パラダイムチェンジ

2005年12月08日(木) エリザベスタウン

今回は映画ネタ。観てきたのは「エリザベスタウン」
この映画を一言で言うなら「東京ラブストーリーの赤名リカと、アメリカ
の変な濃さが好きな人は結構好きかも」である。そしてその両方が好きな
私は「結構好き」

物語の冒頭、自分が8年間も心血を注いで開発したスニーカーが、1000億
円もの損失を与えてしまい、会社をクビになったオーランド・ブルーム演
じるドリューは、自殺をしようと思うんだけど、その直前、自分の携帯
電話が鳴る。彼の父親が、旅先で突然死んでしまったので、遺体を引き
取ってきてほしい、と家族に頼まれるのだ。

そして彼は父親の生まれ故郷、ケンタッキー州のエリザベスタウンへと
向かう。
その途中、自分ひとりしかいない機内の中で、ドリューはキルスティン・
ダンスト演じるキャビンアテンダントのクレアと出会い・・・という話。

予告編を見た感じだと、その後、彼が父親の遺骨と共にアメリカの土地を
ドライブすることがメインのロードムービーなのかと思っていたら、さに
あらず。

この映画の大半は、彼の父、ミッチの葬式の話だし、その彼の生まれ故郷
アメリカ南部の田舎町の、強烈な人々との出会いとふれあいの話である。
そして、その彼らが、なんというか無茶苦茶濃くて、変なのである。

そしてこの映画の主人公、ドリューがそうであるように、観客の私たちも
ストレンジャーとして、この映画の間中、そのアメリカ南部を疑似体験
することができる。
だからある意味では、この映画、「ロストイントランスレーション」の
南部版といえるかもしれない。

彼らが、話の折々に「カリフォルニアが」というのがなんと言うか、面白
くて。つまり同じアメリカといっても、一生その小さな田舎町で過ごす人
たちにとってみれば、カリフォルニアは、というより都会的なものは、
全然違うんだなあ、ということがわかったり。

この映画は、そんな小さな描写やエピソードの集まりで構成されており、
そのおかげで私たちは、田舎町をリアルに体験できるだけでなく、彼の
父親がどれだけその架空の世界で愛されていたのか、という事もまさに
体験させてくれるように思う。

で、なぜそこに東京ラブストーリーの赤名リカが?というと、キルスティ
ン・ダンスト演じるヒロインのキャラクターが何に似ているかな、と思っ
たら、赤名リカに似ているんじゃないかな、と思ったわけですね。
もっとも、彼女ほど性に奔放ではないとも思うけど。

映画の中での彼女は、はっきり言って出来過ぎ・・・だとは思うんだけど、
でも、深い悲しみに囚われてしまった人には、彼女のようにいい感じで
感情をかき混ぜてくれる人って必要だよね、と思うわけで。

また、彼女の性格を現わすデティール作りもうまいな、と思うのは、
たぶん、彼女自身が普段から自分の寂しさを感じている人だから、人の
寂しさや、悲しさに対して敏感だったんだろうな、という風に感じられる
キャラクターになっていて。
そうでなかったら、自分の事をsubstitusion=代用品なんて言わない
だろうし。

自分の人生の中でも、心を揺さぶられるような女の子って、彼女みたいな
タイプが多かった私にとっては、なんとなく、わかるわかる、みたいな
気持ちになったわけですね。
この映画を観て、個人的にキルスティン・ダンストの好感度はアップした
のである。

また、今回自分がアメリカを旅行していた時でも、ホテルに帰って一人に
なってホッとした瞬間に、無性に誰かに話したくなる時ってあったりした
し。幸い向こうで知り合いの人がいたおかげで、ほんのつかの間、話相手
になってもらって助かったし。

で、この映画に関して言えば、その彼女が、ドリューに対して行なう様々
なアイデアがすごいな、というか、監督と脚本家はよくもこれだけのアイ
デアを思いついたな、というのがすごいと思うのだ。

最近、日本のドラマがいまいちつまらない、と感じられるのは、もしかす
ると、それだけのアイデアやデティールを詰め込んでいないからなのかも
しれない、なんて思ったり。細部に神は宿る、というし。

そしてこの映画では、それらの細かな描写が、映画を観終わった後では
必要だったよな、と思うのである。
それらの濃密なデティールがあったからこそ、この映画のラストが受け入
れやすくなっている、というか。

また、この映画の中で流れる音楽の選曲が素晴らしい。さすがは元音楽
ライター(@あの頃ペニーレインと)のキャメロン・クロウ監督だけあると
いうか、知っている曲から知らない曲まで、場面場面にあった選曲が上手
いなあ、と思うのである。

できればね、このサントラを買って、そして一人でドライブをしてみたい
なあ、なんて気になってみたり。
いや、予想していた以上に面白かったっす。
映画を観て元気が出たし、またアメリカに行きたいな、という気になり
ました。
DVDでたら、もしかすると買っちゃうかも。


 < 過去  INDEX  未来 >


harry [MAIL] [HOMEPAGE]

My追加