パラダイムチェンジ

2005年08月25日(木) 皇帝ペンギン

今回は映画ネタ。見てきたのは「皇帝ペンギン」
原題の訳は「皇帝ペンギンの行進」
すなわち、この映画は1年にわたって繰り返される南極での
皇帝ペンギンの行進をつぶさに追いかけた、ドキュメンタリー映画
である。
でもドキュメンタリー映画だからつまらない、なんて事はなく。
そんじょそこらの恋愛映画も顔負けの、ドラマにあふれたドキュメンタ
リーなのである。

この映画を見ていると南極という極地で、彼らが自分の子供である雛を
育てるためにどれだけ合理的な構造をし、システムを形作っているのか
がよくわかるのである。

例えば、あの愛らしいヨチヨチ歩きで寸胴の身体も、冬の吹雪が吹き
荒れる中で卵を温めるために必要なのだということがわかるし、
また、その卵を温める3ヶ月もの間、一切食べ物を食べられないために
栄養を蓄え、また寒さに打ち勝つ脂肪として必要なのだ、という事が
よくわかる。
そうだよね、いかに南極で卵を産むのが当たり前、といっても生物で
ある以上、一定の温度以下になってしまえば卵の中の生命は死んでし
まうわけだし。
また、そのために自分自身が死んでしまったらどうしようもないわけ
だから、そのためには動かなきゃいけないけれど、卵を落としてしま
っては元も子も無いわけで。

そして卵を産んだ母親は、やがて産まれてくる自分の雛鳥のために、
父親が卵を温めている間に海へと行き、自分と雛鳥のためのえさを
たくわえ、そしてまた氷が解ける危険性のない、海からは遠く離れた
内陸にあるコロニーを目指して行進する。

そして母親が帰ってくる頃、卵はちょうど孵化し、そして冬が終わる。
冬をじっと動かずに耐えていた父親は、今度は雛鳥を母親に託し、
弱りきった身体で自分のための栄養と、子供のための餌をとってくる
ために、やはり海へと向かって行進するのである。
そして雛鳥が自分で海へと行進できる時まで、その行進は繰り返
される。

親のペンギンが自分の子孫を残していくために、いかに夫婦で協力し
合い、困難な状況を乗り越えていくのか、その姿には生命としての
尊厳と美しさがあるようにみえるのである。

そしてまた、その姿を映しているカメラワークだけでなく、編集も
上手いと思う。
そこに声優のナレーションがかぶさっているからだけでなく、
その仕草がとても人間くさくて、愛らしく見えるのである。

牡と雌がパートナーを選ぶときにする愛のダンスだけでなく、
お互いに長く危険な行進を経て、再び再会した時の仕草なんて、
言葉が無くてもお互いに愛し合っているということが伝わってくる
ように思うのだ。

いや、これを見ると少子化とか、負け犬とか、そんな事を言ってる
ことよりも、新たな生命を育てることがどんなに美しいのか、という
ことに気付かされるような気になるのである。

とにかく、できれば見てほしい、そういう映画なのだ。


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harry [MAIL] [HOMEPAGE]

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