パラダイムチェンジ

2004年11月18日(木) 舞台「リンダリンダ」

今回のネタは舞台「リンダリンダ」
ブルーハーツの名曲をベースにした、いわば和製「マンマミーア」な
この作品。
出演は、山本耕史、SOPHIAの松岡、SILVA、馬渕英理何、北村有起哉、
大高洋夫、他。
脚本、演出は、鴻上尚史。

実は、この公演のチケット、前売りで思いっきり買い逃してしまい、
当日券を買っての入場。しかも公演3日目。

雨降ってたし、幕が開いて間もない時だったら、まだ当日券も手に入れ
やすいかなあ、と思ったわけですね。
で、仕事終わりにダッシュで劇場に向かい、開演30分前に当日券を見事
ゲット。
いや、前売り券買い逃しておいて言うセリフではないが、ブルーハーツ
は大好きなバンドだったので、是非見たかったのである。
ちなみに見たのは前から2列目の一番右より。

さて、鴻上さんの舞台は、思い入れを語りだすと、空回りしてしまう
ので、見た感想だけを書くが、
一言でいうなら、
第三舞台時代の名作、「天使は瞳を閉じて」以来の名作の予感かもしれ
ない、である。



物語は、メインボーカルをレコード会社に引っこ抜かれてしまったバン
ドのメンバーが、劇中では入明海のあざはや湾にある干拓事業の堤防を
爆破さえすれば、去っていったメンバーがまた戻ってくる、と信じて
走りだしていく物語。

この話、キーワードは「青春」であり、「失われたもの」なんじゃない
のかな、と思う。

山本耕史演じるバンドのリーダー、ヒロシをはじめとしてこの中の
登場人物は、みんな大切な何かを失っているように見える。
ヒロシはバンドのメインボーカルだった弟と、プロになるという夢を、
そして彼をとりまく人たちは、それぞれ片思い、という形で振り向いて
もらえる相手を。
大高洋夫演じる元過激派は、30年という時間と自らの青春を。

そして彼らは、堤防を破壊しさえすれば、失われた何かが戻ってくると
心底信じて走っていく。

これを見ていて、青春って、失われた何かはいつかかえってくる、と
信じ続ける力のことであり、そして青春を失うってことは、失われた
何かっていうのは、もうかえってはこないと思ってしまうことなのかも
しれないな、なんて思ったのである。

だからこの舞台は、ど真ん中で青春を生きる、もしくは青春を取り戻そ
うとする物語なんだと思うのである。
彼らは最後、何かを失った代わりに何かを得る。
そして、ブルーハーツの名曲「終わらない歌」を歌って幕が降りる。



今回一つだけ、失敗したなあ、と思ったのは、どうせだったらブルー
ハーツの曲を前に聴いてから見に行っとけばよかったあ、という事で
ある。その方がより盛り上がるのは間違いがない。

そしてもう一つ残念だったのは、他の観客も若い人も多かったせいか、
ブルーハーツの曲を知らない人も多かったみたいで、もう少し曲を
知っている人率が高ければ、もっと盛り上がったんじゃないかなあ、
と思ったこと。
というより、どんな名曲でも15年くらい経ってしまうと、消費されて
しまう日本の音楽シーンを嘆くべきことなのかもしれないけど。


舞台は二幕にわかれており、
一幕目は、北村有起哉のコミカルな演技でどうにか場を持たせて、
あとはストーリーよりは歌を聴きにくる感じなのかなあ、という感じ
だったけど、
二幕目に入ると、グンとシリアスな雰囲気を感じさせながら、大団円
に向かってひたすら走っていく感じになり、それをブルーハーツの
誰でも知っている名曲が支えてものすごくノリのいい舞台になって
いった感じだった。
ラスト付近とか、もう本当に格好イイ、って感じ。


SOPHIAの松岡は、本当に歌もきかせて舞台映えをしていたし、
山本耕史は、今までに見た鴻上舞台の中では、一番伸び伸びとして
いたし。
馬渕英理何は、ヒロシを見つめる何気ない表情が本当によかったし、
SILVAも、初舞台3日目とは思えないくらいにいい感じだったし(今回
は、山下裕子のポジション?)。

そして大高さんは、今までにもまして若い人たちを見つめる目が優し
かったし、
北村さんはもう鴻上さんの舞台に欠かせないような存在として定着して
いたし。
そして生方さんもアンサンブルメンバーとして、とても頑張っていた
と思う。

なんか、アクションの人も含めて、みんないい役をやっていたなあ、
と思うのである。
あ、でもあのアンサンブルのベタなダンス(幽霊はここにいるあたり
からやっている奴)だけは、何とかなんないかな。


本当だったら、このメンバーで3ヶ月以上のロングラン公演をして、
その最後あたり、カンパニーが成熟しきった頃の舞台が見られたら
幸せなんだけど。

各出演者のスケジュールの問題もあるにせよ、東京が3週間弱で
終わってしまうのは、ちょっともったいない様な気がするのである。
おそらくラストの福岡あたりでは、もっとまとまってるんだろうなあ。

昔、鴻上さんが自分の舞台について、「ライバルはライブコンサート
です」と言っていたけど、なんか久しぶりに舞台を見ながら汗をかき
涙を流したいような、そんな舞台だった。
うん、できればもう一回見たい舞台である。

P.S.DVDを買ったときに10数年ぶりに鴻上さんと握手してもらったん
だけど、普段手のあたたかさでは負けない自分が、鴻上さんに負けて
ちょっとショックだった。


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harry [MAIL] [HOMEPAGE]

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