雪さんすきすき日記
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2016年06月13日(月) 「AtoA R.RegulusIII」のこと

 「AtoA R.RegulusIII」のリプレイがことごとくずれるので、リプレイは諦めた。Windows10にしたせいか?(濡れ衣)

 では、「AtoA R.RegulusIII」(B茄子屋)の感想を。
 中世の時代に魔王軍が人類を滅ぼす兵器として作られた杖、通称ヒューマンキラーがこの時勢に空から降ってきた。戦神である皇帝によって杖の脅威は取り除かれたが、なぜ今になってこのような骨董品が起動したのか。事の真相を探るべく、皇帝とマジックユーザーが杖の発射地点である魔王の離宮があった場所に向かった。そして、最初は興味が無かったドラゴンも、なんか面白くないという理由で留守番のマジックユーザーを誘って旅立っていった。

 シリーズ3作目となる、偏差射撃と誘導ミサイルが特徴の全方位STG。マウスによる自由度の高い操作で押し寄せる誘導ミサイルをかいくぐり、偏差射撃システムで敵の動きを先読みして倒す、2DSTGと3DフライトSTGのいいとこ取りをしたような独自性の高い内容が楽しめる作品である。
 自機は飛行に特化したマジックユーザーのレグルスであるリオンとリゼ、そして皇帝のシャーマンであるコロナから選択し、ブラスドラゴンのアカガネ(1作目のボス)か皇帝(2作目のボスでコロナのご先祖様)をガーディアンとして憑依させる。
 操作はマウスとキーボード。マウスで照準を動かすと、自機は照準に向かって動き続け、弾も照準に向かって発射される。攻撃はマウスのボタンで、自機からの射撃(照準が自機に近いと近接のメレー)、シールドからの射撃、シールドによる近接攻撃にそれぞれ割り当てられている。キーボードでの操作はダッシュ、エイムアシスト、緊急回避、リロード、フレア、マップ。ダッシュはマジックゲージを消費して短距離を高速移動する。ダッシュを押し続けることで高速移動となり、マジックゲージの大量消費と方向転換が鈍くなることと引き換えに、ダッシュ以上の高速で移動し続ける。エイムアシストは照準の左右一定範囲に線が開き、この範囲内に敵がいる状態で攻撃をすると、その敵の移動先を予測して偏差射撃が行われる。緊急回避は急激な進行方向の変更で短時間の無敵を伴う。リロードは自機とシールドの残弾補充。フレアはデミヒューマンポイント(後述)を消費して誘導ミサイルを攪乱するフレアを発射する。マップは全体マップの表示。この中で特に重要なのが、この作品を特徴づけるエイムアシスト。普通に狙っても弾を当てられない動きの素早い敵(ほとんどそうだが)でも、このエイムアシストによる偏差射撃で命中率を格段に上げることができる。
 自機はシールドを装備しており、攻撃を受けると受けた方向に一定時間自動的に展開する。シールドが展開している間はシールドのある方向からの攻撃は防ぐが、それ以外の方向から自機が被弾するとダメージとなる。ただし、シールド自身も耐久力があり、耐久力が無くなるとシールドブレイクとなり一定時間シールドが使えなくなる。また、自機とシールドは異なる武装を備えており、個別に攻撃が可能。さらに、シールドを体当たりさせたり、シールドに近接攻撃をさせることもできる。防御面では被弾を防ぐほかに向かってくる誘導ミサイルを破壊する盾として展開したり、攻撃面では弾が通らない敵に直接斬りつけたりと、攻防ともに攻略上重要な役割を果たす。この作品を特徴づけるもう1つの大きな要素である。
 以下は今作から備わったシステム。
 まず、特定の物をシールドで掴むことができるようになった。掴んだものは振り回したり投げつけたりして攻撃に使うことができる。最終面で大活躍のシステムである。
 そして、自機も誘導ミサイル(ショートレンジミサイル:SRM)を撃つことが可能となった。照準を敵に一定時間重ねるとロックオンをして、射撃をすることで弾の代わりに誘導ミサイルが発射される。ここで、リゼのみはSRMの代わりに画面外にいる敵のマーカーへのロックオンが可能(ロングレンジミサイル:LRM)となっている。ロックオンは重ね掛けが可能で、シールドの射撃による誘導ミサイルは憑依させたガーディアンで攻撃内容が変化する。
 自機はダメージを受けるとデミヒューマンポイントが増加(攻撃によるバッドステータスをガーディアンが引き受けて無効化するという設定)し、デミヒューマンポイントが増えると憑依させたガーディアンによる補助効果が得られる。ただし、その代償として入ってくるスコアが減少する。また、消費して前述のフレアを撃ち出すことができる。
 これらの操作を駆使して、各面目標となる敵を倒すことで面クリアとなり、攻撃を受けて自機の体力が無くなるか制限時間切れでゲームオーバー。

