雪さんすきすき日記
リサイクル戦術シミュレーション『リサイクルプリンセス』 倒れてもその場で復活するリサイクルSLG。全力で応援中!
DiaryINDEXpastwill
「ときのあくま」攻略はこちら  「東方戰騎譚」エキスパート攻略はこちら  考察のようなものはこちら
自己紹介はこちら  リプレイはこちら  動画はこちら(完成版体験版)  Twitterはこちら


2016年06月28日(火) 「メルヘンフォーレスト」のこと

 昨日クリアした「メルヘンフォーレスト」(PrimaryOrbit)の感想を。
 見習い薬師のメルンちゃんが一人前になるまでの過程を描いたRPG。アトリエシリーズのように、素材を集めて目的のアイテムを合成することで、メルンちゃんの称号が上がっていく。
 この作品はスマホのアプリであり、操作はほぼタップのみ。目的とする地点に移動する、気になる場所を調べる、村人に話しかける、コマンドを選択するといった主な操作はタップのみで完了する。あとは、コマンドやアイテムのスクロールにスワイプを用いる程度。
 素材は、特定の場所を調べたり人物に話しかけることで入手できることもあれば、何段階かのイベントを達成しなければ入手できないものもある。集めた素材が規定個数以上であれば調合は成功するが、最後の調合だけはそれに加えて特定の条件の達成も必要となる。

 最初に作品の紹介記事を見たときに、画面から伝わってくる可愛い雰囲気にすっかり魅了されてしまい、これは必ずやプレイしなければならないと思って当時所持していたiPhone5にインストールしようとしたところ、機種が対応していないと宣告されて愕然とする羽目に。iPhone5は3月にバッテリーを交換したばかりで、夏コミが終わるまでは使い続けようと思っていたが、そこまで待っていられないと6月にiPhoneSEに機種変更を前倒しした。ソフトのためにハードを購入するなど、いつ以来であろうか。

 タップでの軽快なゲーム進行に牧歌的な雰囲気、そして個性的な住人達との愉快なイベントの数々に、抜群の居心地の良さを感じてゲームに没頭していた。特に、イベントについては微笑ましいものから、意外性に富んだものまで多岐にわたり、飽きさせないものがあった。最も大きなイベントでは起点から想像もつかない結末になり、しかしさほど突飛な展開でもなく、意外性と整合性の両立に驚かされた次第である。あと、このイベントのためだけに戦闘システムを構築しているその労力には唖然としてしまった。
 また、釣りやクイズといったミニゲームでも素材を得ることができるのだが、このときのメルンちゃんの仕草がどれも大きな身振り手振りでとても可愛らしく、大いに目を惹かれた。中でも、クイズで正解したときのガッツポーズが印象に残っている。今のハード性能からいえば十分にローポリゴンなモデリングではあるが、その懐かしい感じがゆったりと時間の流れる牧歌的な雰囲気に実に良く合致している。余談だが、クイズの解答席にアメリカ合衆国の国旗の模様が描かれていることに、特定の世代を狙っていることがひしひしと感じられた。あと、東方関連のクイズがあったのには吃驚。問題数はさほど多くなく、同じ問題が続けて出たりと出題の方法に雑なところもあったが、そもそもミニゲームということでここは目をつむる。
 調合に関しては、素材の種類ではなく個数で決まるので、アトリエシリーズのような本格的な調合は楽しめない。その分、素材の種類とその入手方法の多様さで楽しませるような構成である。最後の調合では使ってはならない素材も出てくるが、その判別と処分に関わる人物がまた意外すぎて面白かった。住人の中で空気である人が一人としていない丁寧な作りには感服である。

 牧歌的な雰囲気作りが徹底されており、オープニングからエンディングに至るまでとても和やかで心温まる雰囲気を堪能させてもらえた。その上で、意外性に富んだ展開が良い刺激となり、心から楽しませてもらえる魅力の多い作品であった。

 と、ここまでが第1章の感想。

 ここから先は第2章の感想となるが、第2章の展開の持つ魅力がとても大きいので、ネタバレ注意をさせていただく。



 第1章をクリアすると現れる入り口をくぐると第2章が始まる。第2章はメルンちゃんの大切な人の過去にまつわる物語。ゲームシステムも、ダンジョン探索RPGに大きく変貌する。
 迷宮内をタップで移動して出口に到達すると次の部屋に移動できる。出口は普通に到達できることもあれば、スイッチなどの仕掛けを作動させたり、そこに至るまでの罠を掻い潜る必要がある。迷宮は一方通行で、一部を除き前の部屋に戻ることはできない。出現する部屋の構造がランダムに選ばれる区間がある、時間で食料が減少して食料が無くなると次は体力が減少する、未鑑定の物質を生還して持ち帰ると鑑定して武器や防具、売却用アイテムが入手できるなど、ローグライクなシステムも一部採用されている。また、終盤になると調合により薬が作成できるようにもなる。
 戦闘もタップのみで操作。戦闘はランダムエンカウントで発生し、1対1のリアルタイムでのターン制。すばやさの値によって行動できる順番決まり、操作は攻撃、防御、回避の3種類。攻撃は普通に攻撃し、防御は被ダメージを軽減、回避は攻撃自体を回避する。防御と回避は一定時間持続し、その間に受けた敵の攻撃に対して効果を発揮する。これを見ると回避の優位性が突出しているが、敵の攻撃を受ける間際に防御をするとパリィが発動し、敵が麻痺して奥義と道具が使用可能となる。奥義は通常攻撃の何倍〜何十倍もの攻撃力があり、決着を早めることができる。
 各階層にはボスが登場し、倒すことで次の階層へ進むことができる。

