十分ではあるが、そう考えると自分の中では腑に落ちる。
 この作品はゲームだけでは全てが語られておらず、朗読ムービーやビジュアルブックといった他の媒体にも重要な情報が記されている。ゲームだけで完結しないことの良し悪しは別として、考察が好きな人にとっては随分と考察のし甲斐のある物語だったのではないかと。

 ゲーム自体は、ホタルの誘導に対するミオンの動きを理解したという前提で、間接的に操作するというシステムを考慮して調整された様々な仕掛けによるパズルやアクションが、一般的なアクションゲームとはまた違った面白さを味わえて新鮮であった。実績も、ごく一部(2-3と4ボス)を除いて挑戦し甲斐のあるもので、このシステムをさらに楽しめたことに高い満足度が得られた。ただ、あまりにも救いの無い物語はかなり心に刺さるものがあった。
 ところで、可愛い少女が酷い目に遭うのは、どうやら日本一ソフトウェアの伝統らしい。「ロゼと黄昏の古城」もかなり陰惨な内容のようなので、覚悟してプレイすることにしよう。


氷室 万寿 |MAIL
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