 今作で備わったシールドで物を掴む操作が、おまけテキストに存在意義は最終面のためにあり、その他の面ではおまけと堂々と書かれているのが実に潔い。そして、こうして製作者の意図を率直に反映できるのが、同人ゲームの特権でもあり、嬉しく思った次第。最終面のために用意したというだけあって、地上に落下する隕石をシールドがつかんだ剣でぶった斬るというお膳立ても上々で、シリーズを通して最高に豪快で緊迫感溢れる戦闘を楽しませてもらえた。また、4面でも仕掛けを動かすのにつかむシステムが効果的に活用されており、シールドの新たな方向性が示されたのではないかと感じている。
 また、今作ではいわゆるボスに相当する人型の敵が全面通してシリーズ最多の延べ5体登場。互いに慣性を無視した挙動で飛び交い、偏差射撃にミサイルに魔法にシールドと攻撃が総動員される戦闘は、この作品の華ともいえる。プレイヤーキャラとの戦闘や連戦もあり、1対1の白熱した空中戦が今まで以上に堪能できたのも好印象な点である。最初はとても歯が立たなくて絶対に時間切れ待ちだと思わせるような敵でも、操作を習熟すると互角以上に戦えるようになるのがこの作品の変わらない大きな魅力であり、この辺りの調整は毎回上手いと思わせるものがある。あと、細かい点ではあるが、人型の敵のシールドが表示できるようになったのが有り難い。このおかげで、畳みかける場面と一旦引く場面の判別がしやすくなり、抑揚のある戦闘がとれるようになった。というか、前2作でも人型の敵にはシールドが張られていたのだろうけど、この表示が実装されるまで全然気が付かなかった。
 もちろん、誘導ミサイルとの丁々発止のやり取りも健在。機敏な操作でミサイルの間をすり抜けたりシールドを活用して撃破しながら敵に肉薄するときの刺激と興奮は他に類を見ないほど独特で中毒性も高い。最上位難易度では笑えるほど大量の誘導ミサイルが押し寄せてきて最初は製作者の正気を疑ったが、下手に小細工せずともシールドを前面に出して中央突破できるのが操作的にも絵的にも面白すぎた。
 登場人物も、1作目では竜、2作目では戦神と毎度毎度一介のマジックユーザーが対峙するには桁外れの種族が登場してお次は何かと思ったが、魔王殺しで神殺しな勇者の剣とまたしても冗談みたいな存在であった。それに加えてイモータルとそれに仕えるサムライとか、今作も全然まともな人物が登場しなくていいぞもっとやれ。そんな連中だから物語の展開も会話の方も一癖も二癖もあり、そちらの面でも相変わらずの面白さ。人を見下すドラゴンや、力を誇示する皇帝もさることながら、それら上位の存在を臆せずに軽口を叩くマジックユーザーの不遜さが一段と際立っている。あと、コロナと皇帝を選択したときの最終面のデモで、皇帝のシャーマンであるはずのコロナが皇帝を敬うが故に反発する場面は、前作をプレイしていた身としてはコロナの立派な姿に嬉しさを覚えるものがあった。まあ、意気揚々な発言はリオンやリゼやアカガネの影響が強いのだろうと素直に喜べないところもあるのだが。それ以外でもコロナと皇帝の組み合わせの存在感は大きく、今作の主役はこの2人である感が非常に強かった。

 一方で、この作品の売りである誘導ミサイルが自機からも撃てるようになったSRMについては、狙う際に操作が制限される危険度の高さに比べて攻撃力が低く、精々雑魚相手くらいしか活躍の場がない。SRMの使い勝手を良くすると射撃の出番が無くなってしまうので止むを得ないのかもしれないが、存在自体が従来の射撃+エイムアシストとかちあってしまう感が否めなかった。リゼのLRMの方は遠方からロックオンして接近した途端にミサイルを発射して先手を取るという独特の戦法を取ることができて、SRMに比べるとやや使い道は広かった。しかし、人型の敵への決定打どころか攻撃補助にもならないのはSRMもLRMも同じで、特に人型の敵との戦闘の比重が大きい今作では、やはり活用するのは難しいというのが正直なところである。
 また、キャラ間の能力差が一段と大きいのが気になった。というか、リオンの攻撃力が何故Easyの人型の敵でも苦戦するほど低いのか疑問を抱かざるをえない。対して、コロナ+皇帝ではNormalでもVeryHardでも体感的な難易度がほどんど変わらないほどの強キャラで、この格差はどこから来たのか。リオンは使いやすくリゼは癖がありコロナは空戦が弱いというおまけテキストに書かれていたキャラ性能と、実際にプレイして感じたキャラ性能は全てにおいて正反対であった。
 ついでに、相変わらず緊急回避の使い道が分からない。今回も一度も使わずにVeryHardまでクリアできてしまった。

 追加されたシステムや調整の面で疑問に思う点はいくつかあったが、自由度の高い操作と偏差射撃が織りなす独自の面白さはそれを補って余りあるものがある。今作は従来の誘導ミサイルや人型の敵相手の白熱した空中戦に加えて、最終面での豪快に物理で殴るという新鮮味のある戦闘も楽しませてもらえて、総じて大満足な内容であった。そして、この基本システムの完成度の高さを改めて認識した次第であり、シリーズとして末永く続いて欲しい。あと、作品の知名度も、もっともっと上がってほしい。


氷室 万寿 |MAIL
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