 第1章でも様々な驚きを提供してくれたが、冒頭でメルンちゃんの知られざる過去が明らかになり、更には意外な人物もその過去に関わっていたりと、第2章の始まりはそれらをさらに上回る驚きであった。1つの作品で全く異なる2つのゲームシステムを盛り込んだことにも、随分と大胆なことをすると思った次第である。
 迷宮探索は、隠し通路や罠といった種々の仕掛け、アイテムを効率的に入手するための消費アイテムの管理、鑑定によるアイテムの収集など、目新しい点は乏しいものの基本的な要素はしっかり押さえている感がある。アイテム図鑑のコメントがいちいち面白くて、アイテム収集にも熱が入る。ただ、罠回避や泉の泉質(回復か毒か)を調べるアイテムは、面白いもののその仕掛け自体が少なすぎて、全然活用する場が無かったのがやや惜しいと感じたところ。
 一方で、戦闘システムは非常に面白い。戦闘の基本は、敵の攻撃をパリィして奥義を叩きこむという流れだが、敵の攻撃の中には防御不能なものもあり、また敵の行動が表示されてから攻撃が来るまでの間隔も様々である。中には、行動が表示されてから即座に(本当に一瞬で)攻撃が来ることもあり、敵の行動を見極める緊張感は半端でなく高い。また、その緊張感の後にパリィで敵を無力化して高威力の攻撃を叩きこんで優越感を得られる点も、抑圧と開放の釣り合いが上手に取れている。タップ1つでここまで緊張感のある戦闘を楽しめることにはただひたすら驚嘆するしかなく、おかげで道中の戦闘では全く退屈することが無かったし、敵の出現を抑えるアイテムの聖水もまるで出番が無かった。ボスも迂闊に攻撃すると反撃を喰らうなどパリィ前提の調整となっており、攻撃の機会をどう得るかを考えるのが大層面白かった。
 もう1つ緊迫感を高める要素として、体力回復の手段が乏しいことが挙げられる。この手のダンジョン探索RPGでは一般的には体力回復アイテムが序盤から使用できるものだが、この作品では終盤になっても十分に体力を回復できるアイテムが存在しない。その代わりに、奥義に体力を回復させるものがあり、これが回復の主体となる。かなり大胆な調整ではあるが、そのおかげでパリィを狙う意義も格段に大きくなり、結果的に緊迫感が増すこととなっている。
 この単純ながらも緊迫感溢れる戦闘システムは作品の大きな魅力の1つであるが、操作を単純化したために難易度がプレイヤーの技量に依存するところも極めて大きく、第1章に比べるとその間口は決して広くはない。第2章の開始時に、合わないと思ったら即座に引き返すことを勧めていたのも納得である。

 そして、戦闘システムと同じ位大きな魅力を感じたのが物語。舞台となる迷宮ではるか昔に行われた1人の錬金術師による狂気の実験とその成果、そしてその成果が生み出した過去の亡霊に巻き込まれたメルンちゃんの母親。迷宮の奥に進むにつれてそれらが徐々に明らかになっていく展開はとても興味を惹かれるものがあり、先に進むための大きな原動力の1つとなった。そして、その真実にメルンちゃんが触れたときから先の展開は、その過酷な運命と展開に心が痛まずにはいられなかった。そんな絶望の淵にいるメルンちゃんにとって、励まして道を示してくれる存在がどれほど有り難かったことか。この場面の演出は「ワイルドアームズ2」の最終戦を彷彿させるものがあり、大いに盛り上がった。
 激しい戦闘の末に事態は収束するのだが、それでもメルンちゃんが失ったものはあまりにも大きすぎた。大団円とはほど遠い結末に呆然としながらスタッフロールを眺めていたが、スタッフロールの最後で母親がメルンちゃんに対して毅然とした口調で語り掛けたその内容に、母が子に託す想いという題材に非常に弱い私はここで胸が一杯になった。「ときのあくま」「ゆりかごのそら」と同じ感動を、この作品でもまた味わうことができたのである。
 第1章の牧歌的な雰囲気からは到底思いもよらない、とても悲しい物語であった。この結末は恐らく変えられないのだろう。それでも、この母の想いと周囲の愛情があれば、きっと立派に育ってその想いを次につなげてくれるだろうと、この物語の先にある希望を確かに感じられた。

 沢山の驚きと感動が詰め込まれたこの作品に触れられたことは嬉しいの一言に尽きるし、そう感じることができた自分をもまた嬉しく思う。
 この作品との出会いと、この作品を紡いでくれた登場人物達と、そして何よりもこの作品を制作してくださったしなのさん、本当にありがとうございました。


氷室 万寿 |MAIL
DiaryINDEXpastwill