| 2005年05月19日(木) |
「交渉人真下正義」ネタバレあり |
今回は映画ネタ。見てきたのは「交渉人真下正義」 「踊る大捜査線」シリーズからのスピンオフ企画であるこの作品。 見てきた感想は、「オタクな監督、本広克行がつくった、カルトという か、オタクな映画」である。
ちなみにネタバレなしにこの映画を語ってもつまらないので、以下 ネタバレ風味につき、まだ見ていない方は要注意、ということで。
今はもうオタクという自覚がないので、自称元オタクとしてこの映画を 見た時に感じたのは、アニメーション映画「パトレイバー1、2 」との 関連性である。
赤い光を放ちながら暴走する機械、電波を放ちながら移動する乗り物に 群がるカラス、正体の見えない犯人、今はもう使われてない地下鉄の 線路、周波数によって作動する鍵、OSに潜んでいた罠、そして何より 東京で起きたテロ。 これらはすべて、映画「パトレイバー」とも共通するネタなのである。
また、映画版「パトレイバー」の監督、押井守が、人気漫画/アニメの パトレイバーシリーズという物語の構図を使って、まったく別物の 映画版という物語をつくったように、
今回の「交渉人真下正義」は「踊る〜」シリーズの監督本広克行が、 「踊る〜」シリーズの物語の構図を使ってまったく別の物語をつくった という構造までそっくりだと思うのだ。
おそらくは本広監督自身、そう指摘されることまで意識して確信犯的に つくっているんじゃないのかなあ、と思うのだ。 すなわちこの映画自体が、オタク監督本広克行からの、君は一体いくつ のネタがわかるのかな?という挑戦状でもあるのかもしれない。
もう一つだけ個人的にニヤリとしてしまったのは、雪乃が見に行った クラシックコンサートが、ラヴェルで、しかも指揮者が西村雅彦だった こと。
実は今から10年くらい?前の深夜番組で、「マエストロ」というドラマ 仕立てで毎回クラシックのうんちくをひも解く番組があり、その時の 指揮者役がたしか西村雅彦だったのである。 もしや、と思い家に帰ってきてから検索したら、やっぱりその「マエス トロ」のディレクターが本広監督であった。
で、そのマエストロの中でもラヴェルについて触れている回が印象的 だったことを映画を見ながら思い出し、思わずニヤリとしてしまったの である。 ま、この辺はマジで映画のキモなので、この辺にしておくとして。
映画自体に触れると、正直ユースケ・サンタマリアが演じる真下正義の 交渉人はプロとしてはいささか頼りない気がする。 (だって、交渉人としては素人のはずの同僚警官に交渉内容について 指図されたり、捜査方針に関してはなんの権限もない地下鉄職員たちに ツッコミまれたり)、全東京200万人の命がかかっている割には、 指揮権も一体誰が握っているのか不明だったりするのだが、そこはまあ ご愛嬌ということで。
というより今回の作品、熱血ヒーローキャラの織田裕二ではなく、その 脇にいたはずのオタクキャラが堂々と主人公になってしまった、という のが一番の醍醐味なのかもしれない。
TVシリーズや、歳末SPでは、真っ先に逃げ出していた真下も、今回は 逃げずにちゃんと受け止めているわけだし。
映画の中で真下正義が犯人に向かって、俺は君とは違う、君は一線を 超えてしまったけれど、俺は踏みとどまっているんだ、というのは、 そのままオタクなファンに向けての、オタク監督、本広克行のメッセー ジのような気がする、というのが深読みしすぎだろうか。
また、映画自体は渋いオッサンパレードで、個人的には今まで単なる ゲストキャラ扱いだった爆弾処理係の松重豊が活躍したり、またこっち は前作から大活躍のSAT隊長役の高杉亘をはじめとして、寺島進、 国村準、金田龍之介まで、皆さん普段より脚光を浴びている感じで、 本広監督の愛情を感じてみたり。
ということでこれに続く、8月公開の「容疑者室井真次」が一体どう なるのか、今から楽しみなのである。
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